『1000円ヒーロー』とは、作者・焼き芋ハンサム斎藤によるヒーロー漫画。「第6回マンガワン連載投稿トーナメント」の優勝作品です。 本作の魅力は、3話分読んでもらえれば分かるはず!笑って泣ける、速効性SF漫画の『1000円ヒーロー』の魅力を紹介します。
『1000円ヒーロー』は、特殊なベルトを用いて変身するヒーローと、ある日突然、人が突然変異して凶暴になってしまう怪人がいる世界が舞台です。遊園地やビル内など、人々が普通に暮らす街中で、ヒーローと怪人が戦います。
貧乏生活をしながら妹の生活を守るために怪人と戦う主人公をはじめ、誰かのためにボロボロになっても立ち上がり、怪人と戦うヒーローたちの姿に熱くなります。それだけでなく、敵であるはずの怪人は実はいい人……なんてことも。怪人とヒーローが仲良くなってアルバイトをしてしまうような、ゆるいギャグも楽しめる作品です。
気になった方はぜひ実際に本作を読んでみてくださいね。
まずは作品の主人公やあらすじを説明します。すでに知っている方や、1〜3話で何が起きるのかが気になる方は、こちらからお読みください。
主人公の日朝 千(ひあさ せん)は、妹のほのかと二人暮らしの高校2年生。妹に不自由をさせないため日々アルバイトに励み、そして貧乏であることを妹に悟らせないため、日々質素な暮らしを送っている心優しい青年です。そんな千には、人には隠しているある秘密が。
千は、なんと怪人たちと戦う力を持つヒーローなのです。企業や政府に所属しサポートを受けながらヒーロー活動をする人が多い中、あえて正体を隠してフリーでヒーロー活動をしています。
その理由は、妹のそばに少しでも長くいて、少しでも幸せにしたい一心。バイトを掛け持ちしながら、貧乏生活を続けています。
一見、貧乏でケチ、妹以外に興味はなさそうな千ですが、困っている人を見ると放っておけず、自分のお金を使って怪人から人助けをしてしまう優しい心の持ち主です。強さと優しさ、2つを兼ね備えた千は、応援せずにはいられない本当のヒーローです。
この世界では、選ばれし人間がヒーローになります。そして自分のヒーローネームのようなものをもち、悪事を働く怪人と戦います。千のように正体を隠しながら、どこにも所属しないでヒーロー活動を続けている人物は稀です。
登場するヒーローたちは、生身の人間では考えられない力を得ることができます。弱いヒーローですら、銃弾をものともしない体となり、熊を単独で制圧できるほど。強いヒーローになると、戦争を一人で止められる程の力を持つといわれています。
ヒーローの強さは、街の安全に直結するほどのもの。強いヒーローになると、年収が億を超える場合もあるそうです。だからこそ、そのことを知っていながら、ただ妹のため、自分の周囲の平和のために戦える千の凄さがよく分かります。
『1000円ヒーロー』に登場するヒーローたちが変身の際に使うのが、ベルトとお金です。
ヒーローそれぞれの強さに合せてレートが設定されていて、レート1のヒーローなら1円で1秒間戦え、100円あれば100秒間戦えることになります。レートが10、100と上がれば上がるほど能力などが強くなります。しかし、強ければ強いほど戦う時間を確保するために、お金がかかります。
千は妹に不自由させないため極力節約したいのに、突然怪人が現れて戦わされることもしばしば。バイトだけが収入源の千は、ベルトにチャージする1円ですら惜しいほどお金がない貧乏なのです。
ちなみに、ヒーローたちのレートは基本的に1~100。そんな中、千のレートはなんと1000!強いけど、使えるお金が限られているため戦える時間が短い。そのジレンマが、読者のドキドキ感やハラハラ感を煽ります!
最強が故に変身にお金がかかる千。それでも変身する理由は、妹のため。彼は、道端に落ちていた100円を拾えなかったことを根に持つほどのケチです。しかし誰かのピンチには、妹以外であってもお金を顧みず変身してしまう一面があります。
妹をはじめ、誰かのために変身してしまう。ケチだけど優しい千は、意外と理想のヒーローなのかも知れません。
ヒーローたちと対になるのが怪人たちです。この世界では、怪人たちは元人間という設定。普通の人がある日突然怪人化し、本能に抗えず、人間を襲うようになってしまうのです。
そして怪人は、人間に姿を変えて擬態できます。しかし闘争心が少ない怪人は、人間に擬態できません。悪い人であればあるほど、人間として世の中に紛れ込めるということです。
闘争心の少ない怪人の中には、人間だった頃の自我を保っている怪人も。 その場合、二度と人間に戻れないという事実に胸が痛む場面もあります。
ヒーローと同じく、怪人たちもさまざまな能力を持っています。中にはレート100のヒーローと対等以上に戦える怪人も。
暴れまわる凶悪な怪人とヒーローのバトルにドキドキして、お金という制限のなかで圧倒的な力をもつ千の戦い方にスカッとしましょう!
次のページから、3話で泣ける理由を説明します。
冒頭でも書きましたが、本作は3話まで読んでもらえれば面白さが伝わるはず。著者はまさかの3話でグッときて、涙しそうになりました……。3話なら、1日の無料ポイント内で読めちゃいます。1話から3話で、熱くて、笑って、泣ける、その魅力をぜひ体験してください。
ここからは、3話までの注目ポイントを紹介します。
千の圧倒的な強さを目の当たりにするのが第1話。無敵とも思える強さに、ワクワクします。
小学校の行事で遠足に行く千の妹・ほのかたちの乗るバスが、怪人にジャックされてしまいます。ネジを使った攻撃をくり出す怪人に、救出に訪れたヒーローも敵の強さに苦戦。誰もが駄目だと思った時に駆けつけたのが、千です。
レート1のヒーローに勝ち誇っていた怪人に格の違いを見せつけます!
千の放つ豪快な必殺パンチに、敵の怪人は為す術無し!これぞヒーロー漫画の王道ともいえる必殺技で、暴れていた怪人をスカッと退治してくれます。ちなみにこのパンチは100円しか使っておらず、時間にして0.1秒のパンチ!まだまだ彼の本気ではありません。
2〜3話目では、「おっちゃん」と呼ばれる優しい怪人と千の友情の物語。娘思いなおっちゃん怪人の勇姿に、目頭が熱くなること間違いなしです!
2話では、鳥のような顔をした怪人が千の前に現れます。そして怪人の口からでた望みは、「千に倒されること」。本人の意思と反して怪人になってしまったこの怪人は、心は人間の時のままです。
なぜ千に頼んでいるのかというと、「もし自分がヒーローにやられてしまうと、死体から個人が特定され、世間に公表されてしまう」といいます。
報道されてしまえば、長らく会えてない娘に迷惑がかかる。それを避けるために、個人が特定できないほど怪人を粉々に打ち砕く、圧倒的な強さをもつ千に頼みにきたのです。
とはいえ千は、妹の部活のためにもお金がほしいところでした。怪人を倒すのにもお金がかかるため、全力拒否。
しかし人(?)のいいおっちゃんは、「自分のことは暇な時でいいから、(お金を稼ぐのを)手伝います」と。そこで千は、二人で働くことで効率よくバイトを稼いだら、おっちゃんの望みを聞くことを了承します。
千とおっちゃんは、ヒーローの力と怪人の強靭な体を生かして次々とバイトをこなしていきます。銭湯のバイトでは、おっちゃんの体にスポンジを貼り付け振り回すという荒業まで。 どちらが怪人か分からないおっちゃんに対する仕打ちは、めちゃくちゃながら2人の関係を見ているとクスッとさせられます。
はじめは、千のバイト代とおっちゃんの目的が一致しただけだった2人。しかしバイトをこなしていくにつれ、徐々に打ち解け、親しくなっていきます。
千のバイトは多岐にわたり、デパートのヒーローショーにも出演。その終わりに聴こえてきたアナウンスの声は、なんとおっちゃんが長らく会えていない娘さんのものでした。
喜びも束の間、次の瞬間に聴こえてきたのは、その娘の悲鳴。邪悪な怪人たちが襲来し、デパートを占拠したのです。
人質をとりながら立てこもりを始めた怪人を前に、おっちゃんは娘を助けに行くことを決意。怪人たちと戦うことは得策ではないと千はおっちゃんに助言します。しかし自分が死んでも娘を助けたいおっちゃん。彼らの戦いが始まります……。
やっと会えた娘を助けるため、おっちゃんは怪人の力を使い、娘を助ける事を決意します。娘を思う気持ちと覚悟に、胸を揺さぶられる3話です。
娘がいる上の階に向かうおっちゃんのために、下の階の怪人たちを一掃する千。普段はケチな千が、貴重なお金をおっちゃんのために使うほど、2人の間には友情が生まれています。
敵を圧倒する千とは対象的に、上の階に向かったおっちゃんは……。
凶悪な怪人を前にかなり苦戦……!娘や人々を守るために戦おうとすればするほど、どんどん自我が薄れ、怪人化していきます。人を守るために戦っているのに、どんどん怪人に近づいていくおっちゃんの姿は、見ていて辛いものがあります。
強さと引き換えに、人間だったころの記憶を失っていくおっちゃん。大好きな娘の顔も薄れていきます。肉体的にも、精神的にも追い詰められていくのですが
たとえ全てを忘れても、娘を傷つけたやつの顔だけは忘れない。娘を守るというおっちゃんの強い気持ちに感情を揺さぶられます。限界を超えた、おっちゃん最後の一撃。
思わず叫びたくなるほどの、渾身の一発が炸裂!どんなに怪人に近づいても揺るがなかった娘への思いが、報われたことに爽快感とともに、大きな感動を得られます。
最後の一撃とともに力尽きてしまったおっちゃん。このまま死を向かえてしまうのか……誰もがそう思ったとき、千が粋な計らいをします。
建物ごと持ち上げるという、千にしかできないやり方で、動けないおっさんを娘の元へと運んでいきます。おっちゃんは最後の力で、怪人となった顔を隠し娘の元へ。
顔を隠したまま、死ぬ間際に娘と再会できたおっちゃん。最後に娘の顔を見て去ろうとする彼に向かって、娘から感謝の言葉が伝えられます。
おっちゃんは怪人になってしまいましたが、娘や人質にされた人からすると、紛れもないヒーローなのです。
迷惑をかけないため、殺されようとしていた怪人が、人を守るヒーローになった。そんなおっちゃんの最後のメッセージが
千さん…
私は…
生きていて、よかったです。
(『1000円ヒーロー』1巻より引用)
おっちゃんの目から溢れる涙とともに、読者の涙腺も崩壊すること間違いなし。たった3話でここまで感情を揺さぶられるのが、速効性ヒーロー漫画『1000円ヒーロー』です!
ここまででも十分胸に響くのですが、その後にも注目。
デパートの事件は、無事解決。しかし娘と会えた後、おっちゃんは力尽きてしまいました。
日常に戻った娘が、街中で子供のキーホルダーを拾い上げるシーン。キーホルダーのヒーローは、おっちゃんが顔を隠していた仮面と同じです。キーホルダーに向かって呟く娘の一言に注目してください。
娘は全て気づいた上で、怪人になった父にヒーローとしてのお礼を言っていたことが分かります。親子の気持ちが通じあっていた事を感じさせる一コマ。一度収まりかけた涙が再び溢れ出すような、トドメの演出に泣かされるでしょう。
本作は、もちろん3話以降も続きます。今まで一人で戦ってきた千の元には、見た目は濃いけど、頼りになる仲間も現れます。仲間の数が増えるほど、バトルシーンの激しさもアップ!より熱くなるヒーローと怪人のバトルをワクワクしながら楽しみましょう!
ヒーローたちが活躍する裏で、暗躍する怪しい組織も登場。怪人たちの救済を目的とする彼らと、千たちがどのように交わっていくのでしょうか。
さらに、圧倒的な千の強さの秘密、彼の両親にまつわる秘密も知っているようで……。徐々に全貌が明らかになっていき、より一層読者を惹きつけます。
心優しいおっちゃん怪人の死闘に3話で泣かされる『1000円ヒーロー』。
妹や身近な人を守るための千の熱いバトル、敵である怪人まで巻き込んだギャグ、優しいおっちゃんの泣けるストーリーまで楽しめます。
圧倒的な強さを持ちながら、金欠で変身時間が短いという千の設定が、物語のよいアクセントに。続々登場する仲間、凶悪な怪人たちにより、さらにスケールアップする3話以降の物語は、スマホアプリの「マンガワン」でから読むことができます。