それでも人生は続くのです。【片桐美穂】

更新:2021.12.7

2020年4月から月1での連載がスタートし、まるっと1年が経ちました。最初は「本、読まなきゃ!」と思っていましたが、気が付いたら「読みたい!」に変化し、本を持ち歩かない日がなくなりました。お陰で愛用しているブックカバーは、私の手汗でしなしなになっております……。さらに愛着湧くぜ……。なんと! そんな連載が今回でラストでございます! 今回もいつもと変わらず、私らしく紹介したいと思いますので、よろしければ最後までお付き合いくださいませませ。

ブックカルテ リンク

私、元々文章を書くことが、とっても苦手でございました。

先日も、ある方から「翻訳が必要な程ひどかった」と言われたばかりでございますぅ。

小学生の頃の宿題の読書感想文はほぼ母親に考えてもらい、中学生の頃は、生徒会長をやっていたもんで、送辞やら答辞やらを考えなきゃいけないんですが、自力で作成すると、歴代の生徒会長の文章を継ぎ接ぎで作った説得力0の文章になってしまうため、すぐにお母さんを召還!

役者になった当初は、オーディション毎に志望動機を書いたり、メールを作成したり、想像以上に文章を書くタイミングがあることに気付き、あたふた!

特に、メールの作成方法なんて勉強したことなかったもんで、もー! あたふたあたふた!

それを見かねたマネージャーさんから「読書感想文書いてみませんか?」とご提案いただきました。

どこに発表する訳でもない、2人だけの「読書感想文発表会」がスタートし、これがホンシェルジュでの連載がスタートするきっかけとなりました。

本を読んでいなかった私は、当たり前のように言葉の引き出しがなく、始めた頃の読書感想文は、それこそ「翻訳が必要」な状態。

マネージャーさんは、良くぞ! あの文章を理解して、アドバイスをしてくださった!(笑)心からのありがとうございます!!!

初めの頃いただいたアドバイスの中で、こんなものがありました。

読んだ本の中で、自分が「好きだな」と思った文章表現を積極的に使っていく、アウトプットすることで、自分のものにできる。

今でも、心がけて取り組んでいるアドバイスの1つです。

これを実戦するにあたり、参考にしたのが「エッセイ」でした。

私は「読書=小説」という安易な脳みその持ち主なので、「エッセイ」は手を出したことのないジャンルでしたが、読んでみると、「わ! なにこれ! おもろ!」

筆者のお人柄がだだ漏れしていて、「その人の言葉」で表現されてるから、まるで喋ってるみたい! 全然堅苦しくなくて、本ってこんなに手軽なものなんだ。と、気が付きました。

自分では経験したことがない人生が覗けたり、自分の生活に取り入れたい技が見つかったり、すっと寄り添ってくれたり……。とにかく、楽しい! 「私は私らしく生きよう」と思わせてくれる本が沢山あるんですね!

タイトル:「これからも私らしく私のペースで!寝る!」

 

連載最終回、「最後」とかにこだわらず、これからも続く生活が豊かになる、愛すべきエッセイを2冊選ばせていただきました。

著者
中島 らも
出版日

マネージャーさんとの読書感想文発表会、2回目の提出の際にご提案いただいた本でございます。

そう! これが生まれて初めて読んだエッセイ!

1960年~70年代、中島らもさんが青春時代を過ごした日々のエピソードがふんだんに詰まったこの1冊。

今の時代ではあり得ない、ハチャメチャなエピソードに、何度もノックアウトされました。

学生のころの飲酒での失敗やら、大人への強い憧れ故の失敗は、90年代生まれの私が絶対に体験できなかった事柄が多すぎて、憧れを感じるものばかり……。

修学旅行の時は、「エッチ」するために旅館抜け出したり、校舎の階段の踊り場で酒盛りをしたり……。

16、7歳そこらの彼らの格好はつかないけど、勇敢な姿は愛おしくてたまらないんです。

どのエピソードも好きですが、個人的に好きなのは「放課後のかしまし娘」シリーズ。らもさんが初めてバンドを組んだときのお話。Fのコードを弾けるらもさんと、弾けないYくんとの2ピースバンド。2人のやり取りは漫才を見ているかのよう。話のオチだから言えないのですが、Yくんの短調のエピソードが、すごく……好き……。憧れが先行して変な方向に行く2人を是非見守っていただきたいです。

らもさん始め、著書に登場する友人達の、残念なのに底抜けに明るいエピソードの数々に腹を抱えて笑いながらも、この時代特有の「生きる」ことへの執着やエネルギーを浴びました。

自分のちょっとやそっとの失敗を無かったかのようにしてくれる、らもさんの海のような広さを感じる1冊です。

著者
平松 洋子
出版日

私の今後の目標の1つに「持ってる下着を全部捨てて、体に合う新しいものを買う」というものがあります。

お金に余裕ができたらやろーと思ってるのですが、い、いつでしょうか……?

そんなことを考えている時に目に飛び込んできたこの1冊でした。

食文化と暮らしをテーマに執筆活動を行っている著者の平松洋子さん。他の著書は「サンドウィッチは銀座で」や「夜中にジャムを煮る」などタイトルだけで美味しそうなものばかり。

この「下着の捨てどき」にも、ヨダレが出るほど美味しそうな描写が沢山あるんです!

夜中に牛すじを煮込んでつまみ食いしたり、映画を観る前にビールと一緒にメンチカツを頬張ったり……。

この著書に感化されて、次の日のお弁当はメンチカツ弁当にしたほどです(笑)。

メンチカツの他に感化されたことは、「眉毛」について。

眉毛がいかに顔の印象を支配しているかが書かれたエピソードで、日本画家が美人画を書く際、「わずか筆の毛1本多い少ないで顔ぜんたいが変わってしまうので気が抜けない」と言うのです。

「マスクもするしぃ~」とか思って普段メイクにこだわりがない私も、眉毛だけは見えているもんだから、どうにかせにゃいかん。と言うことで、このエピソードを読んだあとに形を整えて、茶色で書くことにしました。なんとなく、「お化粧してる感」が出て、良い気がしています。

日常の何気ない一瞬を美しくも笑える文章で紡がれていく数々のエピソードに、自分の生活も、こんな風に大切に見つめてあげようと思いました。

自分の体は自分が食べたもので出来てるし、感受性は見たものや触れたもので培われていくという、当たり前だけど忘れかけていたことを改めて伝えてくれました。

著者が「中年」というお年頃に戸惑いながらも、変化を受け入れることで広がる世界を見せてくれるこの1冊。中年あるあるだけでないので、様々な年齢の方におすすめしたいです。普段の生活や休日の過ごし方を少し豊かなものにしてくれた気がします。

●あとがき

最後までお読みいただき、ありがとうございました! この連載のおかげで、読書が好きになり、文章を書くことへの不安もなくなりました。なんならエッセイ出版すること目標にしちゃおっかな! なんてね! ホンシェルジュでの連載を支えてくださった皆様にこの場をお借りし、お礼申し上げます。また、きっとどこかでお会いしましょー!

 

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る