恋愛ゲームのように、自分の好きなキャラと自分で選んでストーリーを選べる漫画があるって知っていますか?『彼は彼女に変わるので』は、気になる相手を自分で選んで読み進めることができる新感覚の漫画。 主人公の男子高校生・鹿山は、昼間は男の姿ですが、日が落ちると女の姿に変わってしまう呪いにかけられています。そんな鹿山は2人の同級生から迫られることに。中学からの同級生であり親友のインテリ男子と、高校一のモテ男でありイケメンなクラスメイト……読み方を変えるだけで、BL展開と王道恋愛展開の両方を楽しむことができるんです!
「これ読んどいて」と、編集者から突然『彼は彼女に変わるので』という漫画を渡されました。わたしは普段あまり漫画を読まないのですが、ライターたるもの、勧められたものはとりあえず実践してみます。
なぜアラサー男子の自分に少女漫画……?という疑問をなるべく取っ払い、読み進めました。
2020年3月現在、リリースされている全ての話を数十分で読破。スマホのアプリで読み始めたため、気づいたら自宅の最寄駅に。それくらい熱中してしまいました。
『彼が彼女に変わるので』の面白いところは、恋愛ゲームのように好きな相手を選んでストーリーを進められるところ。自分の選んだ読み進め方で、ストーリーが異なるという斬新な漫画です。
2020年3月現在、用意されているのは、「綾瀬ルート」「森ルート」「真相ルート」の3つ。「綾瀬ルート」と「森ルート」で、王道恋愛漫画とBL漫画が楽しめます。
本作は、ある設定がキーポイントになっています。主人公の鹿山は男子高校生ですが、日が沈むと女になるという呪いがかけられています。
わたしはこの設定に「すっ、すばらしい!」と思ってしまいました。性別を超えてお互いのことを思いやる気持ちも描かれているし、女としてクラスのイケメンに愛されるという王道展開も描かれることに。まさに一石二鳥。いろんな欲が満たされます。
しかしどこから読むべきか……というのも悩みどころ。そこで今回は「ルートを選ぶと、どんな違いがあるのか?」を編集部内で検証してみました!
まずは本作のあらすじと、登場人物を紹介します。
本作は、夜になると性別が変わってしまう呪いがかけられた男子高校生の主人公・鹿山を中心に描かれます。特異な体質がバレぬよう、幼なじみの千鶴以外とは極力接しない日々を送る彼は、学校では一匹狼状態。
ある日、学年一のモテ男・綾瀬と文化祭の看板作りを任されることに。そこから徐々に二人は仲良くなっていくのですが、綾瀬には呪いのことがバレてしまい……?
そしてそんな2人を睨み付けるのが同級生の森。彼は鹿山と同じ中学の同級生でした。呪いのことは話せていませんが、鹿山が唯一心から信頼できた相手。しかし、あることをきっかけに一切喋らない間柄に……。
そんなある日、女性の姿の鹿山は森に見つかってしまいます。「また会いたい」という森に、「夜ならいいよ」と、女の姿の鹿山は了承してしまうのでした。
と、ここまでは全員同じ物語。この先のルートを選ぶことで、ストーリーが異なるというのです。
それでは次に、登場人物を紹介します。
左のイケメンが主人公・鹿山。高身長で、端正な顔つきです。夜になると右のような感じになります...女より女っぽい!そして巨乳設定です。
そして、鹿山と恋仲になる学年一のモテ男・綾瀬です。「夜になると女になる」この秘密を知り、グイグイ距離を詰めてくる強引系男子。男からすると女からモテモテなのでねたまれるタイプですね。もちろん超イケメン。
もう一人が鹿山と中学から同級生の森です。成績優秀で運動神経バツグンという、10代の男がモテる要素を全て持っています。しかし、綾瀬よりはモテていない印象。クラスの女子からひっそりと人気があったりなかったり。ただ、身長が高く明らかにかっこいいです。
この3人を中心に物語が進んでいきます。
この企画を進めるにあたって、わたしは1〜4巻を全て読みました。だからこそ「この人とくっついてほしい!」という気持ちがあります。ただ、好きなストーリーだけを選んだ人は、どんな感想が出てくるのでしょうか。
それぞれ読み比べてもらうために、恋愛漫画が大好きな編集部メンバーに集まってもらいました。それぞれのルートだけだと、どんな意見が出るのか楽しみですね。ルートはこのように別れています。
今回は「どんな感想になるのか?」がメインですが、それぞれのルートで気になる部分をふせんに書いてもらい、脳内を観察することにしました。ふせんの色も、ルートごとに別れています。
準備が整ったところで、読み比べスタートです!
静まり返って真剣に読む3人。スマホアプリで読んでもらったため、とんでもなく静かでした。
ーー読み始めてから10分が経過。
序盤、森に対しての意見が多めの様子。クールなキャラな森は、女性読者から確かに人気がありそうです。
一方、鹿山に対しては厳しめのツッコミが多め。鹿山は途中から女っ気が強めに見えてくる展開もあるのです。中性的な顔立ちも相まって「男状態の鹿山なのに、もう女にしか見えん!」となります。まあかわいいので、そのまま読み進められます。
その後、読み始めて15分ほで「フッフッフッ」という声が聞こえてきました。
恋愛漫画のはず……なんの……笑い声だ……?
あとから聞いたら、こちらのシーンに胸を打たれていたそうです。
鹿山が男に戻るべく、森に積極的に動くシーン。無理やりなキスシーンは女性だけではなく、男性でもこんな場面には憧れを持つものです。
ーー読み始めてから20分が経過。
今のところ、綾瀬の意見がまったくありません。個人的には綾瀬が推しなのに。
と思っていた矢先、綾瀬の意見が登場!
「あやせのジト目よい!」という感想。イケメンの綾瀬が一番人気がありそう、と思っていたのですが、20代女子の間では落ち着いた森の方が魅力的に見えるのかもしれません。
ーー読み始めてから30分が経過。
綾瀬ルートを読んでいる女性から、「フッッッッフッッッ」とまた笑い声の漏れる音が!なるほど、後半にかけて興奮する要素があるんですね。
後半ですが、気になるのが「胸チラいいな したい。」という感想。感想というか……願望?胸チラの意見はここまでで2つあり、鹿山の女体は女性も憧れる魅力があるのでしょう。
旅先のお風呂に入っている途中で女になってしまう鹿山。綾瀬は呪いのことを知っていますが、固まってしまいます。
ちょこちょこドキッとさせるシーンがある本作。私も鹿山が男であると知っておきながら、入浴シーンは必要以上に時間をかけて読み込んでしまいました。
たくさんのふせんが貼られたところで、読了。3つのルートの感想を聞いてみましょう。それぞれのルートごとに、感想を箇条書きで書いています。(※すべて個人の感想です)
BL大好きメガネ好き女性が綾瀬ルートを読んだときの感想をまとめてみました。わたしのミスですが、メガネ好きなら綾瀬ではなく森ルートを読んでもらうべきでしたね。と反省しつつ、楽しんでくれたようです。
最初の綾瀬のクズさ加減から徐々にいいやつになっていく様が見て取れます。すべてのキャラがバランスよく描かれており、鹿山の取り合いのような絡みや、高校生らしいもどかしい恋愛模様が描かれているようです。
「森と綾瀬がくっつけ!」という思わぬ発想も出てくる展開です。
森ルートでは、綾瀬はただの友達止まりで、森と鹿山のBL感溢れるストーリーだったようです。そして綾瀬ルートを読んだ人に比べ、綾瀬の印象もあまり良くないのもポイント。まっすぐに森と鹿山を応援できるストーリーです。
またいい感じに進んだ森と鹿山に、男同士のからみ合いを期待したそうですが、若干不完全燃焼の様子。中学からの同級生で親友ということもあり、友情を守る方を選んだのかもしれませんね。お互いが大事だからこそ、踏み込みきれない……そんな尊さが魅力のストーリーになっています。
真相ルートは少し変わった感想が出ました。「恋愛漫画ではなく、呪いを解くための鹿山の成長ストーリー」という感想が出てきました。確かに、2〜3巻で綾瀬と森の恋愛部分が描かれるので、そこを飛ばして読むことで、まったく違ったストーリーになるのかもしれません。
そして鹿山・森・綾瀬と並んで登場したのが、鹿山の従姉妹である千鶴。彼女は鹿山に対して、小さな頃からお節介を焼いていました。どんな時でも助けてくれる千鶴。そこで真相ルートを読んだ女性は鹿山がみんなに愛されるようになっていくことに魅力を感じたようです。主人公が愛される漫画が好きな方におすすめです。
今回3人に3つのルートをそれぞれ読んでもらい、異なる感想を得ることができました。綾瀬ルートと森ルートの感想も面白いのですが、一番興味深いのは人によって異なる解釈になる真相ルート。
真相ルートでは、「呪いをとく」という部分がフォーカスされている構成になっています。それによって「主人公・鹿山の成長物語」という見方もでき、綾瀬と森の2人だけでなく、千鶴も恋愛対象として意識することができるのです。
感想をみんなに発表してもらったのですが、ところどころで「え?」や「うそ……違いますね」などの反応がありました。感想を言い合う瞬間も楽しめますので、ぜひ友人と一緒に読んでみるのもおすすめです。
1〜4巻を順番に読んでももちろん面白いのですが、まずはどちらかを選ぶ方が本作のよさを実感できるでしょう!そのあと、別のルートを読んでみるとまた違った楽しさを体験することができます。
- 著者
- 出版日
- 2018-01-12