各漫画賞にて注目の漫画家・和山やま。その最新作『女の園の星』は、2021年5月第2巻が発売されるや否やコミック売上第1位を獲得しました。そんな話題の『女の園の星』の主人公・星先生の気になる結婚や中村先生、小林先生といった個性的なキャラも含め紹介。試し読み情報などもまとめて紹介します。
2021年5月発売の和山やま原作『女の園の星』は、コミックス最新第2巻が「オリコン週間コミックランキング」で1位を獲得し話題となったばかり。和山やまといえば、『夢中さ、きみに。』や『カラオケ行こ!』など独特の笑いのセンスが多くのファンを魅了し、注目の若手漫画家です。
その和山が「FEEL YOUNG」にて連載中の作品が『女の園の星』。タイトルにある『女の園の星』とは、「女の園=女子校」の「星=星先生」という意味です。本作は、この女子校教師である星先生の日常を独自のユーモアをもって描いたシュールコメディ。
「このマンガがすごい!2021」オンナ編にて見事1位に輝くなど、各漫画賞で高い評価を受けています。同業者からもファンが多く、『帝一の國』の古屋兎丸や『チェンソーマン』の藤井タツキなどもおすすめコメントを寄せるほど。
シリアスな絵柄にシュールな笑いが魅力の本作は、昭和から平成にかけて人気を博した佐々木倫子の『動物のお医者さん』や『おたんこナース』を彷彿とさせます。登場人物たちのクールな顔立ちから発せられるくだらない事柄。令和になっても、この感覚を味わうことができると心躍らせる人も、これまで見たこともない新しい感性の作品として楽しむ人も、男女問わず親しめます。
そんな『女の園の星』の星先生の学校での出来事やプライベートもネタバレしつつ、その魅力をたっぷり紹介します。
『女の園の星』のクセの強い登場人物を紹介します。
本作の主人公。元小学校教師。現在は成森女子高等学校に勤務する国語の教師で2年4組の担任。下の名前は三津彦。大学生の時には漫画研究会に所属し100ページ超えの超大作を仕上げた。酔うとよく笑う。既婚者で3歳の娘がいる。
星先生の同僚で職員室では隣の席。独身。2年3組の担任。数学の教師。バレー部の顧問をしている。いつも明るく星先生とは真逆の性格。お寿司とカロリーメイト好き。星先生とはたまに飲みに行くこともある。
3年2組の副担任。いつも残業している。二日酔いで酒臭いこともしばしば。夜はクラス犬の「セツコ」の面倒をみている。倫理の教師。ネコ型のお掃除ロボットを溺愛している。
2年4組の生徒。よく寝ている。学級日誌の備考欄で行われている絵しりとりに星先生を絵を描いた。若尾さんの恋のことも星先生にバラす。
2年4組の生徒。星先生の観察日記を書いている。その日記と現代文のノートを間違えて星先生に提出してしまう。星先生本人に日記の存在がバレるも、その後も観察を続けている。
2年4組の生徒。従兄弟の高田誠は星先生の中学時代の同級生だった。卒アルの星の写真を勝手にステッカーにし、近所の小学生にあげてしまった。そのせいで「クワガタボーイ」伝説が誕生した。
2年4組の生徒。気になるコンビニ店員に会うために毎朝3つ手前の駅で降りている。バレー部のキャプテン。下の名前が純のため「ワカジュン」と呼ばれ、女子校のプリンス的な存在。
2年3組の生徒。漫画家志望。授業中に漫画を描いていたことが星先生にバレたことがきっかけで、アドバイスをもらい作品を完成させる。それを同人誌即売会に出展しファンを1人増やした。
成森女子高等学校のある駅から3つ違いの駅にあるコンビニでアルバイトをしている。若尾さんの憧れの人。小林先生とは一回り年が離れている。
成森女子高等学校。その女子校に勤務する元小学校教師の星三津彦。現在は、2年4組を受け持つ国語教師です。職員室の隣の席で2年3組の担任・小林先生といつも他愛ない話をしています。
ある日の放課後、学級日誌の備考欄に謎の絵が描かれていました。そもそも備考欄は、その日のクラスの様子を日直の生徒に書いてもらうためのスペース。しかし、2年4組では絵を描く生徒が現れ、そこから絵しりとりが始まりました。
謎の絵の答えの出ぬまま翌日へ持ち越すことに。前日の最後の言葉「ほ」と翌日のいかの絵の「い」はわかったまま、答えのわからぬ星先生。小林先生に答えを教えてもらうのでした。
時に教室で犬の世話をすることになり、漫画家志望の生徒にアドバイスし、生徒たちにあだ名をつけられ、小林先生とたまに飲みに行き、生徒が書いた自分の観察日記を読んでしまう。そんな何気ない女子校での日常。大きな事件が起こるわけでもなく、淡々とした日々のちょっと笑えるエピソードが満載です。
意外なことに、星先生は既婚者で3歳の娘がいます。子どもの誕生日に早く帰るなどいいパパエピソードも。巻末にある「小林先生の休日」もおすすめです。
- 著者
- 和山やま
- 出版日
第2巻では、なんと初っ端から中学生時代の星先生の卒アルが登場します。2年4組の生徒である香川さんの従兄弟が星先生の同級生だったのです。
なぜかクワガタを肩に乗せた星先生の写真を見つけた香川さんが、その写真のステッカーを勝手に制作してしまいます。それを近所の小学生にあげてしまったため、巻き起こる幸運を呼ぶ「クワガタボーイ」伝説。その伝説も小林先生の好意で収束することになるのでした。
そのほか、女子校のプリンス・ワカジュンの恋の物語、緑川先生の結婚による「成森砲」、中村先生の噂、小林先生の「ペタリスト事件」、自習という名の自由時間など、またまた爆笑もののエピソードが。各話のテーマを羅列するだけでも本作の絶妙な空気感が伝わるでしょうか。ぜひ全てのエピソードは文字でなく実際の漫画で楽しんでいただきたいところ。
今回は星先生だけでなく、先生たちのいろいろな一面が見られるのも魅力です。いつもクールな星先生が、自習時間に自由に過ごす生徒たちの様子を見て、自分の学生時代を思い出し優しい表情になるのも印象的。また、今回の「小林先生の休日」もかなりおすすめです。星先生の娘もまさかの登場となります。
- 著者
- 和山やま
- 出版日
『女の園の星』最新話では、星先生が風邪を引いてしまいます。40度以上の熱を出し、学校はお休みしました。
目覚めると、共働きの妻はすでに家を出ています。星先生のために食事も用意してくれていました。その食事とは、なんとカレー。しかも、本場のカレーでナンもターメリックライスも用意されています。冷蔵庫にはラッシーまで冷やしてありました。しかし、これにはちゃんとした理由があったのです。
昔から星の家では、風邪を引くとカレーが出ていました。その話を以前、妻にしたことがあったのです。彼女は、いつか星先生が風邪を引いたらカレーを作ってあげると約束し星にプロポーズ。カレーにまつわる星家のいろいろなエピソードが盛り込まれたお話です。妻の顔ははっきりわかりませんが、星の回想シーンに登場します。
FEEL YOUNG(フィールヤング) 2021年 06 月号
2021/5/8
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『女の園の星』は、作者の和山やまによる独特なセンスの笑いが至るところに散りばめられています。本作の笑いで特に秀逸なのが、その「間」です。
漫才やコントでも重要なのは「間」。本作の笑いが面白いのは、和山自身が持っている「間」が作品にうまく反映されているからでしょう。星先生のあまり大きく表情を変えずに、淡々とつぶやきながら突っ込みを入れる間合いの面白さ。漫画のコマの割り方にも、この絶妙な「間」が生かされることに。これが本作の特別な魅力であることは間違いありません。
いつもクールな星先生。作者の美麗な絵柄で描かれる登場人物たちは、いつも一定の表情のように思われがちですが、要所要所で微妙な表情の変化がみられます。この表情の変化がなんとも秀逸。
目の動き、口の形といった細かい表現が書き分けられていきます。この表情ひとつで、その人物がどんな性格かキャラクターまで表現することも。この細かい表情の違いによる笑いもきちんと表現されています。
星先生のキャラクターだけなく、作品全体の持つテンションがさほど高くないのが本作の特徴です。明るい性格の小林先生や生徒たちがセツコを可愛がるようなシーン以外は、比較的淡々と物語も進んでいきます。
日常的なエピソードを高くもなく、低すぎもしないテンションで描かれることは読者には心地よいはず。テンションが高すぎて疲れ、低すぎで暗くなるなどがありません。笑いも爆笑はあるものの笑い転げるほどでもありません。読者に寄り添うような安定したテンションも本作の魅力のひとつです。
第1巻で星先生と小林先生が、生徒が教師につけるあだ名について話すシーンがあります。小林先生はいつもポロシャツを着ていることから、「ポロシャツアンバサダー」というあだ名に。星先生も一時期「無印良品」と呼ばれていました。
本作では、先生のあだ名以外にも、作者の抜群のネーミングセンスが発揮されています。第2巻では「クワガタボーイ」、「成森砲」、「うどんまん有識者」など絶妙なネーミングが多々登場。女子校独特のノリを象徴するようなこのじわじわとくる笑いがまた最高です。
話題の若手漫画家・和山やまの描く『女の園の星』は「FEEL YOUNG」にて連載中です。特設サイトからは無料試し読みも可能。この機会にぜひお試しください。
また、漫画賞を総なめにし、2021年にはドラマ化された『夢中さ、きみに。』や『カラオケ行こ!』もコミックが発売中。どちらも和山ワールドを存分に堪能できます。「月刊コミックビーム」では『ファミレス行こ!』の不定期連載も始まりました。こちらもおすすめです!
- 著者
- 和山 やま
- 出版日
- 著者
- 和山 やま
- 出版日
月刊コミックビーム 2021年5月号
2021/4/12
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『女の園の星』は、和山やまの独特な感性が織りなす女子校教師・星先生の日常系ユーモアを描いたコメディ。クールな表情から生まれるシュールな笑いは、一度読んだら思わずハマってしまいます。日頃の疲れも忘れてしまう、この極上の笑いにぜひ浸ってみてください。