SFラノベおすすめランキングベスト22!タイプ別おすすめ名作

更新:2021.12.16

近未来や宇宙、空想の世界に入り込みことができるSFラノベ。読み進めるほどにドキドキ・ワクワクが止まらない!そんなSFラノベの名作をタイプ別におすすめします。

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22位:高千穂遥の名作SFラノベ『連帯惑星ピザンの危機』

1997年に刊行されたSFラノベです。ガンダムと違ったスペースオペラ作品で、いろいろと突っ込まなくてはならない箇所がありつつも読者を飽きさせることなく、現在もファンが支える名作小説です。

著者
高千穂 遙
出版日
2008-09-25

2161年という未来を舞台に宇宙にある恒星間での移動が可能となった人類が銀河連合という組織をつくります。そんな中、犯罪にかかわること以外ならどんなことでも引き受ける何でも屋が登場します。本作は、何でも屋の主人公ジョウが王女アルフィンからの依頼でピザンの奪還に向かうお話です。

レーザーガンやヒートガンなど今の若者たちが見ると、名前からどんなものか想像できてしまってダサいと思うかもしれませんが、そこが逆に読みやすくさせているような気がします。かといえばテラフォーミング、ワープ航法など荒唐無稽ながらも現在のSFファンにとってなくてはならないキーワードも出てきており、やっぱりSF小説の金字塔なのだなと思わせてくれる作品です。

文量は多くなくストーリー展開も早いため一冊読むのに大した時間はかかりません。読み終わった後に時間が立っていないことにびっくりすると思います。今までSFは漫画でしか読んだことない人におすすめです!

21位:世界の終末。巨人の背に築かれた都市『冬の巨人』

荒涼とした冬の世界を、ただただ歩き続ける巨人ミール。とてつもなく大きなその巨人の背には人々が生きる街がありました。『冬の巨人』は、巨人の寿命によって終わりを迎えようとする世界と、それを見つめる少年の物語です。

1000年ものあいだ雪原を歩き続ける巨人と、その背に都市を築き生きる人々。それが人の世界のすべて、そんな世界です。荒涼としたその世界で貧しく生きる少年オーリャはある日、巨人ミールの外の世界で光り輝く不思議な少女レーナと出会います。ミールの寿命が尽き、人の世界が終末を迎えようとしているその時に、少年と少女は何を思い何を見るのでしょうか。

著者
古橋 秀之
出版日
2014-07-10

太陽の存在が伝説となって久しいこの世界は、今まさに人の歴史が終わろうとしていました。こういった終末的なお話には宗教感がつきものですが、本作品にも宗教家が登場し、未来への希望や現在の心の平穏などを説きます。宮﨑駿監督による漫画作品『風の谷のナウシカ』などに通じる世界観ですね。そこに共通して描かれているのは「荒廃した世界に生きる人々」の姿。宗教的思想を交えて描かれるその世界観を想像していただけると、本作品の世界をイメージしやすいかもしれません。

ひとりの少年が不思議な少女と出会うことで始まるこの作品は、著者の持ち味でもある暗い雰囲気で物語が展開していきます。終末世界ということもあり、中盤までは絶望的な予感がする内容です。しかしファンタジー作品らしく、超常的な力が作用することで物語終盤には大きな展開を迎え、素晴らしいラストシーンが描かれます。少年と少女を描いたジュブナイル作品としては、未来への希望が持てる理想的なラストと言えるのではないでしょうか。

童話作品のような幻想的雰囲気と、終末思想を描く宗教的な部分。それらを少年少女を軸にボーイミーツガール作品としても描いてある物語は、実に個性的です。ライトノベルにカテゴライズされていますが、ジャンルを気にせず、ひとつのファンタジー作品としてみなさんに楽しんで頂きたい小説となっています。

20位:終わる世界で少年少女たちが知った、人との繋がりの大切さ『終わる世界、終わらない夏休み 芹沢和也の終末 』

7月7日、世界は滅びるらしい。そう世界でささやかれ始め、街から段々と人がいなくなってしまった街が物語の舞台となります。

主人公は高校生の芹沢和也。彼は授業がなくなっても学校に通い続ける生徒です。ただ終わりの日に向けて、諦めの気持ちを抱いてその日を迎えようとしていました。そんな折、7月4日に同じ学校の生徒大舞都亜美に「世界を救う方法を探しに行こう」と誘われるのです。

著者
あきさか あさひ
出版日
2006-08-30

仲間としてもう1人、桜井深優が加わりますが、彼らは何か手がかりがあるわけではありません。なので、最初は外をふらついたりするだけ。積極的にどうにかしよう、といった行動をとるわけではないのですが、段々と色々な事実が見えてきます。

ストーリーが進む中で建物の中にいるなどの条件を満たすことでループが可能なことが分かりますが……。

恐怖におびえた人間の集団から襲われてしまうなど、世界が終わると分かって初めて見えてくる、人の弱さ、もろさ、そしてそれ以上に、繰り返す世界の中で人と繋がっているという大切さを、知っていくのです。

決して前向きではない主人公とは対照的に世界を救おうと奮闘する大舞都亜美など、魅力的な登場人物にも注目して読んでほしいライトノベルです。

19位:読み応え抜群の王道展開が楽しめるSFライトノベル『エスケヱプ・スピヰド』

昭和101年、八洲(やしま)国の都市、尽天(じんてん)は、7年間続いていた帝国との激しい戦争ですっかり廃墟の町となっていました。そこで、大人達と一緒に探索をしていた少女の叶葉(かのは)は、暴走した戦闘兵器に襲われてしまいます。

著者
九岡 望
出版日
2012-02-10

命からがら逃げだした先で、叶葉は不思議な少年が棺の中で眠っているのを見つけました。自分が動くためには「命令」が必要だという少年に、叶葉は「自分を助ける」ように「命令」をします。少年は、かつての戦争で切り札とされていた超兵器「鬼虫(きちゅう)」で、名を「九曜(くよう)」と言いました。

九曜は自分を目覚めさせた叶葉と行動を共にすることになりますが、兵器である彼は人としての感情を持ち合わせておりませんでした。成り行きで九曜の主人となった叶葉は苦労しながらも九曜とコミュニケーションを取っていくのですが……。

「鬼虫(きちゅう)」とは、もともと人工知能や人体の機械化の優れた技術を持っていた八洲国が、戦争時の切り札として開発した兵器のことです。その強さは、老人が昔を思い出しながら、「今ここの外を歩くおっかない機械兵が、いくら束になろうと傷一つ付けられん程よ。正真正銘の怪物とはまさしくあれを指すな」(『エスケヱプ・スピヰド』より引用)と語ることからも、強く恐ろしいものだったのだとわかります。

いわゆる萌えやギャグというものに寄らず、とにかく硬派なSF超大作です。丁寧な筆致で描かれる廃墟の空気感、それに叶葉や九曜達の日常の描写は、互いに正反対の雰囲気ゆえにお互いを際立たせています。

機械と人との関わりや、それぞれの感情や気持ちなど、ストーリーは王道ですが痒いところに手の届く流れは、安心して最後まで読むことができます。読み応えも抜群なので、純粋にSFの世界を楽しみたい人はきっと満足できるでしょう。

18位:生まれ変わった惑星のクロックパンク!『クロックワーク・プラネット』

地球が時計仕掛けの星となってしまった世界で、いわゆるスクールカースト下位に位置する見浦ナオトの家に、少女型の自動人形リューズの詰まった箱が落ちてきます。何もかもが機械化された地球と、何も変わらない人類。ナオトとヒロインのリューズという歯車が噛み合ったとき、物語は動き出します。

著者
["榎宮 祐", "暇奈 椿"]
出版日
2013-04-02

寿命が訪れ機能停止となった1000年後の地球が舞台。気象、重力、何もかもが歯車に関係したもので再現されたクロックパンクのSF系ファンタジーであります。物語の序盤はあまりに唐突であり、意味深であり、けれど読み解くほどに明かされていき、頭のなかで歯車が噛み合うように小気味よい快感をもよおしてくれること請け合いです。

主人公の見浦ナオトはメカ好き、いわゆるオタク系の少年でノリのよい人柄をしています。彼の元にちょっぴり毒舌な自動人形のリューズが現れたことで共に風変わりな日常を過ごし、やがて大きな物語へ足を踏み入れていく様子と、ふたりや仲間が織りなすコメディタッチなやりとりがなんとも魅力的な作品です。

本書を手に取れば、シリアスなストーリーに入念な世界観の設定に惹きこまれ、ラノベらしいドタバタとしたラブコメに心癒されること間違いなしです!

17位:大切な人を救いたい、ただそれだけで繰り返す痛みと少しの奇跡『クイックセーブ&ロード』

主人公の男子中学生、榊潔人は、中学入試の失敗を皮切りに、自分がセーブした時間まで巻き戻すことのできる能力を手に入れます。セーブは感覚的なもので、彼がセーブした、と認識することで簡単にできるのですが、ループする条件は「榊潔人」が命を落とすことでした。

彼は何度か検証し、どういう条件下で自分の特殊能力を利用できるか確認します。そうして2年間、便利な能力として繰り返しを利用しながら生活を送っていた彼はある日、見てしまうのです。自分が繰り返しの条件を満たす為に飛び降りをしている最中、向かいのビルから、幼馴染の梓由衣の姿を。

著者
鮎川 歩
出版日
2009-08-18

潔人は、自分自身でセーブした当日の朝からやり直しを再開します。その日彼にはたくさんの嫌なことに遭遇します。それらを回避するためにループを繰り返したのですが、偶然知ってしまった由衣の自殺を放っておけず、彼女を助けることを決意します。

奔走する彼は何度も何度も失敗します。由衣がどうして自殺しようとするのか、彼女の家庭環境、街に現れた連続猟奇殺人鬼、「眼球抉り」。失敗を繰り返し、謎を追っていきながら必死にどうにかしようとするうちに彼は行きつきます。真実と、自分がどうして繰り返し続けてきたかという、本当の答えに。

一度は誰しも思ったことがある、人生をやり直せたら。その願いの先にある、本当の答えを、この物語で垣間見てもいいかもしれません。

16位:恐ろしい回数を繰り返す教室の中で、異なった願いがぶつかり合う『空ろの箱と零のマリア』

なんでもない日常を送っている筈だった主人公、星野一輝でしたが、彼は自分が送っている日常が非日常だということを認識せざるを得ない状況に追い込まれていきます。

物語上の3月2日、彼らのクラスに転校してきた少女、音無彩矢。彼女の名前を、何故か一輝は知っていました。知った上で、「音無彩矢という名前を知らない転校生が、今から自己紹介をする」という、不可思議なことを考えているのです。それが当然のことのように。

著者
御影 瑛路
出版日
2009-01-10

ヒロインでもある音無は、たびたび敵意を向けて主人公の一輝と対峙します。物語の序盤から、日常だと一輝が信じてやまない日々はただの繰り返しをしているのだと彼女は告げ、そして一輝の記憶も段々とその繰り返してきた日々を覚えていくようになります。

音無が「箱」と呼ぶもの、それは特殊な力を持ったもので、願いを叶えることが出来るという不思議な代物でした。繰り返す3月2日、彼女いわく「拒絶する教室」は、その「箱」に犯人が願いを込めたせいだから、というのです。

繰り返す日々を、巻き戻っているなどと言わず「拒絶する教室」とヒロインが言う理由、一輝がどうして記憶を保っていることがあるのか、彼を取り巻く友人達、そして、一輝に片想いを募らせている少女、茂木霞。気狂いしそうな回数を、彼らは記憶を保持する者と記憶を保持しない者に分かれて、幾度も繰り返していきました。

真実に辿り着くその瞬間まで。

願いを叶えることの出来る「箱」と、未熟で歪な願いの行く末。ループする世界に立ち向かおうとする主人公の姿に、日常の大切さを噛みしめたくなる一冊です。

15位:日常系?いえ、「非」日常へループです『も女会の不適切な日常』

タイトルにある「も女会」これは主人公たちの所属する部活、「もっと学園生活を豊かにする善男善女の会 部」の略称です。その名のもとに青春を謳歌するためゆるーく活動をする男子一人、女子四人によるだらだらとした日常が描かれていきます。

緩い日常が展開されると思ったさなか、彼らの日常は一人の少女と出会うことで大きく姿を変えてしまいます。非日常を描く物語が全三冊の中にぎゅっと濃縮されたシリーズです。

著者
海冬 レイジ
出版日
2012-03-30

最初は日常ハーレムもの、しかし途中からどんどんとおかしな方向へと進んでいきます。先入観を持ちたくない、新鮮な気持ちで読みたいという方、この文章を読むのはここまでにしてください。

さらにつっこんで、この作品について解説をすると物語の途中で主人公リンネは部員が作った毒の暴走により偶然にも、あっさりと死んでしまうのです。次に彼が目にするのは「アッパーグラス」という名の異空間。

彼はそこで謎の美少女と出会います。彼女曰く、死んでこの異空間にたどりついたものは時間を遡行し、過去を改変する力を得るのだというのです。そこでリンネは過去を改変し、自分が死んでしまう未来を変えるのですが、今度は偶然ではなく明確な殺意をもって殺されてしまいます。

日常系と思いきや、SF系サスペンスの作品へと変わる本作は、間違いなく異色作と言えるでしょう。その世界観の切り替えは見もの。ぜひ、自身の目でその様を確認することを強くおすすめします。

14位:強くてニューゲームな最弱ラブコメにループ!『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』

自分が住んでいる時代を救うため、未来の世界からやってきた美少女カマタリさんは「キング・オブ・クズ」である主人公、中野太一に協力を申し込むことから物語が始まります。その頼み事の内容は、学校一の美少女を含む「曽我野三姉妹を攻略すること」でした。

著者
["石川博品", "一真"]
出版日

しかし、太一は今まで女性と付き合えたことがない最弱男、そんな彼にうまくできるはずもありません。しかし、セーブポイントに戻ることで記憶を保持したままニューゲーム、何度でも攻略チャレンジを続けます。クズだってモテたいんだ!という強い男の意志で訴えかける作品です。

時空の狭間に作られたセーブポイントに戻ることによって何度でも失敗してはやり直せる、というちょっと変わったループものの作品で、その太一の失敗の様がなんとも笑いを誘ってきます。

それでも終盤にもなると彼も成長し、なかなかいい恋愛模様を見せてくれたりもします。一風変わった発想から生まれた作品を、ぜひ楽しんでみてください。

13位:終わる世界の果てを目指す少年と少女『旅に出よう、滅び行く世界の果てまで』

少ない荷物と一冊の日記帳、それからスーパーカブ一台だけで滅びゆく世界の旅を続ける少年と少女の物語です。

この世界では、自分の姿形はおろか、名前すらもわからなくなり、最後にはその存在が消えて無くなってしまう死の伝染病「喪失症」が蔓延しています。そして、生き残っている人間もわずかしかおらず、彼らもまた自分の名前すら覚えていない状況でした。

主人公の少年と少女も、喪失症にかかっており、自分の名前すら覚えていません。しかしふたりは、まるで何かに突き動かされ、導かれるように、家や学校など自分たちがそれまでに持っていたものすべてを捨てて、世界の果てを目指す旅に出るのです。

そんな少年と少女もまた、旅先で自分たちと同じ喪失症にかかった者たちと出会います。喪失症で経営が挫折し、農業に精を出す元大企業の若社長とその女性秘書。グライダーで空を飛ぶ夢を喪失症によって奪われた青年。心臓が弱く、喪失症にもかかったことで生きる意味すら見出せなくなった少女。

彼らもまた、同じく喪失症にかかってしまった為に自分の名前すら覚えていなく、いつか完全に消えて無くなるその時まで、そこに存在し続けていました。少年と少女も、彼らの姿を見て恐怖や不安を抱いていましたが、それでもただひたすらに世界の果てを目指して旅をします。

著者
萬屋 直人
出版日
2008-03-10

たとえ世界の果てに辿り着いたとしても、何も得るものはないかもしれない。それ以前に、辿り着く前に自分たちもいつか消えて無くなってしまうかもしれない。けれど、このまま何もしないまま消えたくはないし、いつか自分たちも消えてしまう時になったとしても、後悔なんてしたくない。

その思いを胸に抱いて、世界の果てを目指し、ただ旅を続ける少年と少女の姿は、人として今を生きるということの意味と大切さを伝えさせてくれます。

だからこそ、このラノベは一度読めば皆さんの目頭だけでなく、心も温かくしてくれると思います。気になりましたら、皆さんもぜひ名前のないふたりの旅に一緒に出かけてみてください。

12位:彼女の一声で、世界は3日、巻き戻される『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット』

物語の舞台となるのは、能力者が過半数を占める特殊な街、「咲良田」。主人公の浅井ケイは記憶を保持する能力をもった高校1年生。彼と行動を共にしているヒロイン、春埼美空は世界を3日分巻き戻す能力「リセット」を持っており、管理局と呼ばれる能力者に対する特殊機関に危険視され、監視されています。

そんな2人は管理局の監視下にある高校の「奉仕クラブ」に所属し、管理局員兼顧問である津島から依頼を受け、解決した方法、内容を報告。そうすることである程度の自由を得ていたのです。日々を過ごす中で、彼らは変わった依頼を受けることとなります。それは、「猫を生き返らせてほしい」というものでした。

著者
河野 裕
出版日
2016-09-22

村瀬陽香と名乗る女子高生は、死んでしまった猫を助けてほしいのだと2人に依頼します。津島を通して依頼をしてきたと言いますが、主人公たちはいつも直接津島から内容を聞いていて、依頼人と話をすることはありませんでした。

この依頼はおかしくないですか、と疑問視する美空に、それでも依頼を受けようと浅井ケイは言います。猫を助けたい、そういう優しい願いを叶える為に自分や美空の力を使いたい、ケイはそう考えていたからです。

ですが猫を追っていくうちに、これは単純な依頼ではないことが分かります。他の能力者とも協力しながら事件を追っていくうちに、村瀬陽香の本当の狙いが明るみとなっていき、ケイ達はそれごと解決しようと奔走します。

諦めないこと、苦難を乗り越える素晴らしさを、このライトノベルを通して思い出してみてもいいかもしれませんね。

11位:知的なSFファンタジー・ワールド『緑の草原に…』

45光年離れた先に見つかった地球型惑星、カペラ系第二惑星。そこは移住するのに適した惑星であり、そのために調査隊を3度派遣しますがすべて消失してしまいます。彼らに何があったのでしょう……。

著者
田中 芳樹
出版日

表紙を見るとどうにも固そうな本だな、ラノベなのにイラストもないし、と思うかもしれません。この作品は田中芳樹が執筆した短編集であり、それも初期の作品であり遊び心と真心を込めた作品です。

王道的SFストーリーを展開しているものもあれば壮大な恋愛ストーリーに仕立てている短編もあるので全く飽きの来させない構成になっています。かつ世界観は一貫しており多様な世界を見事に仕立て上げている短篇集とも言えるでしょう。

10位:「ウルフガイ」シリーズの原点にして最高潮『狼の紋章』

杉並区の私立中学博徳学園に奉職している青鹿晶子が妙に喧嘩慣れしている少年犬神明に出会うところからストーリーが始まります。彼のでたらめな態度にヒロインがたじろいながらも彼の世界へと勇気を振り絞って進んでいく様と明のクールでミステリアスな風貌が特徴的な作品です。

著者
平井 和正
出版日

不良漫画が好きな方、SF小説が好きな方にうってつけの作品です。またウルフガイの名を聞いたことがある方は今すぐこの『狼の紋章―ウルフガイ〈1〉』を読みましょう!続編である「ウルフガイ・シリーズ」も発売されているので、まとめて買っておくといいですよ!

少年ウルフが杉並区の博愛学園に転入してくることによってヒロインの青鹿晶子が彼に興味を持っていきます。その中で彼の生い立ちが見え隠れしていくわけですが、お前本当に人間か、と思わざるをえないシーンがたくさんあるのが魅力です。

9位:100巻越えの大長編『豹頭の仮面―グイン・サーガ』

1975年にSFマガジンに掲載され始めた単行本100巻を超える大長編ストーリーです。2009年にはNHKでアニメ化されています。モンゴールに攻められ両親をなくした跡継ぎである双子のレムスとリンダ、豹頭の戦士グインの大河小説です。

著者
栗本 薫
出版日
1979-09-29

著者がなくなってしまい未完の長編小説となっていますが、その世界観を伝えていく文章構成が周到でついつい引き込まれてしまいます。

アニメと原作では若干の誤差があるもののどちらも単体の作品として楽しめるようになっています。アニメを見てからでも、原作を見てからでもどちらも楽しめるのがこのシリーズです。

この1巻ではレムス、リンダとグインとの出会い、モンゴールによる捕縛などが書かれています。堅苦しくなく、かつ、予想のつかない展開にハラハラドキドキさせられる冒険譚といえるでしょう。

8位:手にしたものは暴力か、それとも正義か『マルドゥック・スクランブル』

SF大賞受賞作品、超を付けて過言ではないSFの名作です。当然SFといっても様々ありますが、本作はサイバーパンクといったカテゴリーが正しいように感じます。他作品を例にとれば『攻殻機動隊』や『PSYCHO-PASS』等の世界観が近いような印象。言及されていませんが近未来的な雰囲気と言えばわかりやすいでしょうか

そんなサイバーパンクな世界の主人公が少女娼婦のルーン=バロットです。主人公の経歴からもわかる通り本作はその過激な設定と描写も一つの特徴になっていますが、しかし、奇をてらってそうしているわけではなく、その過激な設定や時には残酷な描写は、どれも読者に投げかけるようなメッセージ性が強いものになっています。

例えば昨今少女の娼婦というのはこの日本においても特別珍しいものではありません。多少言い方は違うかもしれませんが援助交際など、中高生の売春は社会問題の一つです。

そんな少女バロットは雇い主であるシェルの計画の一端で無残にも火を放たれ殺されそうになります。しかし、奇跡的に助けられたバロットは、火傷から生き延びるための処置により、驚異的な身体能力を獲得、捜査官である一見ネズミの生態兵器ウフコック、そしてドクターイースターと共にシェルを追います。そんなバロットの心に闇が忍び寄り……。

著者
冲方 丁
出版日
2010-10-08

バロットは当初明確な被害者でした。しかし手術によって得た力と、ウフコックの武器としての圧倒的な力を得たことによってバロットは次第に変わっていきます。シェルを追う過程でならず者たちを必要以上に虐殺、圧倒的な実力差をわかっていながらウフコックを暴力として使用し、その行動は次第に制御を失っていくのです。

本作のテーマの一つには明確に武器というものがあります。バロットは被害者だったにも関わらず、圧倒的な力を得ることによって次第に加害者へと変質していくことに。これはアメリカを始めとした銃社会へのアンチテーゼとも言われています。本来銃は護身の為であるはず、少なくとも現代社会において一般的な所持を許される理由はそれでしょう。

しかし銃という大きすぎる力は、時として護身ではなく凶器となり得るという警鐘をウフコックとバロットを通して発信しているのです

テーマ色の強い本作ではありますが、背景等を気にせずに読んでみるのもまた一興、ともかくまずはそのサイバーパンクな世界に一回浸って、是非非日常を疑似体験していただいてはどうでしょう。

7位:死ぬごとに強くなる!ギリギリで進んでいくヒーロー『All You Need Is Kill』

舞台は近未来。地球は異星人「ギタイ」に襲撃を受けていました。主人公・キリヤ・ケイジはこのギタイと戦う統合防疫軍の新米兵士。初出撃に赴いたのは絶望的な戦場でした。

過酷な戦況下で必死に抗うもキリヤはギタイと相打ちになり死亡してしまいます。ところが意識を取り戻すとキリヤは出撃前日の朝に戻っていました。

著者
桜坂 洋
出版日
2004-12-18

生と死の時間のループに翻弄される主人公を描いた、いわゆるループもののSFラノベです。星雲賞候補にもあがった作品で、2014年にはトムクルーズ主演でハリウッド映画として実写映画化もされた大作です。

主人公であるキリヤは生き返るループを繰り返すなかで特殊な能力を身につけていきます。その特殊能力のおかげで戦闘スキルを伸ばしていきます。それとともになぜそのような能力が自分に備わったのか、どこまで活かすことができるのか、そしてこの戦いに終わりはあるのかなど自問自答を繰り返し進んでいきます。

否応無く戦うことを強いられる戦況下で、苦痛を伴う死を繰り返す精神状態、非現実的な状況に置かれても考え続けるキリヤは勇敢です。心理描写がしっかりとされているので共感ができ、読者もなぜそのような経緯になったのかなど主人公になった気持ちで読み進めることができます。

どんなことをしてでもギタイを倒そうとする姿勢やループにより繰り返される生と死。SFだけでなくさまざまな要素が組み込まれた『All You Need Is Kill』は最後まで目が離せません。ゲームのように何度も生き返る設定のストーリーになっているのでゲーム好きの方におすすめしたい作品です。

6位:ヒーローがかっこいいミリタリー×SFラノベ!ラブコメも『フルメタル・パニック!』

武力介入によって平和維持活動を行う軍事組織ミスリル。主人公・相良宗介はミスリルに所属する兵士です。ある日上官から日本在住の女子高校生・千鳥かなめの警護任務を命じられます。

宗介はかなめと同じ高校に潜入し、日本政府やかなめ本人に気付かれないように警護します。平凡な日常に悪戦苦闘しながらも彼女を警護し、向かってくる敵と退治するストーリーとなっています。

著者
賀東 招二
出版日
1998-09-18

1990年代末期、現実世界のパラレルワールドを舞台に主人公である宗介が日常に悪戦苦闘するという出だしに惹き込まれます。宗介の生い立ちやかなめの隠された能力、高度な軍事技術などサイエンスフィクションと軍事に関するリアルな設定となっています。

作中に登場する人形兵器の構造や操作システムは原作者のこだわりによって細かな設定がされています。期待や武装開発メーカーなどは実在する産業名もあり、ミリタリー好きにはたまらない部分もあります。

また、高校生活を送っているときは宗介のボケっぷりに笑い、敵と退治したときの兵士としての実力に憧れる、彼のギャップがヒーローとして魅了される所以です。ヒロインはかなめだけでなく、天然・銀髪のテレサ・テッサロッサがいます。ツンデレのテレサとかなめに翻弄される宗介の立ち位置には思わず嫉妬してしまいます。

ハーレム系かと思いきや、一途な宗介の姿はポイント高めとなっています。この宗介のおかげで女性ファンも多いようです。ミリタリーを題材にしているにもかかわらずギャグやラブコメなどの要素も含まれているので男女問わず読みやすくなっています。

2002年にはアニメ化もされ、2010年までに三期まで制作・放送されています。作品は原作となる長編と長編ストーリーを補佐するサイドアームズがあり、他にハードでシリアスな長編とは逆のコメディ要素の強い短編があります。

5位:天然ヒロインがかわいい名作SFラノベ!『紫色のクオリア』

自分以外の人間がロボットに見える……。毬井ゆかりは紫色の瞳を持つ中学生です。天然系でクラスではマスコット的存在。しかしあるときゆかりの周囲で奇妙な事件が起こり始めます。

主人公はゆかりの隣りにいる波濤学(はとうまなぶ)。物語の語り部として平行世界との交信をし、ゆかりを救うためにループしていきます。

著者
うえお 久光
出版日
2009-07-10

天然ヒロイン・ゆかりと周囲の変化がテンポよく進み、読みやすいだけでなく主人公・波濤学による一人称の語り口調が親しみのあるストーリーになっています。周りの人間がロボットに見える、という部分だけでなく時間や時空を超えた内容は引き込まれてしまいます。

ゆかりの天然というポジションにいるが故に許される狂気じみたセリフはどこか魅力的に感じます。作中にあるゆかりの「あたしの運命を変えられるのは 変えていいのはあたしだけ」というセリフは場合によっては学がしているループそのものを否定しかねません。しかしそこをうまくまとめて次に繋げているのがこの作品の素晴らしいところでもあります。

作品の中身だけを考えればかなりの長編になってもおかしくないような濃密さをうまくまとめています。認識の違いによって変わる構成といくつもの世界をめぐるループ系、パラレルワールドなどを組み合わせた『紫色のクオリア』は伏線と設定がしっかりとした、大作と言っても過言ではない作品です。

序盤はスロースタートですが、後半になるにつれて盛り上がってきます。何度もバットエンドを繰り返しながらエンディングを見つける、といういくつかの有名作品でも見られる手法ですが、ぜひこの作品のキャラクター、構成で読んで楽しんでみてください。

4位:サイバーパンク×オカルトファンタジー!『ブラックロッド』

偉業の町・ケイオス・ヘキサで、黒杖特捜官として勤めるブラックロッドが主人公。精神拘束によってすべての感情を封印した、死人のような顔つきの人物です。あるときケイオス・ヘキサにテロリストであるゼン・ランドーが潜入します。このテロリストを追うためにブラックロッドは行動を始めます。

著者
古橋 秀之
出版日

カースト制度と似た世界観で魔術や魔女などが登場するストーリーは和の要素が含まれたサイバーパンクなSFはとなっています。強力な力を持つブラックロッドや凶悪な犯罪者との退治は読んでいるとハラハラドキドキさせられます。

魔女だけでなく式神や天使、吸血鬼なども登場し、ファンタジー要素も含まれています。独特の世界観で硬派な内容と哀切を極めた作風は海外SFに通じるものがあります。SFラノベでよくあるサイバーパンク、というよりもオカルトパンクとでもいいたくなるようなグロさもあり、化学とオカルトを融合したような作風になっています。

オカルトの技術が発達しているという独自の世界観を盛り込んだ、カオス、オカルト好きの方にもおすすめしたい作品です。作中には気になる言葉もあり「マーチ調にアレンジされた般若心経」や「梵字の刻まれた破魔の弾丸」など想像力を掻き立てられるセリフもあります。

読むたびに隠された伏線に気付かされ、何度でも読みたくなってしまいます。サイバーパンクにファンタジー、オカルト要素など、読みごたえのある作品です。

3位:壮大なスケールで描かれるSF叙事詩『銀河英雄伝説』

遥かな未来、人類は「銀河帝国」と「自由惑星同盟」という2つの陣営に分かれて争っていました。銀河帝国は皇帝と貴族が支配する帝国であり、そんな帝国から抜け出した人々で作られたのが自由惑星同盟です。2つの陣営による戦いは、もう150年も続いていました。

著者
田中 芳樹
出版日
2007-02-21

そんな長い戦争に変化を与えたのが、若くして帝国軍元帥となったラインハルトと、自由惑星同盟の艦隊司令官であるヤンの2人でした。宇宙統一を目指すラインハルトと、「不敗の魔術師」と呼ばれるヤン。彼らは、互いにその実力や思想を頭から否定するような間柄ではなく、敵ではあるが好敵手のような関係になっていきます。しかしそんな2人も、歴史の大きなうねりへと飲みこまれていき……。

SF作品として80年代から親しまれている作品ですが、「後世の歴史家による記述」という体裁で描かれているため、銀河系を舞台にした壮大な歴史小説を読んでいるような気分にもなります。

そうは言っても、もちろん歴史の教科書を読むような、事実の併記ではなく、ラインハルトやヤンを始めとしたキャラクターの魅力が、壮大なスケールの物語をより身近なものに感じさせてくれます。

例えば、ラインハルトの腹心の部下であるキルヒアイスがぐんぐん背を伸ばすのを見たラインハルトを表した一文があります。

「ラインハルトは本気で口惜しがり、友人をおきざりにして自分だけ背を伸ばすのか、などと抗議口調で言ったものである」(『銀河英雄伝説』より引用)

どこか子供っぽい性格が滲んで見えるような描写は、思わず笑ってしまうような部分ですね。

壮大なスケールをじっくりと描いているので、勢いよく進んで行くタイプの物語ではなく、ゆっくり読み込むタイプの物語。時間をかけて壮大なSFを楽しみたい方は必読の作品です。

2位:日常と非日常の夏。おすすめ名作SFラノベ!『イリヤの空、UFOの夏』

主人公の浅羽直之は、中学2年生。平凡でどこにでもいる男子高校生ですが、どこかお人よしで流されやすい彼は「園原電波新聞部」という非公式の部活に所属しています。彼は部長の水前寺邦博と共に、夏休み中ずっとUFOを探していました。直之達の暮らす町には空軍基地があり、その周辺では何かとUFOの噂が絶えなかったのです。

著者
["秋山 瑞人", "駒都 えーじ"]
出版日

結局UFOは見つからずじまいで、そのうえ夏休み中をUFO探しに費やしてしまったので、夏らしい思い出は何もありません。そこでせめて少しでも夏の思い出を作ろうと学校のプールに忍び込みます。しかしそこには見たことのない少女がすでに忍び込んでいたのでした。

忍び込んだ学校のプールで出会ったのは、伊里野加奈という少女でした。彼女は直之の学校に転校生としてやってきますが、どこか不思議なところがあります。大量の薬を飲んだり突然鼻血を出したり、さらには手首に銀色の玉が埋め込まれていたり。そんな彼女にはある秘密があり、その謎が物語をどんどん牽引してくれます。

ボーイ・ミーツ・ガールものとしても人気があるように、直之と伊里野の交流はとても魅力的です。特にふたりが出会うプールのシーンはとても印象に残ります。

「浅羽に背を向けたまま、身動きもせずにひたすらプールの水面を見つめている。(中略)何かの実験でもしているかのような慎重さで、女の子は指先で小さく水をかき回す」(『イリヤの空、UFOの夏』より引用)

そしてこの物語のすごいところは少年と少女の出会いや青春を描くだけにとどまりません。軍事もののような専門知識が記述されたかと思うと、それとは正反対の日常の描写が美しい。普段あまりライトノベルを読まないという方でも満足できる内容で、夏になったらきっと読み返したくなる物語に仕上がっています。

1位:学園×タイムリープの王道ラノベ!伏線に気付けるか!?『タイム・リープ』

高校2年生、平凡な少女・鹿島翔香はある日昨日の記憶が無いことに気付きます。日記には自分の筆跡で見覚えのない文章がありました。

そこには校内トップクラスの秀才・若松和彦に相談するように書かれていました。そして翔香の相談に若松が出した答えは時間移動現象、タイム・ループでした。

著者
高畑 京一郎
出版日

高校を舞台に繰り広げられる時間移動現象・タイム・ループを扱った作品で、ループもので避けては通れないパラドックスもしっかりと描かれています。

SFや学園、恋愛の要素を詰め込んだストーリーは矛盾を感じることのない構成となっています。文章に無駄もなく、SFだけでなく青春小説のような雰囲気も持ち合わせています。

特にこの作品の見所は至るところに散りばめられた伏線。一度では気付くことのない伏線に2度、3度と読み返したくなります。すべて緻密に計算された構成に引き込まれること間違い無し、完成度の高い作品となっています。

徐々に真相に近づいていく様はミステリーのような感覚でありながらも軽い筆致でサクサク読むことが出来ます。どこか『時をかける少女』に似た部分もありますが、本作はループするごとに翔香の知らない状況があり、それをパズルのように解き明かす若松とのコンビネーションも注目どころ。

いくつもの伏線や時間をループすることで引き起こされた翔香と若松の感情のズレを紐解いた最後の「ただいま」という言葉の重みには感動します。

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