話題作勢揃い!2022年に読んでおくべきおすすめ小説6選

更新:2022.5.18

2021年は直木賞に輝いた『黒牢城』、『テスカトリポカ』をはじめとする話題作が豊富な1年でした。話題作といえば、2022年には小説を原作とした実写映画が多数公開されます。 そこでこの記事では、2022年に読んでおくべき小説6選と題して、2021年の話題作と公開間近の映画原作小説をご紹介していきます。名作・傑作が目白押しなので、ぜひこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。

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今読むべき小説を2021年の話題作と今年上映の映画原作から厳選!

2021年はさまざまな小説が出版されました。特に話題になったのは直木賞と山田風太郎賞をW受賞した『黒牢城』直木賞と山本周五郎賞をW受賞した『テスカトリポカ』でしょう。2022年も傑作が次々と出てくると思われますが、その前に今だからこそ読んでおくべき話題の小説6選をご紹介したいと思います。

ご紹介するのは昨年の注目作から3作品、近日中に映画化される話題作から3作品を厳選しました。

昨年の注目作は歴史&ミステリー小説『黒牢城』、アンダーグラウンド感全開の犯罪小説『テスカトリポカ』は特に読んでおくべき作品としてピックアップしています。また映画化の話題作でご紹介する3作品は、作品のあらすじや特徴はもちろん、原作小説を踏まえた見所や映画ならではの注目点も挙げていきます。

ぜひチェックして、次に読む本の参考にしてください。

その時、歴史の裏で何が起きていたのか?『黒牢城』

本能寺の変から遡ること4年前、1578年。摂津国を任されていた荒木村重が突如、主君・織田信長を裏切って有岡城で籠城してしまいます。説得に派遣された黒田官兵衛の言葉も聞かず、牢屋へ幽閉してしまいました。

信長に対して徹底抗戦の構えを取る村重でしたが、そんな時に城内で不可解な事件が立て続きに発生。放っておくと士気に関わると考えた村重は、牢に閉じ込めた「智将」黒田官兵衛に助言を求めることに……。

『黒牢城』はミステリー小説で有名な米澤穂信が、初めて挑んだ歴史小説となっています。直木賞や山田風太郎賞、数々のミステリー小説ランキングで1位に推されたことから、2021年最大の話題作といってもよいでしょう。

本作の面白いところは歴史的事実を尊重しつつ、歴史の空白部分を上手く創作して、極上のミステリーかつエンターテインメントに仕上げている点。約1年間幽閉されていたせいで動向がはっきりしない黒田官兵衛が、牢に繋がれたまま推理――いわゆる安楽椅子探偵をする発想に驚かされます。

文章が歴史小説に寄せて書かれているので少し読みづらいですが、ミステリー好きなら間違いなく楽しめます。歴史の知識があればさらに面白く読めるでしょう。現代とは違った価値観から描かれる、真犯人や黒田官兵衛の思惑に注目。

著者
米澤 穂信
出版日

血と闇にまみれたクライムサスペンス『テスカトリポカ』

前世紀末、貧困に苦しむ1人の少女がメキシコから日本へ不法入国し、暴力団幹部の男と出会いました。やがて少女と男の間に男の子が産まれます。男の子の名前は土方コシモ。家族を顧みない父親、麻薬に溺れる母親を持つコシモはほとんど自分だけの力で成長し、13歳の時にある事件を起こしました。

一方メキシコでは麻薬組織同士の抗争が勃発し、ある組織を運営していたカサソラ4兄弟の三男バルミロだけが生き残ります。彼は逃げ延びた先で日本人と出会い、新しいビジネスを始めるために日本へ訪れます。そこでバルミロは運命的にコシモと出会うのでした。

『テスカトリポカ』は2021年に、史上2度目となる山本周五郎賞と直木賞のW受賞を果たしたクライムノベルです。『QJKJQ』、『Ank: a mirroring ape』に続く「鏡3部作」の完結編に位置づけられる作品ですが、各作品はテーマとして繋がっているだけで、物語上の関連性はありません。

本作はコシモとバルミロを軸にして、複数の人物の視点で描かれる作品です。バイオレンス要素が多いので一般向けとはいえませんが、主要人物2人のルーツであるアステカ文明に焦点を当てた構成が見事。麻薬や臓器売買といった血なまぐさい現実と、アステカ神話に絡めた呪術的要素が巧妙にミックスされ、単なる暴力的表現を超えたエンタメ作品となっています。

著者
佐藤 究
出版日

地獄の戦争を生き延びることができるか『同志少女よ、敵を撃て』

モスクワ近くの村に家族と住む、猟師の少女セラフィマ。彼女は平和を夢見て暮らしていましたが……時は1942年、世界は第2次世界大戦の真っ只中にありました。やがてドイツ軍の襲撃で村は壊滅、彼女の家族も殺されてしまいます。

大切なものを奪われたセラフィナは、「敵」への復讐を誓って赤軍兵士に志願。似た境遇の女性兵士たちとともに訓練学校を経て、地獄の激戦地スターリングラードへと身を投じるのでした。

『同志少女よ、敵を撃て』は作者・逢坂冬馬のデビュー作です。2021年のアガサ・クリスティー賞で、史上初の全選考委員満点の上で大賞に輝いた話題作。一般的にあまり知られていない女性狙撃手に焦点を当てて、第2次大戦当時の過酷で不条理な日常を浮き彫りにしています。フィクションながら真に迫った描写は圧巻です。

本作の物語の背景には、スターリングラード攻防戦とケーニヒスベルクの戦いがありますが、単に史実をなぞるだけではありません。セラフィナ以外にドイツ軍兵士の視点も登場し、敵味方の兵士たちが多角的に描かれます。その中に細かな伏線がちりばめられており、終盤に向けて意外な事実が発覚していく展開には、アガサ・クリスティー賞に相応しい推理小説の醍醐味を感じられました。

女性の絆を描く「シスターフッド」的な側面があるので、戦争を舞台とした群像劇が好きな人は間違いなくハマるでしょう。

著者
逢坂 冬馬
出版日

異端の警察官が本当の正義を問う『孤狼の血』

昭和63年の広島県呉原市では日夜、暴力団同士の小競り合いが相次いでおり、大規模抗争がいつ勃発してもおかしくない状況でした。そんな中、呉原東署の暴力団対策班に県警のエリート刑事・日岡秀一が配属されます。日岡は大上章吾の下につくのですが、刑事とは思えない強引かつ凶悪な大上のやり方に反発。ところが捜査を続けるうちに、日岡は大上の行動の意味を知っていくのでした。

『孤狼の血』は2015年に発表された、柚月裕子の警察小説シリーズの1作目です。警察官とは思えないアウトロー刑事を中心として、ハードボイルドな熱い展開を楽しめる人気作。地方色豊かな広島弁の言葉遣いも見所の1つです。

本作は2018年に松坂桃李の主演で実写映画化され、2021年には続編『孤狼の血 LEVEL2』が公開されました。最初の映画は原作とほぼ同じですが、一部展開の改変とエピソードが省略されています。『孤狼の血 LEVEL2』は原作第2作『凶犬の眼』と同じ時代が舞台ですが、ストーリーはまったく別物映画を視聴済みの方も、原作小説を通して読めばまた違った面白さを味わえるでしょう。

『孤狼の血 LEVEL2』は早くも続編が計画されています。原作第3作『暴虎の牙』をベースに制作されると噂されているので、今から予習しておけば、来る最新作をより深いレベルで楽しめるに違いありません。

著者
柚月裕子
出版日
2017-08-25

最悪の殺人鬼の狂気に飲まれる『死刑にいたる病』

平凡以下の生活に嫌気を感じていた大学生・筧井雅也の元に、日本史上最悪の連続殺人犯・榛村大和から手紙が届きます。榛村はなんと、中学生のころに筧井が親しくしていたパン屋の店主だったのです。

榛村は自分の罪について認めつつも、立件された最後の事件だけは冤罪だと主張し、筧井に事件の再調査を求めました。今は見る影もありませんが、筧井はかつて神童と呼ばれる少年でした。筧井は頼られたことに奮起して、事件の真相を追っていきます。

『死刑にいたる病』は櫛木理宇のサイコサスペンス小説です。ホラーではないものの、猟奇殺人犯の犯行と精神状態が描写されるため、極めてホラーに近いグロテスクな読後感が魅力。最後の最後で、作中に漂う不穏なおぞましさが最高潮に達します。

殺人鬼・榛村は原作で美形とされていましたが、2022年5月公開予定の実写映画で演じるのは個性派俳優の阿部サダヲ。きっと原作とは違う映画だけの「榛村像」を見せてくれるでしょう。もう1人の主人公・筧井雅也は、若手人気俳優の岡田健史です。等身大の若者を演じることに定評のある彼が、「普通の大学生」からどう変化していくのか見所になりでそうです。

ちなみに『死刑にいたる病』は元々『チェインドッグ』というタイトルでしたが、文庫化の際に改題されました。「鎖に繋がれた犬」が何を意味するのかは、本作を読み終えた時にわかるはずです。

著者
櫛木理宇
出版日

アニメ愛を楽しめる熱血エンタメ小説『ハケンアニメ!』

主人公はアニメプロデューサーの有科香屋子。彼女はかねてから念願だったアニメ監督・王子千晴と一緒に仕事できるようになり、王子にとって9年ぶりとなる新作アニメ『運命戦線リデルライト』の制作に取り組みます。

ところが突然、王子が行方不明に。行き詰まる有科たちをよそに、同時期放送予定の期待作『サウンドバック 奏の石』は順調そのもの。立ち塞がる難題をクリアして、有科は「覇権アニメ」を生み出すことができるのでしょうか?

「覇権アニメ」とは同時期放送のアニメと比べて、もっとも人気の高い作品を指す俗語です。本作はいわゆるお仕事系と呼ばれる作品で、アニメプロデューサーと監督、アニメーターやアニメで町おこしを狙う公務員が登場します。それぞれの立場から作品に取り組み、「覇権アニメ」を目指す展開が非常に痛快。ストーリーには業界の裏事情だけでなく、胸躍る恋愛要素も絡んできます。

読めば元気をもらえる内容で、アニメ好きな人やお仕事作品が好きな人には特におすすめです。

2022年5月には主演・吉岡里帆で同名実写映画が公開される予定です。主人公は『サウンドバック 奏の石』を作る新人監督・斉藤瞳に変更されているため、原作を読んでいる方でも新鮮な気分で鑑賞できるでしょう。映画には劇中アニメの制作や現場取材で東映アニメーション、Production I.Gが協力しているため、原作より何倍もパワーアップしたリアルな描写を楽しめるはずです。

作品の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。

『ハケンアニメ!』の魅力3!アニメ業界が舞台の小説を結末までネタバレ!

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アニメといえば日本を代表するエンタメコンテンツ。「国民的アニメ」と呼ばれる作品も数多く、これまで国内外を問わず人々を魅了してきました。では、アニメを制作する人は、どのような方々なのかご存知ですか?今回は、アニメ制作の現場で奔走する人々の、笑いあり涙ありの物語を描いた本作の魅力を、ネタバレを含めながらご紹介します。

著者
辻村 深月
出版日
2017-09-06

2022年に読んでおくべき小説6選をお送りしました。個性的な作品ばかりなので、人によっては向き不向きがあるかもしれません。しかし、どの作品も間違いなく面白いです。気になった作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。

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