18歳に選挙権を引き下げた公職選挙法の改正などもあり、子どもの頃から政治について学ぶ機運が高まっています。しかしいざ興味をもっても、学校の授業だけですべてを理解するのは難しいものです。この記事では、小学生から読める政治入門におすすめの絵本や児童書を紹介していきます。
政治をさまざまな角度から紹介している作品です。
身近な話題や海外のトピックスにふれながら、政治の歴史や仕組みを解説していきます。
- 著者
- ["良成, 国分", "絵梨, 浜崎"]
- 出版日
原作は、イギリスの児童書出版社が刊行したもの。子どもから大人まで楽しめる政治入門書として世界14ヶ国に広がり、日本では2019年に刊行されました。国際政治学が専門の国分良成が監修しています。
イラストを多用した見やすいレイアウトと、素朴な質問に答える構成など読みやすさは抜群。身近なことを例に挙げながら解説してくれているのも嬉しいポイントです。
小学生でも十分に読めますが、大人でも意外と知らないことや考えさせられることが書かれているので、あらためて手にとってみるのもよいでしょう。
「政治って、超カンタンに言うと、大きな「お財布」のお金の使い道を決めることなんです」(『政治の絵本』より引用)
選挙権が18歳まで引き下げられた際に、笑いの力で若者たちに政治への関心をもってほしいと株式会社「笑下村塾」を設立したお笑いジャーナリストのたかまつななが、楽しく政治を解説します。
- 著者
- たかまつ なな
- 出版日
2019年に刊行されたたかまつななの作品。高校生向けにおこなった「政治教育ショー」にコラムなどを加え、総ルビをふって小学生から読めるように改訂しました。
前半では「今日から分かる民主主義」「選挙に行かないと損する仕組み」など政治に参加する意義を伝え、後半では日本が直面している課題も解説。子どもたちが日常で使っている言葉で文章が構成されているので、同級生と雑談をしているような感覚で楽しむことができるでしょう。
本文を補完している一コマ漫画も、わかりやすくも笑えるもの。遊び感覚で読めるのに、いつの間にか基本的な知識を身につけられる一冊です。
国民のひとりひとりが政治の主役となる「民主主義」。
その仕組みをわかりやすく解説したスペイン発の児童書です。
- 著者
- ["プランテルグループ", "マルタ・ピナ", "宇野和美"]
- 出版日
第二次世界大戦が終わった後も、独裁政治が続いていたスペイン。王政復古を果たし即位したフアン・カルロスは、民主主義にもとづく立憲君主制への移行を示し、1978年にようやく民主主義国家となりました。
本書は、当時のスペインの子どもたちに民主主義の魅力を伝えたもの。2015年に復刊し、日本では2019年に刊行されました。
民主主義とはどのような仕組みなのか、どのようにして維持されていくものなのか、誰が動かしていくものなのかなど、極めて根幹の部分ががわかりやすく解説されています。同じく民主主義国家である日本の政治を理解するのにも役立つでしょう。
美しくレトロな雰囲気のコラージュ画は、よく見ると風刺がきいていて、大人が見てもハッとする一冊になっています。
イタリアの思想家マキャベリが16世紀に発表した『君主論』。歴史上の君主を分析し、君主とはどうあるべきなのか、君主として権力を得て維持し続けるにはどんな力が必要なのかを論じた政治学の作品です。
本書は、そんな『君主論』を子ども向けに超訳した作品。これからの人生で役に立つ力を学ぶことができます。
- 著者
- 孝, 齋藤
- 出版日
2017年に刊行された齋藤孝の作品。ベストセラー『声に出して読みたい日本語』で知られる教育学者の作者は、本書のほかにも『小学生のための論語』『こども孫子の兵法』など子ども向けに古典を解説した著作を多数発表しています。
本書で紹介されているのは、原書の『君主論』にあるような政治的なリーダー像だけではなく、社会で生きていくうえで誰にでも必要なエッセンスばかりです。覚悟をもって決断すること、仲間との関係の築き方、努力の大切さなどを政治の古典を使って教えてくれているのが魅力でしょう。
難しい文章はなく、ほとんど絵本のようなので、小学生でも飽きずに読める一冊です。
朝起きてから学校や職場へ行き、夜寝るまで、1日の生活のなかにはたくさんの行政サービスが関わっています。
水道が使えること、ゴミの収集、道路の整備……私たちが快適に生活するためには、私たち自身が政治に参加することが必須なのです。
- 著者
- 新藤 宗幸
- 出版日
2008年に刊行された新藤宗幸の作品。新藤は行政学が専門で、立教大学や千葉大学などで教授を務めた人物です。
岩波ジュニア新書は、10代の読者を中心に、小中学生から大人まで幅広く読める入門書。本書では、日本の行政の歴史と推移、仕組み、課題などを解説してくれています。
冒頭では寓話を用いて行政というものがどのようにして生まれたのかを表現。大きい政治と小さい政治や、予算の組み立てとお金の流れなど、具体的にイメージできる説明も魅力です。
刊行当時から時間が経っているので情報が古い部分もありますが、行政の基本がわかりやすく整理されているため、十分参考になるでしょう。
薄汚れたお人形。仰向けにバンザイし、胸は赤く染まっています。添えられた手書きのメッセージにはこう書かれていました。
「ひとは、ひとを傷つけたり、どんな拷問も虐待もしてはなりません」(『ひとはみな、自由』より引用)
自分と他人を大切にする「世界人権宣言」の精神を、絵と文章で紹介した作品です。
- 著者
- ["中川 ひろたか", "中川 ひろたか"]
- 出版日
第二次世界大戦後の1948年に、国連総会にて「世界人権宣言」が批准されました。本書は、その60周年に世界最大の国際人権NGO「アムネスティ・インターナショナル」が制作した絵本です。世界30ヶ国で同時刊行され、日本語版は人気絵本作家の中川ひろたかが翻訳を担当しています。
見開きごとに優しい言葉に置き換えられた条文ひとつとイラストが載っていて、全30条の内容を簡単に理解できるでしょう。イラストの雰囲気にあわせた書体、細かな書き込みなど、クオリティの高い作品です。
「世界人権宣言」に書かれているのは、世界中すべての人が仲良く幸せに暮らすための基本的なこと。政治を考えるうえでも基礎になる部分です。そしてそんな基本的なことが、日本も含め守られていない現状に、あらためて考えさせられる一冊です。