シュールでゆるーい雰囲気にハマる『ヒナまつり』。オチが分かっていても読めば読むほど好きになる中毒性の高い作品です。今回はそんなやめられない止まらない魅力をご紹介します!最新14巻のネタバレを含みますのでご注意ください。
「服くれ」(『ヒナまつり』1巻より引用)
若手ヤクザの新田の家に突如あらわれた、人間の顔がついた謎の円盤。ボタンを押すと中から少女が出てきて無表情でこう言います。
衝撃の始まり、ヤクザという設定にも関わらずゆるーっとストーリーが進んでいくのが『ヒナまつり』です。
表情の乏しいキャラたち、ゆるいながらも切れ味の鋭い笑い、狂気すら感じられるノリ、やる気のないヒロイン(?)……。それらすべてに何とも言い表しがたい中毒性があり、どんどん意味不明なこの世界にハマっていくのです。
そしてそんな肩の力が抜けた世界に時々挟まれる、ヤクザらしい人情味のある話。沁みるなぁ〜と思っている時にやっぱりそれだけでは終わらず、ちゃんと落とす技術。
独特の面白さを詰め込み、感動展開とのメリハリをうまくつけたギャグセンスの高さを感じさせられます。オチが分かっていても読めば読むほど面白い!今回はそんな本作の中毒性をご紹介します!
ちなみに本作2018年4月からアニメ化が決定しています。声優はヒナ役を田中貴子、新田役を中島ヨシキ、アンズ役を村川梨衣などが決定しています。
ある日、ヤクザの新田の家に謎の少女が現れます。新田は嫌々ながらもそのヒナという少女に助けられ、そのまま一緒に暮らすことに。
彼女のごはんをつくり、髪を乾かしてあげ、学校に通わせてあげます。
そこからヤクザの男と謎の少女とのハートフルSF日常ギャグ漫画が始まるのです……。
よく分からないかと思いますが、とにかくシュールで面白いストーリーが始まります。
- 著者
- 大武 政夫
- 出版日
- 2011-07-15
「ハンッ」(『ヒナまつり』1巻より引用)
200万円で手に入れた壺をつまみにワインを飲んでいる時に、頭上に突然謎の物体が落ちてきて情けない声を出してしまうヤクザの新田。ヒロイン?のヒナと感動の初対面シーンです。
ヒロイン、ぜんぜん可愛くないwww
人間が入るはずのないサイズのミノムシのような物体、どこを見ているのか分からない瞳、ワインを浴びて火サスのような雰囲気になって驚く新田。
とりあえず彼はその物体と目が合いますが、少し考え込んでとりあえず寝ることにします。
翌朝。
無の表情が秀逸すぎます。
そしてなぜかそのまま一緒に住むことになるのです。この出会いを思い出してもどうして一緒に住むことになったのかまったく分からない新田。そこは特に掘り下げてはいけません。この作品の魅力はゆるさ。同棲のきっかけも流れです。
新田はヒナが火傷すれば氷を持ってきてあげて、お風呂上がりには髪の毛を乾かしてあげて、彼女が付けっ放しのテレビを消して、やれやれ。完全にお母さんです。
ヤクザとして「金稼げる奴が勝ちなんだよ」と序盤に言っていた人物とは同じに思えません。
ダメダメで生活能力皆無のヒナに比べ、天使すぎるアンズ。ヒナを「処分」するためにふたりが所属していた組織によって派遣されましたが、最強である彼女に負けてホームレスになってしまいます。
それまで常識がなかった彼女ですが、その経験を経て成長し、中華料理店の夫婦に引き取られることになりました。
そんなアンズの魅力は何より素直であること。ファンの間では天使と崇められています。
- 著者
- 大武政夫
- 出版日
- 2013-07-13
ある時、ヒナがスキー教室に行っている期間に、中華料理店の夫婦が温泉旅行に行っているからとアンズを預かることになった新田。
せっかくヒナから解放されたのに結局子守かぁと考える彼ですが、アンズは超いい子。夫婦の温泉旅行になぜついていかなかったのかと聞かれ、こう答えます。
「久しぶりだって言ってたから邪魔しちゃいけないと思って
ふたりで過ごして欲しかったから」
無の表情になる新田。
「いくら渡したらヒナとお前チェンジ出来るの?」
そんな制度ありません。
そのあとも出来た料理を食卓に運び、皿洗いをし、一緒に料理や掃除をお手伝いするアンズ。新田の得意なキャベツの千切りに「わぁ!すごいね!」と素直に感動します。ちなみにそれを見た時のヒナの言葉はこれ。
「わぁ〜 テクニカルすぎて きもい」
いい子すぎるアンズを見て、ひとりで部屋に行って気を鎮める新田。しかしつい拳を握り締めてしまいます。
「憎い…中華屋の連中が
何故オレがヒナで 奴らはアンズなんだ」
チェンジを諦めきれていません。そんな制度はありません。
新田がわなわなと震えるほどいい子のアンズ。ヒナの磁場でゆるくて頭のおかしい世界観になった『ヒナまつり』ですが、作品随一の常識人、そして天使である彼女によってその狂った感じが中和されます。
9巻あたりから3年後の世界が描かれ始めた『ヒナまつり』は止まることを知らずにますます面白くなっていきます。特にストーリーがあるわけでもないのに面白いというのがすごいです。
12巻では相変わらずのアンズの天使っぷりや、ヒナ、アンズに続き第3の超能力少女として現れたマオの狂気っぷりが感じられる巻でした。今回も中毒になるようなギャグが満載で、特に動けない新田の代わりにヒナが超能力を使って抗争を止める回は秀逸です。
- 著者
- 大武 政夫
- 出版日
- 2017-03-03
新田が肺炎で入院している時に、邪道会から攻撃を受けた彼が所属する王道会系暴力団。体が動かせないから超能力で動かしてくれと彼から頼まれたヒナは、良い表情で承諾。ヤクザ映画を見て「らしい」動作を勉強します。
「今すぐ行くけぇ 待っとれよワレ!」
そう言って邪道会の待つ廃工場に向かう、ヒナが動かす新田。敵が撃ちまくる銃弾は彼を避け、新田はそのまま奪ったドスを相手の首元に突きつけます。
「やめてくれぇ!」
口々に降参する彼らを遠くから双眼鏡で見ていたヒナは締めくくりとして、新田にドスを舐めさせます。
「とんでもねぇ伝説を見ちまった……」
周囲から恐怖と尊敬の念を浴びる新田。
しかしドスを舐める新田の舌は止まりません。ピチャピチャ、レロ〜、レロレロレロレロ。……。
「お前 いつまでなめてんだよ!」
しかし止めようとする組長の手をほどき、彼の方を見て再度下からドスを舐め上げ、最後にピンッと小気味よく仕上げ。
「なめしゃぶるにも…」
「程があるだろ…」
最高です。10巻を超えてもギャグの鮮度が落ちません。
一件落着かと思いきや、今回の事件の裏では何か裏がありそう。謎の男と謎の少年という新キャラが登場します。ネタだけでも十分楽しいのに、ストーリー展開が入ってきたら最強です。はたして彼らは誰なのでしょうか?
邪道会は逆襲に出るため、津田雅樹を敵陣に投入します。65話では、彼を中心として物語が進んでいきます。
自宅に帰ると、なぜか素っ裸の少年が立っていて驚く津田。警察に届け出るのも、逆に怪しまれそうだし、そもそもヤクザという役柄上、信用されなそう……と結論にいたり、少し様子を見ることに。
片付けとけと言えば、半日で部屋の掃除を済ませ、料理を作らせれば絶品。なんでも完璧にこなしてしまいます。なぜ居候し続けるのか謎でしたが、津田は少年と暮らしはじめるのです。都合よく少年の存在に順応できる津田もすごいです。
- 著者
- 大武 政夫
- 出版日
- 2017-09-15
そのうち、組員から「少年愛では?」と噂されるように……。噂を気にしすぎて、もはや誰と話していても「少年愛」というワードが連想されてしまうようになってしまいます。他の人が「しょう…」と口にするだけで、自分から「少年愛!?」と言ってしまうあたり、かなりの狂人です。
皆に誤解されていることに苦しむ津田。ついに少年を家から追い出すことを決意しますが……。
今回は、新キャラとなる少年が登場しました。追い出されそうになる彼は、意外な行動に出ます。それに対して、津田はどのような反応をとるのでしょうか。今後の展開にも期待が高まります。
新田の舎弟であり、彼のアンズへの愛の被害を被っているのが、サブです。13巻では、この3人の関係にある危機が訪れます……!
新田はアンズを可愛がるあまり、ジムに行った後、彼女が経営するラーメン屋に必ず行くということを週3で続けています。いつもそれに付き合わされるのがサブ。
アンズのラーメンの味に飽きてきたサブは、味を変えてみないかと彼女に提案します。お父さんの味を守っているのだと主張するアンズに、尊敬する相手を超えることこそが親孝行だと言い、どうにか味の改良をさせることに成功します。
- 著者
- 大武 政夫
- 出版日
- 2018-03-15
しかしサブを待っていたのは、練習台の料理を食べさせられそうになるというさらなるラーメン責め。
「週3ラーメン食いたくなくて嘘ついた結果 またラーメン
戒め系の説話かな?」
しかしそれもどうにか回避し、その夜は新田に連れられて恒例のジム後のラーメン。しかしもちろん味の改良を行なっているアンズは店を出していません。
「今日の俺ファインプレイ過ぎるでしょ」とニヤリとするサブですが、ことはそう上手くは運びません。新田はアンズに電話をかけ、ラーメンの研究をしているということを知ると、近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばします。そしてその空き缶を拾ってすごい形相で潰しながらこう言うのです。
「俺がどんだけアンズを見守ってきたと思ってんだ
アイツがひとりでそんな事考えるハズがねぇんだよ」
サブはもちろん心の中で震撼。
「うぉぉぉ マジか!?
アンズちゃん大好き過ぎて犬より嗅覚鋭くなってねぇ?」
そんなサブに気づいているのかいないのか、新田はこう続けます。
「どこかの誰かがそそのかしたんだ
悪い虫がよォオ」
「虫はここにいますよ」
もちろんそんなこと本人に言えるはずありません。
そしてそこからアンズ(ラーメン)を巡った仁義なき戦いが始まり……。
冷静で口数が少ないように見えて、考えていることが結構人をバカにしている感じのあるサブ。頭の中で彼女をメスブタ呼ばわりしたかと思えば、いい子だと方向転換したり、食えない人物です。
そして事件は、アンズの発した禁断の呪文によって、悲しい、悲しい結末を辿るのでした……。
最後の新田の表情がすべてを物語っています。争いに、いいことなどひとつもないのです……。生きろ、新田。
魅力あふれるヤクザ漫画を紹介した<本当に面白いヤクザ漫画おすすめランキングベスト7!>の記事もおすすめです。