「様々な思いを抱えている人に、この本を受け取ってほしい」……そんな思いを叶えられる場所が、個人で一棚から本屋さんになれる「シェア型書店」です。この連載では、「シェア型書店の棚主」に特別に本をおすすめしてもらいます! #4は江古田の「ぼっとう&よはく」棚主で女性専門カウンセラーでもある高橋ライチさんに、ご自身の著作に込めた希望を語っていただきました。(編)
はじめまして。東京・練馬区江古田にある一棚本屋ぼっとう&よはくにて、棚主をしています。カウンセラーの高橋ライチです。ホンシェルジュ初登場ということで、自著からご紹介をスタートしたいと思います。
- 著者
- ["稲葉 麻由美", "高橋 ライチ", "舟之川聖子"]
- 出版日
この本は、3人の書き手とたくさんの応援者さんとで、クラウドファンディングで制作した本です。クラウドファンディング中に出版社さんからお声がけいただき刊行にこぎ着けました。現在本書は書店、ネット書店、電子書籍でも入手できます。
著者の3人は、それぞれが関心あるテーマでの学びをシェアしあう自主グループのメンバーでした。少人数のコミュニティの中でお互いの学びを分かち合ううちに、
「この学びを、10代のころから知っていたらよかった」という言葉が何度かきかれるようになり、
「本をつくって手渡せたら」というアイディアになり、
「クラウドファンディングで応援者を集めたらできるかも」とプロジェクトに育っていきました。
2020年末に出版された後には、読書会や社会を生きるうえでのトリセツ(取扱説明書)づくりの授業などで活用していく「きみトリプロジェクト」として展開してきました。「きみトリプロジェクト」とは「きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ」プロジェクトのことで、書籍を中心にしながら、10代の若者へ「社会のトリセツを作って生きる」というアイディアを届けていくプロジェクトのことです。
プロジェクトの経緯詳細は、こちらのページもぜひご覧ください。
<きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ>
「10代の人たちへ」という体裁になっていますが、保護者・先生・まちの居場所などで10代と関わる大人の人たち、自分の内側にいるかつて10代だった自分と対話をするのにも活用してほしいと思っています。
カウンセラーとしてお話を聴いていると、子どものころの体験が、大人になっても色濃く影響していることがよくわかります。
特に、思春期は重要な時期だと考えています。友人関係、親や先生との関係、自分自身の心身の悩み、進路など、さまざまなことに直面する時期。にもかかわらず、相談する相手も限られ、周りには平気な顔をしていたい、などで抱え込みがちな年頃でもあります。ひとりひとりが孤独にその時期をやり過ごしているのだとしたら。
本なら一人でこっそり読める。関心あるところ、直面していることから、自分のペースで読めたら「あの頃の自分たち」に、「いま渦中にいる人たち」に、役に立つかもしれない。そんな気持ちで書きました。
私が担当した項は以下の6項目です。
10代のあの頃、よくわからないまま直面していたテーマを選んでいます。直面しながら試行錯誤し続け、30歳、40歳を超えてようやく、「こういうことになってるのでは…」とわかってきたことを綴っています。
出版後、さまざまな年代の方から「今の私にも響きました」と感想をいただいています。どのテーマも、人によって直面する年代はさまざまなのですよね。
タイトルから誤解されることがあるのですが、「私たちのつくったトリセツ、役に立つから使ってね!」というハウツー本ではありません。そういう印象から拒否感を持たれることがあるということを、タイトルを決めてから知りました。
では、トリセツをどうするかというと、人のつくったものを使うのでなく、「自分なりのトリセツをつくろう」ということを提案しています。
苦手だけど繰り返し巡ってくること、これちょっと難しいなあと感じること、初めて出会うことについて、自分なりの「トリセツ(取扱説明書)」をつくるという視点を持っていると、「逃げずに、なんなら興味をもって取り組めるようになってきた!」というのが、私自身がこの本を作ってますます実感していることです。
何かがうまくいかない。と思ったら、トリセツを作ってみよう!
「こういう仕組みでこういうことが起きてるのか」
「他の人はどうしてるんだろう?」「他の国や時代ではどうだったんだろう?」
「私にはどういうやり方が合いそうかな?」
「今回はうまくいった、でもいつもじゃないとしたら、ほかにどんな方法ができるかな」
……というように、対象について知る・仮説と実践で試行錯誤する・他者とシェアしながら再検証する、を前向きに取り組めるのです。
例えば、『恋のトリセツ』の中では、私なりに研究した「恋する理由」を4つ挙げています。①生命が持つ根源的な欲求 ②優れたものへの憧れ ③人生を分かち合う社会的なパートナー ④親からもらえなかったものを受け取るため。
これを読んで、どんな感じがしますか?「いや、これもあるでしょう!」「自分はこういうことだと思う」など、自分なりの理由が浮かんできたとしたら、それが【あなたのトリセツにある「恋する理由」】なのですね。
自分の中にあるものが、本書との比較で初めて再確認できたり、違いが浮き彫りになったり、もっと探究したくなったらぜひ、深掘ってみてください。
この項のワークシートは「あなたが好きになる人には、共通点がありますか?」という問いがあります。ときめきポイントを書き出してみると、恋する理由のどれかにあてはまるでしょうか。
さて、あなたなら、なんのトリセツをつくりますか?
本の構成は、著者が書いた本文と、項ごとに考えるとっかかりになりそうなワークシート、章ごとに参考図書と映画の紹介、でできています。
章立ては、
第一章 あなたの心とからだのこと
第二章 あなたと誰かの関係性
第三章 あなたと社会の関係性
と、自分を中心に徐々に外側へひらかれていくかたちになっています。これも、周りから考えるほうがやりやすい、とか、まずは自分のこと、とか、今直面してるあの人とのこと、など、好きな順番で読むことができます。
本と映画という要素は、著者3人が共通して、人生において何度も救われてきたものです。実際に体験するよりも安全に、何度でも、疑似体験の中で人間や人生を学べるのが本や映画。読者のみなさんが、ここに挙がっている作品たちにどんな感想をもったか、またここに載っていない作品を「自分だったらこの章の推薦図書はこれ!」みたいに教えあうのも楽しいです。著者に教えてもらえたらとっても嬉しいです。
同じ作品でも、ほかの人の感想を聞くと「そういう読み方もできるのか!」「そこを受け取っていたんだ」という発見があり、さらに自分の感性を育ててくれます。
このように作品を通じて人と対話をするやり方についての項のほか、他者との健やかな境界線について書かれた項もありますよ。
読むだけではなく「使う」本としてつくりました。
何かがうまくいかないとき、あるいは胸のつぶれるようなニュースを目にしたとき、社会がこんなだから、国がこうだから、時代が…と無力感にやられることがあります。
そんな時はこう思い直すことができます。基本、社会は、自分たちが作っていて、この先を変えたければ、変えていけるものだ、と。
ただし、ひとりでは無理だから、一緒につくっていこうよ、まだここまでしかできてないけど、まだ私も学び途中だけど、と未熟なひとりとして呼びかけています。
自分自身についても、他者との関係性についても、暮らす社会についても、トリセツをつくりながら進んでいける。自分なりのトリセツをつくりながら、シェアしあい・ブラッシュアップしながらこの社会を生きていこう。もっと望むような社会をつくっていこう。
そんな呼びかけで初回を閉じたいと思います。
よかったら、ぼっとう&よはくお店番の日に会いに来てくださいね。本書も置いています。
著者・高橋ライチさんのカウンセラーとしての活動は、こちらのホームページをご覧ください。
本記事の著者も棚を借りる「ぼっとう&よはく」は、練馬区江古田にある一棚本屋。コワーキングスペースも併設しています。
スペースにて不登校の親の会を開いたりしていたため、棚主さんには本好きというより社会課題に興味のある方が多い印象です。 棚主さんは、緩く仲良し。
「普通が苦手な方にもあたたかいスペース」をスローガンに掲げています。棚主さんを募集中です!!
一棚本屋営業の日:水/土/日/祝 13:00~17:00
コワーキングスペース:月/木/金 12:00~17:30
詳細はカレンダーでチェックできます。
西武池袋線 江古田駅 南口より徒歩3分/都営大江戸線 新江古田駅 A2出口より徒歩6分
東京都練馬区旭丘1丁目 65-18 旭丘ダイヤモンドビル 2F
営業最新の情報は、ぼっとう&よはく公式ホームページをご覧ください!
シェア書店からのおすそわけ
誰でも1つの本棚から本屋さんになれる「シェア型書店」という場をご存知でしょうか。店に並んだ棚の1つを個人が「借りる」ことで、そこに好きな本を並べて売ることができるという仕組み。本の新旧やジャンルを問わずそれぞれの棚主の個性が光る選書を楽しむことができるのは、訪れる人にとっても魅力です。 そこでホンシェルジュでは、その「シェア型書店の棚主」に本をおすすめしてもらう連載企画をスタート!リレー形式で、様々な思いを抱える方へ届けたい本を語っていただきます。