最新版・私のステイホーム事情【荒井沙織】

更新:2021.12.10

本当は、平日の日中にブラブラと街を歩き、カフェで落ち着いて読書をしたり、ふらりとお気に入りの映画館に入ったりしたい。空気が爽やかでいいにおいがする日には、カメラを携えて、少し遠くまで気の向くままに出かけたい。これまでは、そんな風にして過ごす中で、考えをまとめたりひらめきを起こしてきたものだから、今だに外に向かう行動の多くが制限されて、終わりが見えないどころではない状況は、流石に窮屈に思えてくる。それに私が困っているのは、ホンシェルジュに書くことを見つけるのに苦労することだ。同じように、どこか物足りなさを感じている人は少なくないはず。だから、なんてことない関心事も共有してみようと思う。今回は、最近の私のステイホーム事情について書いていきます。

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スケートボードに乗ってみたい

スケートボードの試合というのを初めて観た。これまでは、街中で練習している人の様子を目にしても、失礼ながら、「さっきからずっと同じ動きを繰り返しているけれど、全然ジャンプできないんだなぁ。あれで一体面白いんだろうか?」くらいに思っていた。それが、今回初めて世界トップレベルの試合を観て、街で練習しているスケボー少年たちが試みていた技の理想形を知り、興味が湧いた。

子どもの頃に一度はやってみた事があるという人は、私が思っているよりも多いようだ。そういえば大学時代、海外育ちの友人はスケボーで通学していた。別の経験者によると、ただ滑るだけでも、見ている印象の何倍も難しく、だからこそ面白いのだそうだ。それに、もちろんある程度の技術があってこそだが、移動手段になることも魅力だと言っていた。

始めに書いたように、これまでスケートボードは私とは無縁の遊びだと思っていた。そんなイメージが少し変わり始めたのは、友人に薦められて観たある映画作品がきっかけだった。

映画『Mid90s』は、90年代半ばのスケーター少年たちの話だ。不良グループのように見える男の子たちのコミュニティーは、男兄弟のいない私には馴染みが皆無だったし、幼く無垢な印象の主人公が彼らに憧れ近づいていくことを、劇中の母親と同じように危なっかしく感じていた。だが考えてみれば、好奇心の向かう先が、彼らのようにスケートボードやその他のちょっと危険な冒険ではないだけで、子ども時代、うだるような暑さの中で何かに熱中した記憶は、私にもある。熱量は充分に理解できた。

こうして私は映画を通して、仲間に揉まれながら成長していく主人公の様子を見守るほかに、自分が全く経験してこなかった、少年の青春というものやスケーター文化にも、ほとんど初めて、視覚的に触れたのだった。

著者
SHIMON(岩澤史文)
出版日

さて文化としてのイメージはついたが、この段階ではまだ、スケートボードは、私のスポーツという概念の中に無かった。それが、いざ試合という形で見てみると、私のような素人もすんなりと、技術的な面白さに目を向けられたのだ。

スポーツとして採点されながらも、選手それぞれのファッションやスタイルには、他の競技とは一線を画すほど独特なものがあった。

『Mid90s』は、この2年半の間に私が劇場で鑑賞した唯一の映画だ。もしも公開される新作映画が限定的な状況でなかったら、心地よい気候につられて自由に出かけることができる世の中だったら、スケートボードに関心を持つきっかけは逃していたかもしれない。

著者
エイ出版社編集部
出版日

グッド・ドクター

先月は久しぶりに医療系ドラマを観た。配信サービスのラインナップに更新されていたので、何気なく再生してみたのだが、第1話からすっかり心を掴まれたのだった。

『グッド・ドクター 名医の条件』の主人公は、自閉症のため人とのコミュニケーションこそ不得意ながらも、類い稀な能力を持つ、外科の研修医だ。医療の有り難みを感じながら、主人公・ショーンや周囲のキャラクターたちの葛藤や成長を追うのは面白い。

著者
中山 祐次郎
出版日

私にとっての医療ドラマはというと、子ども時代で言えば、日本で制作された『ナースのお仕事』や『救命病棟24時』、『ドクターX』あたりだろうか。どれも気に入って観ていた覚えがあるが、手術シーンなどにそれほどショックを受けた印象は無かった。それに加えて、常々ゾンビものやグロテスクな描写のある作品は好まずにきたから、リアルなシーンへの耐性は低めだ。

学生時代にハマった『CSI: 科学捜査班』も、解剖シーンのCGを怖がり、片目を瞑りながら観ていたくらいだ。ところが、『グッド・ドクター』での手術シーンはCGではなく、極めて精巧なダミーを使っていて、シーズン2まで観終わった今でも、メスを入れる場面はついつい薄目にしてしまう。手術箇所のリアルさは本物なのかと疑うほどだ。それでも不思議と嫌な感じがしないのは、登場人物たちが医療に向き合っている真剣さや人間味が繊細に描かれ、難局を乗り越えるために駆使される医療技術が、分かりやすく説明されているからかもしれない。主人公が持つ自閉症という特徴を絶妙に生かしていることで、説明的すぎるという印象にもなりにくい。

ドラマから学んだのは、お医者さんも人間だということだ。ドラマの中の話ではあるけれど、コミュニケーション一つで結果が大きく変わることもあるというのは、現実世界でも否定できなそうだ。

著者
鈴木信行
出版日

むくみ解消!減塩チャレンジ

ここ半月ほど、食事の塩分量を少なくしてみている。もちろん、適度な塩分は熱中症予防のためにも必要なのだが、ジャンクフードも食べたくなる分、日常の調整をもう少しちゃんとしておこうという目的だ。始めてすぐに気づいた変化は、何といっても体の軽さだった。

私の減塩方法は、出汁、胡椒などのスパイスやハーブ、にんにくや生姜、大葉など香味野菜を使うことで、塩気のある調味料をできるだけ減らすというものだ。あとは、素材の味を濃く感じられるように、調理方法を工夫している。いくらむくみ解消や肌質改善、健康のためとは言っても、美味しく食べることは譲れない。

驚いたのは、最初の頃に無塩で作った焼餃子だ。野菜の塩揉みもせず、焼き油もほとんど使わなかったのに、しっかり味のするパリッと美味しい餃子ができた。

そんな私の様子を見て、妹が奥薗壽子さんのレシピ本を買ってきた。我が家では肉じゃがと生姜焼きを試してみたのだが、言われなければ減塩レシピとは分からないような味わいで驚いた。肉じゃがは、私の常識を覆される調味料を使っていたので、皆さんにもぜひ試してもらいたい。

著者
["奥薗 壽子", "伊藤 貞嘉"]
出版日

美味しい食事は元気が出る。この夏のステイホーム推奨期間、私と一緒に、体に優しいレシピのレパートリーを増やしてみませんか?

(撮影: 荒井沙織)

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