こわくて夜中に読めない類のエッセイたち
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こわくて夜中に読めない類のエッセイたち

更新:2020.11.29 作成:2015.10.11

寝る前の読書タイムじゃなくて、お昼休みや帰りの電車で読んで欲しい、大好きなエッセイ達を紹介します…。

今川宇宙プロフィール画像
アーティスト
今川宇宙
1996年12月3日生まれ。執筆家・イラストレーター・アーティスト等様々な方面で活動している。ミスiD2015岸田メル賞受賞。 エナジードリンクの瓶が可愛いから一輪挿しにして机に置いた 花が腐って落ちたから捨てた 瓶は可愛いからそのまま置いた 一ヶ月して瓶可愛くないと思い始めたから捨てようとして中を見たら蜘蛛の死骸が入っていた そして輝くウルトラ躁!ハイ!(ここでいう躁というのは決して変換ミスではなく「ハイ」とかけている)
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じゅわーっと肉汁が迸る豚丼・とろっと広がるなまめかしい脂ののった、秋刀魚の刺身

著者
["平松 洋子", "谷口 ジロー"]
出版日
2015-08-04
旅に出ればその土地の味がある。普段味わえない味は旅行の醍醐味である。

この本は平松洋子さんが日本の様々な土地で味わった、どことなく男っぽくて通な食に関してのエッセイを集めているのだが、なんといっても特徴的なのが、数ページごとにあの「孤独のグルメ」谷口ジロー先生の描き下ろしの漫画が挟んであるところだ。エッセイに登場する料理を、谷口先生の描くキャラクターが食べる様子を書いているだけなのに、文章と漫画のコンボで苦しくなるほど食欲が湧く。谷口先生のおいしそうなステーキのイラストが表紙になっているのがもう確信犯という感じである。(どうでもいい話だけど私この表紙にもあるような、肉料理のお皿の端っこに肩身狭そうに座っているスパゲティ大好き。お肉食べ終わってからソースや肉汁と絡めていただくのがイイね)

冒頭にも書いたが、平松さんの食の見方はどことなく男っぽい。細やかで丁寧というより豪快で、全身で食べることを楽しんでいる様が見て取れる文章は歯切れがよい。(この紹介文を書きながら私は、amazonで孤独のグルメを購入した。)

繊維にそってほどけるような噛みごたえの鱈・スプーンでたっぷりすくって食べる釜揚げしらす

著者
江國 香織
出版日
2013-08-06
あたたかなジュースを飲んだことがあるだろうか。私はこの本に影響されて初めてりんごジュースを温めて飲んだ。ピーターラビットが初めて食べた新鮮なレタスを「やわらかい」と表現した事の意味は?この本を最後まで読めばわかる。

江國香織さんの小説はどれも繊細で素晴らしいが、私は彼女の小説の中の「食べ物」の描写が何よりも好きだ。特に「なつのひかり」に出てきた「ぱりぱりのパン」というワードや、「きらきらひかる」で笑子が夜道を歩きながら抱えて食べたたっぷりのアイスクリームの事はもう頭から離れない。だからこのエッセイが好きだ。

これは、作者が食べ物やそれに関連する人物に関しての思い出や思いをのびのびと書き綴ったエッセイになっている。本当に食べる事が好きなんだな~って伝わるし、言葉の選び方がいちいち巧で本当にお腹がすいてくる。

江國さんは食事という行為だけではなく、それによって起きるすべてを楽しんでいる。だから、高くておいしいものやオシャレな食べ物の事ばかりは書いているわけではない。目玉焼きの事から、のり弁の事、彼女が子供の頃に読んだ本に登場する未知の飲み物の事まで書いてある。

私はこの本を高校の授業中に読み、4時間目にすごい苦しんでいた。

ふんわりとした大きな丸いお菓子のようなオムレツ・ぐつぐつ煮えたコンビーフキャベジ

著者
石井 好子
出版日
2014-06-10
ずるい。バターひとさじ玉子三つって何つくるの?お菓子?ごはん?バターの事バタって呼ぶのオシャレ過ぎない?ってなって買ってしまうし読んでしまう。お腹すかせる気満々だ。

これは、長年パリで生活している著者が、外国の料理やその様式を現地の文化と絡めて紹介するエッセイだ。味の感想や思い出ばかりでなく、そのマナーや簡単なレシピまで文章で載っている。私は料理全くできないのでレシピを見てもちんぷんかんぷんだが、おいしい料理の話を読んで、さあ作ってみよう、となる文の流れに感心する。

時々日本食の事も書いてあって、それも書き方が丁寧でまた良い。

どこの家のよりうちのが一番おいしい運動会のお弁当、頑固な父の作った日の丸弁当、あの子の家のおいしそうなお弁当

著者
"林真理子", "川本三郎", "江國香織", "穂村弘", "よしもとばなな"
出版日
2013-08-31
私の母は運動会の時とびきり豪華なお弁当を作ってくれた。たくさんのから揚げは時間が経って衣はふやけてもそれがまたおいしかったし、ひとくちチーズと、プチトマトと、きゅうりをひとくち大にカットしたものをかわいい串に刺してたくさん入れてきてくれたのがうれしかった。

「お母さんのお弁当がいちばんおいしい」

確かにに私もそう思っていた。あの秋の日を鮮明に思い出すこの一文は、この本の中で見つけた。

林真理子・川本三郎・江國香織・穂村弘・よしもとばなな等々総勢42人が「お弁当」の思い出や想いを綴った短いエッセイを集めた本。作者の性別も生まれも年齢層もそれぞれなので、様々な色の「お弁当」の記憶を読むことができる。

テーマは単純に思えるが、各々無限に広がっているので全く飽きずに読み切ることができた。表紙と、途中途中に挟んである阿部了さんの撮影したいろいろなお弁当の写真はどれもどこか懐かしく、あの日あの時の記憶がぶわぶわと溢れ出してくる。