Web発の注目ホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』の魅力に迫る!

更新:2021.12.12

田口翔太郎の『裏バイト:逃亡禁止』はシュールで独特な世界観のあるホラー作品。主人公2人が毎回危険な裏バイトに参加し、高額報酬と引き換えに即死しかねない恐怖体験に見舞われます。「次にくるマンガ大賞2021」ではWeb漫画部門5位に輝きました。 そんな『裏バイト:逃亡禁止』のあらすじや登場人物に触れながら、魅力をご紹介していきましょう。

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怖すぎて夢に出てくる⁉恐怖のホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』をネタバレ紹介!

『裏バイト:逃亡禁止』は2020年月からWebコミック配信サイト「裏サンデー」および、漫画アプリ「マンガワン」で連載されている田口翔太郎のホラー漫画です。架空の職業である「裏バイト」にまつわるおぞましい出来事が描かれます。

裏バイトとは表立って募集できない、いわく付きのバイトのこと。業務内容は一般的なバイトと大差ありませんが、常に死の危険と隣り合わせであり、数十万円から数百万円の報酬が発生するハイリスク・ハイリターンな仕事です。

裏バイトの実態やそこで起こる出来事、参加者および募集者の顛末は奇妙で不気味なものばかり。独特なタッチの絵柄と作風が絶妙にマッチしていて、どの怪奇現象も強烈に印象に残ります。ただ単に怖いだけでなく、シュールギャグに似たテイストを感じるのも本作の魅力の1つ。

2人の主人公の視点による短編連作(3話1エピソード)なのも特徴。短時間で切りのいいところまで読み進められるため、ホラーが苦手でもストーリーを楽しめます。

『裏バイト:逃亡禁止』は独特な面白さがじわじわと浸透した結果、読者投票によって選ばれる「次にくるマンガ大賞2021」でWebマンガ部門5位に選ばれました。

『裏バイト:逃亡禁止』がどうしてここまで評価されるのか?魅力と面白さを、あらすじや登場人物、おすすめエピソードを交えてご紹介していきます。

 

コンビで危険な仕事を生き残る『裏バイト:逃亡禁止』あらすじ

 

個人的な理由から、大金を必要とする白浜和美(しらはまなごみ)と黒嶺ユメ(こくりょうゆめ)。とあるバイト先で偶然同僚になった2人は最初気付きませんでしたが、しばらく振りに再会した中学生時代の友人同士であることに気付きます。

彼女達が募集したバイトは、破格の報酬と引き換えに命の危険が伴う「裏バイト」と呼ばれる仕事でした。2人は勤務先で危うく殺されかけるも、ユメが特異な危機察知能力を持っていたことから、からくも窮地を脱します。

円満とはいかないまでも、しっかり高額報酬を手にした2人。和美はユメの能力に着目し、2人でコンビを組んで荒稼ぎすることを提案しました。こうして2人は数々の危険な裏バイトに挑んでいくことになったのです……。

著者
田口 翔太郎
出版日

 

『裏バイト:逃亡禁止』の登場人物

 

『裏バイト:逃亡禁止』は1エピソードごとに舞台が変わる短編連作です。そのため、継続して登場するのは基本的に白浜和美と黒嶺ユメの2人しかいません。

白浜和美

勝ち気な性格で誰に対しても気後れせず、積極的にコミュニケーションを取れる女性です。ショートの金髪が特徴的。金銭にがめつく意外と打算的ですが、面倒見がよくて結局人に手を差し伸べるので、悪人というわけではありません。むしろ根は善人。ただガサツなため、何かとユメに負担を強いることがあります。

致死率の高い裏バイトで生還し続けていることから、ついたあだ名が「不死身の白浜」。

黒嶺ユメ

和美とは反対に、引っ込み思案気味の優しい女性。長めの黒髪と狐目が特徴的。几帳面な性格なせいで、ガサツな和美の尻拭いをすることが多くあります。また危険を「黒い匂い」として察知する特殊な嗅覚(霊感)の持ち主。

主人公2人が毎回生き延びているのは、ユメの危機察知能力に寄るところが大きいですが、和美の判断力と機転のよさも目を見張るものがあります。

篠月橙

裏バイター(裏バイトをする人のこと)の準レギュラーとしては、篠月橙(しのつきだいだい)も忘れてはいけません。性格は極めてポジティブで天然。身体能力の高さは随一で、ホラー漫画に相応しくないギャグ漫画テイストの人物なせいで、本作でもっとも死にそうにないキャラです。脳天気さで張り詰めた空気をぶち壊す雰囲気クラッシャー。

裏バイトを斡旋する赤川、探偵の八木琢磨といったメインに関わってこないものの、話の導入や流れをスムーズにするサブキャラも印象的な働きをしてくれます。レギュラーと準レギュラー以外にも、各エピソードに登場するゲストも皆一様に印象的でアクが強く、ストーリーだけでなくキャラクターの活躍にも注目です。

 

独特な世界観が癖になる『裏バイト:逃亡禁止』の魅力

 

エピソードごとの伏線の妙にハマる!

『裏バイト:逃亡禁止』の魅力は、独特な世界観やオリジナルの怪奇現象、エピソードを最後まで読み終わった時に気付かされる伏線の妙にあります。

何気ない描写の意味に、あとから気付かされる伏線の見事さ。細かい言動や仕草が、怪奇現象の解明やオチに関わってくるので、気付いた時はアハ体験に近い気持ちよさがあります。不自然な部分がそのまま何事もなくスルーされることもありますが、その場合は恐怖感とば別種のシュールギャグテイストに感じられて面白いのです。

短編ホラーという形式だから面白い!

本作オリジナルの裏バイトという設定。高額報酬で釣って人材を使い捨てるとんでもないアルバイトですが、短編ホラーという形式とは相性抜群です。主人公2人以外は基本的に死亡か行方不明になるのですが、次から次へとオリジナリティ溢れる都市伝説、怪奇現象が登場して常に新鮮な恐怖感を与えてくれます

また一般的な漫画とは少し違う味のある絵柄が、不穏な空気を描き出しているのも見事。エピソードごとに変わる舞台において、根底に共通する雰囲気を醸し出しています。

少女2人のバディが主人公!話の筋を盛り上げるキャラクター設定が魅力

ホラー漫画でありながら、「バイト仲間である少女2人」が主人公の本作。バディものとしても楽しめるホラー、という稀有な特徴があります。

読者にとって、もっとも身近な主人公2人にも謎が多いのも魅力と言えます。和美は実父と死別していたり、ユメが血の繋がらない弟妹を養っていたり。共通の思い出をユメだけが覚えていることもあるので、もしかしたら和美は過去になんらかの怪異に巻き込まれたことがあるのかもしれません。

単に時間経過で忘れているだけの可能性もありますが、主人公のプライベートも少しずつ明かされているので、今後どうストーリーに関係してくるか楽しみです。

また、ユメの匂いによる危険察知が完璧ではないのも面白いところ。嗅覚頼りなため悪臭が勝ると感覚が鈍ったり、桁違いに危険な場合には許容量オーバーで感知すらできないことがあります。主人公といえど万能ではなく、適度な緊張感を保っているのが魅力です。

著者
田口 翔太郎
出版日

 

『裏バイト:逃亡禁止』おすすめのエピソード1:警備員バイト【1巻ネタバレ注意】

 

1巻のおすすめエピソードは和美とユメがコンビ結成後、初めて行った深夜ビルの警備員バイトです。業務内容は見回り程度のはずなのに、なぜか警備員の自殺が相次ぐせいで、夜中だけ異常に給与が高いという謎めいた現場でした。

前任者の西本から以前浮浪者が紛れ込んだ事案があるため、7階だけは重点的に見回るよう言い渡されますが、ユメの嗅覚が危険を察知します。警備の仕事を続けるなら7階へ立ち入る必要がありますが……。

日中はサラリーマンでごった返していたビルも、夜中は無人の廃墟同然。シチュエーションがすでに恐怖を感じさせますが、関係者や近所の人間の指摘でビルの異常性が少しずつ掘り下げられていき、後半に向けて徐々に盛り上がっていきます。

前任者の急な自殺、今はもう存在しないはずの7階にあったブラック企業、ビルに出入りしているサラリーマンの正体……。非常に『裏バイト:逃亡禁止』らしさを感じられるおすすめエピソードです。

気になった方はぜひ下のボタンからアプリをインストールして読んでみてください。

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『裏バイト:逃亡禁止』おすすめのエピソード2:水族館【2巻ネタバレ注意】

 

水族館の裏側が見られるバックヤードツアーのバイトを紹介された和美とユメ。今回はさらに仲介者・赤川のごり押しで、篠月橙も加えた3人で参加することに。

3人の仕事は基本的にバックヤードの管理や掃除ですが、希望者がいる時にはツアー担当として付き添う必要があります。ツアー費用はなんと1人300万円で、しかも参加後は行方不明になってしまうとんでもないサービス。それでも絶え間なくツアー客が訪れるのですが、ユメはバックヤードツアーでしか見られない、真っ黒な巨大水槽に危険の匂いを感じ取るのでした……。

橙が初登場するエピソードです。水族館側のスタッフがあからさまにおかしかったり、バックヤードの機械音が洗脳(誘惑?)装置になっていたりとかなり不気味。ところが空気を読まない橙のお馬鹿っぷりのおかげで、陰鬱さはだいぶ軽減されています。

水族館が一体なんの目的で、ツアー客が失踪するバックヤードツアーを行っているのか?ラストで意味深に問いかけられる、水族館で人間に見られる魚の気持ち。読後に想像するとちょっとゾッとします。

著者
田口 翔太郎
出版日

 

『裏バイト:逃亡禁止』おすすめのエピソード3:駅員バイト【5巻収録話ネタバレ注意】

 

ユメの自宅の近所で募集されていた駅員バイト。業務内容は駅係員の補助ですが、それ以外に表向き存在しないことになっている、13番ホームの見回りがありました。偶然紛れ込んでしまう普通の乗客を正常な場所に戻したり、異常な乗客に反応しないのが主な仕事です。

2人はしばらくユメの家を拠点にします。これまで存在だけ語られていたユメの弟妹とも交流しつつ、駅でのバイトをこなしていくのですが……。ある日、意図的に13番ホームへ進入した乗客が人身事故を起こしてしまいます。正規の駅員も手伝って、あと処理を行う2人の前に、この世のものではない乗客が現れてしまいます。

裏バイトは雇用主が危険の張本人だったり、危険が起こるのを承知で裏バイターを半ば騙して雇うことが珍しくありません。しかしこの駅員バイトでは、最初から危険の実態とその対処法が明かされており、珍しく人助けに直結する仕事でした。ところがその仕事で、ユメがとうとう怪異に直接襲われてしまいます。

和美の度胸と友情にちょっと感動してしまいますが、しっかり読み込んでいると最後のさわやかな終わりに、とんでもなくおぞましい伏線が仕組まれていることに気がつきます。

このエピソードは事実上、『裏バイト:逃亡禁止』で初の続き物です。直後の遊園地スタッフと合わせて読むと、面白さが倍増します。このエピソードは5巻にも収録されていますが、その続きと最新話はぜひアプリ「マンガワン」でご覧ください。

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著者
田口 翔太郎
出版日

 

ゾンビを自画像にするホラー漫画の奇才、作者・田口翔太郎

 

『裏バイト:逃亡禁止』の作者、田口翔太郎(たぐちしょうたろう)は2018年から商業活動している漫画家です。

2013年「別冊少年チャンピオン合同新人まんが賞」で特別奨励賞を受賞。その後「週刊少年チャンピオン」に読み切りをいくつか掲載したあと、アプリ「マンガワン」にて『不死身のパイセン』で連載デビューを果たしました。

詳しいプロフィールは非公開ですが、特別奨励賞受賞時に27歳だったことから、2021年現在の年齢はおそらく35歳。

田口翔太郎の作風はコメディ交じりのホラー。絵柄は万人受けするとは言えませんが、見ていると不安になる不気味なタッチがホラー漫画と絶妙にマッチ。都市伝説風の怪異に特色があって、身近な舞台を題材にした恐怖表現が癖になります。

デビュー作や読み切りではコメディ色強めでしたが、『不死身のパイセン』以降はややホラーの比重が大きくなっています。

ちなみに『不死身のパイセン』はシュールギャグ寄りのホラーで、主人公が毎回正体不明の怪異に襲われて死にかけるも、翌日にはなぜかピンピンしているという短編漫画でした。『不死身のパイセン』は短期連載で人気となり、長期連載化される予定でしたが、代わりに『裏バイト:逃亡禁止』が始まったという経緯があります。

実質的な前身と呼べる作品なので、『裏バイト:逃亡禁止』が気に入った方には『不死身のパイセン』も読むことを強くオススメします。

著者
田口 翔太郎
出版日

『裏バイト:逃亡禁止』はお手軽に楽しめる短編ホラー作品です。漫画アプリ「マンガワン」では最新話まで無料で楽しめるので、少しでも気になった方はぜひアプリから読んでみてください。

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