マンモス学園の秘密に迫れ!福島鉄平『放課後ひみつクラブ』ネタバレレビュー

更新:2023.5.21

現在ジャンプ+で話題沸騰中の福島鉄平の漫画『放課後ひみつクラブ』。 好奇心のかたまりのヒロイン・蟻ケ崎千歳と、ひょんなことから彼女と知り合い、放課後ひみつクラブに強制入部させられた猫田悠一が活躍する本作は、独特のテンポと、怒涛の如く畳みかけるシュールなギャグが癖になる迷作です。今回はボーイミーツガールの新境地、『放課後ひみつクラブ』のあらすじや魅力をご紹介していきます。

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『放課後ひみつクラブ』の簡単なあらすじと登場人物紹介(ネタバレあり)

舞台となるのは広大な敷地に恵まれた私立ユーカリの葉学園。この学園はクラブ活動が活発なことで有名で、公式非公式問わず膨大な数の部活が存在しています。

新入生の猫田悠一は真面目で心優しい常識人。掲示板を眺め部活を選んでいた矢先、露骨に怪しいチラシが目にとまります。

問題のチラシを張り出した少女は蟻ケ崎千歳と名乗り、まだ部活が決まってない猫田くんを非公式のクラブ活動に引っ張り込みました。蟻ケ崎さん曰くユーカリの葉学園には大小様々な秘密が眠っており、それを探り出すのが部活の目的らしいのです。

「ヒミツ・ミッケ!」の合言葉と共に暴走機関車の如く驀進する蟻ケ崎さんの助手兼ストッパーとして、今日も猫田くんは学園狭しと走り回るのでした。

著者
福島 鉄平
出版日

福島鉄平節炸裂!きわどすぎるパロディ満載、シュールなギャグが癖になる

『放課後ひみつクラブ』は2022年10月より連載開始、現在単行本二巻まで発売されています。

作者の福島鉄平は少年ジャンプにて『サムライうさぎ』を連載したのち、青年誌にフィールドを移し、不憫なショタの甘酸っぱい恋を描いた『アマリリス』や、これまた男の子が魔法少女に変身する『ボクらは魔法少年』で注目を浴びました。

著者
福島 鉄平
出版日
2018-09-19

そんな福島鉄平がジャンプ+に戻ってきたとあり、往年のファンは喜び。ですが『サムライうさぎ』のようなハートウォ―ミング路線を想像していると、初っ端からエンジン全開のキレッキレのギャグのオンパレードに面食らいます。

『サムライうさぎ』が最後まで面白い!骨太な魅力、名言をラストまでネタバレ

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下級武士である主人公が、身分の低さというしがらみから抜け出して剣の道を極めるために自分の道場をひらくというストーリーの『サムライうさぎ』。江戸時代を舞台に、15歳の悟助が才能とまっすぐな性格で道を切り開いていく様子に勇気をもらう作品です。 可愛らしい絵柄だけでなく、タイトルのうさぎにちなんで、連載話数は第〇話ではなく第〇羽となっているのも特徴です。この記事ではコミカルで熱量の高い本作の魅力を最終回までご紹介!スマホアプリで読むこともできるので、そちらもどうぞ。

本作のヒロインはロングストレートの金髪に赤いリボンがチャームポイントの超絶美少女・蟻ケ崎千歳。好奇心のかたまりな彼女は、秘密の匂いを嗅ぎ付けたら最後、真実を暴くまで決して止まらない無限大のバイタリティを秘めています。

一方アシスタントに任命された猫田くんは、不思議ちゃんの枠を突き破ったヤベー女・蟻ケ崎さんのツッコミ役とストッパーを兼ねる貴重な人材です。

『放課後ひみつクラブ』最大の見所は、異常なまでにテンポよい掛け合いとキレッキレのギャグ。漫画は起承転結のお約束にのっとり冒頭に事件が配置されるのが様式美ですが、本作で「起」となるのは、大抵の場合蟻ケ崎さんのささやかな疑問。

その13では「学園がこんなに平和なんて裏があるに違いない」→「誰かが故意に平和を作り出してるのね!」と邪推し、黒幕のピースメーカーを求め、何故か猫田くんにおんぶされながらあちこち探検。

火のない所に煙は立たず改め、火のない所に付け火して回る蟻ケ崎さん。が、この妄想が往々にして的中するのですから侮れません。

その13では蟻ケ崎さんが学内ミスコンで殿堂入りを果たした事に猫田くんが言及した際、「投票数は仏恥義理よ」と返す一方、「ドレスを切られた仕返しに気が付いたら毒を盛っていた」×2とあっけらかんと発言。これに対する猫田くんのドライなツッコミが、じわじわくる温度差を生み出していました。

以降も蟻ケ崎さんの奇行はとどまるところを知らず、部室欲しさに棒で地面に間取りを描く、猫田くんの寮室を部室にしたいと提案するなど、ちゃっかりを通り越した厚かましさを遺憾なく発揮。

エキセントリックな言動では蟻ケ崎さん以外の登場人物も負けてはいません。一応は常識人枠の猫田くんはさておき、ユーカリの葉学園は教師・生徒・購買のおばちゃんに至るまで狂人と紙一重の変人ぞろい。

ツンデレ風紀委員の黒薔薇さんや生徒会長の虎ノ門さんなど魅力的なキャラには事欠かず、彼女たちと奇想天外なタイマンを繰り広げる蟻ケ崎さんは、ヒロインの風上にもおけないゲスい手口で毎度抜群のインパクトを与えてくれます。

とりわけ強烈なのがその8、VS黒薔薇さんのエピソード。この回は蟻ケ崎さんと黒薔薇さんがオリジナル絵本を作り、どちらが面白いか対決するのですが、二人が描いた絵本は『はらぺこあおむし』と『ねないこだれだ』の完全なるパクリ。

さすがの猫田くんも「これはタチが悪いぞ」とあきれはて、「どっちの味方なの?」となじる蟻ケ崎さんに対し、「しいていえば作者の味方だね」とばっさり返しました。

絵本のコマだけわざわざカラーで強調する編集部の遊び心に抱腹絶倒です。

著者
["エリック=カール", "もり ひさし"]
出版日
著者
せな けいこ
出版日
1969-11-20

キャラクターが可愛らしく魅力的なのはもちろんのこと、本作の影の主役はユーカリの葉学園そのもの。300以上の部活動が存在するマンモス校は都市伝説と陰謀論の宝庫。

故にパソコン部がメタバースでマインクラフトな仮想現実と繋がっていたり、マッドサイエンティストの生物部部長がクローンを開発していたり、生徒会長が人類滅亡に備えユーカリの方舟計画(別名全生徒家畜化計画)を進めていたりと、SF・ホラー・ファンタジーの闇鍋な秘密が次々暴かれていきます。

おもしれー女を地でいくヒロイン、蟻ケ崎千歳に夢中

猫田くんと行動を共にする蟻ケ崎さんは見た目だけなら麗しい少女。その正体は「やべー女」と「おもしれー女」が化学反応を起こした、おもしれやべー最強ヒロインです。

ひらたく言えばトラブルメイカー。秘密の匂いを嗅ぎ付ければどこへなりともすっとんでいき、なんにでも首を突っ込んでハチャメチャにひっかき回すときて、学園一の問題児の誹りは免れません。

そんな蟻ケ崎さんと猫田くんのコンビネーションも『放課後ひみつクラブ』の見所。

蟻ケ崎さんのモットーは学園の秘密を見付けること。見事謎が解明できた暁には「ヒミツ・ミッケ!」のキメ台詞を放ち、セーラームーンさながら癖強なキメポーズを披露してくれます。

とはいえ、いたずらに広めることはしないのが蟻ケ崎さんの美徳。彼女の関心はあくまで「知ること」に尽き、秘密を知るだけで満足してしまうのです。

ある意味彼女ほど秘密をリスペクトしている人間はいません。

猫田くんも蟻ケ崎さんのブレないスタンスを尊重し、たとえその秘密がクローンやロボットや人類滅亡に関わる事でも愉快犯的に拡散したり自分の手柄にして吹聴はせず、なんだかんだでスクールライフを満喫しています。

やられたらやり返す倍々返しの精神でライバルに毒を盛る一方、塩ラーメンの透明スープに味が付いてないんじゃないかと疑い、ドキドキしながら食券を購入するギャップがたまらないミステリアスなヒロイン。

毎分毎秒何をしでかすかわからない蟻ケ崎さんと、彼女に振り回されてるように見せかけて〆る所はしっかり〆る猫田くんのバディ関係は見ているだけで面白く、難しい事を一切考えず楽しめるエンタメに仕上がっています。

著者
福島 鉄平
出版日

『放課後ひみつクラブ』を読んだ人におすすめの本

福島鉄平『放課後ひみつ』クラブを読んだ人には、涼川りん『あそびあそばせ』をおすすめします。

『あそびあそばせ』は女子中学生トリオの放課後の部活動を描いたギャグ漫画。繊細で可愛らしい絵柄を裏切る変顔の連発や下ネタ、シュールなギャグの数々が爆笑を生み出しました。

少数キャラで回す会話のテンポ感や独特のとぼけた間の取り方など、『放課後ひみつクラブ』と共通項が多いので気になる方はぜひ読んでください。

『あそびあそばせ』が表紙詐欺すぎる!美少女漫画が面白い【無料】

『あそびあそばせ』が表紙詐欺すぎる!美少女漫画が面白い【無料】

「表紙詐欺」とツイッターで話題となり、重版が続いた美少女ギャグ漫画『あそびあそばせ』。電車内で読むと沈没間違いなしの、面白すぎてやばい内容です。本作の美少女中学生たちの優雅な?日々をご紹介します。ネタバレを含みますので、ご注意ください。 スマホの無料アプリで読むことができるので、気になった方はぜひそちらからどうぞ!

著者
涼川りん
出版日
2016-02-29

続いてご紹介するのは『福島鉄平短編集 アマリリス』。こちらには福島鉄平が青年誌で発表された短編が収録されています。

親の借金のかたにへんたいのおじさんに売られた11歳の少年・ジャン。連れていかれた先は男の子が女装で接客するおとなの店で、そこに住み込みで働かされることになり……。

「男の娘」「女装男子」「ショタ」のキーワードにぴんとくる方に強く勧めたい名作。自身が汚れてしまった負い目を抱き、同性の友人に憧憬を募らせる多感な心理がセンシティブに表現され、感傷的な余韻が際立ちました。

福島鉄平の作風の変遷を辿る上でもぜひ押さえてほしい一冊です。

著者
福島 鉄平
出版日
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