連載開始から30年の時を経て、アニメ化が決定した漫画『東京BABYLON(東京バビロン)』。この記事では、漫画『東京BABYLON』の見どころをネタバレありで考察していきます。東京を舞台に陰陽師がくり広げる、シリアスストーリーの面白さはどこに秘められているのかを深堀していきます。
「あなたは東京がきらいですか?」という印象的な問いかけからはじまる『東京BABYLON(東京バビロン)』は、1990年~1993年に連載されていた漫画。まだ東京スカイツリーがない頃の東京が舞台で、東京タワーが象徴的に登場します。
昼と夜の人口差が200万人以上にのぼる不夜城都市・東京で、怨霊や生霊・怪現象などの依頼を日々こなしていく高校生陰陽師の皇昴流(すめらぎすばる)。昴流は双子の姉・北都(ほくと)と2人暮らし。昴流と北都は動物病院を経営する獣医師の桜塚星史郎(さくらづかせいしろう)と、お茶をし他愛ない会話をする日々を送っていました。
昴流の元に次々と舞い込む、陰陽師の力を必要とする依頼たち。なかにはやり切れない思いを抱える依頼もあり、苦悩をすることも。そんな昴流の姿を心配し見守る北都や、星史郎が語りかける言葉に支えられ昴流は奮闘していきます。
昴流の記憶の底に眠る、子どもの頃の記憶。それは桜の下で出会った1人の青年と交わした、とある賭けの約束……。
この桜の下で交わした賭けが物語の重要な役割を担い、時折その時の記憶が顔を出します。本作は東京という不夜城都市を舞台にくり広げられる、陰陽師が主役のシリアス漫画です。
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- CLAMP
- 出版日
1993年の連載終了から28年の時を経て、2021年にアニメ化が決定した漫画『東京BABYLON』。ここでは2021年3月現在発表されている、放送開始日などの気になる情報をまとめていきます。
アニメは原作の1990年代の東京から2021年の東京へ舞台を移し、『東京BABYLON 2021』というタイトルで放映されます。
当初、2021年4月放送開始を予定していましたが、衣装の模倣問題を受け放送開始日が延期となりました。延期後の具体的な放送開始日はまだ発表されていませんが、アニメタイトルに2021が含まれていることから2021年に放映開始されることが予想されます。
アニメ『K』などを手がけたGoHandsがアニメーション制作、鈴木信吾が監督を務めます。オープニング曲を皇昴流役の声優・蒼井翔太が、エンディング曲を皇北都役の水樹奈々が歌うことも発表されています。
放送開始日決定の報せが、今から待ち遠しいですね。最新情報はTVアニメ「東京BABYLON 2021」公式サイトでご確認いただけます。
詳しい原作の内容は後述しますが、90年代当時の社会の闇を反映させた物語である『東京BABYLON』。アニメでは2021年が舞台ということで、登場人物らが抱える闇も2021年にアップデートされた内容になるそう。
なぜ30年越しの今、復活するのだろうか?と疑問が浮かびます。考えられる理由の1つとして、作品内の登場人物らが抱える悩みは2021年に生きる我々にも解決できていないこと。令和になっても共感できる部分があるからではないでしょうか。また他の理由として、新たにこの作品に出会う層にも、この作品が愛されるだろうと考えられたのだといえます。
原作とまた違う楽しみ方に期待ができる本作のアニメ化。作中に登場する「木村屋のあんぱん」などのアイテムもアニメで見ることができるのか注目です。
2021年にアニメ化が決定した漫画『東京BABYLON』ですが、過去にOVAが発売されています。OVAは『東京BABYLON A SAVE FOR TOKYO CITY STORY』、『東京BABYLON2』の2作を発売していて、いずれもオリジナルストーリー。
OVAのキャストは皇昴流をアニメ『ONE PIECE』のウソップ役などで人気の山口勝平、皇北都をアニメ『ドラゴンボールZ』の人造人間18号役で知られる伊藤美紀、桜塚星史郎をアニメ『銀魂』の高杉晋助役などで有名な子安武人が演じました。
また本作は1993年に実写映画化もしています。NHKの朝ドラ『半分、青い。』など今も多数のドラマや映画に出演し活躍し続ける、東根作寿英が主役の皇昴流を演じました。原作のその後から続編『X』までの物語を描きました。
本作はアニメ、実写、漫画、様々なメディアで制作され、異なった表現を楽しむことができる作品なのです。
東京が舞台の漫画『東京BABYLON』の主人公は、どんな人物なのでしょうか。
主人公の皇昴流(すめらぎすばる)は、16歳の高校生。将来の夢は、動物の飼育員になること。瓜二つの容姿を持った、双子の姉がいます。日本の陰陽師の頂点に立つ「皇一族」の13代目当主を務める、屈指の陰陽師でもあります。
心優しく素直で純粋な性格の持ち主で、天然な一面を持っています。自分をあまり大切にせず、まわりに心配をかけることも。人の痛みに寄り添おうとしたり、脆い部分がある危うさを秘めた主人公です。
物語の核の一端を、昴流の過去が握っています。
アニメ『東京BABYLON 2021』では、『少年ハリウッド』の富井大樹役や『うたの☆プリンスさまっ♪』の美風藍役などで知られる蒼井翔太が声優を担当します。
昴流を支える唯一無二の存在。それが双子の姉、皇北都(すめらぎほくと)。
昴流と瓜二つの容姿をしている北都ですが、性格は正反対。天真爛漫な性格で言いたいことは言う、やりたいことはやる性格。独特のファッションセンスを持っており、毎回様々なファッションで読者を楽しませてくれます。
昴流が着る服も、北都が選んでいます。正反対な性格の2人のやり取りは、テンポよく軽快なリズムで見るものを楽しませてくれることも。
あまり表立って口にはしませんが、弟を大切に思う心優しい姉でもあります。そんな北都を、壮絶な運命が待ち受けています。
アニメ『東京BABYLON 2021』では、アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のうずまきヒナタ役などで人気の水樹奈々が、北都に声を吹き込みます。
ヒロインが存在しない本作で、ヒロイン的ポジションを担う存在なのかも……。と匂わせる、桜塚星史郎(さくらづかせいしろう)。
25歳の獣医師で、表向きは温和なお兄さん的人物。昴流や北都と茶のみ友達的な存在と思わせつつ、昴流を大切に思うような節を覗かせます。昴流と星史郎の中を北都が取り持とうとするさまは、時折コメディタッチに描かれ場を和ませます。
しかし実は裏の顔があり、感情が欠落した冷徹な一面がある星史郎。そんな星史郎と昴流の過去が、物語の一角を握っています。星史郎の肩幅の大きさが、原作とアニメで異なることも話題に。その点にも、注目してみてはいかがでしょう。
アニメ『東京BABYLON 2021』で星史郎の声優を務めるのは、アニメ『あひるの空』の八熊重信役など多数の人気作に出演している梅原裕一郎です。
漫画『東京BABYLON』で物語の中心を担う、陰陽師という職業。ここでは本作に登場する、陰陽師の流派について考察していきます。
本作で登場する主な流派は以下の2つ。
現当主を昴流が務める流派で、遥か昔から日本を霊的に支えてきました。日本の陰陽師の頂点に立つ存在として、作中に登場します。ちなみに先代の当主は、昴流の祖母。
表舞台に姿を現すことのなく、影から日本史を支えてきた流派。皇一族が表なら、桜塚護は裏。裏家業を生業とする、暗殺集団と言われています。姓に桜塚を持つ星史郎と、何らかの関係があるのではないかと物語当初から思わせる節があります。
皇一族と桜塚護が、どう関係していくのかも本作を楽しむポイントのひとつとなります。
昴流と北都と星史郎の3人が人間ドラマをくり広げる漫画『東京BABYLON』は、どういったところが見どころなのでしょうか。
本作では陰陽師の力を必要とする事件が多数登場します。陰陽師として昴流が事件に対峙していくうえで、直面することになる生きるための現実。それが本作を読む際の見どころとなります。
作中にはダイヤルQ2、終末思想、夢破れて都会に押しつぶされてしまった者、幼児誘拐、凄惨ないじめ、新興宗教、臓器移植など様々な事件が登場。90年代の社会が生み出した闇に、スポットをあてた事件も描かれています。
その事件を単なる事件、そして事件解決という流れで終わらないのが本作。事件に関わった人々は少なからず、心に闇を抱えています。中には救われることのない辛い現実があり、心が負けてしまうという描写も。弱さや辛さに負けてしまった時に、人はどうなってしまうのか。もしかしたら目を背けたくなる、そんなシーンもあるかもしれません。
このように本作は社会派漫画の側面を持っているうえ、しっかり人間ドラマとしても機能します。人間が持つ弱さや醜い部分をオブラートに包まずさらけ出し、心の機微をリアルに描く。読み手に辛さを与えつつも、鮮烈な印象を残す。それが本作の魅力といえるのではないでしょうか。
読者に様々な事件を通して、鮮烈な印象を与える漫画『東京BABYLON』が迎える結末はとても衝撃的。ここでは本作の結末を、ネタバレありで紹介していきます。
昴流が陰陽師として関わった事件で、昴流の代わりに右目を失った星史郎。この事件を通して昴流は、自分の中での星史郎という存在の大切さに気づきます。そして昴流が7年前に桜の下で、ある青年と交わした賭けの約束。その賭けの約束をした相手が、星史郎だということがわかります。
なにものにも変えがたい存在である、星史郎から突きつけられる心えぐられる真実の数々。現実を受け入れがたい昴流は、心を閉ざしてしまいます。閉ざされた昴流の心を取り戻すために動いた北都の訃報が届いたことで、自分を取り戻す昴流。
時は流れ少年から青年に成長した昴流は、心に傷を抱え生きていくことになります。
- 著者
- CLAMP
- 出版日
衝撃の結末を遂げた、漫画『東京BABYLON』。昴流・北都・星史郎の物語は、実はこれで終わりではありません。作者・CLAMPが描く漫画『X』に、物語の舞台は引き継がれます。
母の遺言を受け、6年ぶりに東京へ戻ってきた司狼神威(しろうかむい)。神威は転校先の高校で、幼なじみの桃生小鳥(ものうことり)・桃生封真(ものうふうま)と再会を果たします。神威が依然とすっかり変わってしまったことに驚きを隠せない小鳥は、神威が地球を崩壊させる夢を見ます。
桃生兄妹の父が惨殺され、回り始める運命の輪。やがて神威と封真、小鳥は残酷な運命に巻き込まれていくことになります。神威と封真の存在を軸に、天の龍・七つの封印と地の龍・七人の御使いの戦いが地球の行く末を左右していきます。
昴流は天の龍の1人、星史郎は地の龍の1人として登場。『東京BABYLON』で残った遺恨は『X』での戦いに引き継がれ、星史郎と北都が最後に交わした会話も『X』で知ることができます。漫画『X』で本当の結末を迎えるといっても、過言ではありません。
ちなみに漫画『X』は2021年3月現在まだ未完。連載時に起きた事件などの影響を受け、現在も休載となっています。1996年に劇場版アニメ映画化、2001年~2002年にテレビアニメ化しており、劇場版アニメではXJAPANの『Foever Love』が主題歌になり話題を呼びました。
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漫画『東京BABYLON』や漫画『X』を生み出した、作者・CLAMP(くらんぷ)とはどんな人物なのでしょうか。ここではCLAMPについて、深堀していきたいと思います。
CLAMPは女性漫画家集団で、元は関西の同人グループとして活動していました。1989年に漫画『聖伝-RG VEDA-』で、商業誌デビュー。活動当初からメンバーの変化はありますが、2021年現在は大川七瀬、いがらし寒月、猫井椿、もこなの4人で構成されています。
漫画『魔法騎士レイアース』、『カードキャプターさくら』、『XXXHOLIC』、『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』などアニメ化したヒット作を多く手がけています。
漫画『X』のように他作品のキャラが作中に登場し、別作品の中で新たに動くキャラを楽しめる面白さがある作品も多くあります。
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- CLAMP
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生きていくうえで、時に重くのしかかる現実がある。そんな現実を読者に訴えかける漫画『東京BABYLON』。人が抱える闇を真摯に描く作品だからこそ、18年の時を越え新たなアニメとして産声を上げることになったのではないでしょうか。原作の舞台である1990年代と、アニメで描かれる2021年。どのような違いがあるのか、見比べてみるとより一層アニメを楽しめるかもしれません。