本屋大賞「翻訳小説部門」歴代受賞作のあらすじとおすすめポイントを紹介!

更新:2020.1.19 作成:2020.1.19

日本全国の書店員の投票によって受賞作が決まる「本屋大賞」。一時投票と二次投票を経て、書店員が「いちばん売りたい本」として大賞が発表されます。2012年からは「翻訳小説部門」が設立され、海外の作品にも注目が集まるきっかけとなりました。この記事では、本屋大賞「翻訳小説部門」歴代受賞作のあらすじと魅力を紹介していきます。

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本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞した王道ミステリー小説『カササギ殺人事件』

 

転落死した家政婦の葬儀のシーンから始まる小説「カササギ殺人事件」。1950年代のイングランドを舞台にした、ベストセラー作家のアラン・コンウェイの新作です。しかし物語からは最終章が消えていて、謎解きがされないまま唐突に終わりを迎えていました。

編集を担当しているスーザンは、激怒します。作者とは連絡がとれません。そしていつの間にか、信じられない事件に巻き込まれていくのです。彼女と「カササギ殺人事件」の繋がりは……。

著者
アンソニー・ホロヴィッツ
出版日
2018-09-28

 

2019年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞した作品。本屋大賞も含め、日本国内の文学賞で7冠を達成する偉業を成し遂げています。作者のアンソニー・ホロヴィッツは、ドラマ「名探偵ポアロ」の脚本も手掛けているベストセラー作家です。

上巻を丸々使って描かれる作中作「カササギ殺人事件」は、ミステリーの女王アガサ・クリスティーのオマージュ。探偵役はポアロをイメージした、正統派のミステリー小説です。

下巻では現実世界に戻り、編集者のスーザンが、作中作と同じような状況で死んでいた作者アラン・コンウェイの死の謎と、行方がわからなくなっている最終章を探します。

なんと15年をかけて構想したとのことで、ひとつの作品でふたつのフーダニットを楽しめる秀逸なもの。作中作と現実世界が徐々にリンクしていき収束していくので、途中で読むのを止めることはできないはず。上巻で描かれなかった結末も、下巻の最後で解決するのでご安心ください。

本屋大賞「翻訳小説部門」受賞をきっかけに大ヒットしたファンタジー小説『カラヴァル 深紅色の少女』

 

主人公は、17歳の少女スカーレット。父親は暴力を振るうほど厳しい人物で、彼に勝手に決められてしまった結婚の日がもうすぐそこまで迫っています。

そんな時、7年前から憧れていた魔法のゲーム大会「カラヴァル」に参加するチャンスを得ることができました。優勝者すれば、願い事をひとつ叶えてもらえるそう。

スカーレットは、妹のドナテラと船乗りの青年ジュリアンとともに、故郷を抜け出して会場に向かいます。しかし会場についた途端、ドナテラがいなくなってしまい……。

著者
ステファニー ガーバー
出版日
2017-08-22

 

2018年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞した、ステファニー・ガーバーの作品。2017年にアメリカで刊行されて瞬く間にベストセラーになり、30ヶ国以上で翻訳されています。

ただ日本で刊行された際はあまり話題にならず、本屋大賞「翻訳小説部門」受賞時は900部ほどしか売れていなかったそう。良作を読みなれている書店員たちの高評価が受賞に繋がったよい例でしょう。

魔法のゲーム大会を舞台とした冒険ファンタジー小説。煌めく服装や街の描写は、まるで夢があふれるテーマパークのようです。そんななかスカーレットは、妹の行方を探しながら、自らの恋心や真実と向きあっていきます。「カラヴァル」の試練を乗り越えるにつれて成長していく姿に注目です。

続編『レジェンダリー』もあわせてお楽しみください。

大人が読んでもグッとくる本屋大賞「翻訳小説部門」受賞作『ハリネズミの願い』

 

主人公のハリネズミは、自分の針が大嫌い。それゆえに、ほかの動物たちとうまく付き合うことができません。

しかしそんな彼が、自宅に友人を招待しようと思いたち、手紙を書きはじめます。しかしネガティブな考えばかりが浮かんできてしまい……。

「キミたちみんなを招待します。……でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」(『ハリネズミの願い』より引用)

こんなふうに書いたあげく、結局出すことができずに戸棚にしまいこんでしまいました。断られたらどうしよう、トラブルが起きたらどうしよう……と妄想をくり広げます。

著者
トーン テレヘン
出版日
2016-06-30

 

2017年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞したトーン・テレヘンの作品。テレヘンはオランダの国民的作家で、動物を擬人化した子ども向けの本を多く手掛けています。

とにかくネガティブなハリネズミ。針で怖がらせてしまうのではないか、おもてなしをきちんとできないのではないか、家をめちゃくちゃにされてしまうのではないか……まだ起こってもいないことを怖がる臆病なハリネズミに対し、もどかしさを抱くと同時に、身に覚えがあると感じる人もいるのではないでしょうか。

1度ネガティブになってしまうと、自分でも抑えられないくらいマイナスの感情が広がっていく時があるもの。読者の心の状態によって、何度読んでも受け取り方が異なる作品かもしれません。

人の絆と愛を描いた本屋大賞「翻訳小説部門」受賞作『書店主フィクリーのものがたり』

 

主人公は頑固で変わり者のフィクリー。2年前に事故で妻を亡くしてからは、島でただひとつの書店をひとりで切り盛りしていました。酒におぼれ、大切に保管していた貴重な本も盗まれ、散々な生活です。

そんなある日、書店に小さな子どもが置き去りにされているのを発見。フィクリーは、2歳の少女マヤを引き取ることを決め、新たな生活を始めます。

著者
ガブリエル ゼヴィン
出版日
2017-12-06

 

2016年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞したガブリエル・ゼヴィンの作品。アメリカ版の本屋大賞ともいえる「Library Reads」でも大賞に輝きました。

大切なものを失った状態で出会ったフィクリーとマヤ。ともに人生を歩むことを決めた彼らの距離感が心地よく描かれています。何よりも、偏屈だったはずのフィクリーがどんどん心を開き、周囲の人と交流していく様子が微笑ましいでしょう。

全体的にあたたかいストーリー展開ですが、ところどころに「死」が散りばめられている切ない物語でもあります。それでも本と愛する人がいるから生きていける、前向きな作品です。海外文学好きの人がニヤリとできるエピソードも随所に挿入されているので、見つけてみてください。

結末の予測は不可能!巧みな構成に翻弄される小説『その女アレックス』

 

非常勤の看護師として働くアレックス。男性を虜にする美貌の持ち主です。そんな彼女が、猟奇的な殺人鬼に監禁されてしまいました。

いつ殺されるのかわからない恐怖に陥りながら、アレックスは、自分を誘拐した男が、パスカル・トラリユーの父親だったことを思い出します。その後、機転をきかせてなんとか脱出したアレックス。しかし事件はどんどんとあらぬ方向に進んでいき……。

著者
ピエール ルメートル
出版日
2014-09-02

 

2015年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞したピエール・ルメートルの作品。フランスやイギリスでも文学賞を受賞した、世界的ベストセラーです。

物語は三部構成になっていて、最初はとある美人が誘拐される、という残虐ながらも目新しくはないストーリー。しかしここから急展開し、次の章では被害者だったはずのアレックスが猟奇的な殺人者として描かれるのです。そして最後はまた別の被害者として……。

物語はテンポよく進み、驚きの連続。どんどん読み進めてしまうでしょう。

実は本作はシリーズもので、『悲しみのイレーヌ』に続く2冊目。本作だけ読んでも問題ないですが、前作を読んでおくとより登場人物の全容を知ることができます。

映画化もされた本屋大賞「翻訳小説部門」受賞作『HHhH』

 

第二次世界大戦中のドイツ。ヒトラー率いるナチスの高官のなかでも、もっとも冷酷であると恐れられていたのは、「金髪の野獣」と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒです。

ナチスに占領されたチェコの首都、プラハで、祖国を守るために2人の青年が立ち上がりました。彼らは、ハイドリヒの暗殺を企てて……。

著者
ローラン・ビネ
出版日
2013-06-29

 

2014年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞したローラン・ビネの作品。フランスの権威ある文学賞「ゴンクール賞」で最優秀新人賞を受賞、映画化もされました。

本作は、作者であるローラン・ビネ自身が、作品を書くにあたった経緯を語るところから始まります。なるべく史実に忠実に、虚構を混ぜずに小説にしたいという思いがとうとうと語られるのです。

ハイドリヒ暗殺を描いた歴史小説であると同時に、小説をかくことについて書いた小説でもあるという構造がとにかく新鮮。そうして描かれた2人の青年のハイドリヒ暗殺事件は、臨場感たっぷりで、読者を作品世界へと連れていってくれるでしょう。

壮絶な世界で生きる人々の力強さを描いた本屋大賞「翻訳小説部門」受賞作『タイガーズ・ワイフ』

 

紛争地帯で慈善活動に従事している医師のナタリアに、祖父の訃報が届きました。

父がいないナタリアにとって、育ての父である祖父は大きな存在。そんな祖父は、病を患った自らの死期を悟り、旅に出て辺境の村でひとり死んだそうです。

祖父は何を求めて旅をしたのか、ナタリアは祖父が残した想いを汲み取ろうとします。

著者
テア オブレヒト
出版日
2012-08-01

 

2013年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞した作品。作者のテア・オブレヒトが初めて執筆した長編小説で、25歳という史上最年少でイギリスの権威ある文学賞「オレンジ賞」を受賞しました。

祖父を追うナタリアが出会うのは、「不死身の男」にまつわる話と、動物園から逃げ出したトラと少女の話。挿入される非現実的な物語によって、祖父がどんな人だったのか、徐々にその輪郭が浮かび上がってくるのです。

明確な言葉ではなく、寓話的な切り口で発せられるのは、戦争、平和、生と死。紛争が絶えない旧ユーゴスラビア出身の作者だからこそ書ける、示唆に富んだ作品になっています。

本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞した短編小説『犯罪』

 

普通の人だったはずなのに、彼らが「犯罪者」と呼ばれるようになるにはどのような事情があったのでしょうか。

ドイツの刑事事件弁護士が、背景を探っていく作品です。

著者
フェルディナント・フォン・シーラッハ
出版日
2015-04-03

 

2012年に本屋大賞「翻訳小説部門」を受賞した、フェルディナント・フォン・シーラッハの作品。

シーラッハは、本作の語り手と同じく、ドイツで刑事事件を担当している弁護士。彼が実際に遭遇した事件をモチーフにした11の短編が収録されています。

長年連れ添った妻をバラバラに殺した男性、恋人を食べようとした男性、銀行強盗……普通に生きていた彼らの人生と犯罪を淡々と語るだけ。突飛なサスペンスや派手なアクションがあるわけではありません。だからこそそこに、人間の哀しみが浮かび上がってくるのです。

弁護士である作者が、犯罪者たちに真摯に接してきたこともうかがい知れるでしょう。法律と罪についても考えさせられる一冊です。