そらいろようちえんの裏にある「ヘンテ・コスタのもり」で起こる不思議な出来事を描いた「へんてこもりのはなし」シリーズ。絵本より物語が長く、文字が大きいのが特徴で、幼年童話と呼ばれるジャンルです。絵本から児童書へ移行する時期にぴったりでしょう。この記事では、シリーズのあらすじと魅力を紹介していきます。
アキオ、ケケコ、ブンタ、ノンコは仲良し4人組。「へんてこもり」と呼ばれる、幼稚園の裏にある森でいつも遊んでいます。
ある日、4人は正面の入り口ではなく、柏の木の横から森に入ってみることにしました。動物しりとりをして遊びます。
そんななか、「ま」の付く動物の名前が思い浮かばず、ブンタが苦し紛れに言ったのは「まるぼ!」という言葉。他の3人はそんな動物はいないと指摘しますが、その瞬間、ガサガサと音がして4人の前に「まるぼ」と名乗る生き物が現れるのです。
それから4人は、これまでにない動物しりとりを体験することに……。
- 著者
- 高楼 方子
- 出版日
- 1995-04-01
「へんてこもりのはなし」シリーズの1作目、1995年に刊行されました。作者の高楼方子は、80を超える絵本や児童書を執筆してきたベテラン作家です。
ヤカンに似たフォルムをしたまるぼは、力を入れると、細長く伸びた鼻からお湯を出すことができるそう……。ほかにも、「うるりんぞ」「イタアタもち」「ホンリエーヌちゃん」など、本シリーズで描かれる森の動物たちはみな、名前も姿も特徴もユニークです。挿絵も愉快で、絵と文の両方を楽しめる幼年童話の面白さを体感できるでしょう。
「へんてこもり」へ行く入り口を変えただけで、不思議な世界へと繋がってしまう設定にも夢が膨らみ、この一冊で「へんてこもりのはなし」シリーズのファンになる子どもが多いのも頷けます。
「へんてこもり」の不思議な動物まるぼが、仲良し4人組にお菓子をごちそうしてくれることになりました。
ところが、お菓子がある場所に近道で行くためには、腰に手を当て、歌いながらスキップをしなければいけないそう。さらに、正しく歌えないと「へんてこもり」の動物たちに連れ去られてしまうというのです。
どうやら歌は簡単そうで、ほっとする4人ですが……。
- 著者
- たかどの ほうこ
- 出版日
- 1997-03-01
「へんてこもりのはなし」シリーズの2作目。1997年に刊行されました。
前作で描かれた「へんてこもり」での奇妙な体験を忘れることができず、4人は再びいつもと違う入り口から森に入ります。まるぼと再会するシーンでは、喜ぶと同時にこれから起こるであろう不思議な出来事にワクワクがとまりません。
道中では4人を助けようとするまるぼの勇敢な姿に触れることもでき、しだいに絆を深めていく様子が伝わってきます。
森の動物たちは、本作でも個性豊か。たとえば「はなづまりばく」は、「びつけた、びつけた」と鼻がつまっている時のような言葉を話し、鼻先に結び目を作った獏のような姿をしています。絶妙なキャラクター設定にも注目してみてください。
またまた「へんてこもり」に遊びに行った4人は、慌てた様子のまるぼに出会います。へんてこもりの動物たちが、「なまえもん」に食べられてしまったというのです。
「なまえもん」は、ガマガエルのような見た目をしていて、彼に食べられるとなまえもんの頭上に乗った分厚い図鑑に、名前と皮肉まじりの紹介文が書き込まれてしまいます。
救出できるのは、なまえもんに消化される前のわずかな時間だけ……。
- 著者
- たかどの ほうこ
- 出版日
- 1999-06-01
「へんてこもりのはなし」シリーズの3作目。1999年に刊行されました。表紙にはまるぼを囲む4人が描かれ、すっかり打ち解けた様子がうかがえます。
前作で登場した「ぼさこう」と「うるりんぞ」を助け出す一行ですが、今度はまるぼが食べられてしまうピンチに。ハラハラドキドキの展開にページをめくる手が止まりません。
なまえもんに食べられないように工夫する様子や、食べられてしまった動物たちを助け出す方法などはとてもユニークで、読みながら一緒に真似をする子どもも多いようです。
最後は無事に「へんてこもり」の入り口に戻ってくることができました。次に「へんてこもり」で起こるであろう出来事に期待を膨らませながら、物語は終わります。
「へんてこもり」の住人ホンリエーヌちゃんが読んでいた本から、「きまぐれろ」が逃げ出してしまいました。本は途中から真っ白になっていて、続きを読むことができません。
4人は、まるぼとホンリエーヌちゃんと一緒に、きまぐれろを探しに行くことにしました。
「きまぐれろのうた」を歌うと、そのたびに不思議な動物たちに出会い、どんどん仲間が増えていきます。きまぐれろの行方が少しずつ明らかになっていくのですが、見つけたと思うとすでにそこにはいなくて……。
- 著者
- たかどの ほうこ
- 出版日
- 2003-11-01
「へんてこもりのはなし」シリーズの4作目。2003年に刊行されました。
「きまぐれぼうやのきまぐれろ やさしいこだけどすぐあきる」(『へんてこもりのきまぐれろ』より引用)
巻末には「きまぐれろのうた」の楽譜が掲載されています。読み聞かせをする際は、好きなように節をつけてみても面白いでしょう。歌は作中でくり返し出てくるので、子どもたちもすぐに覚えることができるはずです。
ちなみにホンリエーヌちゃんは、3作目で「なまえもん」の体から救出された女の子。共通のキャラクターがたくさん登場するのも、シリーズならではの魅力でしょう。
「へんてこもり」では不思議なことに、満月が3日間も続くことがあります。3日続いた次の日には、「ことばぐさ」を摘むことになっているんだそう。まるぼに誘われ、4人も行ってみることにしました。
しかし、大きな栗の木の下では、摘みたかった「ことばぐさ」がすべてなくなってしまっています。残っていたのは、ネガティブな「ことばぐさ」ばかり。さらに近くには、まるぼに後ろ姿がそっくりの壺が置いてあります。一体どういうことなのでしょうか。
- 著者
- たかどの ほうこ
- 出版日
- 2011-09-08
「へんてこもりのはなし」シリーズの5作目にして最終巻です。2011年に刊行されました。
今回は、まるぼの偽物が登場。ツボミカという女の子がみんなの分まで「ことばぐさ」を摘み、まるぼそっくりの壺の中に入れていたのです。
ことば遊びが楽しめるのも、「へんてこもりのはなし」シリーズの魅力のひとつ。1作目の動物しりとりもそうですが、楽しみながら豊かな語彙力を身に着けられるのがいいですね。