どんな人でもやがて死ぬし、それはあまりに絶対的なので、物語の最後としてはある意味いちばん元も子もない終わり方。でも元も子もないことをどう描くかを見ると、その人の人生感が見えてくるかもしれない。
「死に様は生き様」は現実には当てはまらないと思うけど(自分の意志で選べるものじゃないから)、フィクションの中では言えるかもしれない……!! 人生は根本的には不条理だし理不尽だが、そんな中でどう前向きに生きて行くかっていうメッセージを、死にオチから受け取りたい。
恋空 --切ナイ恋物語
十年ぐらい前? ケータイ小説等を中心に難病純愛ものみたいなのがすごく流行っている時期があって、そういう本も映画もめちゃたくさんあった。当時なんとなくそういうのをかたっぱしから読みまくったり見まくったりしていたのだけど(なぜそんなことをしてたかはもはやよくわからない。金欠や失恋などで頭がおかしくなっていた)、だいたいどれも読んでてまじで苦痛な中、恋空に関しては苦痛の向こう側にぶっ壊れた世界が広がっていた。
恋をしてレイプされて妊娠して流産して、彼氏と別れ新しい大学生の彼氏ができて両親の離婚の危機を経て元彼の癌、大学生と別れ、彼との恋再び、彼氏の死、妊娠再びっていう感じなんですが、もうここまで盛り盛りだと感情がまったく追いつかないというか、そもそも主人公の女の子にしてもこんだけジェットコースターライフなのに「感動☆」「悲しいよ…」「嬉しい~泣」「ツラい…」とかだけで、ただ表面的に反応するだけっていう。プラスチック人間みたい。
でも、これ舞台が現代日本の高校ってことだからアレだけど、そうじゃなくてもっと破滅的終末的な北斗の拳とかマッドマックスみたいな世界で、そこで生活する荒みきった若者たちの物語なんだとしたらピュアな話かもなって思います。ですから、小説としてのつまんなさ稚拙さはこの際置いとくとすると、この本はただただ「世界は無慈悲である」ということをあらわしている。なのでラストは、希望とか感動とか純愛っていうんじゃ全然なくて、恋人を失い荒れ果てた荒野をお腹に子を抱えて一人進んでいく母の姿が見えるのみで、それはそれはとてもつらい結末です。
恋空から約10年、世界はゆるやかに崩れ続けてどんどん余裕のない方向へ向かっています。
いちご同盟 --純愛・中学編
あらすじだけ言ったら『恋空』とか『世界の中心で愛を叫ぶ』とかと同じようなもんみたいな雰囲気でとられかねないけど、全然ちがうじゃ~~ん! ちゃんと人の心の揺らぎや機微を描けば、ただの泣ける話で終わらないのだということをはっきりわからせてくれる。文章や表現がとても簡潔で淡々としているのが良い。これ以上いくと湿っぽすぎてダメだっていうギリギリのとこで余白を残す感じで。
生、死、恋、友情といったかなりナイーブかつウェットな内容で、15歳過ぎて青臭くて無理っていう方もいるかもしれないけど、読後感は全然爽やかです。生と死っていうかなりヘヴィなものが主題でありつつも、それが青春時代のどうしようもなさとかだんだん終わっていくムードみたいのとも絡めて描かれてるので、ただの壮大なシンフォニーみたいなのでは終わってないのが良い(そういう大仰な雰囲気もなくはないけど)。だからここでの死っていうのは、青春の終わりっていう、誰もにとってかなり身近なテーマと表裏。
この作品読んだのは20代半ばをとっくに超えた頃だったと思うんですけど、中学生ぐらいの時に出会っていたら、好きな子が病気で死んでしまうことを想像して布団の中で泣いたり、ポエム書いたりとかしたと思う。