前川裕のおすすめ小説5選!凄惨な事件の数々に読む手が止まらなくなる

更新:2021.12.15

凄惨な事件を題材としたサスペンスを得意とする前川裕。そのクオリティの高さから、2016年にはデビュー作『クリーピー』が映画化されました。今回は前川裕のおすすめ小説を5作紹介します。

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本業は大学教授、前川裕が描く凄惨なミステリー

前川裕は2011年、『クリーピー』が日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。翌年、同作で小説家デビューをしました。本業は大学教授で、日本文学と西洋文学の比較研究や、推理小説を中心とした大衆文化の研究をしています。

前川裕の作風の特徴は、凄惨な事件を描くことです。主人公は大学教授であったり、警察であったりと様々ですが、作中の事件は手斧で惨殺、30人の集団自殺、監禁して拷問による殺人など、身の毛もよだつ事件を多く取り扱っています。

隣人の怖さが際立つサスペンス『クリーピー』

犯罪心理学を研究する大学教授の高倉は、高校からの友人で警視庁捜査一課に所属する野上から八年前に起きた一家三人失踪事件について、助言を求められます。残された長女が突然「母は性的暴行を受けていた」と証言したと言います。その信憑性を調べてほしいとのことでした。それから、高倉の周囲で事件が頻発します。暴行事件、野上の失踪、向かいの家の火災……。八年前の事件と関連があるのでしょうか?

『クリーピー』は2012年に発表された前川裕のサスペンス小説で、2016年には『クリーピー 偽りの隣人』のタイトルで映画化されました。序盤の緩やかな始まりから、中盤の不可解で陰惨な事件の頻発、そして、終盤にかけての疾走感のある畳み掛けという構成は、飽きることなく最後までドキドキしながら読むことができます。
 

著者
前川 裕
出版日
2014-03-12

本作の魅力は、隣人をテーマとしたことです。意外と知らない、身近な人の奇妙な行動への恐怖や不安が上手に描かれており、ホラーのような雰囲気を持っています。それとサスペンス性が交じり合い、怖さが際立った前川裕の作品になっています。

高学歴な女性の倒錯した行動『イン・ザ・ダーク』

東京で連続高級デリヘル嬢殺人事件が起こります。被害者はいずれも昼間は一流企業に勤めていました。おとり捜査までも失敗し、捜査が難航していた頃、石川県警の刑事がやってきました。金沢の高級旅館で大手企業の女性課長が絞殺された事件が、殺されたデリヘル嬢と接点があると言うのです。一体、どんな接点があるのでしょうか?そして犯人の正体とは一体……。

前川裕の『イン・ザ・ダーク』は2015年に発表されました。実在の事件『東電OL殺人事件』を下敷きに、暗い雰囲気で展開される警察小説となっています。かといって、捜査の過程を楽しむというよりも、崩壊したモラルや背徳的な世界を描くことに主眼が置かれています。
 

著者
前川 裕
出版日
2015-07-31

本作の魅力は、謎めいた被害者の行動です。石川県で絞殺された女性は、東大卒という知性の高さを持ち、統合失調症に悩み、隠し切れない狂気を孕む佇まいをしています。彼女の生前の破天荒な行動が事件のカギとなります。
 

餓死事件と訪問販売の意外なつながり『アトロシティー』

28歳の母親と5歳の女児が餓死してしまいました。フリージャーナリストの田島は、この痛ましい事件を調べ、記事にして発表し、世間の注目を集めました。

それから田島はひょんなことから刑事と知り合いになり、悪質な訪問販売の殺人集団の話を聞きます。田島はその集団について調べ始めますが、なぜか餓死した母親の死体検案書が送り付けられます。そして事態は思わぬ方向へ進んでいくのです。
 

著者
前川 裕
出版日
2015-07-09

前川裕の今作は、フリージャーナリストの田島の視点で物語が展開されます。訪問販売の押し売りや、餓死事件といった新聞でよく見る事件を題材としていて、リアリティの強い物語です。一見関係のないように見える事件のつながりが徐々に現れてくる構成は、伏線の張り方も含めて、技術の高さが感じられます。

フリージャーナリストと刑事のコンビが魅力的な前川裕作品。フリージャーナリストと刑事は普通の小説ではいがみあうことが多いですが、本作ではガッチリとタッグを組みます。
フットワークの軽さや機密情報へのアクセスなど、互いの長所を生かした調査は頼もしいものです。

30年前の事件はまだ終わっていない『死屍累々の夜』

1985年、鹿児島で一人の男と六人の女が集団自殺を遂げました。男は木裏健三といい、自殺の前から十人を殺害したと疑われていた人物です。30年後、一人のジャーナリストが木裏のことを調べ始めます。そのうち、集団自殺に参加しようとしていた女性は七人だったことがわかります。当時15歳だった少女一人だけ事前に解放されていたのです。ジャーナリストは、その女性と面会するのですが……。

著者
前川 裕
出版日
2015-05-20

前川裕による『死屍累々の夜』は2015年に刊行。東大卒ながら、売春宿の経営を行い、目的のためなら殺人も厭わない木裏というカリスマ的存在のルーツを探っていきます。その中で描かれる、木裏を盲信する人々の心の弱さや愛、切なさといったものがひしひしと伝わってきます。

前川裕の本作の魅力はフェイクドキュメンタリーという体裁です。小説なのですが、ノンフィクションであるかのように描かれています。それだけに、まるで実際に起きた事件ように感じられます。
 

なぜ新婚夫婦ばかりが手斧で殺されるのか『酷: ハーシュ』

1993年、暴風雨の東京で、新婚夫婦が手斧で殺されました。犯人はあっさり逮捕され服役したのですが、20年後、再び新婚夫婦が同様の手口で殺されます。捜査対象を巡って、キャリア警察官と現場の刑事が揉めている中、またも新婚夫婦が殺されてしまいます。犯人は20年前に逮捕された男なのでしょうか、それとも……。

著者
前川 裕
出版日
2014-02-21

『酷: ハーシュ』は2014年に発表された前川裕の作品です。手斧を使った殺人という凄惨なシーンが特に多い作品で、スプラッターの要素が強くなっています。伏線の配置と回収がしっかりしており、物語の質を高めています。また、他作品よりもだいぶペダンチックな文章が減って、テンポが良く読みやすいです。

本作の魅力は、ミスリードの多さです。ミスリードとは誤解を誘う文章のことで、読者に対して犯人を勘違いさせるために使われます。前川裕の本作はミスリードが大変多く、読者はどの登場人物も怪しく思ってしまい、なかなか犯人がわかりません。そのため、犯人が分かったときの驚きも大きいです。
 

以上、前川裕のおすすめ小説を5点紹介しました。刺激の強さを求めるなら、凄惨な事件を扱うことが多い前川裕はオススメです。ぜひリアリティの強い凄惨な事件を楽しんでください。

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