西加奈子のおすすめ小説5選!本屋さんに愛される作家の魅力とは?

更新:2021.12.11

若き直木賞作家。西加奈子。独特の感性と世界観、言葉使い、展開で心に響く作品を生み出しています。 そんな西加奈子の作品のおすすめを5作ご紹介します。

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起伏のある感受性に満ちたきらきら空間

著者
西 加奈子
出版日
2007-06-06

スナック勤務の26歳の「あたし」と、腹に俺の国の地図とやらを彫っている年下のダメ系学生風間と、亀のバタの脱力しそうな同棲生活。そから出た「あたし」はひとりで長野の森にいて……。

何気ない毎日の積み重ねのきらめきと、「あたし」と彼の距離感がなかなか面白いのです。恋をして、自分を見つめ直すストーリーとでもいいましょうか。テンポよく生きる希望らしきものを見出していくのですが、行き急ぎじみた香りもあります。「あたし」が逃げずに生きていこうとする決意はとても爽やかでした。

ただ、「あたし」の雑な生き方や言動に首を傾げる部分はあるかもしれませんが、装丁とのバランスも含めて、きらきらした感覚小説として読んでほしいなと思います。

動物や虫の声を聞く妻と、背中に鳥の刺青を持つ夫

著者
西 加奈子
出版日
2008-03-06

夫・無辜歩(むこ・あゆむ)、妻・妻利愛子(つまり・あいこ)。「ムコさん」「ツマ」と呼び合う若夫婦が田舎暮らしをはじめました。背中に大きな鳥の刺青がある売れない小説家で介護施設職員のムコは、明るくて、人間以外の生き物の声が聞こえてしまう不思議な力を持つツマをやさしく見守っているのですが、ある手紙が届いたことで、ムコはツマを残して東京へ向かってしまい……。

スローに進む物語がムコさんの「東京行き」のあたりから大きく動きます。猛スピードです。

田舎に移住した若い夫婦の日常や心の動きを丁寧に描いていますほのぼのもしますが、同時に不条理なものも含めて、鋭く心を刺してくるものもあります。

一見幸せそうなのに、お互いを失うことを恐れていて、ほんとうの本音でぶつかり合おうとしていない関係。ムコと真正面から愛し合うことが出来るようになったら、ツマは人間以外のものの声も聞こえなくなっていくのですから、この特殊能力すら、相手を失いたくないという気持ちの表れなのかもしれないなぁと思えました。

誰かと支え合う大切さと優しさ、そして不思議に溢れた一作です。ぜひ手にとってみませんか?

こんな寂しさはどう受け止めたらいいんだろう

著者
西 加奈子
出版日
2009-12-09

織田作之助賞大賞受賞作です。

通天閣がすぐ近くに見えるワンルームでひっそりと暮らしている40代なかばの中年男は、工場で毎日単純労働をして、仕事が終わればいつもの中華店で塩焼きそばを食べ、風呂に入って眠るだけの日々を過ごしていました。

20代の後半の女は、映像作家になるためニューヨークに行っている恋人の帰りを待ちながら、不安で寂しく暮らし、夜のスナックで働いています。

そんなふたりの姿が淡々と交わることなく描かれていきますが、やる気のないふたりが生きる意味を見出したあたりからぐんと面白くなるのです。そのあたりのギアチェンジが上手い作家だなあと感心します。

きっとラストのふたりの一瞬の交錯に、「うわあ、やられた!」と思いってしまうことでしょう。

大阪を愛する西加奈子の真骨頂、ぜひお楽しみくださいね。

「共感」ではなく「共有」できる物語

著者
西 加奈子
出版日
2015-09-07

河合隼雄物語賞受賞作品です。

恋愛も友情も味わうことなく生き、真っ暗な中で「ふくわらい」をすることを趣味にする編集者の鳴木戸定は、愛を語ってくる盲目の男性や、自分を表現することに必死なレスラーと出会い……。

幼いころ、紀行作家の父とともに過ごした旅先で、目を覆うような特異な体験をしたことがある彼女は、 世間と自分との間にある「壁」を強烈に意識するようになっていました。

そのため孤独を選んでいたのですが、ふたつの出会いを経て、世界は彼女が想っているよりも優しくて愛すべきものであると気づいていくのです。

同時にプロレス小説でもないのに、西加奈子のプロレスに対する愛情に圧倒されてしまいます。

しっくりこない部分も主人公のエキセントリックさも全部含めて、この作品のカラーとして感じてみてください。きっとふわっと優しい気持ちになれると思います。

西加奈子の最高傑作のひとつ

著者
西 加奈子
出版日
2014-10-29

直木賞受賞作品です。

1977年5月、父の海外赴任先あるイランで生まれた圷歩は、チャーミングな母や変わり者の姉とともに暮らしていました。イラン革命後、帰国して大阪でしばらく過ごした小学生の彼は、今度はエジプトでの生活がはじまることになります。人生に大きな影響を与えることになるだなんて思いもせずに……。

長い物語です。上下巻なのですが、上巻だけでは物語の幹が見えません。淡々と主人公の幼少時が描かれ、これはどこへ向かうんだろうと少し考えてしまうかも。でも、物語の幹が見えはじめてからは劇的に展開します。そこからが本領発揮です。

西はなんのプロットも立てずに、長いこの作品を書き上げたのらしいのですが、最初の一文が出ると、物語がぱーっと出てきたそうです。

また、エジプト教徒の少年・ヤコブが登場するのですが、彼と主人公の歩は、西加奈子が「ホモセクシャルかなと思われるのを意図して書いた」とインタビューで答えているほど、強い友情関係で描かれています。確かに、強い友情とは、恋愛感情と大差ないものなのかもしれないなと、この作品を読んでいると思えます。

長さに負けず、回顧録特有のちょこっとした違和感を通り過ぎてからの、この作品の本来の魅力を堪能することをおすすめします。


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直木賞も受賞し、一躍注目を浴びることになった女性作家・西加奈子。彼女の手がけた作品は小説の域を越えて、映画化や絵本化もされるほど多くの支持を集めています。その魅力とはいったい何なのでしょう。

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