長期的な視点でリスクを小さく抑えた最強の投資法「インデックス投資」。本記事では、この投資法を伝え続けるロングセラー『ウォール街のランダム・ウォーカー』を紹介していきます。 日本の個人資産の約半分は預金として保管され、日本人は貯蓄好きな国民と言われています。投資に消極的な理由の1つが「リスク」。投資はリスクをともなうもので、絶対に成功する保証はありません。 しかし、株式投資で勝つ方法はなくても、負けにくい方法は存在します。本記事では、負けない投資方法から、すぐに使える投資のポイントまでわかりやすく解説。
株式投資では、株の値動きがこれからどうなるかを予想して売買の判断をします。一般的な分析方法としてよく取り上げられるのが「テクニカル分析」と「ファンダメンタル分析」。 どちらの分析もメリット・デメリットがあり、投資家それぞれが自分の信じる手法で投資を行っているのです。
しかし本書の著者は、「ファンダメンタル分析もテクニカル分析も市場平均を上回るリターンを上げ続けることはできない」と断言。 この発言は、投資の歴史を振り返ると、株価はランダムに変動してきたという明確な根拠がありました。
そして著者は、最も簡単で最も長期的なリターンが期待できる資産運用として「インデックス投資」を勧めます。
本書では、誰にでもはじめられる手軽な投資法から、投資の際に心得ておきたいことが学べるため、 「将来に備えてお金を貯めたいけれど、預金だけではなかなか増えない」などこれから株式投資を始めようと考えている人、あるいは資産運用の方法を探している人におすすめです。
また、株の運用成績が悪いため、他の株式投資の方法を模索している人や、インデックス投資に興味がある人にとっても、ファンダメンタル分析、テクニカル分析などの投資理論から学びの機会となります。
- 著者
- ["バートン・マルキール", "井手 正介"]
- 出版日
本書のタイトルにもある「ランダム・ウォーク」とは株式の理論の1つで、「株価の動きは予測不可能で、決まった法則性はない」という考え方。 日本語では「乱歩」や「酔歩」とも呼ばれます。酔っ払いがふらふらと歩く姿から、どっちに動くか確率が半々であることを表します。
ランダム・ウォーク理論を説明する際に用いられるのが「猿のダーツ投げ」という有名な話。猿に新聞の株式欄を狙ってダーツを投げてもらい、当たった株式銘柄に投資します。すると、株式専門家が選んで投資した結果と比べても、利益に大きな差がなかったのです。
この理論は、株価の動きは長期でも短期でも、上昇か下降か両方の可能性があり、統計や分析によって将来の値動きを予測できないと言います。
次に、株式投資において利益の出やすい2大手法「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」について説明します。
まずは、ファンダメンタル分析。一言で表すと「企業を分析し投資の判断をする」方法。 企業が発表するデータから財務の状況について分析を行い、企業の本質的な価値を考えます。 企業の価値と株価を比較して株価が安くなっていれば買うというのが基本的な戦略。 株価が「割安」なのか「割高」なのかを考えて売買をする手法のことなのです。
もう一方の「テクニカル分析」とは、一言で表すと「過去の株価の動き方から投資の判断をする」方法。世間にイメージとして広まっている 「株式トレーダー」のような手法で、株の値動きを表示する「チャート」からさまざまな指標を用いて売買のタイミングを分析します。
ファンダメンタル分析をおこなうには、経済や財務に関する知識を身につける必要があり、テクニカル分析では、分析指標やチャートの形から売買ルールを決めて機械的に売買します。
次に本書が進めるインデックス投資について。インデックスとは「指標」という意味で、日経平均株価やTOPIXといった株式の指標に対する投資をインデックス投資と呼びます。 これに対して、インデックスよりも大きな利益を求めて個別に株を選んで投資するのことを「アクティブ投資」といいます。
先ほど説明した「ファンダメンタル分析」、「テクニカル分析」で投資する株式を選択することもこのアクティブ投資に該当します。投資の対象を狭めた攻めの投資方法なので負ける時のダメージも大きくなりハイリスクです。
一方で、インデックスはTVでも情報が流れるくらい簡単に知ることができる数字で判断できるため、とても分かりやすいのがメリット。 株に興味がない人でも、「日経平均が上昇している」などはニュースで容易に知ることができ、今後の動きも想像もしやすくなります。
アクティブ投資が「大きく勝つ」ことを目的としているのに対し、インデックス投資は「負けないこと」を目的とした投資になります。
株を投資運用する期間は大きく「短期」と「長期」に分けられます。 厳密に期間を定められてはいませんが、短期投資とは数時間から数週間を指し、値上がりしたら売却します。一方の長期投資とは数年から数十年単位になり、将来の成長性を期待して購入します。
短期取引では、変化し続ける株価を常にチェックする必要があります。一方、長期投資であれば、値動きを頻繫に確認しなくて済むので、会社に勤める人の本業の妨げにはなりません。
また、長期投資では、これ以上株価が上がらないだろうと判断した場合にのみ売却するため、短期投資に比べて取引手数料や税金などの費用を抑えることができるメリットもあります。
分散投資は「資産分散」と「時間分散」の2つに分類できます。
時間分散とは、時間を空けて複数回に分けて購入すること、あるいは複数回に分けて売却することを指します。分散して投資することで、高値での購入や安値での売却のリスクを和らげることができるのです。
資産分散とはそのまま、複数の資産へ資金を分散することです。1つの株だけに集中投資するとリスクが大きくなってしまいます。 たとえば、1社だけに投資するとその会社が倒産してしまうと投資したお金がなくなります。 しかし、10社に分散して投資すると1社が倒産しても投資したお金へのダメージは最低限に抑えられます。
リスクを軽減するためには投資金額を分散することが効果的になるのです。
株式投資について慣れてきたら、海外の株式市場にも目を向けていきましょう。 株価は企業の業績に連動し、企業の業績は(通常)、国の経済成長に連動しています。日本は停滞が続いており、今後も少子高齢化によって経済の成長が望めない恐れもあります。
世界を見てみると、アメリカなど日本以外の先進国の株式投資で得られる利益は日本より高く、新興国はさらに利益が大きくなる株もあるのです。
一方で、海外投資は、ため替の影響を大きく受けたり、日本にはないルールがあったりするので、必要な知識は事前に確認しておきましょう。
思考停止型とは、インデックスのとおりに購入し、そのまま寝かせておくことです。本書で1番推奨されている投資方法になります。
また、株式市場の指数に連動するインデックスを組み合わせることで、分散投資も実現。 特に「日経平均株価」は日本人の投資家にとって身近で、人気が高いです。 インデックス投資を始めるのであれば、真っ先に検討したい選択肢になります。
この投資をおこなう際には、売買手数料などの投資にかかる費用を把握し、限りなくゼロになるように気を付けましょう。
こちらの投資方法は、株式投資において重要なポイントに気を付けたうえで、自分で購入する株を選択します。重要なポイントとは、割安か割高か、今後の将来性などの判断基準を指します。これにより、リスクをある程度抑えた投資ができると著者は言います。
この投資法では、株式売買益にかかる税金が懸念されるため、株を購入したら、できるだけ長く保持しておくことがおすすめ。
利益が出ないからといい、すぐに別の投資手法に乗り換えてしまうと損をしてしまうこともあるので、このことも心得ておきたいです。
最後に紹介するのは、信頼できる投資マネージャーに運用を任せる方法です。 聞きなじみのある「投資信託」がこれに当てはまり、投資家はお金を預けて、運用の専門家を信じて投資を任せます。
投資信託とは、文字通り「投資を信じて託すこと」。投資家はお金を預けて、運用の専門家であるファンドマネジャーを信じて投資を任せます。 投資する方はお金を預けるだけで、投資マネージャーの投資が成功すれば、投資家が預けたお金が増えていくのです。
しかしながら、残念なことに市場平均を超えるパフォーマンスを実現できる投資マネージャーはほとんどいないと著者は語ります。 人気の高い投資信託でも、市場以上の投資の成果はほとんど得られないことは意識しておきましょう。
こちらは、インデックス投資について、他の著者の考え方も抑えたい人へおすすめです。本書は、アメリカで100万部を超えるロングセラーになっています。
現在の株式市場はプロの投資機関であふれ、短期間で利益を狙いに行くことは「負け戦」となってしまうことが多くあります。そこで著者は、敗者のゲームで戦うことは止め「インデックスファンド」を活用するべきと語ります。
- 著者
- ["チャールズ・エリス", "鹿毛 雄二"]
- 出版日
手軽に株式投資の基本を学びたい方におすすめなのがこちらの一冊。基本となる部分は図解を交えて説明してくれる読みやすい株の入門書になります。
株の初心者の主人公が経験者に学びながら1人の投資家として成長していくストーリー。口座の開き方や銘柄の選び方から始まるので、初心者も安心して読み始められます。
- 著者
- 安恒 理
- 出版日
投資に興味を持ち、株式だけでなく資産運用全般の知識を身に付けたい人にはこちらがおすすめ。貯蓄、保険、株式投資、債券投資、外貨投資、FX、投資信託への基本知識が身につきます。
ファイナンシャルプランナーである著者が、初心者が買うべき投資商品、買ってはいけない投資商品を紹介。イラストも多用されており、「資産運用」について知識がまったくない人でも、理解しやすい内容です。
- 著者
- 風呂内 亜矢
- 出版日
いかがだったでしょうか。今回は投資初心者でもできる「ローリスクミドルリターン」な投資方法についてお伝えしました。「各年齢に応じた理想的な資産配分の例」など、本記事では紹介しきれなかった、投資の参考となる内容がまだまだあります。長い時間をかけながら、確実に投資で成功したい人のための一冊でした。