『教え子がAV女優、監督はボク。』作者がAV業界に入った経緯や制作現場の裏側を教えてもらった!

更新:2023.3.6

前回に引き続き『教え子がAV女優、監督はボク。』の著者である村西 てんがさんに、AV業界に入った理由や制作現場の裏側、作品の今後の展開についても話を伺ってみました。

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AV業界に入ったきっかけとは

ーAV業界に入ったのはどういった経緯だったのでしょうか?

村西 もともとは漫画を描いて生活していきたくて、大学卒業後すぐに上京しました。でも漫画を描くためにも、他で働ける場所が必要で。そこでたまたまAV会社の求人を見つけたんですよね。そのとき「家から近いし、ここならいいや」みたいな感じで決めました(笑)。

自分自身、当初はAV業界には世間と同じようなマイナスなイメージもありましたが、「飯のタネになるかもしれない」と思っていったら普通に受かって、そこからAV業界に足を踏み入れました。

働き始めると、漫画家志望だっていうこともあって小道具で絵が必要になると「ちょっと絵を描いてくれ」といった仕事が舞い込むようになりました。それで「AVのことって漫画に出てたら面白いかも」と考え始めました。

ーペンネームである“村西てんが”はどういった由来が?

村西 まず“村西”は『全裸監督』の監督でもある村西とおる監督が一番好きだからという理由です。リスペクトする監督で、日本でも有名な監督でもあるので、姓をちょっと拝借してみました。名のほうも、いわずと知れたアダルトグッズの名前から・・・ですね。

超リアル!AV制作の裏側

ー絵を描く仕事の依頼もあったということですが、そういった業務は結構多いんですか?

村西 そうですね。ADの業務を担当していたこともありますが、デザインの業務をメインにしていたときもあって、そのときはAVのジャケットを制作していましたね。

他にも『美人素人100連発』みたいな裏のキャッチコピーとかもつくってました。

これは本当に裏側の話ですが、どうしても期日間に合わない作業があって自宅で作業をしていたときがありました。

当時、恋人と同棲していたのですが、恋人のパソコンで作業をしていたんです。だから使用しようとしていた修正前の写真や他のデータを見られてしまって…。

後々恋人から「パソコン勝手に使わないでくれる?」と言われて、苦い思い出ですね。

ーええっ!そんなことが!それは気まずいですね(笑)恋人さんと喧嘩にならなくてよかったですね。ちなみに、一緒に緒に働いている人たちにはどういった経歴があるんでしょうか。

村西 さまざまな人がいますよ。AV業界と外資系コンサル会社から両方内定もらって、真剣にどっちに行こうか悩んでいた人もいましたし、自衛隊出身の男の子とかいました。

―本当に色々な方がいるんですね。そうなると、企画を考えたりとかするときとかも、そういう人たちの元いた職場の事情みたいなのを聞きつつ、つくり込んでいったりとかってあるんでしょうか?

村西 それもありますね。わからないことがあったりとかしたら、経験がある人に「ここどういうふうだった?」とかヒアリングすることは多いです。

AV業界で出会った人がキャラのヒントに!

ー企画の細かい部分には現場の方達の経験が反映されているんですね。『教え子がAV女優、監督はボク。』の主人公にもモデルがいたりするのでしょうか?

村西 内面に関してはもう、ほぼないですね。本当にキャラクターを考えるときに、とにかくエロと相反するキャラクターをつくって、AV業界と真っ向から対立できるようなキャラクターをつくりたいなというのはありました。とにかく真面目な性格を強調したかったですね。

見た目に関しては担当さんから「イケメンを描いて」と指示があったこともあって、ある俳優さんを参考にさせてもらいました。

ーヒロインや周りの女の子のほうはどうですか?

村西 ヒロインの灯ちゃんに関しては、これも「かわいく描いて」と指示がありましたが、なかなか可愛く描けなくて。さまざまな女性芸能人のパーツを参考にして描きましたね。

作中に登場するAV女優の子の場合は、内面は今まで過去に会ってきたインパクト強い女の子たちのことが多いです。見た目も「この子だといいかな」というAV女優さんの要素を混ぜこぜにして描いています。

―見た目は今まで出会ってきた人たちを元にされているということでしたが、性格などはどうイメージしてつくり込んでいるのでしょうか。

村西 主人公の先生とヒロインの灯ちゃんに関しては「こういうキャラクターをつくるぞ」というイメージがあったので、キャラクターシートというをつくっていました。

先生は「こういうキャラだから頑固で独りぼっち」となったときに、灯は「絶対心折れることがあるからずっと寄り添ってくれるような女の子がいいな」というように、大きなテーマを持ちながらゼロからつくっている感じですね。

出典:『教え子がAV女優、監督はボク。』1巻

脇役とかAV女優の子に関しては、たとえば西寺が働いている会社の社長は、自分の理想の先輩像を入れ込んだりしています。

逆に西寺の先輩役である安藤というADは、AV業界のADをギュッと凝縮したキャラなんですよね。

メインのキャラクターはもうゼロからつくり上げて、脇役に関しては、今までの経験とか会った人をそのまま落とし込むみたいな感じが多いです。

ーマンガワンの作者コメントで、「友人に似ているキャラ出したら、『出演料出して』と言われた」と書かれていたのを拝見したのですが。

村西 言われました(笑)。女の子描くの苦手だなと思ったときに、適当にサラサラサラって描いたらすごい友達に似てまして。そのまま写メして送ったら、「出演料ちょうだい」って言われましたので、後日会ったとき酒をおごりました。

サブタイトルの秘密

―サブタイトルに曲のタイトルが使われている理由は?

村西 自分自身タイトルを付けるのが下手なんですよね。この漫画のタイトルも私が付けたのではなく、担当さんにアドバイスをもらった結果です。

でも、ネームを描くときに大きいテーマを決めて描きつつ、それに合うような音楽を聴いています。なので、サブタイトルに付けている曲は、そのときに聴いていた曲の歌詞と内容がリンクしていることが多いですね。

―そのテーマを決めるときは、元にしているものはありますか?

村西 おおまかに「第○話ではこういうことを描こう」という道筋はきまっているので、そこから逆算して「今回はこのテーマだな」と決めていますね。それを見ながら「今回はこの話だな、ふむふむ」とネームを描いて進めていきます。

最終話に向けた今後の展開を少しだけ教えて!

ー最終回が近いといった説もあるようですが、今は進行度的にはどのあたりですか?

村西 最終回はまだ先の話です。

全部オチは決まってはいますが、ずっと同じことやっているわけにもいかないので、読者の方の反響を見つつ追加のエピソードを入れたりしています。

進行度としてはすごいスピードで進んでいるわけでもないのですが、遅すぎることもなく、いつでも本題にガッと入れるようにはしていますね。

―じゃあわりと、ちょうどいいペースというか。

村西 そうですね。上手い具合に潮流を合わせられるようなペースにはしております。

ー今後やりたい展開はありますか?

村西 やりたい展開ですか…でも本題にガッて入りたいですね。

やりたいシーンとしてはミラーな車に乗せてみたいなっていうのは考えています。あとは主人公の先生がもう監督デビューして作品を撮ってますので、その後のことも描きたいなとはずっと思ってました。

例えば、パッケージのデザインやキャッチコピー、写真の選出も全部あれは自分で考えなきゃいけなくて、そのあたりのも描ければなと。

まぁ、今後のお楽しみということで。

ーわかりました。今回AV業界の裏側だけではなく、村西さんの経験についても伺うことができて、より作品への理解が深まりました。ありがとうございました。

村西 ありがとうございました。

まとめ

まだまだ描きたいことがたくさんあるということなので、今後の展開がますます楽しみになってきますね。

AV業界という題材で倫理的なテーマを描くのは非常に難しそうですが、現場の人たちと一緒に仕事をした経験があるからこそ、リアルなキャラクターやストーリーを生み出せるのかもしれませんね。

村西さんのインタビューから、AV業界に対するイメージが変わった人も少なからずいるのではないでしょうか。

ぜひ、AV業界にマイナスなイメージがある人にこそ読んで欲しい作品です。

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