文芸

「桶狭間の戦い」を描いた小説おすすめ5選!戦国時代でも人気の合戦!

更新:2020.12.3 作成:2020.4.19

天下統一を目指して各地の武将が戦いをくり広げた戦国時代。なかでも「桶狭間の戦い」は、勝利した織田信長が一気に領土を拡大し、戦国時代の転機になった戦いとして有名です。その裏には、一体どんなドラマがあったのでしょうか。この記事では、「桶狭間の戦い」をテーマにしたおすすめの小説を紹介していきます。

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「桶狭間の戦い」とは

戦国時代の1560年、現在の愛知県にあたる尾張国桶狭間で、織田信長と今川義元の争いがおこりました。これを「桶狭間の戦い」といいます。

織田家の弾正忠当主である織田信秀のもとに生まれた信長。弟の信行との相続争いに勝利し、父親の跡を継いで天下統一を目指しました。しかし当時は複数の武将が対立していて、尾張すら統一できていない状況です。

一方で今川義元は、現在の静岡県にあたる駿河で、今川家9代目当主のもとに生まれました。五男だったので当初は僧侶になるつもりで仏門に入っていましたが、兄たちが相次いで亡くなったため武将に。遠江や三河など周辺の領土を拡大していきます。

こうして織田家と今川家は領土をめぐりたびたび戦いをしていました。そんななか、家督争いで織田家の力が弱まっている間に、尾張の一部を義元が奪います。すると信長は、義元が休息をとっている桶狭間に急行。豪雨に乗じて少人数で奇襲攻撃を仕掛け、義元軍に勝利したのです。

「桶狭間の戦い」における秀吉の策略を描いた小説『空白の桶狭間』

本作の主人公は、後に豊臣秀吉の名で知られる木下藤吉郎という少年。「山の民」という民族の出身で、幼い頃から算学を学ばされていたため、数字や文章を覚えるのが得意でした。

織田信長がやっと尾張を支配した頃、駿河や遠江、三河を支配し膨大な兵力を持っていた今川義元は、次の標的を尾張に定めます。

信長に仕えていた藤吉郎は、戦いが始まる前に今川の軍力を偵察することになりました。まともに戦っては勝てないこと悟ると、短気な信長を相手に自身の戦略を披露するのです。

著者
廣, 加藤
出版日

2009年に刊行された加藤廣の作品。「桶狭間の戦い」における信長の勝利は、秀吉の考えた戦略によるものだという面白い視点で描かれています。

特に、秀吉の出自が「山の民」という民族だという設定が魅力的。敵陣に偵察に行き、生まれもった能力で相手の状況を記憶するのです。さらに、信長へ自身の戦略を披露する場面では算学が生かされ、読みごたえがあるでしょう。

「桶狭間の戦い」にて、どうやって信長軍が義元軍にばれずに奇襲攻撃を仕掛けることができたのか、という謎に答えを出してくれる作品。セリフも多く、初心者でも読みやすい時代小説です。

2人の武将の数奇な運命を描いた『桶狭間の勇士』

物語は、織田信長の軍勢が「桶狭間の戦い」に向けて士気を高めているところから始まります。

ともに信長に仕える毛利新介と服部小平太は、戦いのなかで今川義元の首を挙げる大手柄を成し遂げ、めでたく昇進することになりました。

しかし、新介が織田家の家督を継いだ信忠に仕える一方、小平太は「三方ヶ原の戦い」で失態を演じ、豊臣秀吉に仕えて復活の活路を見出します。「桶狭間の戦い」の後の2人は、数奇な運命を辿ることになり……。

著者
中村 彰彦
出版日

2003年に刊行された中村彰彦の作品。中村は『二つの山河』で「直木賞」も受賞した、時代小説を得意とする作家です。

1番盛り上がるであろう「桶狭間の戦い」をメインに据えるのではなく、その後の武士たちに焦点を当てた本作。歴史的に有名な武将ではなく、一部の人のみが知っている2人の武将をピックアップしているのも面白いでしょう。

臣下の目線だからこそわかる、信長や秀吉の天下統一までの道のりが克明に描かれていて、戦国時代の雰囲気を感じられる一冊です。

明智光秀を主人公にした「桶狭間の戦い」とは『桶狭間の四人 光秀の逆転』

いまだ誰も天下統一を成し遂げず、多くの武将たちが戦いに明け暮れている戦国時代。明智光秀は、武芸に優れ、教養も持ちあわせていましたが、人生の後半に突入しても仕える相手が決まっていませんでした。

そんな自分を変えようと、心機一転、近頃勢力を伸ばしている今川義元のもとで働いてみようと考えます。しかし義元のせいで怒っている織田信長と、そんな信長から義元に鞍替えしようとしている秀吉のせいで、織田軍として戦に駆り出されることになるのです。

さまざまな思惑が絡んだ「桶狭間の戦い」で、光秀はどんな答えを出すのでしょうか。

著者
鈴木 輝一郎
出版日

2017年に刊行された鈴木輝一郎の作品。戦国時代の有名な武将たちを描く「四人」シリーズの4作目です。

もしも「桶狭間の戦い」に明智光秀がいたら……という設定で進む物語。光秀を主人公に、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という個性的な4人が並びます。彼らは戦や政事に秀でた才能を持ちながら、全員クセのある性格をしていて、一筋縄ではいきません。

とにかく会話劇が面白く、まだ世に名前が知られる前の光秀や秀吉と、信長、家康のやり取りはユーモア抜群。時代小説ながらコメディ要素がたっぷりの一冊です。

今川義元の息子、氏真の優しさと苦悩が描かれた時代小説『氏真、寂たり』

広大な領土を所有する今川家にて、今川義元のもとに生まれた氏真。武芸や和歌に秀でている一方で、無駄な殺生を嫌っていました。

「桶狭間の戦い」によって義元を失った今川家では、跡継ぎ争いが勃発します。氏真も、本人の意思にかかわらず巻き込まれることに。裏切りと駆け引きが横行する乱世で、正しさを模索する氏真は何を思うのでしょうか。

著者
秋山香乃
出版日

2019年に刊行された秋山香乃の作品です。

かつて栄華を誇った今川義元の息子、今川氏真。彼に対しては、偉大な父親が亡くなった後に、人質として捕らえられていた徳川家康のもとでのんびりと過ごした無能者というイメージが強いのではないでしょうか。

本作では、そんな氏真の苦悩が描かれています。義元の息子として領地を守る意志はあり、跡継ぎとしての立場を守りたいとは思うものの、優しさゆえに裏切られる氏真。とても人間味があり、苦悩する姿に惹かれてしまうでしょう。

何度裏切られても、助けてくれる人が現れるのも、人柄のよさがうかがえます。氏真を支えた師の雪斎や妻の志寿など、彼をとりまく人物が丁寧に描かれているのも魅力的です。

「桶狭間の戦い」をテーマにしたアンソロジー『決戦!桶狭間』

「桶狭間の戦い」をテーマに、7人の作家が異なる人物を主人公に据えたアンソロジーです。

冲方丁の「覇舞謡」は、主人公の織田信長の覚悟を感じられる物語。「桶狭間の戦い」にいたるまでの経緯を細かく描いていて魅力的です。

富樫倫太郎の「わが気をつがんや」では今川氏真を金持ちの息子として表現し、師である雪斎は人質となっていた家康に教育を施しています。年の離れた2人のやりとりが微笑ましい物語です。

著者
["冲方 丁", "砂原 浩太朗", "矢野 隆", "富樫 倫太郎", "宮本 昌孝", "木下 昌輝", "花村 萬月"]
出版日

収録されているのは、冲方丁「覇舞謡」、砂原浩太朗「いのちがけ」、矢野隆「首ひとつ」、富樫倫太郎「わが気をつがんや」、宮本昌孝「非足の人」、木下昌輝「義元の首」、花村萬月「漸く、見えた」の7作品。

「桶狭間の戦い」自体を詳しく描いたものもあれば、信長と義元の駆け引きに注目したものもあり、さまざまな角度から読めるのが最大の魅力でしょう。花村萬月の「漸く、見えた」では、敗戦したはずの今川義元の首が物語を語るという異色の展開を楽しめます。

戦国時代の大逆転劇といわれた「桶狭間の戦い」の裏には、こんなエピソードがあったかもしれないと思わせてくれる一冊です。