長く厳しい冬が訪れる北欧では、古くから家でゆったりと過ごす独特の文化が育まれてきました。自然との共生や人々の知恵などは、絵本からも感じることができるでしょう。この記事では、味わい深いものからスタイリッシュなものまで、北欧の魅力をたっぷり楽しめるおすすめの絵本を紹介していきます。
ピッピは、そばかすだらけの顔とおさげ髪、左右あべこべの長くつ下がトレードマークの女の子。見た目に似合わず、とっても怪力です。「ごたごた荘」と呼ばれる古い屋敷にひとりで住んでいましたが、チンパンジーや馬、そしてトミーとアンニカという隣人の友だちがいるので、ちっとも寂しくありません。
ピッピは、お行儀の悪さも並はずれています。クッキー生地を床に伸ばして型抜きしたり、枕に足をのせて寝たり……。ある日はサーカスに行き、怪力といわれているアドルフを打ち負かし、町の人たちを驚かせてしまいました。
- 著者
- アストリッド・リンドグレーン
- 出版日
- 2004-02-17
スウェーデンを代表する児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの名作『長くつ下のピッピ』の絵本版です。
絵本版の魅力は、なんといっても目に飛び込んでくるビタミンカラーのイラストでしょう。担当したのはデンマークのイラストレーター、イングリッド・ニイマン。日本文化に関心があり、北斎の絵を模写するなどしているそうです。不器量に描かれたピッピの顔は愛らしさもあり、周囲に左右されない強さと心優しい一面を持ちあわせた少女をよく表しています。
原書が刊行されたのは、1945年という第二次世界大戦の終戦の年。中立を守りながらも苦難の時代を過ごしたスウェーデン国民にとって、自由奔放で天真爛漫なピッピの物語は大歓迎だったそうです。絵本版は、スウェーデンとデンマークの強力タッグで原書をさらに盛りあげているので、児童書版でストーリーを知っている人も手にとってほしい一冊です。
ある日、池に映った月を見つけて、友だちになりたいと思ったお月さま。ぼうやに連れてきてほしいと頼みます。
月のぼうやは、籠を片手に空からぐんぐん降りていきました。うっかり星を蹴飛ばしてしまったり、雲を突き抜けてびしょびしょになったり……冒険はハプニングの連続。そして地上に着くと、そのまま池の中へボッチャーン!
さて月のぼうやは、池に映った月を連れて帰ることができるのでしょうか。
- 著者
- イブ・スパング・オルセン
- 出版日
- 1975-10-20
デンマークの作家、 イブ・スパング・オルセンの作品。1962年に刊行されたロングセラーです。
目を引くのは、やはり縦長の形状。縦の長さは35cmもあります。視線が自然と下に降りるようページを効果的に使っていて、地上と空の距離感や、月のぼうやが降りるスピードの変化が面白いように伝わってくるのです。
月のぼうやが蹴飛ばした星が流れ星になったり、渡り鳥の群れに囲まれてしまったりと、空で起こる出来事も興味深いもの。さまざまな出会いは素朴ながら愛らしく、飽きることがありません。絵をじっくりと楽しみながら読み進めたい作品です。
赤ちゃん向けに数の概念を教える知育絵本です。
左ページには1から10の数字が順に並び、右ページにはそれに対応する数の動物が描かれています。動物たちはどれも品良く、すまし顔。背景には鮮やかな色が使われ、余計な物は一切描かれていません。
ページをめくると、数字と動物がパッと視界に飛び込んできて、快感を覚える一冊です。
- 著者
- ["リサ・ラーソン", "ヨハンナ・ラーソン"]
- 出版日
- 2010-04-25
スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソンが描いた初めての絵本。愛娘ヨハンナとのコラボレーションで、日本では2010年に刊行されました。手のひらサイズのボードブックで、本の扱いに慣れていない赤ちゃんにも安心なつくりになっています。
登場する動物たちは、はっきりとしたアウトラインで描かれ、識別しやすくなっているのが特徴。小さな子どもでも理解することができるでしょう。色の概念を伝える『BABY COLOUR BOOK』も同じ仕様で出版されているので、あわせて読むのもおすすめです。
またスタイリッシュなデザインは、お部屋のインテリアとしても存在感抜群。その日の気分で好きなページを開いて楽しんでみませんか?
ルビィは好奇心旺盛で想像力豊かな女の子。好きな言葉は「どうして?」です。
パパがお出かけしている間、ルビィは家中を歩きまわります。ほら、今日もパパからのお手紙を見つけました。そこには、「宝石を隠したから探してごらん」と書いてあります。さらにパパの机の下からは、秘密の数字が書かれた1枚の紙も発見。
このヒントをもとに、宝探しをするルビィの冒険が始まります。
- 著者
- リンダ・リウカス
- 出版日
- 2016-05-19
フィンランドのプログラマー、リンダ・リウカスの作品。クラウドファンディングを活用して資金を調達し、3年がかりで制作したそうです。日本では2016年に刊行されました。
リンダが伝えたかったのは、プログラミングに必要な「考え方」とのこと。手に負えそうもない課題に出会った時、どう解決の糸口を見つければよいか、手ほどきをしてくれます。
フィンランドの教育現場では、「ミクシ?(どうして?)」という問いかけをよくするのだそう。世界有数の教育国のメソッドが活きた、おすすめの知育絵本です。
奥深い森のなか、4人のこびとの子どもたちが、お父さんとお母さん、そして森の仲間とともに暮らしています。
夏は動物たちとの遊びが目白押しです。時にはお父さんの蛇退治を手伝うことも。秋になると、一家は冬支度に大忙しで、木の実を集めたり暖かい洋服を作ったりとお手伝いをします。
そのあとにやって来る長い冬も、楽しみは尽きません。そしてとうとう春が訪れると……。
- 著者
- エルサ・ベスコフ
- 出版日
- 1981-05-20
スウェーデンの絵本作家、エルサ・ベスコフの作品。彼女は日々の暮らしを描くのが得意な絵本作家で、本作でも家族が役割分担をしながら家事をする様子や、季節ごとの風物詩が丁寧に描かれています。
また、北欧の豊かな森や動物たちが活き活きと描写されていて、自然のめぐみを感じることができるでしょう。
こびとの子どもたちの表情やしぐさは、細やかでみんな異なります。エルサ・ベスコフは6人の子どものお母さんでもあるので、子育ての経験から導かれたものなのかもしれません。穏やかな語り口も読者の心を癒してくれ、世代を問わずゆったりと味わえる一冊です。
「がらがらどん」という名前のやぎが3匹いました。体の大きさは、大中小とそれぞれ違います。
ある日3匹は、餌になる草を求めて向こうの山を目指しますが、途中で橋を渡ろうとすると、その下の谷に住むトロルという鬼に出くわしてしまいました。
まず小さなやぎは、トロルに食べられまいと「あとから自分よりも大きなやぎが来る」と言って、橋を渡きります。中ぐらいのやぎも、同じようにうまくかわすことができました。
そしていよいよ、1番大きなやぎが橋を渡り始めますが……。
- 著者
- 出版日
- 1965-07-01
アメリカの絵本作家マーシャ・ブラウンが描いた、ノルウェー民話を絵本にしたもの。日本では1965年に刊行され、世代を超えて長く読み継がれています。
本作の魅力のひとつは、そのイラストです。勢いのある筆と厳選した色使いで描いた森の様子からは、ノルウェーの神秘的な情景が浮かびあがります。また凄味を効かせたトロルの風貌と、やぎたちの妙計にはまってしまうこっけいさも巧みに表現されています。
瀬田貞二のリズム感のよい翻訳にも注目したいところ。「がらがらどん」という名前はもちろん、橋を渡る音などオノマトペも多用され、声に出して読んでも楽しめるでしょう。