スポーツや格闘漫画などのジャンルで数々の名作を送り出してきた、梶原一騎。彼の著作の中でも特に心に残る名作を、今回は5作品ご紹介します。
スポ根漫画のパイオニア的作品です。高度経済成長期の日本の野球界に深く迫った内容になっています。
- 著者
- 川崎 のぼる
- 出版日
- 1995-06-02
星飛雄馬は、かつて巨人の三塁手だった父一徹の英才教育と大リーグボール養成ギブス(トレーニング器具)によって育てられた、正確無比なコントロールを誇る投手です。彼らの夢は巨人に入団し、その中で輝く「星」になることでした。やがて飛雄馬は、巨人入団を果たし、魔球「大リーグボール1号」や「2号」を駆使し、ライバル達と戦います。最後のマウンドでは、対中日戦でコーチとなった父と親友との対決となりました。
この作品は、努力し続けることで得られる結果が描かれています。一徹の、目的以外の全てを犠牲にして努力するという考えは、連載当時からすでに古い考えだと思われていたようです。彼の行った「教育」は児童虐待だと言われることもありますが、作中では飛雄馬を大きく成長させました。
パロディだけ知っていて、原作の内容を知らないという方もぜひ漫画を読んで、一徹の野球に対するアツい思いを感じてください。
「きみのためなら死ねる」というセリフで一世を風靡し、少年誌における恋愛漫画の先駆けとなった作品です。
財閥令嬢の早乙女愛は、幼いころ命を救ってくれた太賀誠と再会し、自分を救ったときにできた傷のせいで、彼の人生がめちゃくちゃになったことを知ります。愛は誠に償うため、彼を東京の名門校へ入学させますが、不良となった誠は学校を支配しようと企みます。愛と誠、そして愛に好意を寄せる岩清水の3人による純愛ストーリーが繰り広げられていきます。
- 著者
- ながやす 巧
- 出版日
- 2001-05-11
どんなに冷たくされても誠に尽くし続ける愛の姿は、読者に「人を愛するということ」を真剣に考えさせてくれます。愛は、「きみのためなら死ねる」という誓いを立てて、彼女を陰から支える岩清水に対しても、誠への想いから「私など忘れて…」と言って振ってしまいます。誠のことなど忘れ、岩清水と一緒になった方が幸せだとわかっていても、愛は「私をなげやりにさせるのは、あの誠さんの冷たさ……」と誠にぞっこんなのです。
愛が両親に宛てた手紙の中に「愛は死よりも強し」とあるように、彼女が生涯をかけて貫くと決めた誠への真剣な想いには心を打たれます。究極の「愛」の物語です。
本作以降の全てのボクシング漫画の原点ともいえる作品です。
不良少年ジョーは、東京のドヤ街に流れ着き、アル中のボクサー丹下段平と出会います。丹下はジョーのボクシングの才能に惚れ込み、彼をボクサーにしようとします。一方のジョーはボクサーになる気などなく、子分たちと悪さを続け、ついには警察に捕まり、鑑別所に入れられてしまうのでした。そんな彼の元に、丹下から「あしたのために」の書き出しから始まるボクシング指南の手紙が届きました。その手紙をきっかけに、ジョーはボクサーとしての第一歩を踏み出すのでした……。
- 著者
- ちば てつや
- 出版日
- 2003-05-23
多くの読者を悲しませた、ジョーの生涯のライバルである力石の死。ジョーが力石の所属するボクシングジムからの勧誘を断り、貧しいジムを選んだことで、力石はジョーのハンデを認め、ジョーのいる階級まで過酷な減量を決めます。ジョーより頭ひとつ分も背の高い力石が、ウェルター級からバンダム級まで体重を落とせば、現実的に死は避けられないものでした。自分のせいで力石が死んでしまったという罪悪感に苛まれていたジョーですが、それでも戦いをやめません。ジョーもリングの上で死のうと決意したのだと感じました。
「燃えたよ……まっ白に……燃えつきた……まっ白な灰に……」と言う、名ラストシーン。そこに至るまでのジョーの人生を全て読み、心からの感動を得てみませんか?
『あしたのジョー』が気になっているという方におすすめなのが<『あしたのジョー』登場人物10人の名言を徹底紹介!名作漫画を最後まで解説>。名言を集めたこの記事を読むと『あしたのジョー』にもっと惹かれてしまうでしょう。
主人公の一条直也は、東京オリンピックで父親が敗れ命を落としたショックから、日本の柔道界を救うため、元講道館の鬼車と呼ばれた車周作に弟子入りします。「地獄車」「海老車」などの技を身に付けた直也は、様々なライバルとの戦いを経て、世界へと羽ばたいていくのでした……。
- 著者
- ["梶原 一騎", "永島 慎二", "高森 篤子"]
- 出版日
本作は『あしたのジョー』と同様に、師弟と弟子の絆を描き出します。周作は直也に、選手としての「野性」が必要だと思い、自ら師弟の関係を断ち切り、ひとりで修行させます。直也は「野性」を身に付けることに成功しますが、周作は直也のライバル選手に「地獄車」破りの秘策を授け、追い打ちをかけてくるのでした。しかし直也は、必殺技には頼らない安定した試合運びで相手選手を倒し、優勝を手にしました。
その試合の数日後、パリの大会で活躍する直也の姿をテレビで観ていた周作は発作を起こし、テーブルに「一直線」の文字を残し亡くなります。弟子の成長のため、その弟子に恨まれ、戦うことにもなる周作。彼からは、師匠としての器の大きさが感じられることでしょう。
現実ではありえないような技の連続で、梶原流の漫画的表現を用いたダイナミックな柔道を楽しむことができる作品です。
梶原一騎の引退作で、梶原の人生を描いた自伝的漫画です。
梶一太(梶原一騎)は、元講道館の木村政彦の敗北にショックを受け、高校で暴力事件を起こします。高校を自主退学したあと、アルバイトを始めるものの、うまくいかない一太。そんなときに弟から勧められた漫画雑誌への小説投稿が、彼の人生を大きく変えました。空手家大山倍達との出会いや、父との死別など様々な経験を経て、最後には週間少年マガジンからプロレス漫画の原作を依頼されるほどの実力者となっていくのでした……。
- 著者
- ["梶原 一騎", "原田 久仁信", "高森 敦子"]
- 出版日
一太の人生を語るのに欠かせない人物、大山倍達。一太は無名の格闘家だった大山から「プロレス巌流島の決闘」について話を聞き、記事にしたことで、作家として売れ始めます。また、一太が開いたバーが地元のヤクザに目をつけられたり、店員に裏切られたりしたときにも、大山は落ち込む一太を励まし、支えたのでした。大山の存在は一太にとって、そして作家梶原一騎にとって、なくてはならない存在です。
大山の他にも力道山やアントニオ猪木など、実在する格闘家をモデルに描かれたキャラクターが数多く出てくるので、格闘ファンなら一度は読んでおきたい作品となっています。
多くの漫画に影響を与える名作を産みだしてきた、梶原一騎。少年・青年漫画に読み飽きた人こそ、それらの原点にある梶原作品を読んでみてはいかがでしょうか。