なんとか生き延びるために、登場人物たちが知恵を絞るサバイバル小説。なかでも手に汗握るのは、無人島への漂流や航空機のハイジャックなど、自らの意志に反して起きる巻き込まれ型のストーリーです。この記事では、究極の状況を楽しめるおすすめのサバイバル小説を紹介していきます。
物語の舞台は、近未来。戦争が起こり、疎開をするために少年たちを乗せた飛行機が南太平洋の無人島に墜落しました。
唯一の大人だった機長は大怪我をして治療が必要なため、少年たちは助けを待ちながら、サバイバル生活を送ることになります。
- 著者
- ["ウィリアム ゴールディング", "William Golding"]
- 出版日
- 2017-04-20
1954年にイギリスで刊行された、「ノーベル文学賞」を受賞した経験もあるウィリアム・ゴールディングの作品。ジュール・ヴェルヌのサバイバル小説『十五少年漂流記』からヒントを得て執筆されたそうで、爽やかな冒険小説風プロローグから一転、人間の獣性と心の闇に焦点を当てた展開で物議を醸しました。
少年たちが不時着した無人島は、食物が豊富で生活には困りません。しかしジャックとラルフという少年がリーダー争いをするようになってしまいます。ジャックは豚を狩って御馳走を食べることで、ラルフ側についていた少年たちを仲間に引き込むカリスマ性を発揮。野性に目覚めて暴力的になり、ついには殺人を犯すまでになるのです。
タイトルになっている『蝿の王』とは、聖書に出てくる悪魔ベルゼバブのこと。秩序から切り離された無人島でのサバイバルで、少年たちの暴走はどこまで続くのでしょうか。人間の根源に迫る傑作です。
紀元前401年のペルシア帝国。ペルシア王だった父の死をきっかけに、兄アルタクセルクセスと弟のキュロスが王位争いをすることになりました。
しかしいざ戦争が始まると、キュロスがあっけなく戦死。戦場であるペルシアに取り残されたギリシア人傭兵1万数千人は、故国に帰還すべく6000kmの行程をサバイバルすることになるのです。
- 著者
- ["クセノポン", "Ξενθφων", "千秋, 松平"]
- 出版日
紀元前427年頃から紀元前355年頃まで生きたといわれる、古代ギリシアの軍人クセノポンの作品。傭兵だった彼自身の体験をまとめたもので、作者自身が語り手となり、物語が進んでいきます。
指揮官に選ばれたクセノポンは、敵と戦い、部隊内の対立や兵士の不平不満をまとめ、雪のアルメニア山中の難行に挑戦するなど、数々の苦難を乗り越えながら故国を目指します。タイトルの『アナバシス』とは、ギリシア語で「上り」という意味。山登りや乗馬、河の遡行などを表しています。
古代ギリシア人の精神や組織力を、いきいきとした人物描写とともに楽しめる一冊。史実ならではの驚きの展開など、戦記物としても楽しめるサバイバル小説です。
おぞましい戦争の記憶から逃れようと、南米へ渡り貨物輸送のパイロットとなった、元空軍のオハラ。
ある日、彼が操縦する旅客機がハイジャックされてしまいました。標高5000m、極寒のアンデス山中に不時着します。生存者はオハラを含む男女9人。生き残るために下山を始めますが……。
- 著者
- ["デズモンド バグリィ", "Bagley,Desmond", "徹, 矢野"]
- 出版日
1965年にイギリスで刊行されたデズモンド・バグリィの作品です。作者は第二次世界大戦時に戦闘機の製作に携わり、戦後はアフリカ各地を放浪した経歴の持ち主。本作はサバイバル小説史上屈指の名作として知られ、高く評価されています。
寒さと高山病に苦しみながら、命がけで下山をするオハラたちですが、道中で武装したゲリラと遭遇。一行は武器も食料も防寒具も持っておらず、もちろん戦いの経験もありません。そんな彼らがそれぞれの得意分野を活かし、驚くべきアイディアを出しあって何とか生き残ろうとする姿が魅力的。自然の脅威にも、ゲリラにも勝つことはできるのでしょうか。最後の最後までハラハラさせられる一冊です。
1977年、インドからカナダへ向けて出航した貨物船が、太平洋上で嵐に遭遇し沈没する事故が起きました。
一艘しかなかった救命ボートに乗り助かったのは、16歳になるインド人の少年パイ・パテルです。動物園を経営する父が連れていたシマウマ、オランウータン、ハイエナ、そしてベンガルトラのリチャード・パーカーとともに、サバイバル漂流をすることになるのです。
- 著者
- ["ヤン・マーテル", "唐沢 則幸"]
- 出版日
2001年にカナダで刊行されたヤン・マーテルの作品。ひとりの少年と4頭の動物たちが漂流するファンタジックなサバイバル小説で、2002年に「ブッカー賞」を受賞しました。
物語の肝となるのは、世界一美しく、危険な獣だといわれるベンガルトラ。サバイバルの恐怖と戦うために、パイはあえてどう猛なリチャード・パーカーを生かしたまま、生還する道を探ります。
またパイは、イスラム教とヒンドゥー教、そしてキリスト教という3つの宗教を同時に信じる者として描かれています。その深い信仰心と、野生と理性のせめぎあいで、しだいに真実と幻覚の区別がつかなくなっていくのです。
さらに読み進めていくと、最終章である第3部で作品の様子が一変。救命ボートに乗っていたのは、パイと動物たちではなかった……?サバイバル小説ではありますが、ある種の哲学書のようにも読める一冊です。
1860年、イギリスの植民地であるニュージーランドのチェアマン寄宿学校には、欧米の裕福な子息たちが通っていました。
夏休みに8歳から14歳の生徒が集まり、ニュージーランド沿岸を一周する旅を計画。しかし思いもよらぬ出来事が起こり、帆船は14人の生徒と見習い水夫の少年1人だけを乗せて、予定の前日に出航してしまうのです。
- 著者
- ["ジュール ヴェルヌ", "太田 大八", "Jules Verne", "朝倉 剛"]
- 出版日
1888年に刊行されたジュール・ヴェルヌの作品。日本では1896年に翻訳出版され、子ども向けに内容を簡略した『十五少年漂流記』のタイトルで親しまれてきました。
『二年間の休暇』というのは、原題を直訳したもの。内容も原作に沿ったもので、『十五少年漂流記』よりも上の年齢層に向けて出版されています。
少年たちは無人島に漂着し、必要なものを手に入れる方法を考え、なんとか生活を組み立てていきます。住居をつくり、水と食料を調達し、衣服を洗濯し……彼らは年齢も国籍も異なりますが、協力しなければ生きていけないと葛藤し、やがて秩序を作りだしていく姿に惹きこまれるでしょう。サバイバル小説の代表作ともいえる、読んでおきたい一冊です。
まるで火星のような赤一色の世界で目覚めた、中年男の藤木。近くにポツンと置いてあった携帯用ゲーム機で、謎の人物が仕掛けたサバイバルゲームのなかに拉致されていることを知ります。
参加者は、藤木を含めた9人の男女。当初は協力して脱出する術を探そうとするのですが、やがて自分が生き残るためには他の参加者を殺さなければいけないことを知り……。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 1999-04-09
1999年に刊行された貴志祐介の作品。臨場感と緊迫感がラストまで続く本作は、ホラーやSFを得意とする作者の本領が余すことなく発揮されています。
ひとりの女性とタッグを組み、情報を得るために奔走する藤木。しかし他のチームもそれぞれ武器や食料を手に入れています。やがて殺戮が始まり、中盤からは食人鬼も登場。殺される者と生き残る者、食われる者と人を食らう者が入り乱れ、どんどんと化けの皮が剥がれていく過程が見どころでしょう。
過酷な状況をサバイバルするために、高度な騙しあいと戦いが続き、アドレナリンの噴出が止まらない一冊です。