猫の生き方、わたしの生き方

猫の生き方、わたしの生き方

更新:2021.12.14

今回がわたしにとって、このホンシェルジュでの連載が最後になります。最終回は、“猫の本”を通して、生きて死ぬこと―自分の生涯を考えました。紹介する本はどれも文章が平易で読みやすく、それでいて子供から大人まで楽しめるものばかりです。絵を見て「かわいい!」というものから、哲学的で考えさせられるものまで、どうぞご家族で、友達同士で、恋人で、読んで意見を交わしてみてください。そして一人でも、じっくり考えてみて下さい。 この本たちが、あなたの頭の中にふっと浮かぶ、そんな一冊になりますように。

ブックカルテ リンク

「俺の名前は…いっぱいあって、な」 ~学びと冒険~

著者
斉藤 洋
出版日
1987-05-20
リエちゃんに飼われている子猫のルドルフは、ひょんなことからトラックの荷台に乗って、遠い遠い町へと来てしまい、迷子になってしまいます。それを助けてくれたのは、大きな体の野良猫。街の猫たちから恐れられている彼も、人間の間で様々な名前で呼ばれ可愛がられて、野良として生活をうまく送っていたのでした。

「俺の名前はいっぱいあって、な(たくさんあってだな…)」の一言で、“イッパイアッテナ”という名前と勘違いしたルドルフ。物怖じしないルドルフの度胸に一目置くイッパイアッテナ。次第に二匹はかけがえのない友情で結ばれていき、やがてイッパイアッテナは“人間の書く文字”を、ルドルフに教えるのです―…。

シリーズで様々なお話が出ている『イッパイアッテナシリーズ』。彼が作中で何度も口にする“教養”とは、志、生き様そのものであるとも思えます。深いだけではなく、コミカルに描かれているシーンもたくさん!デビルとの決闘や、イッパイアッテナの過去―そしてルドルフは無事、リエちゃんのところに帰れるのか?ドキドキの大冒険に、どんどん引き込まれていきます!

今から20年以上前、NHKのTV番組で人気だったこの作品。今でも時代や世代を超えて多くの人々から愛されています。2016年にはフルCGで映画化もし、関連グッズもたくさん発売されたのが記憶に新しいですね。わたしも小さいころ、この本が大好きだったので、今年の夏ママと映画を観てきました!毛の流れの一本一本まで緻密に表現され、町並みや季節の空気、デビルとのバトルシーンなど、登場人(猫?)物、みんなに見せ場がそれぞれあって、とっても楽しい作品でした!back numberの主題歌も良かったです。こちらも、本と併せてぜひ^^☆

好きなこと、好きなもの、好きなヒト ~安らぎと出会い~

著者
C.ロジャー メイダー
出版日
2016-10-13
タビーは冬のある夜中、プレゼント入りの大きな袋を持ってきた“おじいさん”(なんと、サンタクロースなのです!)を見つけます。狭いところに潜り込むのが大好きなタビー。思わずおじいさんの袋の中に潜り込んで、そのまますやすや眠ってしまいます。おうちに帰ったおじいさんの奥さんが、袋を開けるとそこにはタビーが…!

可愛く柔らかいタッチで描かれた、“冬の絵本”。タビーの気ままに“大好きな過ごし方”を楽しむことで、いろんな出会いと冒険が起こる、聖夜のお話です。クリスマスがテーマなので、プレゼントにもぴったりなユニークでかわいい作品です。1ページずつが絵画のようにステキです。寒い日にはタビーのように、ほっこりあたたかい毛布にくるまって読んでみたいですね!わたしが一番好きなのは、 “あたらしい ともだちも できました。”と、トナカイとタビーが向き合ってるシーン。イラストは小さいですが、なんだかシュールで、かわいいワンシーンです。みなさんもぜひお気に入りのシーンを探してみてくださいね。タビーのくったり具合が、猫好きさんにはたまらないはずですよー!

きみはいつも、ぼくのそばにいてくれる。~一緒にいること~

著者
鈴木 康広
出版日
2016-10-07
もう、表紙からして思わず「かわいい!」と声をあげてしまいそうなこの本。ご覧の通りシンプルそのものですが、“深~いニャにか”を教えてくれます。ねこのにゃんたは、いつも“ぼく”の生活のどこかに隠れています。あるときはどーにゃっつ、にゃどかり、ばにゃにゃ…だけどぼくは気付いてしまった。にゃんたが、こんなところにいるなんて…。キュートな絵柄は、子どもはもちろん、大人の女性も巻き込むゆるかわ系!ついクスっと笑ってしまうシュールさは、大人の男性にもオススメです。子供から大人まで、一緒に「ここににゃんたがいるね」と、お話しながら読める楽しさ。だけど深い。すごーく深い。だけど絵柄のとおりさっぱりしたエンドは、なんだかまたループしたくなる中毒性に満ちています!これは一読の価値あり。知ってたら、「なにそれ、かわいい!」と話題にもなりそうな一冊です。

あなたの死を、わたしは忘れない。何度生まれ変わっても ~生と死~

著者
佐野 洋子
出版日
1977-10-19
いわずもがな、世界中で有名なこの絵本。きっとみなさんも、読んだことはなくてもタイトルだけは聞いたことがあるというくらい、スタンダードなのではないでしょうか。

内容はいたってシンプル。何百回も、何千回も輪廻転生を繰り返す猫は、その度に違う飼い主のもとで生活をしますが、どの飼い主のこともみんな大嫌いでした。100万回目に生まれ変わった猫はその話をして、猫たちの興味を集めますが、一匹の白い猫だけは、彼に興味を持ちませんでした。いつしか彼女を振り向かせようと躍起になる彼は、“自分だけが好き”だったはずでしたが、それ以外に好きな相手ができるのでした―…。

形だけ見るとバッドエンドのような、でも、すごく幸せな気持ちになれる本。わたしはこの本は、とてつもないハッピーエンドだと解釈しています。気になる結末は、ぜひみなさんがご自身の目で確かめてみてください。愛することの尊さ、そして真の愛を理解したときに新しい扉が開けること。一段階別のステージへとシフトした猫のように、わたしもこの生涯を、猫のように終えることができるようにと願っています。

みなさん、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。

毎月みなさんの感想をSNSなどのシェア先で見られるのが、わたしもとっても楽しみでした!活動を終了するわたしですが、来年にはラストアルバムのリリースを控えています。きっとまたどこかで会えるよ。じゃあ、またね。

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