『書を捨てよ、街へ出よう』今年生誕80年を迎えた寺山修二の言葉です。本を捨てるなんてできない、と条件反射で反論しそうになることもありましたが、ようやく言葉の意味が分かる年齢になりました。 とはいえ、高く澄みわたる秋の空。本好きにとっては、お気に入りの一冊と、カフェテリアで風の冷たさを感じながら読書なんてのも、いい季節です。 『本を持って、街へ出よう』、今回は、東京の街を探検するのにおすすめの5冊を集めてみました。
こんにちは、小野寺ひかりです。外へ出ないともったいない、秋の休日。遠出してひとり東京の街をブラブラするのに、こんな本はいかがでしょうか。いつもと違う風景が見えるようになります。もちろん初めて歩く街並みにも、水先案内人になってくれること間違いなしです。
- 著者
- フロラン・シャヴエ
- 出版日
- 2012-12-14
東京ってすごく雑多な街並み。
路地一本入るとまったく別の表情が待っています。たぶん、この風景どこかで見たことあるっ! とずんずん進んだ先で、迷子になったのも一度や二度ではありません。
本書は、フランス人青年が見つめた東京の風景を描いています。丁寧な色鉛筆イラストに「ふくれっ面」や「愉快なヤツ」など人物描写にユーモラスなコメント付。 見知らぬ異邦人同士が交差する、ざわめきの都会。じっくり観察すると、迷子の路地裏も、とっても面白い空間だって教えてくれます。
この本は、浅草や六本木、お台場まで繰り出す都市一体型のリアルゲームブックです。
- 著者
- ["HAT-CRi", "よだかのレコード"]
- 出版日
- 2014-07-30
嬉しいことに、本好きにはたまらない神保町が第一のステージ!
やっぱり暗号はさっぱりで固まりました。ともかくヒントを思いつくかもしれないと足を動かします。謎を解きながらウインドウショッピングもよし。すると知らなかった小道やお店を発見し、コーヒーを飲み、ディナーを食べて……謎が解けていない!
友達や恋人とこんな街歩きも新鮮です。謎が解けなくても、ケンカはダメですよ(筆者体験談)。
- 著者
- 岡崎 京子
- 出版日
札幌から憧れの東京に転校してきたサカエちゃんは、超モード系の女子高生です。友達とのおしゃべり場所は学校の屋上、空の高い特等席で、こんな秋晴れを過ごしていたはず。
同じ空で繋がっているとは思えないくらい、東京は広いもの。ノープランの気ままさが充実のエッセンス。原宿ラフォーレ、新宿パルコ、代官山、高円寺、中野……大好きなライブハウスや名所を1日で回ろうなんて、無謀なことを言ってしまうパワーは地方出身者、大共感のワンシーンも。
- 著者
- 川本 三郎
- 出版日
学生時代、パリの街でのひとり歩きを思い出した一冊。(カッコつけ!)
地下鉄で歌うアコーディオン弾き、古切手市で買い物、オペラ座の付近のパン屋さんで慌ててランチ。どこか見知った風景に似ていました。シャンゼリゼ通りは銀座に、一本挟んだ道は末広町に、あの居酒屋は新宿に……。わたしはヨーロッパで、東京を恋しがっていることに気づきました。
同じような体験が作者にもあったと綴られていて、とても驚きます。
「雑踏のなかにこそ神がいる」、うなる名文です。
初めての東京暮らし必携にしたいくらい、楽しく読んでしまう東京生活のエッセイ集。お笑い芸人・ピース、又吉さん独特のリズムに声を上げて笑います。
- 著者
- 又吉 直樹
- 出版日
- 2013-08-26
芥川龍之介『東京八景』では、「戸塚の梅雨。本郷の黄昏たそがれ。神田の祭礼。柏木の初雪。八丁堀の花火……」と、とても八つには絞れない美しい言葉が並んでいましたが、実際にみた場所や遭遇した人々は、自分だけの思い出です。読み終わった後は、自分だけの百景探しに出かけたくなります。
狭いようで広い東京、あなただけの散歩道を見つけてみるのはいかがでしょうか。
思い立ったが吉日。きっと今日が散歩日和、読書日和です。
秋の日差しをいっぱいに浴びて、路地を行き、本を読む。
夕暮れには大きな茜色の太陽が覗き、寒風にコートの襟を立て、缶コーヒーを一杯。
そんな東京人にわたしもなれそうな気がしてきました。