実写映画化もされるロビンフッド。ディズニーでアニメ化もされているので、名前は知っているという方も多いのではないでしょうか? 悪政に立ち向かう活躍の姿を描くヒーロー譚ですが、なかにはそれに留まらない楽しい物語も。 実はあらすじをよく知らないという方も安心。この記事では、そんなロビンフッドのあらすじやモデルとなった人物などをご紹介します。物語の時代背景を知ることで、より物語を味わうことができますよ。
舞台は12世紀・イングランド。イングランドを治める王であるリチャード一世は、獅子王と呼ばれるほど勇敢で優れた王様でしたが、遠征の途中で敵に捕まってしまいました。すると、リチャード一世の弟であるジョンは、リチャード一世の不在をいいことに好き勝手な振る舞いを始めます。
ジョンは賢帝である兄とは違い、悪政の限りを尽くす愚かな王でした。民に重税を課したり自分のお気に入りの貴族の社会的地位を勝手に上げたり、まさにやりたい放題。そのために国民は苦しみ、追い詰められていきました。
そんなジョンから人々を守るために立ち上がったのがロビンフッドでした。ロビンフッドとその仲間達が隠れ家としたのがシャーウッドの森です。ここは王家に管理された森で、国民は勝手に入ることも、採集や狩猟をすることも許されません。ですが、逆に言えばそれは、迂闊に手出しをされないということ。ロビンフッド達は、それを利用してシャーウッドの森に集まったのです。
ロビンフッドは剣と弓の達人でした。悪政に苦しむ人々のため、ロビンフッドは志をともにする仲間達と力を合わせ剣を取りました。しかし、もちろんジョン王達も黙っていません。こうして、悪政の限りを尽くすジョン王と、そんなジョンから人々を守るロビンフッドの戦いが始まったのです。
ロビンフッドは、11世紀にノルマン人と戦ったアングロサクソン人のリーダー、ヘリワード・ザ・ウェイクという人がモデルになったと言われています。
ヘリワードは、イングランドを征服したノルマン人に対抗して戦いました。自分達の土地を征服され、苦しんでいるアングロサクソン人を助けるために立ち上がったヘリワードは、確かにロビンフッドと重なる人物です。
ただ、ロビンフッドのモデルは1人だけではないとも言われています。自然や森を象徴する妖精ロビン・グッドフェロー伝説や、ゲルマン系部族のチュートン神話に登場する妖精・フードキン、豊穣の祭りである五月祭などの民間伝承が、ロビンフッドの物語の起源となったのではないかという説も。他にもアーサー王伝説などから影響を受けたという説もあります。
ロビンフッドは、戯曲や歌のなかでも様々に語り継がれてきており、そのなかでいろいろな解釈や描き方をされていったのかもしれません。ロビンフッドの物語の起源を正確に辿ることは、今となっては難しいのかもしれませんが、それはつまり、それだけ多くの人々の口によって語られてきた証でもあるのでしょう。
現代でも、ロビンフッドはアニメや小説、漫画と様々な作者が様々な描き方をしています。ぜひ自分のお気に入りのロビンフッドの物語を見つけてみてはいかがでしょうか。
物語の舞台となった中世のイングランドでは、御猟林法という法律があり、人々を苦しめていたという事実があります。
人々にとって森での採集や狩猟はとても大切なものでしたが、その森が王家の管理下に置かれてしまい、もし無断で侵入したり採集したりしようものなら、腕を切り落とされ、最悪の場合は死刑にもなったというのです。
また、その時代には、集落などの社会的グループからその存在を抹消されるという刑罰もありました。グループから外された人間は、例え殺されるようなことがあっても、殺した側は罪にも問われないのです。
そんな社会から抹殺されてしまった「アウトロー」な人々が、森に集まり集団化していきます。森に入ったら処罰される、つまり簡単には森に入れないという状況を逆手に取ったのです。集団となったアウトローたちは、周囲の村や旅人を襲い、物資を略奪するようになります。しかし、悪政に苦しむ庶民の目には、彼らは法に縛られない、悪政に立ち向かうヒーローとも映ったのです。
こういった時代背景のもとロビンフッドの物語は、様々な英雄伝説と結びつきながら、長い間多くの人々に伝わってきました。英雄物語というものは、時代に関わらず人々の心を打つ物語なんですね。
ロビンフッド物語は、ディズニーによってアニメ化されています。そのディズニーアニメのロビンフッドを小説化したものが『ロビン・フッド』です。
ディズニーのロビンフッドでは、主人公は人間ではなくキツネ。ロビンの相棒のリトル・ジョンはクマ、そして敵となるジョン王はライオンです。
ストーリーは、やりたい放題で国民を苦しめるジョン王に対抗したロビンやリトルジョンが義賊となり、巻き上げられたお金を取り戻しみんなに返すというもので、ロビンフッドの物語の形と基本は同じです。
本来のロビンフッドもヒーロー譚ではありますが、すでにご紹介したとおり、その舞台にはやや血なまぐさいところもあります。ですが、本作では登場人物が動物ということもあって、小さな子供にも取っ付きやすく、親も安心して読ませてあげることができるでしょう。
小説版の対象は、小学生から中学年。自分で読める年齢になったらぜひプレゼントしてあげてはいかがでしょうか?
- 著者
- ["A.L. シンガー", "Singer,A.L.", "弓枝, 橘高"]
- 出版日
光文社から刊行されている『ロビン・フッドの愉快な冒険』。
おたずね者で弓の達人のロビンが身を隠すためにやってきたシャーウッドの森。そこでロビンは、吟遊詩人や大酒飲みの修道僧など、たくさんの愉快な仲間達と出会い、悪どい役人や聖職者を相手に大暴れします。
基本は他のロビンフッドの物語と同じですが、本作は、英雄的な物語というよりも悪者相手に暴れ回る愉快な仲間達といった雰囲気になっています。ロビンフッド達も、正義に燃えるというよりも冒険を楽しんでいるというふうで、それがまた楽しい気持ちさせてくれます。
タイトルのとおり、ロビンと個性豊かな愉快な仲間達が、自由に動き回っている姿はとても魅力的。本作は英雄譚というよりも冒険ものとして読んだほうが、ぴったりな作品なのかもしれません。
とはいえ、もちろんロビンフッドらしく、弱きを助け強きをくじく痛快活劇もあります。弱い人々を助けるロビンフッド達の活躍は、時代劇を見ているようなスカッとした気分にもなれるでしょう。
また、本作は著者のパイル・ハワードによる挿絵を全点収録。絵がたくさんあるので子供にも手に取りやすいはずです。親子で楽しく読むなら、ぜひ本作を手に取ってみてはいかがでしょうか。
- 著者
- ["Pyle,Howard", "パイル,ハワード", "律子, 三辺"]
- 出版日
ロビンフッドには、様々な起源や影響を受けた伝承があるということはすでにご紹介しました。アニメや小説ではなく、ロビンフッドにまつわる原典を知りたい方におすすめなのが本作『ロビン・フッド原典集成』です。
本作では、ロビンフッドの名前を認めることができる史料や、ロビンフッドの物語を歌う初期のバラッド(イギリスに伝わる物語性のある歌)、さらにロビンフッドの物語のなかでも特に有名な戯曲をそれぞれ紹介しています。
ロビンフッドを、物語的観点からではなく、歴史的観点から読み解くことができる1冊といえるでしょう。どちらかというと専門的な本なので、ロビンフッドをまったく読んだことがない方よりも、ロビンフッドをさらに深く知りたいという方におすすめです。
痛快活劇や自由で愉快な物語も楽しいですが、よりロビンフッドの歴史や原典に近い物語を知りたい方、イングランドの歴史に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
- 著者
- 西川秀和
- 出版日
アニメや小説もおすすめなロビンフッドですが、また違う形で楽しみたいと思う方は、久松文雄の漫画『ロビン・フッドの冒険』はいかがでしょうか? 本作は、物語としてはもちろん、イングランドの歴史にも触れられていて、漫画を楽しみながら歴史を勉強することもできます。
本作は、貧しい生活を強いられるロビンが、畑をシカにやられてしまったために母を亡くし、その恨みから禁制のシカを弓で殺してしまったところから始まります。
シャーウッドの森に逃げ込んだロビンは、そこで出会った修道僧に見込まれ、剣や弓を覚え、リトルジョンを相棒にロビンフッドとして成長していきます。
作者は、『ウルトラセブン』などで知られる久松文雄。久松文雄は、『春日局』や『史記』、『まんがで読む古事記』など多くの歴史漫画を描いており、本作でも、ロビンフッドの活躍だけではなく、当時の時代背景なども描かれています。
シンプルな絵柄も幅広い世代に受け入れられるでしょう。まずは気軽にロビンフッドを楽しんでみたい時、手に取ってみてはいかがでしょうか。 気になった方は、こちらからも試し読みができます。
いかがでしたか? ロビンフッドと一言で言っても、様々な作品があり、作品ごとの雰囲気や面白さがあります。それも、長い間多くの人々に語られてきた物語だからこそかもしれません。お子様は分かりやすい痛快活劇を、歴史に興味がある方は舞台の背景を、年齢や興味に合わせて楽しみ方を選ぶことができるのも嬉しい特徴です。ぜひ、ご自分にぴったりなロビンフッドを探してみてください。