2021年6月からドラマの放映がはじまり、ますます目が離せない漫画『にぶんのいち夫婦』。この記事では夫婦のあり方をリアルに描く、この物語の見どころをネタバレありで紹介!すでに結末を向かえている原作小説のストーリーを踏まえて、今後の展開予想もしていきたいと思います。
『にぶんのいち夫婦』は友人から羨望の眼差しを向けられるような男性と結婚し、幸せな人生を歩んでいた主人公に夫の不倫疑惑が浮上。今まで信じていたものが突如崩れだし、生活が一変していくという不倫を題材にした物語です。
本作は小説投稿サイトのエブリスタに公開された原作小説が人気を博し、2019年2月よりWEBコミック配信サイトのマンガボックスにて漫画連載を開始。2021年3月時点で累計発行部数130万部を突破する、人気作となりました。
最近よくある不倫漫画とは、一風違った魅力を放つ本作。一組の夫婦に浮かびあがった不倫疑惑を主軸に、それぞれのさまや様々な家庭のあり方が登場人物の視点を通してリアルに描かれています。
原作小説・漫画がともにヒットし、ついに実写ドラマ化された『にぶんのいち夫婦』。
ドラマ『にぶんのいち夫婦』は、動画配信サービスParaviで先行配信をスタート。地上波ではテレビ東京系列で、2021年6月2日から放映を開始しました。
夫の本心を見失い悩み苦しむ主人公・中山文を演じるのは、ドラマ「コード・ブルー」シリーズの冴島はるか役などで活躍が目覚ましい比嘉愛未(ひがまなみ)。
文の夫・中山和真役は竹財輝之助(たけざいてるのすけ)が、文の同僚であり物語のキーパーソン・樋口役を坂東龍汰が演じます。
ドラマ版の注目ポイントは、何といっても登場人物たちの愛憎模様や不信感が募っていく過程が、どのように現実化していくのかということ。
小説や漫画とは違った表現が実現できるドラマならではの、現実的な世界観に注目してみてはいかがでしょう。
夫の浮気を疑いはじめた日から、苦悩の日々がはじまる妻。それが主人公の、中山文です。
合コンで出逢った和真と順調に交際を重ね結婚。幸せな結婚生活を送るも、1通のメッセージをきっかけに今まで信じてきたものに陰りが見えはじめます。
文は純粋で真面目、少し潔癖な気質があり、長身のスラッと美人。人に愛されやすい性格をしています。様々な思惑を秘めたキャラが多数登場するなか、文が抱える悩みや夫の和真に抱きはじめる感情は現実と隣合わせのものばかり。
読み進めていくうちに悩み苦しみながら日常を生きていく文の姿に、思わず共感してしまうかもしれません。文を蝕んでいく人間の醜い欲望たちは、もしかしたら明日自分の近くで起こることかもしれない。
そんな隣り合わせの現実味を感じさせる、等身大の主人公です。
優しくてイケメン、友人も羨む文の自慢の夫・中山和真。文が二日酔いで目覚めた朝には、胃に優しい味噌汁を作って文の体調を気遣う、そんな献身的な夫の和真。
文とは仲睦まじい結婚生活を送っていましたが、文が和真のスマホに届いたメッセージを目撃した日から少しずつ2人の歯車が狂いはじめます。
基本的には文を気づかう優しい夫ですが、文が抱く不安や本当に言ってほしい言葉を汲み取れない一面があります。
真相がわかるまでは文の視点で物語が進んでいくため、和真の本意を文と一緒に予測していくことになる本作。和真が取る行動のひとつひとつが怪しさを感じさせ、本当のところどうなのか?という想像を巡らせる面白さがこの物語にはあります。
誰もが羨む夫婦だった中山夫妻に、揺さぶりをかける存在。それが和真の後輩、立川さとみです。
直属の部下・さとみを、指導する立場にある和真。さとみが和真に送ったメッセージが、中山夫妻の仲に亀裂をいれるきっかけになります。果たしてメッセージに隠された、さとみの真意とは?
SNSへの投稿など、さとみが取る行動の数々が文の不安を煽っていくことになります。怪しさ満載の疑惑の女・立川さとみの目的は一体何なのか。
文と直接関わりのある人物ではないため、さとみの行動はなかなか予測の範疇を出ることはありません。そんな彼女の絶妙なポジショニングが、現実と隣合わせの感覚を色濃く演出していくことに。
立川さとみという女性の全貌が明らかになる時、怒涛の大ドンデン返しが待ち受けています。
文の学生時代からの友人である優香は、文とは違った夫婦の悩みを抱えています。
銀行員の夫と結婚し、素敵なマイホームでの生活がはじまる優香。しかし安定した結婚生活を送っているように見えた優香は、夫から支配的な圧力を強いられているという悩みを抱えています。
抗うことができない辛い結婚生活を送ることになってしまった要因のひとつとして、生まれ育ってきた今までの生き方が作用している優香。
そこに至るまでの過程をリアルに感じさせる優香が抱える問題は、思わず考えさせられてしまう一面があります。物事には原因と理由がある。根本を悩む本人が理解して、はじめて解決の糸口が見えてくる。
そういった作者からの投げかけを、優香を通して感じるかもしれません。ドラマでは瀬戸さおりが演じます。
次に紹介するのは優香同様、文の学生時代からの友人・三浦香住。
文や優香と異なり、独身で6つ下の彼氏がいる香住。香住の彼氏は金銭面で香住に頼りっぱなしで、甘ったれタイプの頼りない性格。そんな彼を支えたい気持ちを抱く香住は、お姉さん気質の女性です。
スマホが原因で彼氏の浮気が発覚し年下彼氏との別れを決意した香住は、和真を信じきれない文に浮気相手を見抜く術としてSNSでのチェック法などのアドバイスをします。
香住が抱える悩みの根本には、ダメな男だとわかっていても情を捨てきれないというものがあります。自分が選んでいる道は最善ではない。そうわかっていても、どうしていいかわからない時がある。
そんな彼女の姿が、読者に問いかけることは何か。それを考えるのも、本作の醍醐味のひとつです。ドラマでは秋元才加が演じます。
文の学生時代からの友人の中で、香住と同様にもう1人独身の女性がいます。それが、さやかです。
さやかは華やかな雰囲気をまとい、女性らしさを振りまくタイプの女性。数々の合コンに参加してきたさやかは、文と和真が出った合コンの幹事をしていました。
文の友人の中で最も男性ウケする女性を演じるタイプ。プライドが高く、狡猾な一面があるさやか。この物語は文と和真の視点でストーリーが展開されていくため、2人の目から見たさやかとさやか自身が抱く思いには相違があります。
そのためストーリー序盤では印象の薄さが否めないキャラですが、真実が明かされていくにつれて存在感が色濃くなりはじめます。
さやかという存在は、漫画『にぶんのいち夫婦』のリアルさを色濃く彩る一旦を担っています。ドラマでは黒川智花が演じます。実力派の黒川智花がさやかという人物の裏表をどう演じ切るのか、注目です。
文と同じコールセンターでアルバイトをしている樋口は、とても魅力的なキャラクター。
キャラクター人気投票が開催されたら、上位に食い込む可能性を秘めた存在です。大学生の樋口は文から見ると弟のような感覚の存在ですが、樋口が休憩時間に放つ言葉の一つひとつが文を動かす原動力になっていきます。
樋口が文に説く言葉たちは、20歳の意見とは思えないほど大人びています。冷静に主観ではなく、一歩引いた目線から考えを述べる樋口。文のことを気にかけており、文に年下扱いをされることを悔しがったりもします。
最初は自分の率直な意見やアドバイスを文に伝えていきますが、やがて頼もしい協力者になっていきます。時にはさりげなくヒーローのような登場をする彼に、思わずきゅんとしてしまうかもしれません。
いつものメンバーで集まり、女子会を楽しむ文。友人の香住は彼氏のスマホから、知りたくない事実が出てきたことで荒れていました。彼や旦那のスマホを自分なら見るか?という談義になる中、文は和真を信じているから自分ならスマホを見ないと言います。
友人たちに優しくてカッコイイ旦那との結婚生活を羨ましく思われ、幸せの絶頂を感じる文。しかしその夜、和真のスマホに知らない女性から届いた不審なメッセージを偶然目撃し、和真に対して拭い切れない疑念を抱きはじめます。
不安な気持ちを晴らすため、2人で過ごすクリスマス・イブに向け準備にいそしむ文。そして迎えたクリスマス・イブ当日。和真から今日は帰れないというメッセージが届き、文の中にある疑念は大きく膨らみはじめます。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
浮気の確証探しを決意し疑惑の女・立川さとみのSNSをチェックした文は、クリスマス・イブに既婚者の彼氏とデートするという投稿を発見します。
その上さやかの助言によって立川さとみのアカウントと繋がりのある、和真らしき人物のアカウントを知りさらに募る文の不信感。
和真に触れられること自体にも拒否反応をしめすようになりますが、立川さとみに負けたくない気持ちから文は妊活をはじめます。しかし妊活に対するプレッシャーを和真が感じてしまい、状況はなかなか好転しません。
和真の部屋で浮気相手からと思われるバレンタインチョコを発見し気持ちが塞いでしまった文は、同僚の樋口とカフェへ。樋口に悩みを聞いてもらっていると偶然、和真が会社の同僚・高梨と文たちがいるカフェに入ってきます。そこには立川さとみと思わしき人物の姿もあって……。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
共通の友人・多恵から「優香が死にたいと連絡してきた」と聞いた文は、和真に車を出してもらい優香の家へ駆けつけます。優香は夫のモラハラに悩まされており、精神が崩壊する寸前のところまで追い詰められていました。
自身を卑下するような発言を繰り返す優香に、自分の不安や弱さと戦って夫・佳樹に勝とうと菜摘が一喝。優香は佳樹に勝つため、菜摘の家に身を寄せることになります。
ある日の帰り道、文の前に突如現れた高梨。高梨は和真とさとみは浮気していると言い出し、文を脅し強引に迫ります。窮地に陥った文を助け、浮気調査に協力すると言う樋口。
樋口の協力を得たことにより、次々と明るみになる衝撃の真実。立川さとみの不倫相手は高梨で、和真の浮気相手はさやかだったことがわかります。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
さやかと和真のやり取りを聞いた翌日、樋口と合流した文は昨夜の録音データを樋口に聞かせます。さやかと和真の浮気を確信した文は、樋口の助言を元にさやかを罠にはめたのでした。
樋口と高梨の協力を経て、和真とさやかの密会現場に乗り込む文。「文よりも先に和真のことが好きだった。横取りしたのはあんただ!」と、さやかは文を激しく罵倒します。
ついに真実を語りだす和真。そこに至った記憶はないものの一度さやかの隣で目覚めた日があり、そのことがきっかけでさやかが妊娠。慰謝料を請求されていたと言います。
文を傷つけたくない一心で、秘密裏に全てを片付けてしまいたかったと言う和真。言葉のふしぶしから文は、妊娠はさやかの狂言だと気づき……。
全ての真実を知った文は、どういった決断をするのでしょうか?緊迫の第4巻。読むか迷っている人も、ひとまず4巻までは一気に読んでほしい!
「ただの不倫漫画ではない」ということが明らかになる4巻ですが、文と和真の関係性は元通りとはいかないよう。事実がわかっても「事後」の人間の心の動きまで描かれていく今後に、まだまだ期待できるところが本作の魅力でもあります。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
これまで文の視点でストーリーがくり広げられて来た『にぶんのいち夫婦』。衝撃の事実判明後の第5巻からは、和真の視点で物語が進んでいきます。
物語は5年前の2人の出会いへ。高梨に強引に誘われていった合コンで、ひと目見た瞬間から文に惹かれた和真。連絡を取り合うようになり、徐々に縮まっていく2人の距離。交際を重ね、2人は結婚します。
一方、和真に猛烈アプローチを繰り返すさやか。心が決まっている和真はきっぱり断りますが、さやかの文に対する嫉妬心や憎悪が姿を現しはじめます。
モラハラが原因で離婚調停中の同期・和田が退職することになり、仕事量が増えてしまう和真。
ある日、高梨を含む同期と飲んでいると、その場にさやかが来ることになり和真は嫌悪感を露わにします。席を立った隙にドリンクに睡眠薬を入れられてしまった和真は酩酊状態になり……。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
クリスマス・イブの夜、会社の納会後さやかに会う和真。文が悲しむかもしれないと思いながらも、ホテルでの写真をネタに脅されてしまい、さやかと行動をともにします。
酔い潰されたにも関わらず、執拗に関係を迫るさやか。和真はEDの診断書を見せ、さやかを抱けない事実を突きつけます。
文と和真2人の歯車が狂い始めるなか、EDである事実を文に言い出せないまま妊活がはじまります。
バレンタインにさやかに呼び出され、妊娠していると告げられてしまう和真。DNA鑑定しないと認められないという和真に、さやかは慰謝料を請求します。
高梨やさとみと訪れたカフェで、樋口と一緒にいる文に会ったことで嫉妬と独占欲に駆られ文を強く求める和真。
そして、さやかとの関係に終止符を打つため密会したホテルで和真の前に、文と樋口が現れついに狂った歯車が動き出します。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
答え合わせのような和真視点でのストーリーも問題の日を迎え、舞台が現在へと戻った漫画『にぶんのいち夫婦』。気になる物語の続き、第7巻は2021年7月8日に発売。ここでは今後の展開や結末を、ネタバレありで考察しちゃいます。
文が和真の元を去って、1週間が経過。和真は浮気しておらず、今も自分を思い続けていることがわかるもわだかまりが解けない文。
文が愛しくてたまらない和真に対して、嘘をつかれた事実を拭い去れない文。この夫婦の関係は、どのような結末を向かえるのか?それが、『にぶんのいち夫婦』が向かっていく結末となります。
文と和真は離婚してしまうのか、やり直してともに生きていくのか。自分だったら、どうするだろう?と思いながら今後の展開に、ハラハラしてしまうかも。
そして樋口の思いは文に伝わるのでしょうか?さやかはなぜ、こんなにも文を憎んでしまったのか?彼氏と友人の両方に裏切られていた香住は、どのような思いを抱えていくのか。これから描かれていく真実がいくつもあり、ますます目が離せません。
この物語の原作小説は完結しているため、結末はすでに存在します。原作通りの結末を向かえるのかも、今後注目すべきポイントのひとつです。
- 著者
- ["黒沢明世", "夏川ゆきの"]
- 出版日
衝撃展開の連続で、読者を惹きつけ続ける漫画『にぶんのいち夫婦』。どんでん返しはもちろんですが、他にもこの物語が放つ魅力を紐解いていきたいと思います。
既婚と独身、子どもがいる家庭といない家庭。『にぶんのいち夫婦』には、様々なタイプの家庭や女性が登場。それぞれの生き方や家庭環境で、異なる悩みを抱えています。
また登場人物たちが抱える悩みは、現実にあふれているものばかり。そのため、共感するキャラクターが出現しやすいと言えます。もしかしたら明日自分の隣で起こるかも……。そんな気持ちにさせる一面を秘めています。
思いは言葉にしないと伝わらない。という言葉を度々耳にしますが、この物語はまさにそのさまをリアルに描いています。
リアルさを感じさせる要因は、文目線で進んでいくストーリー展開。和真がはっきりと思いを言葉にしないため、日に日に募っていく文の不信感や不安。
真実がわかるまで憶測でしかないものの、夫の行動や言動からくり広げられる想像はリアルさを感じさせます。
そして全ての真実がわかり、答え合わせのように事実の裏側が明かされる和真目線のストーリー。現実では決して見ることのできない、双方向からのストーリー展開が面白さを増しているポイントではないでしょうか。
結末に向かって突き進む、漫画『にぶんのいち夫婦』。身近さを感じさせるこの物語は、実写ドラマ化でよりリアルさが具現化されました。原作小説と漫画とドラマ、それぞれの世界観でくり広げられるこの物語を、等身大の目線で眺めながら見比べてみてはいかがでしょう。