登山というものは決して楽なスポーツではありません。しかし山には人を魅了させるだけの力があります。山という過酷な状況下で繰り広げられるヒューマンドラマを是非これらの作品で体験してください。
この作品は山野井泰史という実際に存在している人物を描いた作品です。彼は妻の妙子とともに、登山家として有名です。
この小説は彼ら夫婦のギャチュンカンでの登山の体験を描いた作品です。山野井泰史の登頂の特徴として、最低限しか持たずに登山するというのが挙げられます。本書でも7000メートルを超える山に酸素ボンベ無しで挑戦するのです。
- 著者
- 沢木 耕太郎
- 出版日
- 2008-10-28
しかし山の状況は厳しく、天候も悪いため、凍傷を負いながらも立ったまま寝なければいけないという状況にも立たされます。遭難する可能性があった中で二人は夜を明かします。
このような厳しい状況に立ちながらも、彼ら夫婦は弱気にならず、むしろ「この時が人生で一番幸せなのかもしれない」と思うのです。真っ白でひたすらに寒い中でぽっかりと浮かぶ二人の人間の命と心。その美しさがこの作品の魅力です。
私たちには理解できませんがこれが登山家の姿なのかもしれません。夫婦の山に対する姿勢から多くのことを学ぶことができると思います。命の危機に晒されながら、人間の強さを感じられます。
また、この作品はノンフィクションで実際に起こった話だからこ、緊迫感を感じることができると思います。
冒険家として有名な植村直己さんの小説です。彼が100ドルだけを持ち、日本を飛び出して冒険し、世界の山に挑む、というストーリーです。
- 著者
- 植村 直己
- 出版日
- 2008-07-10
登山家としての成功体験の話ではなく、自分の青春時代を冒険ということに費やした植村さんにだから書けるリアルな話です。海外で逮捕される、外人と一夜を過ごす、登山中に死にそうになった話など、貴重な体験が詰まった小説です。
この作品は多くの若い人に読んでいただきたいもの。自分の夢に向かってひたむきに頑張る姿、どんな逆境にもあきらめない心を学ぶことができます。
命がけで自分の好きなことに取り組んだ植村さんだからこそかけた生命力溢れる小説です。新たなことに挑戦する勇気をもらえると思います。
実際にいた孤高の登山家である、加藤文太郎という人物についての作品です。
当時裕福な人のものだけであったとされる登山を、社会に広めた人物の一人とされるのがこの加藤文太郎です。加藤の生きた日々は決して楽なものではなかったのですが、山に魅了され、山に愛された人間の充実感があった生涯でだと感じられます。
- 著者
- 新田 次郎
- 出版日
- 1973-03-01
この作品は加藤文太郎の学生時代や、恋愛、登山について書かれた小説ですが、山を表現する言葉が美しい。この小説を読みながら、壮大で凛とした山を想像することができます。
この作品の軸として、「なぜ山に登るのか」という問いがあります。なぜ山に登るのか、その答えは直接この小説には書かれていません。しかしこの小説を読んでいく過程で、私たち読者にその意味を教えてくれるような、美しくも力強い言葉が溢れています。
ぜひ、「なぜ山に登るのか」という問いの答えを、この小説から感じ取ってください。
この作品は、直接「山」に関する小説ではありません。「岳」という子供の成長を見守るお父さんによる私小説です。
岳の学童期の様子がお父さんからの視点から書かれているので、とても微笑ましい描写がたくさんあります。例えば、岳が好きな女の子に振られてしまうエピソードです。その様子がお父さんの視点から描かれることでなんとも可愛らしいエピソードになっています。
- 著者
- 椎名 誠
- 出版日
- 1989-09-20
お父さんである、作者の椎名さんはこの作品をシベリアや南極を駆け回っている中で、書き上げたようです。
どうしても仕事で海外に行かないといけないお父さんは、息子岳のために釣りに一緒に出かけます。このシーンが父と息子という男の友情が描かれているので特にオススメです。
等身大の父親の目線から書かれた小説なので、子供を持つ親の方、またお父さんとの深い思い出を持っている方には是非読んでいただきたい一冊です。
前人未到であったエベレストの最難関ルートであった南西壁の冬季単独登頂に挑んだ、羽生丈二の物語です。
しかしこの作品は彼の登山記録を描いたものではなく、主人公の男性がたまたま出会った男が、ヒマラヤで事件により姿を消していた羽生丈二であった、という面白い構成になっています。
- 著者
- 夢枕 獏
- 出版日
- 2000-08-18
主人公・深町誠もまた登山家です。登山家が登山家を追うという構成で、登山に失敗し、恋人ともうまくいかなくなった深町が羽生丈二という男に魅了されていくという話です。
また、この作品は「なぜ山に登るのか」、「そこに山があるからだ」という言葉で有名なジョージマロニーの謎についても描かれています。その謎というのは、マロニーはエベレストで遭難し、行方不明になるのだが、マロニーが遭難したのは登頂前なのか、下山中なのか、ということです。そのマロニーが持っていたというカメラがこの作品で重要な役割を果たしています。
そして、羽生丈二は世界初となるエベレストの南西壁冬季無酸素単独登頂に挑戦することになります。そこに深町もカメラマンとしてついていくことになり、物語は佳境を迎えます。
エベレストという登山家にとっては憧れの山に挑戦し続ける男に注目にした、小説です。男が憧れる男、羽生丈二の生涯を是非お読みください。
今回は、山に関する作品について紹介させていただきました。山という壁に戦う人々を描いた作品はとても読み応えがあり、感動があります。「なぜ山に登るのか」「山の頂上には何があるのか」という問いについて、それぞれの作品で向かい合うことになると思います。そんな答えが出ない問いを求め続けた登山家たち、冒険家たちの生涯をこれらの作品から読み取って下さい。山や登山には私たちの生活のヒントとなることが多くあるのかもしれません。