ヤクザ漫画というと血なまぐさい暴力シーンがたくさん出てくる漫画をイメージしませんか?しかし暴力だけではなく様々な要素がかけあわされることで、魅力的なヤクザ漫画ができるのです。今回はその中でも特に楽しめるおすすめのヤクザ漫画をご紹介します。
- 著者
- 高橋 のぼる
- 出版日
- 2006-01-05
交番勤務の巡査である玲二が、広域暴力団・数寄矢会の会長を逮捕するため、モグラ(潜入捜査官)としてヤクザの世界に潜り込みます。並外れた危機回避能力と精神力を持った玲二がヤクザを相手に立ち回る痛快アクションです。
普段はバカでスケベな玲二ですが、ここぞという場面では根性を見せ、数々の試練を乗り越えます。その試練とは、腸を蝶々結びにしたり、股間をゴルフクラブでフルスイングしたりと、血なまぐさいものばかり。玲二の表情が豊かなおかげで、見てるこっちが痛くなってきます。
中でも若頭の日浦がやることはえげつなくて、耳をホチキスで止めたり切り傷にタバコを押し付けたりと、ヤクザの恐ろしさを読者に植えつけてくれます。この時点でグロ表現がダメな人は読むのをやめてしまいそうですが、読み進めると、玲二が持ち前の危機回避能力で笑えるオチをつけてくれます。そこは、ぐっと我慢してください。
物語が進むと、日浦は自分の組を立ち上げ、玲二を若頭に据えます。玲二がずぶずぶとヤクザの世界にハマっていき、お前は警察なのか?ヤクザなのか?とよくわからなくなってくる展開が、楽しめます。
登場人物はみんな命懸けなのに、玲二がおバカなおかげでコメディ作品になっています。玲二と兄弟分の日浦を主人公にした『土竜の唄外伝・狂蝶の舞』も出ているので、こちらも必見です。
- 著者
- 神崎裕也
- 出版日
- 2009-06-09
ヤクザと刑事の異色タッグによる復讐劇です。
主人公の龍崎イクオと段野竜哉は小学生のとき、世話をしてくれた児童養護施設の先生を何者かに殺されてしまいます。逃げていく犯人の姿を目撃した2人は警察へ証言しようとしましたが、金時計を付けた刑事と思われる人物に脅され、事件は迷宮入りとなってしまいました。それから15年経ち、イクオは警察官となり、竜哉はヤクザの松尾組の組員となって、2つの視点から先生の死の真相を探りはじめます。
イクオは普段はおっとりした性格の冴えない警官を演じていますが、検挙率は署内イチの優秀な刑事です。検挙率No.1の秘密は、竜哉に裏社会の情報を流してもらい犯人を捕まえているから。また、竜哉と一緒に犯人を追い詰めるシーンでは、人並み外れた運動能力を見せています。一方の竜哉はインテリヤクザらしいクールで打算的な性格ですが、けじめをつけるときには暴力的な一面も見せ、本来のヤクザらしさも覗かせます。
この作品の面白いところは、黒幕が警察組織に潜んでいること、むしろ警察組織そのものであるという点です。イクオたちの探す、オリジナルの金時計や銀時計が授与された「金時計組」と呼ばれる者たちは、警察組織の中でも上層部にしかいないエリートです。その金時計の男を、イクオたち2人がどのように見つけ出し、追い詰めていくのか。次々と先が読みたくなってしまう作品です。
真犯人は誰なのか。ふたりの復讐はどんな結末を迎えるのか。最終巻まで、予想どおりにはいかない、楽しませてくれるオススメ作です。
『ウロボロス』に関しては「「ウロボロス」の見所を最終回までネタバレ考察!無料で読めるドラマ化漫画!」で詳しく解説しています。
- 著者
- 大武 政夫
- 出版日
- 2011-07-15
ヤクザと超能力少女が織り成すコント。その発想はなかった!という、不思議な切り口のギャグ漫画です。
ある日、若手ヤクザの新田が部屋で酒を飲んでいると、突然楕円形の物体が現れます。その物体にはヒナと名乗る少女が包まれていて、新田が追い出そうとするもうまくはいきません。しまいには強力な超能力者のヒナが暴れたために、新田は仕方なくヒナと一緒に暮らすハメになります。
この新田。ヤクザのくせにかなりイイヤツなんです。ヒナは、超能力を利用されていた過去があるので大人を信用していなかったのですが、新田は超能力をアテにしない男のため、ヒナはだんだん信頼を寄せていきます。
あるとき新田は、敵の組織にひとりで乗り込む「鉄砲玉」の役割を命じられます。どう考えてもタダでは済まない状況に、ヒナは思わず「私に命令しないの?」と言いますが、新田は「お前には関係ない」と言って断ります。初めて自分を利用しない大人と出会って、ヒナは新田と暮らしたいと強く思うようになるのです。
ヒナは別の世界(?)から来たので世間の常識が通用しないのですが、家事が得意な新田がいちいち世話を焼いてあげるので、なんとかまともな生活が送れています。最初は超能力を使って新田を脅していたヒナですが、新田のオカン度の高さによって、ふたりは徐々に親子のような関係になっていきます。
バイオレンスというよりは日常系のヤクザ漫画なので、暴力シーンが苦手な人も読みやすいです。新田とヒナの掛け合いに爆笑必至な作品です。
『ヒナまつり』に関しては「漫画『ヒナまつり』の中毒性ある面白さを14巻までネタバレ紹介!アニメ化!」で詳しく解説しています。
- 著者
- 高橋 ツトム
- 出版日
- 2015-09-30
さびれた工場街でただ漫然と夏を過ごしていた智。無気力で世界に興味がなく、夏の暑さすら感じていません。彼は毎週水曜日になると、アパートのとなりに住む元ヤクザの老人に呼び出され、話を聞いていました。
ある日、誕生日の智にプレゼントをやろうと老人が言い、彼の押入れにある骸骨と500万の金を見せられます。そして老人は彼にその金を渡す代わりに自分を殺してほしいと頼むのです。秋まで決心がつかなかった智ですが、老人の言った「くだらねぇ人生を変えてみろ」という言葉に押され、彼を殺すことにします。
『地雷震』で一躍世間の注目をさらった高橋ツトムの作品です。『残響』ではじっとりと暗く描かれた青春の葛藤が魅力となっています。智は老人が過去に殺した3人の遺族に香典を払うという目的を果たすために、彼が元いたヤクザの事務所に向かいました。しかしそれはあくまで頼まれたから、というだけ。本当に望んでいるのは生きている実感を取り戻すことなのです。彼は老人を殺すことを決めた時こんなことを考えます。
「一線を越える オレは、無事でいられるのか…
……無事? ”無事”ってなんだ?
オレは平凡な人生を望んでるのか?いや、違う。
ただ、夏は暑いって感じたいだけだ…」
自分の倫理観だけで動いていることが感じられるこの青臭い言葉は何か読者をぞくぞくさせます。それは常識の通じない怖さと、かつて自分にもあったであろう本人もコントロールできない暴力的なエネルギーを感じるからではないでしょうか。不穏な空気が癖になる、ダウナーなヤクザ漫画です。
- 著者
- 森本 梢子
- 出版日
- 2010-08-18
タイトルの『ごくせん』とは極道の先生という意味で、その名の通り極道が先生をしている話です。主人公は新米教師の山口久美子、通称「ヤンクミ」。2つしばりの髪型にメガネと一見地味な風貌ですが、その正体は黒田一家の組長の孫娘。ヤクザの血を引くことを隠しながら、不良高校生たちの学園生活を影から支えていきます。
この作品はヤクザが出てくるマンガにしてはどこかのんびりとした空気が流れていて、喧嘩のシーンでも血なまぐさい雰囲気はあまり感じられません。ヤンクミはちょっと粗暴な性格ですが、生徒思いの優しい先生で、生徒が困っているとどこからか現れて、極道っぽいセリフを言いながら悪いヤツを倒してくれます。そんなヤンクミの苦労を知ってか知らずか、反抗的だった生徒たちもいつのまにかヤンクミを慕うようになります。
一度は、生徒たちに追い込まれ退職を決意したヤンクミが、ヤクザ絡みの宗教団体と生徒がモメていると知るやいなや、単身で乗り込み戦う場面には心打たれます。ドラマ化もされた有名な作品ですが、ドラマを見たことがある人も、この機会に漫画も読んでみてはいかがでしょうか。また違った魅力のヤンクミに出会えることでしょう。
- 著者
- 武論尊
- 出版日
突然ふらりと新宿の町にやってきた謎の男、唐沢辰巳。「気に喰わねェ奴は殴る!」そんな男らしい信条を持っています。相手が闇金にヤクザ、警察、誰であろうと屈さず自分の道を歩いていくひとりの男の物語です!
本作は武論尊原作、池上遼一作画の作品。一匹狼、唐沢の生き様がとにかくかっこいいストーリーです。その不思議な人柄とべらぼうに強いキャラクターに男も女もみんな彼に惹きつけられていきます。その人心掌握術と強さを武器に彼はどんどん自分の力で上にのし上がっていきます。
彼がどこから来たのか、何をしに歌舞伎町に来たのかは分かりませんが、彼の言葉には何か深いものがあるのです。例えばある雨の日、足元にすり寄ってくる子犬を抱き上げると、「媚びるな」と言ってゴミの山に投げ込みます。
「媚びて飼われりゃ飯は喰える…
……だが一生、鎖でつながれる……」
彼の生き様を表している名言です。果たしてこの男は若くしてなぜこんな深い言葉が出てくるようになったのか。そしてこれから歌舞伎町で何をなすのか。とにかく主人公がかっこいい名言満載のヤクザ漫画です。
- 著者
- 芹沢 直樹
- 出版日
- 2014-05-09
イケメンとワイルド系男子高校生のダブル主人公が、大金を手に入れるためにヤクザや政治家と奮闘する漫画です。
進学校の生徒会長である水沼は、全校生徒の目の前で副会長の火野にナイフで刺されてしまいます。しかしこの事件は2人の演技で水沼の計画にのった火野がわざと暴力事件を起こし学校を退学して、裏から水沼をサポートするために起こしたものだったのです。その計画とは、市長である水沼の父親が持つ裏選挙資金30億を強奪することでした。
市長は金の魔力にとりつかれ、一緒に金を集めていた友人たちも殺してしまうほど残酷な人物です。しかし友人たちは市長の企みに気づき、自分たちの背中に30億の在り処を示した刺青を残すというトリッキーな方法で金を隠します。望はその暗号を解くために、友人の死体をミイラにして残すというキチガイっぷりを見せています。
刺青に暗号を残すところから、ミステリーのにおいも感じられる作品です。黒幕が主人公の父親なので、水沼が金を奪おうとしているのがバレそうでバレない展開に、読んでるほうがヒヤヒヤしてしまいます。
ふたりは無事に謎を解いて30億を手に入れることができるのか?ラストまで目が離せない作品です。
ヤクザ漫画はアクションだけでなく、ミステリーやコメディ、サスペンスの要素を含んだ作品も出版されており、かなり読み応えがあります。暴力だけでおさまらない、様々な魅力を持つヤクザ漫画を、この機会にぜひお楽しみください。