“あなたはゴリラですか” 衝撃的な書き出しで始まるこの本は、 “文章を、書く”ということの、本当の意味を教えてくれた。
“あなたはゴリラですか”
本を開いた瞬間、この言葉が飛び込んできた。
それは僕にとって、かつてないほどの衝撃だった。
たった一行で、一気に引き込まれる文章というのは確かに存在する。
伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』なんかが良い例だ。
“空から、春が降ってきた”
こんなにもワクワクする書き出しには、なかなかに出会えないだろう。
しかし、“あなたはゴリラですか”。 この書き出しは、伊坂幸太郎さんのそれをも超える衝撃だった。
だって……これ、文章術の本ですよ?
- 著者
- 田中 泰延
- 出版日
「バズる記事を書きたい」
「ターゲットに刺さる文章を書きたい」
「自分の思いを読んでほしい」
そんな「技術」を学ぼうとする人は、出発点から間違っている。もっとシンプルに、あなたが読みたいことを、あなたに向けて書けばいいのだ。 電通コピーライターとして24年、自分が読みたいものを書くために退職して「青年実業家」へ。
皆さんは、文章術の本にどんなイメージを持っていますか?
「バズるには~」、「読みやすい文章の書き方とは~」などの、いわゆるテクニックの伝授本。 つまり、『文章術の本=書くための「技術」について書かれている本』。 このイメージを持たれている方がほとんどだと思います。
実際、僕もそのイメージを持っています。
しかし、本書『読みたいことを、書けばいい。』は、書く「技術」についてをメインとしている、今までの文章術の本と、まったく違います!
それは、なぜか。 文章を書く「技術」ではなく、書く「動機」についてが本書のメインとなっているからです。
どういうことかと言いますと。
本書は、「自分が読みたいと思うことを書けば、自分が楽しい!」という視点から書かれています。
文章を書いたとき、一番最初の読者は自分自身。 その自分が読んで楽しいと思わない文章は、他の人が読んでも楽しいと思わない。 これが著者である田中泰延さんが本書で言っている結論なのです。
実際。 田中泰延さんが、「自分が読みたいことを書いた」この本書。 声出して笑えますよ。本当にページを捲る手が止まらなくなります。
「テクニック」なんか必要ない。 「自分が読みたいから書く」という「動機」には、これほどまでの破壊力があるんだぞ!ということを、体現するとともに教えてくれる本です。 皆さん、ぜひ「読みたいことを、書けばいい。」読んでみてください。
そして、皆さんにご報告があります。 2019年より連載させていただいておりました、このコラムですが。 今回の投稿で最後となります。
毎月楽しみに読んでくださった皆様。
一度でも目を通してくださった方。
本当にありがとうございました。 またいつの日か、僕の文章が皆さんの元へ届くように、これからも日々精進します。 今までありがとうございました!!
吉村卓也
ちなみに。なぜ僕が、最後のコラムに『読みたいことを、書けばいい。』を紹介したのか。 これを説明して、このコラムを終わりたいと思います。
「読みたいことを、書けばいい。」という、優しいタイトル。
感想レビューには、
・「書く勇気が湧きました!」
・「ブログを更新するモチベーションが上がりました!」など、 読むことで、“書く”ことの後押しをしてもらえたという声が多く寄せられる本書。
……とんでもない。
柔らかくコミカルな文体でオブラートに包んでいるが、この本は、今まで読んだどの本よりも恐ろしい本だ。
「書くってのは、こういうことなんだよ。それでもお前は書くのか? あ?」。 そう言われているように思えた。 僕はこの本を読んで、何度も「書くこと」を辞めようと思いました。
これほど、読む人によって称賛のズレがある本は他にないだろう。
最後の一文を読み終えたとき、「後押しされた」と感じるか。
「崖から突き落とされた」と感じるか。
さあ、あなたはどう捉える?