スペイン文学の歴史は古く、後に発表される作品に大きな影響を与えたそう。なかでも『ドン・キホーテ』は、「史上最高の文学」とまでいわれています。この記事では、有名文豪が書いた古典の名作から、現代文学のベストセラーまで、読んでおきたいおすすめのものを紹介していきます。
騎士道物語を読み過ぎたせいで、自分を遍歴の騎士だと思い込んでしまった初老の紳士。「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と名乗り、意気揚々と冒険に出かけていきます。
ドン・キホーテは痩せ馬にまたがり、ロバに乗った従者とともに世の中の不正を正そうとするのですが、3度目の旅から戻ると病に倒れ、正気に戻りました。しかし間もなく亡くなってしまうのです。
- 著者
- セルバンテス
- 出版日
- 2001-01-16
1605年に前編が、1615年に後編が出版された、スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの作品。2002年には世界中の文学者の投票で、「史上最高の文学百選」1位を獲得しました。
ドン・キホーテは、旅の途中で遭遇する何もかもを騎士道の設定に置き換えて、次々とトラブルを起こしていきます。 気がふれているのか芯が通っているのか、その違いは紙一重で、笑えるとともに、彼の騎士道精神に感動すらさせられるのが魅力です。
出版当初は、滑稽なキャラクターが人気となり喜劇として評価を得ていましたが、後にロマン主義による悲劇的な解釈がされはじめ、「最も偉大で最ももの悲しい書物」と評されました。
また多くのメタ・フィクションが入れ込まれていて、後編には、『ドン・キホーテ』の前編を読んだという人物や、当時実際に出回っていた贋作を批評する人物が登場。その発想と構造にも感心してしまう一冊です。
バルセロナにある古書店の息子、ダニエル少年は10歳です。父親に連れられて、「忘れられた本の墓場」と呼ばれる場所を訪れました。促されるままに『風の影』という本を手に取り、パラパラとめくってみると、惹き込まれて一気に読んでしまいます。
いたく感動したダニエルが、作者のフリアン・カラックスについて調べてみると、フリアンは謎の死を遂げ、彼の作品が世の中から意図的に消されていることを知るのです。
- 著者
- カルロス・ルイス・サフォン
- 出版日
- 2006-07-20
2001年に刊行されたカルロス・ルイス・サフォンの作品です。
「忘れられた本の墓場」は、図書館や古書店が無くなり居場所を失った本たちが最後に流れ着く本の聖域。訪れた人はそのなかから必ず一冊を引き取り、本の命を消さないように守るというルールがあります。そこで最後の一冊となった『風の影』の作者であるフリアンの人生を紐解きながら、およそ10年にわたって主人公ダニエルの成長を描いていく物語です。
読み進めていくと、フリアンの過酷な運命とダニエルの人生が不思議なシンクロをしていき、ファンタジーとミステリーが融合したような雰囲気。スペイン内乱など歴史上の悲しい出来事も絡みあい、友情や恋やも楽しめる、一大スペクタクルとなっています。
中米メキシコの貧民街で生まれ育ったテレサ。平凡なか弱い女性です。しかしある夜、恋人が殺されたという報せの電話をとった瞬間から、逃亡の身になり故郷を追われることになりました。
辿り着いたのは、異国の地スペイン。それから約12年が経ち、彼女は麻薬取引を仕切る「南の女王」と呼ばれるようになり、裏社会で名をあげていきます。
- 著者
- アルトゥーロ・ペレス・レベルテ
- 出版日
- 2007-07-30
2002年に発表されたアルトゥーロ・ペレス=レベルテの作品。レベルテは新聞社やテレビ局で、20年以上ジャーナリストとして活躍した人物です。
逃亡先のスペインでも恋人を失うテレサ。獄中で知りあったパトリシアとともにある物を手に入れ、それを元手に運び屋に転身。ハイテクを駆使して麻薬ビジネスのモデルを打ち立てて行きます。やがて大富豪となるのですが、12年前の恋人の死に関する事実を知り、再び故郷へ戻り、戦いに身を投じるのです。
テレサの強さと冷静さが語られる一方で、何かを手にしてはまた失う彼女の人生と、その裏に潜む孤独と悲しみがひしひしと伝わってくるでしょう。常に緊張感が漂い、上下巻とも一気読みしてしまう作品です。
ある日公園のベンチで、54年ぶりに幼馴染と再会をしたマックス。しかし友人は、仕事も財産も失って変わり果てた姿になっていました。
そこでマックスは、祖父から聞いた「魅惑の森」の話を語りはじめます。
黒騎士ノットと白騎士のシドは、宮廷魔術師の命令で、今日から7日後に生えるという幸運のクローバーを探しに「魅惑の森」へ行きます。しかし森の住民たちは、そんなものはここにはないと言うのです。さて2人はどんな行動をとるのでしょうか。
- 著者
- アレックス・ロビラ フェルナンド・トリアス・デ・ペス
- 出版日
- 2004-06-22
2004年に刊行された、アレックス・ロビラとフェルナンド・トリアス・デ・べスの作品。ファンタジー小説のようでいて哲学を教えてくれるバイブルのようでもあり、経済学者である作者2人のビジネスの実践ノウハウを学ぶ教科書にもなり得る一冊です。
対照的な2人が幸せのクローバーを探す物語が教えてくれるのは、幸福を掴むためには「下ごしらえ」が必要だということ。運と幸運は異なるもので、幸運を手に入れるためには努力や勉強が大切だということがわかるでしょう。
作中のセリフは明快でわかりやすく、小学校高学年から読める内容です。なんと50ヶ国17言語で出版されているそうで、シンプルながらも日常ではつい忘れがちになってしまうことを説いてくれるので、プレゼントにもおすすめです。
時は第二次世界大戦中のドイツ。主人公のディタは14歳の少女ですが、ナチス政権下でアウシュヴィッツ強制収容所入れられてしまいました。
ある日彼女は、秘密の図書館の図書係に任命されます。ナチスから本の所持を禁じられていた彼らですが、実は8冊の本を必死に隠しもっていたのです。
- 著者
- アントニオ G イトゥルベ
- 出版日
- 2016-07-05
2012年に刊行された、スペインのジャーナリスト、アントニオ・G・イトゥルベの作品。実話をもとにしていて、ディタにもモデルの女性がいるそうです。
ディタの任務は、もしもナチスに見つかれば死に直結する危険なもの。それでも彼女がボロボロの本を守り続けたのは、本自体が、暗い絶望のなかに灯る希望の光だったからでしょう。
まさに生死のはざまともいえるアウシュヴィッツ強制収容所で、本が与えてくれる力とは。ユダヤ人たちのまっすぐで力強い気持ちと、人間らしく生きることの尊さ、そしてすべてを奪う戦争の悲惨さを考えさせられる一冊です。
スペイン系アメリカ人の口承文芸研究者アウレリオ・エスピノーサが集めた280ものスペイン民話から、選りすぐりの82編が翻訳された作品です。
冒頭から、キスしたことをバラされた娘が相手の紳士のお尻に大きな蕪を突っ込む……という話が収録されています。特徴あるストーリーが多く、次から次へと読めるでしょう。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の原話となった「聖女カタリーナ」も読むことができます。
- 著者
- 出版日
- 1989-12-18
謎かけや笑い話、教訓など、ジャンル別に7章に分かれています。どれも短くて読みやすく、それぞれの話の終わりに「コロリン・コロラド、この話は終わった」という決まり文句がついているのが特徴です。
日本の昔ばなし同様に、残酷な結末を迎える話もあります。ブラックユーモアが効いていて、昔のスペインの人々の価値観や、あっけらかんとした思考に驚くかもしれません。
地方の方言がそのまま表記されているので、学術的にも価値のある民話集なのだそう。スペイン文学に興味がわいた方は、ぜひ1度読んでみてください。