立川談四楼のおすすめ小説5選!きっと落語が、もっともっと好きになる。

更新:2021.12.14

落語家でもあり、作家でもある立川談四楼。彼は、真打(しんうち: 落語家、講釈師の身分のひとつ)昇進試験時に起きた"とある騒動"から、冷静に自分がいる場所を見つめるようになります。今回は、落語通りの洒脱さをが魅力の、立川談四楼のおすすめ作品を5作、ご紹介します。

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落語家だからこそ見える世界を描く、立川談四楼とは?

落語家で作家の立川談四楼は1951年、群馬県邑楽郡邑楽町で生まれます。群馬県立太田高等学校を卒業後、立川談志に入門します。1975年、二つ目に昇進した際に現在の談四楼となりました。

その後、彼と兄弟子の小談志が真打に昇進できなかったことで、師匠談志が落語協会を離れます。談志は落語立川流を結成し、談四楼は真打に昇進しました。

TVやラジオ出演、新聞、雑誌での連載、さらに下北沢・北沢八幡宮での独演会、「話し方今教室」などを開催しています。

基本的にTwitterは正午前に更新します。2ちゃんねるが嫌いだそうです。

ボクシングの大ファンでもあります。

立川談四楼の成長、そして落語協会の闇

故・立川談志が落語協会を離れ、弟子たちを引き連れ「立川流」を立ち上げるきっかけとなった、1983年のある事件を踏まえて書かれた小説『シャレのち曇り』。

著者
立川 談四楼
出版日
2016-05-06

1983年の落語協会真打昇進試験の受験者は、林家源平、柳家小里ん、林家種平、林家上蔵 (現3代目桂藤兵衛)、蝶花楼花蝶(現7代目蝶花楼馬楽)、林家正雀、古今亭八朝、林家らぶ平、立川談四楼、立川小談志(4代目喜久亭寿楽)の10名。当時理事の一人であった談志の不在中に、一門の談四楼と小談志が不合格になり、力量が劣ると思われる林家源平が合格します。談志は異議を唱え、脱会。立川流落語会が創設されることとなったのです。

談四楼は当事者ですから、物語の展開にはリアリティがあります。入門、師匠である談志の描写、兄弟子たち、好敵手、恋や売れない悩み。それらを乗り越えて挑む、真打試験。落語が好きでもそうではなくても、舞台裏を覗ける展開にわくわくします。

まるで高座を聞いているようなテンポ良い文章は軽やかで読みやすく、暴君だけど憎めない師匠や、彼に振り回される弟子たちが魅力的です。落語を抜きにしても充分楽しめる小説ですよ。

ボクシングが強い、落語家?

『ファイティング寿限無』の主人公は、とにかく目立て、目立てば売れる、という師匠の言葉を信じ、なぜかボクシングをはじめる落語家二つ目の橘家小龍。素質があったのか、トントン拍子に強くなり、チャンピオンへの階段を登っていき……。

著者
立川 談四楼
出版日
2016-07-13


くすっと笑える爽やかな青春小説。大きな山も谷もなく、ただひたすらまっすぐに前に進む感じは、潔くてかっこいいのです。

登場人物のキャラクターも立っています。主人公の小龍はいつも明るくて、トレーナーと兄弟子の支えもいい……いい人ばかりが登場し、嫌だと思うことがほとんどありません。現実にはないシチュエーションですが、小説だし青春だし幸せだし、いっか!と思える作品です。

一生に一度くらいはこんな風にひたむきに生きたいなんて思いながら、小龍のことを応援したくなってしまうことでしょう。

立川談四楼の傑作!

ひどい言葉を言われてもひどい目に合わされても、そばにいたいと思うあたりから、師匠に対する痛いほどの敬愛の念を感じられる『談志が死んだ』。

著者
立川 談四楼
出版日
2015-10-28


そもそも本作で描かれる立川談志とは、どんな人物なのでしょう。破天荒な行動や、江戸っ子のべらんめぇ口調で毒舌のイメージが強いかもしれません。彼の落語家としての評価は高く、5代目三遊亭圓楽、3代目古今亭志ん朝、5代目春風亭柳朝(柳朝没後は8代目橘家圓蔵)と共に「江戸落語若手四天王」と呼ばれるほどでした。古典も創作もこなし、理論と感覚の両面から落語に挑んでいたそうです。好き嫌いはともかく、彼の落語を聞いた人は口をそろえて天才、名人と認めたといいます。

そんな天才師匠が言った「破門」の言葉は、彼を敬愛し続ける弟子たちにとって、どれほどの衝撃だったのでしょう。それがたとえ病ゆえに発された「正気を失った」暴言だったとしても。

正気を失っても師匠なのかという部分が、えぐるように描かれます。重たくて息苦しいテーマですが、相変わらず談四楼の文章はリズミカルで読みやすいのです。それが逆に哀切を極めているのかもしれません。

立川談四楼の企みに、気づけるか

幼いころの弟の死、師匠である談志との出会い、弟子入り、真打試験に落ちて師匠に「でかした」と激励された話、落語協会脱会の大騒動などを描く『一回こっくり』。

著者
立川 談四楼
出版日


「生」と「死」という重たいテーマなのに、創作落語の内容とうまく絡ませていく構成の巧みさや文章のリズムのよさで、すらすらと読めてしまう不思議さがありました。「魅せる」「読ませる」という点において、ほんとうにうまい人だと思います。さすが言葉を仕事にしている方です。

大切な人を失っても、残された人間たちは生きていかねばなりません。どんなにつらくても時間は過ぎていく……と自分の中に諦めのような決心がついたとき、それが創作落語「一回こっくり」に結実していきます。

「一回こっくり」は、人情噺に幽霊が出てくる変わり種です。談四楼の経験から創作したものなのだとか。

読後には、談四楼の声で「一回こっくり」を聴いてみたいなと心の底から感じると思います。

立川談四楼初の時代小説

貧乏長屋を舞台に、富くじで千両が当たった博打好きの左官・次郎兵衛が巻き起こすドタバタ劇『長屋の富』。状況や情景、感情などを表現する地の文がまったくない、全篇会話で描かれる作品です。

著者
立川 談四楼
出版日


江戸弁での会話のテンポが軽妙です。落語に詳しくなくても聞いたことがあるような噺のくだりが随所に登場し、かなり楽しめる展開です。落語に詳しい人ならさらに、にやにやしてしまうはず。

長屋の人たちは、「大家と言えば親も同然」と世話好きの奥さんだったりと、落語あるいは昔のホームドラマのような人物配置です。

台詞だけでぽんぽんと物語は進み、内容も重くありませんので、難しく考えずに楽しめる作品です。

落語同様に軽妙な語り愚痴で物語を紡ぐ、立川談四楼。本を読んだ後、彼の高座を観に行くのも素敵かもしれませんね。

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