アメリカの伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリクスの亡霊に取りつかれてしまった地味な高校教師が夢だったバンド活動をおこなっていくという漫画で、熱くて泣けて、しかも面白い漫画となっています。 M-1グランプリにも出場した長田悠幸が作画し、ライブを実際に見に行ったようなインパクトのある漫画にしたいという町田一八が原作という形で、2人がタッグを組んだ作品です。 読んでみたい方は、スマホアプリで無料で読むことができます!
主人公の本田紫織(ほんだしおり)はとにかく地味で目立たない高校教師。自由奔放な兄と比べてただ平凡に生きてきた紫織ですが、昔はギターに夢中になったこともありました。兄が作った借金のために貧乏な暮らしを余儀なくされている家族とともに、仕方ないと諦めながら生きてきた紫織の前に、ある日ジミ・ヘンドリクスの亡霊が現れます。
最初は夢だと思っていた紫織ですが、「三年生を送る会」にまた現れたジミヘンの亡霊……。シオリの首にいつの間にかできていた穴にコードを刺すと、ジミヘンとシオリがなぜか融合、シオリは舞台の中央で演奏を始めたのです!
拍手を浴びて自分の夢を思い出すシオリ。それはバンドを組んで観客の前のステージに立つことでした。でもそこで知る衝撃の事実が……。ジミヘンと融合したシオリは1年以内にギターで伝説を作らなければ死んでしまうのです。
シオリは三菱学園高校の生徒たちとバンドを結成しますが、伝説を作り生き続けることができるのでしょうか?
本田紫織:この作品の主人公。進学校の三菱学園高校で英語の教師をしているか声が小さく、文字も小さく、生徒から名前も覚えてもらないような地味な先生。兄の影響で高校時代にはバンドを組んでいましたが、兄が借金をして蒸発。以降は、ギターの演奏をすることもなくなります。
ジミヘンにとり憑かれてから音楽への気持ちが再燃し、軽音部を立ち上げます。顧問を務めながらバンドではギターを担当。作詞作曲もします。
ジミ・ヘンドリクス:27歳で亡くなった伝説のギタリスト。契約者に音楽の超絶技法を授ける「CROSS ROAD」の契約をするはずが、なぜか紫織の元に現れ憑依します。紫織の首のジャックにギターを接続することで紫織の体を使ってギターを演奏することができるようになるのです。
- 著者
- 長田悠幸×町田一八
- 出版日
青島すばる(あおしますばる):紫織と同じ高校の吹奏楽部の顧問。目立つルックスと可愛い性格で他の先生からも生徒からも人気がある先生。でも本来は音楽に対しては並々ならぬ情熱を持ち、感情が溢れすぎると関西弁で喋り、また腹黒い一面も。音楽に対して覚悟のない者は容赦しません。
SHIORI EXPERIENCEのメンバー:井鈴茜(サックス担当)、台場初範(ドラム)、川崎忍(キーボード)、目黒五月(ボーカル)、八王子茂(ベース)、光岡音々(トランペット)
それぞれが挫折を経験しながらも音楽に対して強い情熱を持っており、シオリとともにバンド活動を展開していきます。
「シオリ エクスペリエンス」は読んだ人全ての心を震わせるくらいの熱さを持った漫画です。シオリのバンドメンバーや同じ高校の吹奏楽部のメンバー、全員が音楽に対して真剣で、その思いをぶつけあいながら成長していきます。
それぞれの気持ちや行動が丁寧に描かれており、苦悩を抱えながらひたすらに練習する姿には思わず感情移入してしまい、青春時代の熱い気持ちを思い出して感動、涙したという声も。
その熱量は実際の曲に合わせて描かれることもあり、歌の選曲とともに感動を与えてくれます。ブルーハーツの「TRAIN TRAIN」の歌詞に合わせて物語が進行していくなど、過去に抱いていた夢を思い出し、勇気をもらえる作品です。
- 著者
- 長田悠幸×町田一八
- 出版日
- 2015-10-24
表紙からもわかるように、ジミヘンの一風変わったギターの持ち方までも忠実に再現している本作。
シオリがバンドで奏でるのはロック。そのロックを漫画で表現するために、「シオリ エクスペリエンス」では擬音だけでなく爆発や破壊、竜巻の描写をすることで音を表現しています。
ドラムの奏でる音の描写もドラムの配置に合わせて擬音を配置したり、1つの擬音を2種類重ねることで重層感を表現したり、ライブの音まで聞こえてくるような描写となっています。音から感じる威圧感のような圧力や、音楽の影響力まで伝わってくる描写は一気に世界観に引き込まれてしまいます。
「シオリ エクスペリエンス」は主人公とジミヘンの亡霊が出会うことで物語が始まっていきますが、作品中には他にもカート・コバーンなど実在の人物が複数登場します。ジミヘンとカート・コバーンが同じ舞台に立つなんて、ロックファンにとっては夢の世界!
そしてこの作品の題材ともなっているのが27クラブと言われるもの。
有名なミュージシャンが27歳で数多く亡くなっていることを指します。シオリが伝説を作らなければいけないのも27歳が終わる日まで。紫織の兄も27歳までに伝説を作ろうと奮闘し、ロックファンならハマってしまう設定となっています。
「シオリ エクスペリエンス」12巻では、Black Busとシオエクのどちらか1チームがタピオカズと一緒にツアーを回るために勝負します。
以前、Black Busとの実力の差を感じたことで解散の危機にまで追い込まれたこともあるシオエクが今回こそはとリベンジを果たそうと演奏をおこないます。
Black Busの乗り越えた過去が描かれ感情移入するものの、シオリの余命も短くなっていきますし、どちらも選ばれてほしいという感覚に陥る12巻となっていました。
- 著者
- 長田悠幸×町田一八
- 出版日
- 2019-08-24
13巻では、シオエクのその演奏シーンが丁寧に描かれていきます。オープニングから意表をつく演出をした後は、30分という時間をまさに命がけで演奏します。
ジミヘンも観客をも魅了してしまうほど実力を出しきるシオエクの面々。セリフがほとんどない13巻ですが、その分バンドシーンがリアリティたっぷりに描かれ、誰もが知っている曲も選曲されているので読んでいる方も頭の中で音楽を奏でながら読むことができます。
クライマックスのシーンでは、観客一人ひとりにジャックが刺さるという描写が見所です。まさに作者が目指したライブを実際見ているような感覚になります。