角田光代おすすめエッセイトップ5!『八日目の蝉』の作者が送る、珠玉の名編

更新:2021.12.14

登場人物たちの日常をリアルに切り取り、心情や言動を巧みに表現する作家・角田光代。その作品は、直木賞をはじめたくさんの文学賞に輝いています。小説だけでなく、鋭い視点から自由に語る、数々のエッセイも魅力。ここでは、そんな角田光代のエッセイに注目し、おすすめの作品をランキングにてご紹介していきます。

ブックカルテ リンク

多岐にわたる活躍を見せる作家・角田光代

角田光代は、1967年、神奈川県に生まれました。幼少の頃から本をよく読み、小学校に上がる頃には、作家になろうと決めていたそうです。大学は早稲田大学第1文学部文芸専修。卒業後、『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞を受賞し、作家デビューを果たします。

その後も数々の作品を積極的に執筆。2005年、『対岸の彼女』で直木賞を受賞すると、『八日目の蝉』や『紙の月』など、作品が続々と映像化され注目されます。その魅力は小説だけにとどまらず、エッセイや絵本の翻訳など多岐に渡って活躍中です。

5位・角田光代がお金について考えるエッセイ『しあわせのねだん』

角田光代が、お金に対する考え方を語るエッセイ『しあわせのねだん』は、これまでに購入した様々な物の値段と、それに関するエピソードが登場します。お金の使い方について、自身の考えを気さくに読者に語りかけているような文章は、彼女の親しみやすい人柄も感じることができます。
著者
角田 光代
出版日
2009-03-02
『昼飯 977円』・『ヘフティのチョコレート 3000円』・『電子辞書 24000円』などなど、購入した物とその値段が、そのままタイトルになっているのが面白いところ。意外なことにお酒が大好きだという角田光代は、20代の頃、服や化粧品にはほとんどお金をかけず、専ら飲み代にお金を使っていたのだそうです。ですが角田は、「それは無駄使いではなく、使ったお金にはちゃんと意味があった」と言います。

“今まで使ったお金が、どこかで今の自分を作っている”という言葉が印象的で、お金の使い方についてあれこれと考えさせられます。貯金が多いことが、そのまま人生の豊かさに繋がるわけではないのかもしれませんね。このエッセイを読んでいると、何にお金を使うのかがとても大事なことなのだと感じます。

エピソードが面白おかしくコミカルに綴られていくなかで、ある時は深く考えさせられ、ある時は驚き、ある時はしんみりと切なくなる、盛りだくさんの内容です。角田光代の人間性や、普段の生活を垣間見ることもできるでしょう。社会人になったばかりの、若い方たちにもおすすめしたいエッセイです。とても読みやすく書かれているので、気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。

4位・若さ溢れる角田光代の初エッセイ『愛してるなんていうわけないだろ』

角田光代がまだ20代だった頃の、初々しい初エッセイ集『愛してるなんていうわけないだろ』。彼女がこの頃を思い起こした最終章が新たに加筆され、復刊しました。とにかく若く、激しく弾けている姿が印象的で、今とのギャップには驚くばかりです。恋に友情に、青春を大いに謳歌している日々が綴られています。
著者
角田 光代
出版日
作家としてデビューして間もない角田。お金はなくても、時間とパワーだけはある24歳は、恋に遊びに大忙しです。若気の至りとも言うべき破天荒な毎日が、若々しい文章で綴られていますが、この頃から読者を引き込む絶妙な文体に変わりはありません。この年代にしかない強さやたくましさ、危うさなどが、包み隠さず語られ、ふと自分の過去を思い起こす方もいるのではないでしょうか。

そして新たに足された最終章では、すっかり大人になった角田の言葉が綴られていて、これまでの経験がどのように彼女を成長させたのかを伺い知ることができます。時代は違えども、今の若い方たちが読んでも共感できるところがあるのではないでしょうか。

まっすぐに全力で突き進むきらきらとした若さと、歳月の重みを感じることができ、なんとも言えない余韻を残す1冊です。

3 位・食べ物への愛を語る魅力的な食エッセイ 『今日もごちそうさまでした』

様々な食材をテーマに、食に関するエピソードが語られている『今日もごちそうさまでした』。ほぼ一日中、次の食事について考えているという角田光代は、小説の中でも美味しそうな料理をたくさん登場させています。このエッセイでは、角田の食べ物に対する愛が面白く魅力的な文章で表現されています。
著者
角田 光代
出版日
2014-07-28
角田光代は元々かなりの偏食だったらしく、食べられない食材がたくさんあったようですが、これがチャレンジしてみると意外と食べられる!ということに気づきます。新しい食材を開拓し、自身を“面倒くさがり”と言いながらも、果敢に料理に挑戦する姿はとてもたくましく感じます。登場する料理は、とても美味しそうに書かれているので、ついお腹が空いてしまうでしょう。好きな食べ物がどんどん増えていくのは、とても素敵なことですね。

可笑しくて吹き出してしまうような面白いエピソードを読みながら、食べるという行為がどんなに大切なことなのかを実感することができます。「美味しいものを食べながら、人は怒ることができない」という言葉には深く共感し、同時に自分の食べ物に関する記憶を呼び起こすことができます。

独特の視点で食べ物への愛が綴られ、楽しく食について学ぶことができる、魅力的な食エッセイです。実用的なレシピも紹介されているので、お料理好きの方は参考にしてみてはいかがでしょうか。

2位・世界中を旅する角田光代の旅エッセイ 『世界中で迷子になって』

旅好きの角田光代が、世界中を旅する様子と、買い物について綴った『世界中で迷子になって』。センスの良いタイトルが、とても目を引きますね。思い立ったらすぐに旅に出てしまうその行動力と、行動範囲の広さに驚かされるエッセイです。
著者
角田 光代
出版日
2016-08-05
大人になり、世界は広いということに気づいてから、世界中を旅するようになったという角田光代。20代の頃は無茶な旅もしたらしく、何かを見なければ、良い旅にしなければと必死で余裕がなかったと語ります。30代に入りお金と時間に余裕が出来てからは、旅の楽しみ方の幅が広がったようですが、20代には20代の、30代には30代の旅の楽しみ方があるのだと言います。

反面、買い物となるととても慎重。欲しいと思っても、実際に購入するまでに心の中でいろいろと葛藤をしている様子には、とても共感を覚えます。心の中でなぜか、買ういい訳をあれこれ考えている場面では、思わず笑みがこぼれるでしょう。

世界は広いとは知りながらも実際にはなかなか踏み出すのが難しいものですが、下調べも程々にすぐに世界のあちこちへと飛び立って行く彼女の姿には、とても勇気付けられます。失敗やハプニングも多々あり、決して優雅とは言えませんが、自分で考え行動し、多くのことを吸収していく様子には、やはりたくましさを感じます。

世界中の情景が、手に取るように伝わってくる風景描写もとても魅力的です。読めばあなたも旅に出たくなるかもしれません。

1位・愛猫との日常を綴った心温まるエッセイ 『今日も一日きみを見てた』

角田光代が、初めて飼うことになった猫との、愛おしい日々を綴ったエッセイ『今日も一日きみを見てた』。とにかく飼い猫のトトが可愛いらしく、微笑ましい生活に心が温かくなるエッセイになっています。
著者
角田 光代
出版日
2015-01-30
漫画家の西原理恵子から譲り受けた、というトト。猫を飼うことはまったく頭になかったそうで、買い始めた当初の角田は、初めてのことにあたふたとしていました。猫にもいろいろと性格があるようで、トトはとてもおとなしく、ちょっと鈍臭いところがとても魅力的です。淡々と飼い猫について綴っているだけなのですが、至る所に愛を感じ、トトの魅力が手に取るように伝わってくるので、猫好きにはたまらないでしょう。

ただトトを溺愛しているだけではなく、トトと出会う前と出会った後とでは、自分はどう変わったのかを冷静に分析しています。40代になり、精神的にも落ち込んでいた時期に、トトが訪れた意味について考え、「この生きものに助けられた。いや、今も助けられている」という言葉には、目には見えない絆のようなものを感じます。

猫の魅力がわかりやすく表現され、猫が好きな方にはもちろんおすすめしたい1冊。猫の魅力がわからないという方が読めば、なぜ多くの人から可愛がられているのか、理解できることでしょう。愛する生きものと暮らすという幸福な時間を、濃密に綴った、心優しくなれるエッセイです。

どれもとても読みやすく、角田光代という人物の考えがストレートに伝わってくる、魅力的エッセイばかりです。ぜひ気軽に読んでみてくださいね。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る