柳広司のおすすめミステリー小説5選!カッコいい大人、ここにいます。

更新:2021.12.14

『ジョーカー・ゲーム』がアニメ化や映画化され、一躍有名になった柳広司。ミステリー小説のランキングにもよく見かけるようになりました。そんな彼が描く、カッコいい大人を目指す方にこそ読んで欲しいミステリー作品を5作、ご紹介します。

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ミステリー作家、柳広司とは?

柳広司は三重県出身のミステリー作家です。1967年生まれ。神戸大学法学部を卒業します。

2001年、『黄金の灰』で小説家デビューを果たします。同年に刊行された『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で朝日新人文学賞を受賞、2008年に刊行された『ジョーカー・ゲーム』では、吉川英治文学新人賞および日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞、「このミステリーがすごい!」で第2位、本屋大賞では第3位に輝くなど、高い評価を受けました。

歴史上の人物や戦争をテーマとして取り上げ、時には主人公として登場させて史実とは違った一面を描いてきた柳広司は、これまで自身が読んできた小説に登場していたカッコいい大人の男性に強い憧れを抱いていたそうです。そのため、自身が小説家になった現在、読者が憧れる様なカッコいい大人が登場する小説を書いていきたいと考えているようです。

柳広司の出世作!本格的スパイ小説

2008年に刊行された『ジョーカー・ゲーム』は柳広司の名前を広く知らしめたスパイ小説で、D機関シリーズとして『ダブル・ジョーカー』『パラダイス・ロスト』『ラスト・ワルツ』の3作が続編として刊行されています。

昭和12年に設立されたスパイ養成機関「D機関」を主としたD機関シリーズは、設立者・結城中佐を中心に、D機関所属メンバーの諜報活動時に起きた事件を描きます。これまで読者の中にあった、華やかなスパイというイメージを壊した斬新かつスタイリッシュな内容です。

著者
柳 広司
出版日
2011-06-23


諜報活動のため、全国各地に移住したメンバーの表向きにならない活躍がそれぞれ短編で書かれた本作は終始、ワクワクドキドキが止まりません。第1話では、親日家と知られるジョン・ゴードンがアメリカのスパイだという情報を元に、憲兵に扮したD機関メンバーが捜査にあたります。しかしこれは、すべてD機関の存在を嫌う軍上層部が仕組んだ罠だったのです。そこでD機関設立者であり、伝説的なスパイの結城中佐は、裏の裏を読んだ動きを見せていきます。

その緻密で狡猾な手法に驚くと同時に爽快感さえ覚えてしまうことでしょう。フィクションでありながら、どこかリアリティがありストーリーに引き込まれてしまうのです。ありえないことを平然とやってのけるD機関メンバーのカッコよさも、本作に惹きつけられる要因の一つといえます。

『坊ちゃん』が、傑作ミステリーとして復活?

柳広司が手掛けたパスティーシュ作品の中でも、秀逸とされる2001年刊行の『贋作「坊っちゃん」殺人事件』。かの文豪夏目漱石が書いた名作『坊ちゃん』の3年後を描いた作品で、主人公の「おれ」が四国の中学教師を辞める要因になった教頭「赤シャツ」の自殺の謎を追っていきます。無鉄砲で、考えるよりも口が先に出てしまう「おれ」が起こす行動で、事件の真相にどんどんと近づいていきながら判明していく『坊ちゃん』の中で描かれたエピソードの裏。『続・坊ちゃん』と称しても過言ではないほどの内容に感動すること間違いなしです。

著者
柳 広司
出版日
2010-11-25


文豪夏目漱石が読んでも納得してもらえるのではないかと思うストーリー展開と、謎が解けていく様子は、読み始めて数分で目が離せなくなってしまいます。『坊ちゃん』を読んだことがない方でも楽しめる内容の本作は、『坊ちゃん』を知っていればもっと楽しめるかもしれません。「おれ」のまっすぐな性格が見事に活かされ、夏目漱石の文体を見事に模写する作品を、お楽しみください。

柳広司が描き出す、ソクラテスの見事な推理

2001年10月に刊行された『饗宴(シュンポシオン)―ソクラテス最後の事件』は、柳広司の手掛けた作品の中でも知名度が低いかもしれません。しかしその内容は、古代ギリシャの政治社会や思想、さらには風俗に至るまで、わかりやすくおもしろいものです。古代ギリシャの哲学者ソクラテスがバラバラ殺人事件の謎を、哲学や思想を絡めて解いていく姿が描き出される本作。ソクラテスをシャーロック・ホームズ、その友人クリトンがワトソン博士のような立場で難事件を解決していく様子は愉快であり、爽快に感じられることでしょう。

著者
柳 広司
出版日


論理に基づいて難事件を解決したソクラテスに、理不尽ともいえるラストの悲劇には胸の詰まる思いを感じます。一方で、自身の信念を貫くその姿勢には胸を打たれます。本作の原典でもあるソクラテスの弟子プラトンが書いた『饗宴』を随所に織り込みながら、柳広司の持ち味を活かしたミステリーです。

ソクラテスを知っている方も知らない方も楽しめる小ネタも用意されています。なんと言っても「これが善いかあれが善いか、これが正しいかあれが正しいか、そういったことを知るためには結局のところ自分自身で疑い、そして説明するしかない」や「汝自身を知れ」など、ソクラテスによる名言が多い点が本作の魅力をより一層、確実なものとしています。

BC級戦犯が、謎を解く?

『トーキョー・プリズン』は第二次世界大戦の終戦後、戦犯とされた人たちが収容される巣鴨刑務所で起きた密室変死事件。本作ではこの事件の謎を、ニュージーランド人の私立探偵と、戦争中の記憶を失くしているBC級戦犯が解き明かしていきます。そしてこれと同時に、キジマが戦犯とされた捕虜虐待の真相にも迫っていきます。戦争で荒んだ人間の内面を見事に描きながら、戦争の悲惨さだけでなく、開戦の謎や敵国アメリカのGHQ最高司令官マッカーサーを支持していたのかという揺れ動く心理も解き明かされていくのです。

著者
柳 広司
出版日
2009-01-24


本作の大きな魅力は、登場人物にあります。主人公で私立探偵のエディは元より、サブキャラに至るまで個性的で人間臭さがあり、誰もが皆引き立っています。特に戦犯キジマのキャラクターには、女性だけでなく男性も惹かれるカッコよさが滲み出ているのです。頭脳明晰で鋭い観察眼を持ち、血も涙もないサディストといわれるキジマが、記憶のない5年間と向き合い自問自答を繰り返す孤独な戦いにも心を打たれることでしょう。

戦争や原爆について色々考えさせられながら、ミステリー要素も大いに楽しめる作品になっています。

柳広司が斬り込んだ、科学たちの苦悩と狂気

原爆の父といわれるオッペンハイマーを主人公にした『新世界』は、原爆を開発した科学者たちと、それを投下した軍人を描く作品です。終戦後、原爆開発メンバーで行われた祝勝会で撲殺事件が発生します。調査を進めていくと事件の裏側には、戦争という愚かな行為から影響をうけた科学者の苦悩や狂気が潜んでいて……。

著者
柳 広司
出版日
2006-10-25


終盤に用意されている登場人物による原爆投下後のヒロシマ・ナガサキの惨状を語る文章は、追体験をしているような妙な感覚さえ覚えます。冒頭で起きる殺人事件よりも戦争や原爆の影響に重きを置いたストーリーの中に、組み込まれるミステリー。読者の視点を上手くそらしながら、意外な犯人の登場に見事に驚かされてしまうことでしょう。

なにがどこで狂っていくのか……。原爆をテーマにした異質なミステリーをぜひお楽しみください。

柳広司によるミステリー作品には、謎解きだけではなく戦争、政治、歴史と様々な要素が含まれます。ときにはスタイリッシュに、ときには重厚に……読みだすと止まらなくなってしまいます。作中、自分の知っている偉人が登場した際には、彼らに対する新たな見方を楽しめることでしょう。様々なテーマで生み出されるミステリー作品を、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。

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