五大文芸誌は何がおすすめ?すばるや新潮などの魅力、廃刊になった雑誌も紹介!

更新:2021.11.22

有名作家の最新の作品をいち早く読めるほか、まだ世に知られていない作家を発掘することもできる「文芸誌」。毎月チェックしている文学好きの人もいる一方で、読書は好きだけど文芸誌には手をつけていないという人も多いのではないでしょうか。この記事では、「五大文芸誌」といわれる大手5つの魅力を紹介していきます。

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そもそも文芸誌とは

 

「文芸誌」とは、小説や詩歌、随筆などの作品を中心に、書評や論評なども掲載している月刊誌や季刊誌です。

日本では当初、同人の間で刊行されていて、1904年に新潮社の「新潮」が初めて商業的に発売されたといわれています。それまで小説を掲載する媒体は新聞が中心でしたが、ここからは文芸誌を主な舞台にしていくことになりました。発行人も出版社へと移行していきます。

さまざまな種類がある文芸誌のなかでも、「文學界」「新潮」「群像」「すばる」「文藝」は「五大文芸誌」といわれ、それぞれ公募の新人賞を主催し、小説家になるための登竜門となっています。

作家志望の人や出版関係者が読むような難しい雑誌、という印象があるかもしれませんが、1度読んでみると、最新の作品をいち早く読むことができたり、まだ見ぬ作家の魅力を知れたりと、その楽しさにはまってしまうかもしれません。

 

文芸誌「文學界」のおすすめポイントと特徴を紹介!

 

文芸春秋が発行する月刊誌です。もともとは1933年に文化公論社が創刊したもので、当時は小林秀雄、林房雄、川端康成など8人の同人が編集を担当していました。

1938年に石川淳の「マルスの歌」を掲載したところ、反戦意識を高めるとみなされて発禁に。作者と編集主任が罰金を課せられます。これを文藝春秋を創業した菊池寛が肩代わりしたことから、「文學界」の発行を文藝春秋が担うようになりました。

小説、戯曲、文学、映画、哲学、評論など幅広い構成で読者の支持を集め、社会的影響力が大きいです。五大文芸誌のなかでも権威ある雑誌だといえるでしょう。

純文学作家の登竜門ともいえる「文學界新人賞」を主宰しています。そのほか、「芥川賞」受賞作は「文學界」に掲載されたものが圧倒的に多いのも特徴。どの作品が受賞するのか予想しながら読むのも楽しいでしょう。初めて文芸誌を読む人にも、ベテランの人にもおすすめできます。

 

文芸誌「新潮」のおすすめポイントと特徴を紹介!

 

新潮社が発行している月刊文芸誌。世界一古い商業雑誌といわれています。 

前身は、1896年創刊の「新聲」。若山牧水、生田長江らを輩出し、当時青年投稿誌として一大勢力を築いていました。しかし経営難のため佐藤義亮がが編集を離れ、1904年に新たに「新潮」を立ち上げています。それまで新聞が主な発表媒体だった日本文学が、「新潮」の登場によって雑誌に移行していくことになりました。

「新潮新人賞」を主催していて、「川端康成文学賞」と「三島由紀夫賞」「萩原朔太郎賞」の発表もおこなっています。

音楽や映画、絵画、建築など幅広い領域のアーティストから寄稿を受け付け、新人からベテラン作家まで多様な作家の作品を掲載しているのが特徴です。また詩にもっとも長く関心を寄せてきた雑誌でもあります。

これまで太宰治の『斜陽』や三島由紀夫の『金閣寺』、川端康成の『眠れる美女』などを掲載してきました。またカミュの『異邦人』やカフカの『変身』などをはじめとする世界文学も紹介しています。

創刊以来、党派に偏らない良識ある編集方針を貫き、日本の近現代文学で大きな位置を占める文芸誌だといえるでしょう。

 

文芸誌「群像」のおすすめポイントと特徴を紹介!

 

終戦後の1946年に講談社が創刊した月刊誌。同社初の純文学雑誌として知られています。

戦後の文学評論が盛んな時代にあえて小説重視の方針をとり、それまで大衆雑誌として栄えていた講談社のイメージを大きく覆しました。三島由紀夫『禁色』や、大江健三郎の『万延元年のフットボール』など、第二次世界大戦後に登場した作家の力作を熱心に掲載します。

3人の作家が執筆する「創作合評」や、匿名時評の「侃侃諤諤」など名物コーナーが特徴。実験的な手法を用いる傾向があり、先鋭的でありながら流行になびかない編集方針が魅力です。

主催している「群像新人文学賞」は、村上春樹や高橋源一郎などを世に送り出し、新進作家に道を拓いています。同賞には評論部門もあるため、批評家の発掘にも貢献しています。

 

文芸誌「すばる」のおすすめポイントと特徴を紹介!

 

1970年に集英社が創刊した文芸誌「すばる」。当時は季刊誌でしたが、1976年から隔月となり、1979年からは月刊誌になっています。

創刊号の執筆者には、井上靖や井伏鱒二などが名を連ね、石川淳や梅原猛の連載をメインにしていましたが、月刊誌になってからは若手作家も多く起用するようになりました。

小説を中心に、エッセイや評論、対談、文芸漫談などを掲載。批評家へのインタビューを掲載するなど、さまざまな知見を得られる構成です。

ちなみに「すばる」は純文学を担い、姉妹誌の「小説すばる」は大衆小説を担っていて、住み分けがされています。

新人賞の「すばる文学賞」を主催しているほか、本誌に掲載された金原ひとみの『蛇にピアス』、三木卓の『鶸』、田中慎弥の『共喰い』、古川真人の『背高泡立草』が「芥川賞」を受賞しています。

 

文芸誌「文藝」のおすすめポイントと特徴を紹介!

 

1933年に改造社が創刊した文芸誌「文藝」。小説や評論を中心に、音楽、美術評論などを掲載していましたが、文芸統制により一時廃刊。1944年から河出書房が引き継いで、第二次世界大戦中もほぼ唯一の文芸誌として文学の命脈を守りました。その後、1957年に休刊しましたが、1962年に復刊しています。

「文藝賞」を主催して若手の発掘にも貢献。受賞者には山田詠美、綿矢りさ、羽田圭介、町屋良平などがいます。

文学の「今」を発信、というコンセプトを掲げ、エンターテインメント性の高い作品を掲載しているのが特徴。自由で一風変わった作品を読むことができるでしょう。

 

廃刊になった文芸誌「海」「海燕」とは

 

文芸誌の売り上げは、ジャンルを問わず下降傾向にあるのが現状。廃刊になった文芸誌も多数存在します。

中央公論社が1969年に創刊した文芸誌「海」は、海外作家の作品を多く掲載していました。また戯曲を掲載したり、SF作家の筒井康隆に純文学を執筆してもらったりと、既成の文壇外の作家を多く起用します。1984年に廃刊となりました。

後にベネッセコーポレーションとなる福武書店が、1982年に創刊した「海燕」は、サブカルチャーに力を入れていた文芸誌です。

「海燕新人文学賞」を主催し、佐伯一麦や吉本ばなな、小川洋子などを発掘しています。

文芸誌全体の売上不振のなか、1996年に廃刊しました。

 

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