イギリスを代表するロックバンド・オアシス
オアシス(Oasis)は1991年に結成されたイギリスのロックバンドです。ボーカルのリアム・ギャラガー、ギター&ソングライティングを担当するノエル・ギャラガーの兄弟を中心に活動していましたが、2009年に解散。以後、リアムはオアシスのメンバーとビーディ・アイを結成、ノエルはソロで活動しています。
今回のドキュメンタリー映画は、1996年に2日間で25万人を集客した伝説のネブワース・ライブやギャラガー兄弟のエピソード、そして兄弟へのインタビューを通して、オアシスの軌跡を鮮やかに描き出した大作に仕上がっています。
オアシス再結成について
「彼らは、自分たちの影響力を知らないのではないでしょうか」
オアシス再結成の可能性について訊かれるマット・ホワイトクロス監督はそう答えました。彼は同様の質問をすでに何回か受けているでしょうし、これからも繰り返し訊かれることでしょう。すでに解散してしまった世紀の大人気ロックバンドのドキュメンタリー映画を撮った監督となれば、この手の質問を受けることは避けることはできません。
「再結成しないとしたら、非常にもったいないことだと思います」
そう、活気に満ちた39歳のホワイトクロス監督は続けます。
「彼ら自身の問題ですからね。ノエルの友人のクリス・マーティンは、ずっと‟ただ電話をかければいい”と促しているようです。しかし、そんな簡単に決意できるような事ではないでしょうから」
ドキュメンタリー映画『オアシス:スーパーソニック』は、2人の敵対する兄弟の物語と、20世紀の音楽シーンに衝撃を与えた伝説のネブワース・ライブを描いた大作です。260万人以上がチケットを求めたというネブワース・ライブは、いまだイギリス史上最大の動員数を記録したコンサートの地位を保っています。
映画はどのように撮られたのか
ホワイトクロス監督は、映画『オアシス:スーパーソニック』を通して、オアシスのそんな偉大な功績を記録するとともに称えています。2015年に制作を開始した本作は、監督自身も緊張するような状況で作られました。オアシスのメンバーであるリアムとノエルの兄弟と顔を突き合わせて座り、バンドの歴史について語り合うという手法がとられたのです。インタビューは兄弟別々に行われました。
「常に、興奮し通しでした」
ある晴れた9月の午後、ロンドンの中心地で、そう監督は熱っぽく語りました。
「昔から”ヒーローの正体を知ると幻滅する”というような事は言われていますが、彼らはそのままの存在だったんです。初めてリアムに会った時、彼は入ってくるなり”OK、悪役になるのはどっちだ?俺か、奴か?”と言ったんです。リアムは、率直にインタビューに答えてくれましたが、時々”それはあとで電話するよ”などと誤魔化しました。それもしょうがないと思います。こじ開けたくない過去もあるでしょうから」
これまで何度も対立が表面化していたギャラガー兄弟のことですから、ホワイトクロスもこの問題と対面しなければなりませんでした。数週間にわたる交渉に及ぶも、彼は兄弟を同じ部屋に同席させることはできなかったのです。しかし、プロとしてホワイトクロスはこのことを活かした作品作りをしました。
「オアシスの功績を、2人を通して観てしまうと、面白くてスキャンダラスではあるけど、どちらかというと表面的な部分しか浮かび上がってこないんです。しかし、兄弟それぞれに話を聞くと、ある事柄についてもより深堀りすることができて、何かの話題に触れたときに兄弟どちらかが離席してしまうのではないかという心配もしなくて済みます」
そのようにして制作された『オアシス:スーパーソニック』で描かれるのは、1990年代で最も語り継がれることとなったバンドが残したほろ苦い影響です。ホワイトクロスが監督として優れていることに加えて、彼が度重なる取材を経て入手した多数の未公開である幼少期の写真や収録音源が、映画全体を斬新な印象に仕上げています。
映画はギャラガー兄弟の郷愁を誘ったとホワイトクロス監督は考えているようです。2人は最も有名なロックミュージックの象徴でありながら、元は単なるマンチェスターの労働階級出身の男でもあるからです。
「兄弟それぞれの最初の取材のときに、私たちは彼らに同じ古い映像を見せました。それが撮影されたことも彼らが忘れてしまっているようなものでしたが、私の想像に過ぎないのかもしれませんが、2人ともとても感動しているように見えました。きっと、長い時間がたって風化してしまったお互いを思いやる気持ちが、その映像の中には確かに存在していたからだと思います」