どんな人でもやがて死ぬし、それはあまりに絶対的なので、物語の最後としてはある意味いちばん元も子もない終わり方。でも元も子もないことをどう描くかを見ると、その人の人生感が見えてくるかもしれない。「死に様は生き様」は現実には当てはまらないと思うけど(自分の意志で選べるものじゃないから)、フィクションの中では言えるかもしれない……!! 人生は根本的には不条理だし理不尽だが、そんな中でどう前向きに生きて行くかっていうメッセージを、死にオチから受け取りたい。
十年ぐらい前? ケータイ小説等を中心に難病純愛ものみたいなのがすごく流行っている時期があって、そういう本も映画もめちゃたくさんあった。当時なんとなくそういうのをかたっぱしから読みまくったり見まくったりしていたのだけど(なぜそんなことをしてたかはもはやよくわからない。金欠や失恋などで頭がおかしくなっていた)、だいたいどれも読んでてまじで苦痛な中、恋空に関しては苦痛の向こう側にぶっ壊れた世界が広がっていた。
- 著者
- 美嘉
- 出版日
あらすじだけ言ったら『恋空』とか『世界の中心で愛を叫ぶ』とかと同じようなもんみたいな雰囲気でとられかねないけど、全然ちがうじゃ~~ん! ちゃんと人の心の揺らぎや機微を描けば、ただの泣ける話で終わらないのだということをはっきりわからせてくれる。文章や表現がとても簡潔で淡々としているのが良い。これ以上いくと湿っぽすぎてダメだっていうギリギリのとこで余白を残す感じで。
- 著者
- 三田 誠広
- 出版日
- 1991-10-18
町全体を巻き込んでの結婚パーティの翌日、サンティアゴ・ナサールはなぜ殺されてしまったのか? それを、様々な人の記憶から多視点的に再構成していく物語。小さな田舎町で渦巻いていた人間模様や村社会的ややこしさが、微妙なバランスで作用しあった結果、起こることが知れ渡っていた殺人を誰も止められなかった、その過程をドキュメンタリー的に追っていく。
- 著者
- G・ガルシア=マルケス
- 出版日
戦後の焼け野原をバクチの腕一本でサバイブしていく坊や哲やドサ建たちは、恋空の世界の登場人物とはまったく真逆の存在だと思う。こういう強烈な生の体現が恋空には完全に欠けていて、ほとんどが最初からソフトに死んでいるみたいな感じなので。
- 著者
- 阿佐田 哲也
- 出版日
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。