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宝塚を描いた小説と、魅力がわかる本6選!歌劇団を舞台にした悲喜こもごも

更新:2020.11.29 作成:2020.4.30

未婚の女性のみで構成された「宝塚歌劇団」。トップスター、ファンクラブ……そこには嫉妬や羨望などさまざまなドラマが詰まっています。この記事では、宝塚を題材にした小説と、魅力がわかるおすすめの本をご紹介。夢の世界の舞台裏を少しだけ覗いてみてください。

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宝塚を支える男たちの仕事を描いたおすすめ小説『ヅカメン!』

阪急電鉄に定年まで勤めた鉄道マンの多々良源蔵。定年後は嘱託の駅員として働くつもりでしたが、会社に打診された勤務先はなんと「宝塚歌劇団」でした。

彼のほかにも、長年本社の人事部に勤めていた鍋島や、宝塚ファミリーランドに就職したのに歌劇団の大道具へ配属された原口など、個性豊かな仲間たちが集まります。どうやらみな、ホテルマンや元百貨店員といった畑違いのところからやってきているようです。

はじめは、興味のない宝塚の仕事をすることを不満に思っていた多々良たちでしたが……。

著者
宮津大蔵
出版日

子ども向けミステリーを得意とする宮津大蔵の作品。2014年に刊行されました。

宝塚歌劇団は言わずと知れた「女の園」ですが、本作のメインは宝塚を支える男性たち。しかもみな妙齢です。彼らがさまざまなかたちで宝塚に関わる6つのストーリーが描かれていきます。

戸惑いながらも与えられた仕事にまい進し、宝塚の生徒たちと家族や親友のような絆を育んでいく様子が魅力的。入団から卒業までを見守り、支えることで、自身の価値を発見していくのです。自分が置かれた状況で努力し、花を咲かせる姿は、誰の心にも響くでしょう。

また当初は何の興味がなかった多々良たちが、いつの間にか魅了されていく様子は宝塚ファンが読んでも楽しめるもの。なかなか明かされることのない内部事情を知れるのも嬉しいでしょう。

若く美しい女性の青春を描いた小説『野ばら』

宝塚で娘役をしている千花は、歌舞伎界というブランドに惹かれ、稽古もそっちのけで梨園の御曹司との恋に夢中になっていました。

一方で千花の親友で雑誌編集者をしている萌は、親子ほど年の離れた評論家と不倫関係になりますが、彼は末期がんに苦しむ妻の看病をしているためなかなか自分のもとに来てくれません。

名門のお嬢様学校を出た美人で、現実離れした華やかな世界に身を置いている2人。しかし挫折や裏切りを経験し、彼女たちの幸せは徐々に陰りを見せはじめ……。

著者
林 真理子
出版日
2007-01-10

2004年に刊行された林真理子の作品。若くて美しい2人の女性の、甘くて苦い恋愛が描かれています。

千花も萌も思い通りにならない恋に悩んではいますが、それでも「自分たちはずっと幸せなまま生きていける気がする」と思っているのがポイント。出自の良さと美貌を兼ね備え、より上を目指す姿はあさましくもありますが、強い生命力を感じられるのです。

また千花のモデルは、作者と懇意の実在するタカラジェンヌだそう。作中のセリフも、宝塚ファンであればつい頷いてしまうような表現が多く、楽しめるでしょう。

男役の生き様がかっこいい小説『男役』

50年前、男役のトップに就任した2日後に舞台事故で亡くなった扇乙矢。それからというもの、大劇場の奈落に棲む伝説の亡霊「ファントムさん」として、生徒たちに語り継がれていました。

入団3年目の新人、永遠ひかるは、憧れの男役トップスター如月すみれの退団公演にて、新人公演の主役に大抜擢。彼女の祖母は、扇乙矢の相手役を務めていたのです。プレッシャーでつぶされそうになるひかる。舞台での失敗をファントムさんに助けてもらい、その存在を感じはじめます。

著者
中山 可穂
出版日

2015年に刊行された中山可穂の作品。「宝塚版オペラ座の怪人」と呼ばれています。中山は戯曲を執筆した経験もあり、豊富な語彙で宝塚の世界観を巧みに表現。リスペクトを感じられるでしょう。

男役とは、公演の全責任を担う組唯一の存在でありながら、どんなに極めても退団後にその芸が役に立つことはありません。トップスターたちは、そんな悲哀を背負いながら、気高く、理想の男性を演じていきます。

華やかで美しいその生き方に、きっと夢中になってしまうはず。また大舞台の裏には、ファントムさんのようにステージを見守る見えない力があるのかもしれないと思わせてくれる、夢が膨らむ作品です。

宝塚ファンクラブで出会った3人の人生を描いた小説『スペードの3』

小学生の頃から人の上に立つことが好きだった美知代。元宝塚女優香北つかさのファンクラブ「ファミリア」を取り仕切り、会員たちの規律を正すことで優越感を満たしていました。

ところが、小学校時代の同級生アキが「ファミリア」に加入し、彼女の立場が危うくなります。アキはとにかく美しく、つかさにも声をかけられ、あっという間に注目を集める存在になったのです。

アキの登場によって忘れていた過去が呼び戻され、美知代は追い詰められていき……。

著者
朝井 リョウ
出版日
2017-04-14

2014年に刊行された朝井リョウの作品。アキの登場で動揺する美知代を描いた「スペードの3」、小学生の頃美知代にいじめられていたむつ美の中学時代を描いた「ハートの2」、かつて宝塚でトップスターだったつかさの嫉妬と葛藤を描いた「ダイヤのエース」という3つの物語が収録されています。

人間関係のなかで沸き起こる、優越感や劣等感がこれでもかと描かれていて、読んでいて胸がヒリヒリしてしまう人も多いはず。タイプの異なる女性の心情をここまで適格に表現できる、作者の力量に脱帽です。

それぞれのタイトルは、トランプゲーム「大富豪」になぞらえたもの。自分で革命を起こすのか、誰かが革命を起こすのを待つのか……彼女たちの結末は。

謎に包まれた宝塚のファンクラブを解説『宝塚ファンの社会学―スターは劇場の外で作られる』

他のアイドルや俳優のファンクラブとは一線を画す、宝塚のファンクラブ。劇場の前でお揃いの服を着て整列し、入り待ちや出待ちをする姿を見たことがある人もいるかもしれません。

タカラジェンヌのマネジメント、チケットさばきなども担っているのですが、すべて無償だそう。その謎に満ちた組織の実情をわかりやすく解説していきます。

著者
宮本 直美
出版日

2011年に刊行された、社会学者の宮本直美の作品です。作者自身もタカラジェンヌの個人ファンクラブに所属した経験があるそう。本書ではファンたちの動向を、批判するでも礼賛するでもなく、冷静に取材し、分析しています。

傍から見ると、盲目的で自己犠牲に満ちたようにも思えるファンクラブ。実は集団心理にもとづいた一斉行動がとられていて、極めて合理的に秩序を形成していることがわかり、興味深いでしょう。

ファン同士の駆け引きや、ファンがスターをつくり出すという構造を知ると、タカラジェンヌとファンクラブは絶妙なバランスをとって関係を築いていると実感できます。宝塚ファンでなくても、社会学の入門としても楽しめる一冊です。

宝塚経営の裏側を解説したビジネス書『元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略』

宝塚歌劇団が、浮き沈みの激しいエンターテインメントの世界で100年以上も生き延びている理由は何なのでしょうか。

団体の基礎、経営戦略などを解説し、その強みと弱みを紐解いていきます。

著者
森下 信雄
出版日

2015年に刊行された森下信雄の作品です。作者は、阪急電鉄の運転士から宝塚歌劇団に入り、組のプロデューサーや現場責任者を経験した後に、大劇場の総支配人を務めた人物。事業戦略の裏側を解説していきます。

なかなか知りえない内情が詳しく記されているので、宝塚ファンはそれだけでも嬉しいはず。トップスターを選ぶ第一条件は、歌やダンス、演技の能力だけでなく「集客力」が重要だということ、チケットやグッズの売り上げを重視していることなど、シビアな実情を知ることができます。

また素人の神格化という戦略をとったアイドルグループ「AKB48」と比較し、論考しているのも興味深いでしょう。ひとつの企業の経営戦略を知れる、ビジネス書としても面白い一冊です。