「岩波少年文庫」で人気の本おすすめ6選!小学校低学年から読める名作たち

更新:2021.11.22

半世紀以上にわたり私たちを楽しませてくれている児童文学の叢書「岩波少年文庫」。石井桃子や吉野源三郎といった作家たちが日本の未来を担う子どもたちに向けて創刊に尽力したことをご存知の方も多いでしょう。今回は、小学生から楽しめるおすすめ本を紹介していきます。

ブックカルテ リンク

大人の心にも響く世界的名作を岩波少年文庫で読もう『モモ』

 

町はずれにある円形劇場に住み着いた、身寄りのない少女モモ。ボロボロの服を着て、髪の毛もボサボサですが、彼女に悩みを聞いてもらうといつの間にか解決するとして、街の人たちにとっては貴重な存在です。

しかしそんな街に、人間から「時間」を奪う灰色の男たちの魔の手が伸びていました。彼らに騙された住民は、無駄な時間を作るまいと、せかせかと余裕のない生活をするようになってしまったのです。

モモは、住民たちの時間を取り戻すために立ち上がります。灰色の男たちと対峙するなかで、時間を司るマイスター・ホラと出会い……。

著者
ミヒャエル・エンデ
出版日
2005-06-16

 

児童文学の第一人者ミヒャエル・エンデの作品。1973年にドイツで刊行され、その後世界各国で翻訳出版されています。

モモが得意とする「傾聴」は、エンデが作中に刻んだメッセージのひとつ。住民たちはモモと会話をしながら、信じることや空想を広げること、そして「人間としての豊かさ」を取り戻していきます。

またマイスター・ホラは、人間はそれぞれ自分の時間をもっていて、その時間こそが人生そのものだとモモたちに説きました。現代社会にも通じる教えは、大人の読者にも一石を投じているようです。

少年と大人の絆に心温まるおすすめ児童書『飛ぶ教室』

 

物語の舞台は、第一世界大戦後のドイツ。寄宿学校で生活をするマルティンたちがクリスマス劇の稽古に励んでいると、敵対する実業学校の生徒たちに同級生が拉致されたという報せが入ります。

彼らは、良き理解者として慕う禁煙先生に相談しようと、許可を取らずに学校を飛び出しました。

同級生を救出した彼らは、門限を破った罰を受けるはず。ところが舎監の正義先生は、罰を軽くし、友情の大切さを語り始めます。少年たちは先生の話を聞いて、今度は失踪した先生の友人を探し始めることになり……。

著者
エーリヒ ケストナー
出版日
2006-10-17

 

ドイツの作家で詩人でもあるエーリッヒ・ケストナーの作品。1933年に刊行されました。ユダヤ人の虐待に反対し、児童文学しか書いてはいけないというナチスの迫害を受けながら生まれた傑作です。

見どころは、思春期真っただ中の多感な少年たちの心模様。学校間のトラブルや上級生との確執、クリスマス劇「飛ぶ教室」などを通して、異なる環境で育ってきた彼らの間に友情が芽生えていきます。

また、少年たちに心を寄せる大人たちからも目が離せません。彼らの声に耳を傾け、同じ目線に立ってアドバイスをする様子に、読者も励まされるでしょう。

リンドグレーンの名作が岩波少年文庫で楽しめる『やかまし村の子どもたち』

 

スウェーデンの田舎にある、家が3軒しかない「やかまし村」。子どもたちはたったの6人で、まるで本物の兄弟のように仲良しです。

夏は豊かな自然の恵みを享受して過ごし、学校が始まると何時間も歩いて通います。猛吹雪の日には立ち往生しそうになり、迎えに来た父親を見て安堵することも。

いたずらをしたり、秘密ごとを作ったり、お手伝いをしたり……小さな村のほのぼのとした日常がたくさん詰まった物語です。

著者
アストリッド・リンドグレーン
出版日
2005-06-16

 

スウェーデンの女流作家アストリッド・リンドグレーンの「やかまし村」シリーズ。1986年に刊行され、日本では2000年に翻訳出版されました。作者が幼少期を過ごしたスウェーデン南東部のスモーランド地方がモデルになっています。

テレビや電話がなくても、子どもたちは自分たちの遊びを次々と見つけます。大人たちはそんな彼らをゆったりと見守り、子どもたちを枠にはめることはありません。

大人と兄姉に囲まれる7歳のリーサの語りは、幼いながらも背伸びをしていて、ひとつひとつのエピソードをより華やかにしています。穏やかに見えて刺激的な村の暮らしを楽しんでみてください。

ファンタジーの最高傑作「ナルニア国物語」シリーズを岩波少年文庫で『ライオンと魔女』

 

戦時下にあるロンドンから逃れ、田舎の古い洋館に疎開してきた4人の兄弟。

屋敷にはタンスがひとつだけ置かれた部屋があり、気になった末っ子のルーシィが潜りこみました。すると驚くことに、タンスの奥には雪が降り積もる不思議な世界が広がっています。

妖精がいて、動物たちが言葉を話し、魔法がある国「ナルニア」は、白い魔女のせいで1年中冬の状態です。ルーシィたちは「ナルニアの言い伝え」にならい、創造主のライオンとともに、魔女との闘いに挑みます。

著者
C.S.ルイス
出版日
2000-06-16

 

世界三大ファンタジーのひとつ称される「ナルニア国物語」シリーズ。イギリスのC・S・ルイスの作品で、1950年に刊行されました。ルイスは信徒伝道師でもあり、作中には聖書の教えも込められています。

タンスの奥へと入り毛皮の外套が何着もぶらさがっている先に行くと、雪が降りしきる森に繋がっているという描写に、一気に惹きこまれてしまうはず。期待と不安が入り混じる緊張感は、終盤まで途切れることがありません。

ルイス作品の特徴は、人間の言葉を話す動物たちが登場するところ。ナルニア国でもたくさんの動物や妖精と出会います。ライオンのアスランはその象徴。神秘的で壮大なスケールの冒険を楽しめる一冊です。

「影」と向きあう主人公の成長から目が離せないおすすめ児童書『影との戦い』

 

島に住むゲドは、傲慢で短気な12歳の少年。母親を早くに亡くしています。

島に侵略者が現れた時、魔法を使ったことで素質を見いだされ、魔法使いオジオンの弟子となりました。ところがオジオンは呪文を教えるばかりで、なかなか魔法を使わせてくれません。不満を抱くゲドは島を移り、魔法学院に入学します。

魔法使いへの道を順調に歩むゲドでしたが、彼の傲慢さが裏目に出る事件が発生。死霊を解き放つ禁断の魔法を使ってしまい、瀕死の状態になったゲドを助けようとした学長が落命する事態になってしまいます。さらにこの時ゲドは、正体不明の「影」も呼び出してしまい……。

著者
アーシュラ・K. ル=グウィン
出版日
2009-01-16

 

アメリカの作家アーシュラ・K・ル=グウィンの作品。1968年に刊行された、こちらも世界三大ファンタジーのひとつです。

ゲドが犯した過ちは、同級生の挑発によるものでした。自らが呼び寄せた「影」に怯え続けたゲドは、オジオンのサポートをもらい、正面から向きあっていきます。

本作に出てくる「影」とは、誰にでもあるドロドロとした黒い感情。嫉妬や欲望と向きあい、感情をコントロールする術を身に着けるゲドの姿に、読者も心を打たれるでしょう。

ガンバたちの大冒険にドキドキが止まらない!岩波少年文庫のおすすめ児童書『冒険者たち』

 

「夢見が島」では、穏やかに暮らしていたはずの島ネズミたちに、絶滅の危機が訪れていました。イタチのノロイ一族がやってきて、彼らを殺していたのです。

ドブネズミのガンバは、幼馴染に誘われて参加したネズミの集会で、命からがら町に辿り着いた島ネズミと出会います。そして15匹の仲間とともに、残されたネズミたちを救おうと島に向かうことになるのです。

しかしガンバたちを待ち受けていたのは、残酷なイタチたちとの壮絶な戦いで……。

著者
["斎藤 惇夫", "薮内 正幸"]
出版日

 

1972年に刊行された、斎藤惇夫の作品。日本を代表する長編ファンタジーです。

本作の見どころは、圧倒的な力の差があるイタチに向かうガンバたちの奮闘でしょう。ノロイ一族はボスの統率力が強く、狡猾な集団。いかにして活路を見出し、攻略するのか、手に汗握る展開が続きます。

ガンバのリーダーシップや、ともに戦う癖のある仲間たちの雄姿も、読者を惹きつけるでしょう。初恋、友情、仲間との別れなど、何度読んでも楽しめる不朽の名作です。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る