私は、大学に入るまで一切本を読まない少年でした。高校では、理数科という学科に通うほどの理系人間。推薦入試の際に「好きな本は?」と聞かれ、苦し紛れに「名犬ラッシー!!」と笑顔で叫んだほどの、微笑ましい少年でした。ふむふむ。
そんな私が読書にハマるきっかけとなったのが、叙述トリック本です。
叙述トリックとは、文章上の仕掛けにより、読者の勝手な勘違いを誘う手法のことです。簡単に言えば、作者が読者を騙すテクニックです。物語の中の登場人物ではなく、読者自身が騙されるのです。
このトリックは、登場人物や時間軸、場所といった描写をわざと伏せたり暈すことで、読者に誤った解釈を与え、勘違いを誘発させます。文章のみという小説だからこそ成せる技とも言えます。作者の匠みな文章により、読者自身が勘違いしたまま読み進めてしまい、最後の最後で「なんじゃこりゃぁあぁあぁあああぁあ!!!」と衝撃の事実を突きつけられるのです。この騙された感がたまらなく気持ちいいのです!! これこそが叙述トリック本の醍醐味なのでございます!!!
本来であれば、叙述トリック本は、紹介などの予備知識が全くない状態で読むのがベストです。知ってしまうと、読む前から「来る!来る!!どんでん返しが来る!!!」と身構えてしまい、ラストの驚きが失われてしまう可能性があります。
しかーし !!!
ここから私が紹介する本は、叙述トリックが使われていると知っていても楽しめる作品だと思います。私自身、どんなトリックが来るのか構えていながらも、最後には「うっほぉおぉおおおっ!!」と騙されたものです。ネタバレ厳禁で紹介していきますので、ぜひ一度手にとってみてください。
「十角館の殺人」 綾辻行人
名作です。絶対に読んで頂きたい一冊。ミステリー好きならば誰もが知っているであろうこの作品。過去、私が読んだ本の中で最も衝撃を受けた作品かもしれません。著者の綾辻行人さん、なんとこの作品がデビュー作というのだから驚き。脱帽です。
離島に建つ十角形の館を舞台とした連続殺人。この世界観や設定が非常に魅力的で、ぐいぐい引き込まれます。少し長めの作品ですが、そんなことを感じさせないくらい読みやすいです。起承転結がまとまっており、すらすら読むことができます。私も夜な夜な最後まで一気に読んでしまいました。
一つおすすめしたいのが、この作品を読む際は、ぜひ新装改訂版で読んでみてください。詳しくは言えませんが、改訂されたことにより面白さが倍増しています。すべて計算して改訂されたのでしょう。お見事としか言いようがない。
綾辻さんは、今作を皮切りに「館シリーズ」を何冊も出されています。実は私、読んでしまうのが勿体ないが故に、いまだ手を付けずにとってあります。いつ読もうか考えるだけでニヤけてしまいます。うふふ。
「GOTH 夜の章」 乙一
記念すべき、私が初めて読んだ叙述トリック本! パンパカパーン!! 著者の乙一さんは、私の大好きな作家さんの一人です。乙一さんのトリックは、他の作家さんとは一味違った趣があり、読み終わった後に独特な余韻が残ります。他の作品にも叙述トリックが多く見受けられ、どれも読み応え満点です。一度好きになってしまえば、乙一ワールドにハマること間違いなし!!
「GOTH」は、「GOTH 夜の章」「GOTH 僕の章」の2巻で構成されています。高校生の「僕」と森野夜の二人のまわりで起きる、数々の猟奇的な事件が描かれており、各巻に3作ずつ収録されております。2巻とも叙述トリックのオンパレードで、大好きな人にはたまらない作品です。「GOTH」の本編は2巻構成ですが、少し前に番外篇が発売されました。今作を好きになった方は、ぜひそちらも読んでみてください。
注意点としては、乙一さんの作品はグロテスクな描写が多いので「そういうの苦手かもぉ!!」という方は心してお読みください。
ちなみに、私の好きな収録作は「犬 Dog」です。……ん? あれ? そういえば、私のバンド名は「Thinking Dogs」。あらやだ、「犬」つながりだなんて、これも何かの縁ですかね。キラッ。