『HUNTER×HUNTER』や『幽☆遊☆白書』などの大ヒット作を生み出している漫画家、冨樫義博。その世界観や読者を惹きつける作品性から、天才と評されることも。今回は、そんな冨樫義博のおすすめ漫画をランキング形式でご紹介します。
初期の作品はジャンルでいうとラブコメやエロ路線でしたが、代表作『幽☆幽☆白書』の頃からバトル物へと作風を変えていき、その綿密に練られたストーリーや、迫力のある絵から天才漫画家と謳われるようになりました。
しかし冨樫義博は最初から才能を発揮していたわけではなく、ストーリー作りの難しさに悩んだこともあったとか。
その後、短編の小説を長編にするならどのようにして話を膨らませていくかなど、自分なりのアレンジ方を考えていくという方法で勉強していったそうです。
そういった努力の甲斐もあってか冨樫義博の代表作品『幽☆幽☆白書』は異例の大ヒットを飛ばし、その後も読者に愛される作品を多く生み出していきました。
デビュー作「とんだバースディプレゼント」など初期の作品、全6編が収録されている短編集です。
表題作「狼なんて怖くない」は、狼男である主人公・拓狼が正体を隠しながらも日常生活を送っていくというお話。転校を繰り返していくうちに出会ったヒロイン・さやかに一目惚れするも、なかなか告白できずにいますが、ある事件をきっかけに物語は意外な方向へと進んでいき……。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
「さっさとやめねーとまとめてひねりつぶすぞ毛虫野朗」(『狼なんて怖くない』から引用)
さやかが不良グループに襲われそうになり、拓狼が狼男に変身して相手を撃退させたときのセリフです。デビュー当時なのに画力があり、ここぞという時に魅せてくれる1枚絵でした。この頃から富樫義博の才能が光っていることがわかります。
狼男やドラキュラ・幽霊などオカルト要素がある話が多く、冨樫ファンならもちろん、ファンでない方も楽しく読める1冊になっています。
1989年に連載された冨樫義博の連載デビュー作『てんで性悪キューピット』。
主人公は、健康優良児のごとく、スケベなことにまったく興味がない鯉昇竜次。そのことを心配した極道・鯉昇組組長の父親が家庭教師の聖まりあを連れてきます。なんとまりあは、竜次がスケベなことに興味を出させるために呼んだ魔界の悪魔で……。
お色気路線で、男性の夢を詰め込みまくったともいえる作品ですが、そうはいっても冨樫義博。後半からのストーリー構成には目を見張る場面も。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
「相性が最悪なんて最高じゃない これからは良くなるだけだもん」(『てんで性悪キューピット』から引用)
占いで相性が悪く落ち込んでいる竜次に、まりあがかけた言葉です。落ち込んでいるときは下ばかり向いてしまうもの。これからのことを前向きに考えることを教えてくれているようです。
かわいらしい絵柄に軽快なテンポで進んでいくので、冨樫義博の作品に没頭したいなら、まずここから読むのがおすすめかもしれません。
交通事故に遭い死んでしまった主人公・浦飯幽助は、霊界から与えられた試練をこなし生き返ります。その後、幽助は霊界探偵として難事件を解決していくことになって……。
ただの王道バトル物かと思いきや、倒すべき敵にも理由があるなど意外と深いストーリーである富樫義博の本作。代表的な敵キャラクター戸愚呂弟は、元々は人間でしたが、強さを手に入れるために妖怪へと転生します。
「何かひとつを極めるということはほかのすべてを捨てること!!それが出来ぬお前は結局はんぱ物なのだ」(『幽☆遊☆白書』から引用)
戸愚呂弟の暗黒武術会でのセリフです。実際に強さのためだけに妖怪に転生した彼がいう言葉には、凄みがありますよね。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
しかしその後の
「……捨てたのかよ?逃げたんだろ?」(『幽☆遊☆白書』から引用)
という幽助のセリフでは、本当の強さとはなにかといったことを考えさせられることでしょう。
敵それぞれにも持論があり理由があるといった、王道バトルだけではない邪道な部分がこの作品の持ち味でしょう。
山形県を舞台にした超常現象などのオカルト要素強めのSF漫画である本作は、暇潰しのためにドグラ星から地球にやってきた、バカ王子のとんでもない悪ふざけを中心としたオムニバスストーリーです。
2011年にテレビアニメ化もされました。アシスタントを使わずに富樫義博が1人で描くことに挑戦した作品であり、週刊少年ジャンプでは異例の月1連載でした。
バカ王子の護衛をしているクラフト隊長は、「あいつの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ 奴は必ずその少し斜め上を行く!!」(『レベルE』から引用)と、バカ王子のことを語ります。それだけ灰汁が強い主人公。個性的なバカ王子の悪ふざけは面白く、痛快な気分になります。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 1996-03-04
好きになった人間を食べたくなってしまう宇宙人や、結婚詐欺や王族の誘拐……。個性的なキャラクター達による掛け合いが秀逸な富樫義博の作品です。
また伏線がちりばめられている本作は、何度読んでも楽しめます。作者の好みがふんだんに盛り込まれた作品を、ぜひお楽しみくださいね。
下書きでもいいから載せてくれ!と読者に言わしめるほどに人気が高い作品、『HUNTER×HUNTER』。休載しがちなのが残念だけれど、それでも読む手が止まりません。
主人公・ゴンはハンターになり世界中を冒険しながら、5つ星ハンターと名高い父親を探していきます。初めは純粋に冒険漫画として楽しめますが、だんだんと作者自身の勧善懲悪ではない世界観が全面に出てきます。
弱者は容赦無く惨殺されてしまうなど残酷なシーンも多いのですが、どうしても先が気になってしまう展開に、ついつい読み進めてしまうのです。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
「たとえば、お前達の社会には国境という縄張りに似た仕切りがあろう。境の右では子供が飢えて死に、左では何もしないクズがすべてを持っている。狂気の沙汰だ」(『HUNTER×HUNTER』から引用)
圧倒的な強さを持つキメラ=アントの王・メルエムといった敵キャラクターが、ハンター協会会長との戦闘前、譲歩しようとしたときの1シーン。思わず唸ってしまう名セリフです。
また最初はただの怪物でしかなかった王が、コムギという盲目の少女との出会いによってだんだんと人の心を持つようになっていく様には、つい涙してしまった読者も多いのではないでしょうか。
圧倒的な心理描写、バトルのなかでの駆け引き、ここぞというときに魅せる画力など、1度読めばたちまち虜になってしまう富樫義博の作品です。
『HUNTER×HUNTER』について紹介した<漫画「ハンターハンター」最新35巻までを徹底考察!【ネタバレ注意】>の記事もあわせてご覧ください。
努力の積み重ねの上で才能を開花させた冨樫義博。どの作品にも共通していえることは、作者自身のキラリと光るセンスや、読者を楽しませるエンターテイメント性。あなたも冨樫ワールドにどっぷりと浸かってみてはいかがですか? きっと今より少しだけ世界が違って見えることでしょう。