死体が実際に死ぬ一日前から見えてしまう、という主人公の皐月が、死体からその人の死因を推測し、人が死なないようにいろんな行動をしていく物語です。 サスペンス要素が強めですが、その他にも女性同士の友情や百合要素もあります。この記事では作品の色んな魅力を一つずつ紹介していきます。
主人公の皐月は死体が実際に死ぬ一日前から見えてしまうという、特殊な能力を持っています。
もちろん、死体は触れたり動かしたりすることができず、皐月にしか見ることができません。
しかし、死体がある場所や傷などから死因を推測することで、その人の死を防ぐことができます。
皐月は学校で死体を次々に発見し、その人の死を防ぐために様々な行動を起こしていくのです。しかし、本当は死ぬべきだった人を助けたことによって、未来がどんどん変わっていき...。
『ウソツキ皐月は死が視える』は死体の謎を解くサスペンス要素がありつつも、登場するキャラと皐月の人間関係が魅力な作品です。
特にストーリーの序盤の皐月は、突拍子もない行動に周囲の人々が理解を示さず、皐月を邪魔する人も現れます。それでも、皐月の一生懸命に人を助けようとする姿によって、少しずつ理解者が増えていく変化がこの作品のおすすめポイントでもあります。
- 著者
- 了子
- 出版日
『ウソツキ皐月は死が視える』の1番の魅力はやはり、死体から死因を逆算して、死を回避していくサスペンス要素です。
読者も皐月と一緒に、発見した死体から死因を推理したり、死を回避する方法を考えたりできるのが面白いポイントとなっています。
例えば、第二話では保健室のベッドで髪や手だけが焼けており、他の部分に外傷がない死体を発見します。
死体は同じクラスの同級生。火事で焼けてしまったのか?それとも一酸化炭素を吸って死んでしまったのか?など様々な死因が考えられます。
果たして、皐月はどのような推理をするのでしょうか。そして無事に同級生の死を回避することができるのか、ドキドキしながらストーリーを楽しむことができるでしょう。
また、皐月は医学的な知識や科学的なデータも頭に入っており、死因の推測をロジカルに進めていくことがあります。
例えば、嘔吐したまま死んでいる死体を発見した時です。嘔吐物の消化が進んでいないこと見つけた皐月は、薬の過剰摂取や食物アレルギーではないかと推測します。
さらに、推移を深め、今まで普通に食べられていた食べの物が突然アレルギー症状を起こす、
「後天性アレルギー」によって死んだのではないか?と仮説を立て、死を回避するための作戦を立てるのです。
このように医学的な知識も学びながら、死因を推理していけるのも魅力の一つとなっています。
また皐月の推理が全て当たる訳ではなく、時には外れてしまうこともあります。そんな時に、予想もつかない皐月のアイデアで死を回避していく所はとても爽快です。
皐月は死体を見つけたら、どんな人であっても助けようとします。仮に助けたとしても、感謝されないことや、自分が損してしまうこともあります。
それでも、見捨てずに自分が怪我を負ってでも助けようとする姿に、誰もが胸を熱くするでしょう。
ここでは皐月が体を張って同級生を助けるシーンを紹介します。第一話で皐月は首と腕が切れた死体を発見します。
死因は同級生が窓の外に身を出していた時に、屋上から看板が落ちてきた事による、首と腕の切断です。
死因を突き詰めた皐月は看板が同級生に当たらないように、自分が看板に体当たりをして軌道を逸らす行動に出るのです。
四階の窓から飛び出して看板に体当たりした後、そのまま落下。皐月は奇跡的に怪我をすることもなく、同級生を助けたのです。
大怪我をする覚悟で人を救おうとする皐月の姿に心を打たれる人も多いのではないでしょうか。
さらに、皐月は自分に対して意地悪をしてくる人や、性格が曲がっている人すらも、同じように体を張って助けようとします。
当然、周りからも理解をされないのですが、それでも自分の信念を貫こうとする皐月がとてもカッコよく見えてしまいます。
皐月のどんな人でも必ず助けるという、まっすぐな正義感に心が熱くなってしまうのが、『ウソツキ皐月は死が視える』の魅力の1つとなっています。
皐月は死体が見えることから、普段から周りの人に「明日死ぬから注意してね」と伝えてきました。しかし、今まで誰も死人が出なかったため、皐月は周囲から嘘つきと呼ばれ、嫌われていたのです。
実際はこれまで何度も死を回避して、いろんな人の命を助けてきたのですが、誰も皐月のこと理解している人はいませんでした。
それでも、皐月が体を張って助けていく様子から次第に友達が増えていき、多くの協力者を得て行きます。
ただし、その友達が病んでいるキャラクターばかり。皐月と独特な性格を持つ友人たちとの微妙な人間関係が面白いのも『ウソツキ皐月は死が視える』の魅力でもあります。
例えば、学校でどの教科でも成績トップで秀才の茶富(さとみ)は、学級員も務めるほどの優等生です。しかし、数学だけ皐月に負けてしまったことにより、自殺を図ろうします。
皐月によって助けられますが、茶富はその後も自殺を図ろうとするほど、厄介な同級生となっています。
最終的に茶富の自殺を止めることに成功し、皐月と茶富は少しずつ友情を深めていくのです。
他にも、実の父親を殺そうとする亜塔、陰湿ないじめをする椎名といじめを受けても表情一つ変えない不気味な小町など、どのキャラもどこか病んでいるような一癖ある人物が登場します。
そんなキャラと嘘つきと呼ばれる皐月との、なんとも言えない友情関係がこの作品の魅力となっています。
『ウソツキ皐月は死が視える』 は殺伐としているシーンも多く、全体的に暗めのストーリーになっていますが、皐月の唯一の理解者である亜塔との仲の良いシーンが作品を明るく癒してくれます。
友人の亜塔はボーイッシュな見た目と勝気な性格なキャラクターですが、意外と乙女なところもあり、皐月と亜塔がカップルのように見えてしまう人もいるでしょう。
それどころか、皐月と亜塔は仲が良すぎて、百合展開に発展しそうな勢いを見せていきます。
ここでは百合に発展しそうなエピソードを少し紹介します。亜塔が皐月の家に泊まりにいったときのお話です。
皐月と亜塔は一緒にお風呂に入ったり、ご飯を作ったりとまるでカップルのよう
に過ごします。
そこへ亜塔の母から電話がかかってきます。実は亜塔と母はずっと疎遠な関係であり、ほとんど話をしていませんでした。
突然の母からの連絡に緊張してしまい、電話に出ることができなかった亜塔。亜塔は皐月に対して、自分の代わりに母の電話に出て欲しいことを伝えます。
皐月が最初に亜塔の母と話し、次に亜塔が会話をします。無事に電話をすることができ、安心した亜塔ベッドの上で皐月に感謝の気持ちを伝えるのです。
その際に、ベッドで見つめ合う二人の様子から、ちらりと百合要素を感じられるのがとても尊いです。
殺伐としたテーマの中で、ちょっとした百合要素のようなものがあるのも『ウソツキ皐月は死が視える』の魅力。今後もどんな百合展開が待っているのか注目です。
『ウソツキ皐月は死が視える』はサスペンス、人間関係、百合などのいろんな要素が詰まった作品となっています。
今後もさらに病みが深そうなキャラクターが登場したり、皐月に困難が襲い掛かります。それでも、周りの人たちの協力を得ながら、死を回避していく姿に胸を熱くすこと間違いなし。
ストーリーもどんどん面白くなっていくので、飽きる暇のないおすすめ作品です。ぜひ、読んでみてください。