金城一紀おすすめ作品ベスト5!日韓問題に斬り込む傑作『GO』は読んだ?

更新:2021.12.15

愛着が湧くような魅力的なキャラクターを、明るいタッチで描き、読むものに元気と勇気を与える作家・金城一紀。デビュー作となる『GO』が、いきなりの直木賞を受賞したことでも有名です。

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在日韓国人である作家・金城一紀

1968年、埼玉県に生まれた金城一紀は、中学校までの少年時代を、朝鮮学校で過ごします。小学生の頃から、図書館で様々な本を読んでいたそうで、学校に日本語の本を持っていくのは怒られるため、いつも隠れて読んでいたんだとか。

国籍を朝鮮から韓国に変え、高校からは日本の学校に通います。大学は慶應義塾大学法学部へ入学。親友の死をきっかけに、大学1年の頃から、小説家になることを決めたのだそうです。

その後ありとあらゆる書物を乱読。1998年、『レヴォリューションNO.3』で、小説現代新人賞を受賞します。2000年に、デビュー作として発表した『GO』が、いきなりの直木賞を受賞すると、その後も数々の傑作作品を発表。小説家としてだけでなく、脚本家としても活躍する、人気作家となっています。

5位:愛する娘のために立ち上がる主人公がかっこいい!『フライ,ダディ,フライ』

中年サラリーマンが、傷ついた娘の仇をとるため、男子高校生に挑む物語『フライ,ダディ,フライ』。この作品は、『レヴォリューションNO.3』で人気を博した、ゾンビーズのメンバーが再び登場する、ゾンビーズシリーズ第2弾となります。2005年には、岡田准一、堤真一主演で映画化もされ話題になりました。

主人公・鈴木一は、47歳のごく平凡なサラリーマン。愛する妻と1人娘とともに、幸せな生活を送っていました。そんな幸せな日々がある日一変。愛娘の遥が、他校の男子高校生・石原に顔を殴られ、病院へ運ばれてしまうのです。心に深い傷を負った遥の姿を見て、復讐を誓った鈴木は、石原の学校へと乗り込んでいったはずでしたが……。

著者
金城 一紀
出版日
2009-04-25

乗り込む学校を間違えてしまい、まったく別の高校へ行ってしまった鈴木は、ここで5人の男子高校生たちと出会うことになります。この5人が、『レヴォリューションNO.3』でお馴染みのゾンビーズなのですが、5人の中の1人、在日朝鮮人の朴舜臣は、喧嘩の達人。途方にくれる鈴木のため、復讐のサポートを買って出ます。

この日から、鈴木の特訓の日々がスタート。ボクシングをしている石原に対し、正々堂々と喧嘩で一矢報いよう、という考え方が、とても爽やかで心惹かれます。鈴木と舜臣が、徐々に心を通わせ、打ち解けていく様子が微笑ましく、鈴木がこの特訓をとおして、心も身体も強くなっていく姿にはわくわくさせられます。

平凡なサラリーマンを成長させたのが、おちこぼれと言われている、男子高校生たちだった、というのがこの作品の面白いところ。スカッと爽快な物語で、読後感が非常に良く、とても勇気付けられる1冊です。

愛する娘のため、身一つで勝負すると決めた、金城一紀が描くかっこいい中年サラリーマンの物語を、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。
 

4位:素敵な映画を観てみたくなる1冊『映画篇』

映画にまつわる、5つの物語が収録された金城一紀の連作短編集『映画篇』。

「太陽がいっぱい」・「ドラゴン怒りの鉄拳」・「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルーロマンス」・「ペイルライダー」・「愛の泉」と、どの短編にも、様々な名作映画のタイトルが使用されています。2011年にはコミック化もされ、多くの人から読まれている金城一紀の人気作品です。

「太陽がいっぱい」の主人公・「ぼく」は、中学までの少年期を朝鮮学校で過ごしました。やがて大人になり、小説家になった「ぼく」。自身の書いた小説が映画化されることになり、そのロケへと同行します。そこで、朝鮮学校で同級生だった永花と、偶然再会。「ぼく」は、行方の分からなくなっていた、かつての親友・龍一の消息について聞くことになり、龍一とともに映画に夢中になった、少年の頃を思い出すのです。

結局違う道を歩むことになってしまった「ぼく」は、龍一のことを想い、物語を書きます。徐々に荒んでいく龍一の姿はとても切なく、「ぼく」が描く物語の明るさに、切なさが増し、心を打たれます。この物語を皮切りに、それぞれテイストの違う、映画を題材とした物語が綴られていきますが、どの話も切なかったり可笑しかったりと、とても魅力的です。

著者
金城 一紀
出版日
2014-07-28

1つの映画、1つの物語によって、元気をもらったり、人生を変えるような影響を受けたりしたことはないでしょうか。優れたフィクションには、人を救うパワーがあるのかもしれませんね。作中に出てくる、「才能という力を持った人間は、それをひけらかす為に使うか、誰かを救う為に使うか、自分で選択できる」という言葉が印象的です。

読んだ後には、素敵な映画が観たくなる1冊です。金城一紀のこの作品は、人に力を与えてくれるものではないでしょうか。とても暖かい気持ちになり、忘れていた何かを思い出させてくれることでしょう。

3位:男子高校生たちをコミカルに綴る人気シリーズ第1弾『レヴォリューションNO.3』

おちこぼれ男子高校生たちが、不器用ながらも奮闘する『レヴォリューションNO.3』。
ゾンビーズシリーズ第1弾となる本作は、3編の物語が収録され、6人のゾンビーズのメンバーが大活躍します。

大人から見たら“くだらない”と思われてしまうかもしれないことに、本気の情熱を注ぎ込む、男子高校生たちの姿を描いた青春小説で、軽快でユニークな文章が面白く、本が苦手な方でも楽しんで読めるでしょう。漫画化もされている金城一紀の作品です。

著者
金城 一紀
出版日
2008-09-25

主人公の「僕」をはじめ、喧嘩の達人である舜臣、難病を抱えるヒロシ、いつも不運を招く山下などなど、ゾンビーズには個性的なメンバーが揃います。「君たち、世界を変えてみたくはないか?」という教師の言葉に刺激を受け、ゾンビーズが本気で挑んでいるのが、聖和女学園の学園祭への侵入です。

名門女子校だけあってガードが固く、学園祭はチケット制。あれこれ試して早2年。3回目の挑戦となる今年はどうしたら良いものかと、彼らは頭を捻ります。その他にも、みんなで沖縄に行こうと、バイトして集めた資金を、盗まれてしまったり、ストーカー被害にあっている女子大生から、ボディガードを頼まれたりと、彼らはいつも大忙しです。

ただ馬鹿騒ぎしているだけかと思いきや、けしてそんなことはなく、それぞれに悩み、葛藤し、いろいろな想いを抱えているのです。お互いを思いやり、固い絆で結ばれた彼らの友情物語には、時に泣かされ、時に爆笑してしまいます。学歴社会や、なくなることのない差別との、彼ら流の向き合い方なども描かれ、コミカルな中にも、奥深いメッセージがたくさん詰まった金城一紀作品です。

10代のこの頃にしか味わえない、きらきらとした青春の日々はとても羨ましく、その行動力やパワーには圧倒させられるばかりです。元気を出したい時にはもってこいの金城一紀の1冊。読めば心が温かくなり、明るい気分になれることでしょう。

2位:金城一紀が愛と死について描く感動作『対話篇』

人と人との対話を通して、愛と死について丁寧に描く『対話篇』。3つの中編が収録された作品で、金城一紀の作品には珍しく、人間同士の関わり合いが、静かにじっくりと綴られています。作品に収録されている「花」が、2002年、大沢たかお主演で映画化。「恋愛小説」が、2004年、玉木宏主演で映画化されました。

「恋愛小説」の主人公・「僕」は、大学最後の試験の後、みんなから“透明人間”と呼ばれてしまうほど、目立たないクラスメイトに話しかけられます。彼の家に遊びに行くことになり、「僕」はそこでの会話で、彼と親しくした人間が、みんな亡くなってしまうという、不幸な運命について聞かされることになります。

「永遠の円環」の主人公は、末期ガンに侵され余命わずか。それでも、最後にどうしても復讐したい相手がいるのです。「花」では、動脈瘤が大きくなってしまい、手術が必要だが、失敗すれば記憶を失うことになる、と医師から告げられた主人公の「僕」。急に頼まれたアルバイトで、「僕」は一般道で鹿児島まで行きたい老弁護士の、ドライバーをすることになります。

著者
金城 一紀
出版日
2008-06-30

 

どの物語にも死の影が漂い、愛する人を亡くしてしまった、悲しい男の姿が描かれています。ですが、けして重苦しい物語にはなっていません。読んでいて、どうしようもなく切なく、それでいて読後には爽やかさが残る金城一紀の作品です。物語のあちこちには、心に残るセリフが散りばめられ、人を愛するために、何が必要なのかを考えさせられます。

「愛する人ができたら、その人の手を離してはいけない。話したとたんに誰よりも遠くへ行ってしまうから」という言葉が胸にしみ込みます。悲しみを背負った登場人物たちが、人との対話によって、ほのかな希望を見出す物語。とても静かで、心が優しく温まる1冊です。


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1位:金城一紀のデビュー作にして直木賞受賞作!『GO』

日本の普通高校に通う、在日韓国人の主人公の姿を描く『GO』。在日韓国人であるがゆえに、様々な差別や偏見の目を向けられながらも、明るく前を向く主人公が魅力的な本作。直木賞を受賞し大ヒットした金城一紀の作品で、2001年、窪塚洋介主演で映画化され、数々の映画賞を受賞しました。

日本で生まれ、日本で育った在日韓国人の主人公・杉原は、都内の男子校に通う高校3年生。父親から教え込まれたボクシングを武器に、喧嘩や悪行に明け暮れる日々を送っています。朝鮮学校時代の友人たちとは、疎遠になっていましたが、ただ1人、正一との友情は変わらずに続いていました。

ある日杉原は、同じ高校の友人・加藤が開いたパーティで、桜井という少女と出会います。やがて付き合い出すようになる2人でしたが、杉原は自分が在日韓国人であることを、打ち明けられずにいて……。

著者
金城 一紀
出版日

 

主人公のキャラクターが魅力的なのもさることながら、家族や友人たちも皆個性的で、存在感があります。特に、元プロボクサーの父親は、強く賢くたくましく、とてもかっこ良く描かれていて、惹きつけられます。主人公・杉原には、常に明るさとパワーがあり、「いつか俺が国境線をなくしてやるよ」という言葉が、頼もしく感動的です。

そんな主人公のキャラクターも手伝って、根の深い問題を扱っているにもかかわらず、作品にはのびのびとした爽やかさがあるのです。友情や恋愛も絡め、物語はテンポ良くスピーディに進んでいきますし、それほど長い作品ではないので、本が苦手な方でも、あっという間に読み終えることができるでしょう。まだ読んでいない方に、ぜひおすすめしたい1冊です。


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金城一紀のおすすめ作品を、ランキングにしてご紹介しました。どの作品もとても読みやすく、心に響く物語です。文章もとてもかっこいいので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。

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