ファンからの熱狂的な支持を得ている人気漫画「ハンターハンター」。作者の体調不良によって何度も休載を挟みつつ、常に上位の人気を獲得しています。読者が心酔し続ける魅力や見どころを徹底考察!
『HUNTER×HUNTER』(ハンター×ハンター)は主人公のゴンと親友のキルアが世界中を旅しつつ、各地で起きる問題や、出会った強敵たちを打ち破りながら成長していく物語です。
作者の冨樫義博は天才的な感性の持ち主で、細かい所に読者をワクワクさせる設定を盛り込みながらも、大局的に見ると綿密に計算されたストーリーを描いています。
ゴンの味方になるキャラクターたちが魅力的なのはもちろんですが、立ち塞がる強敵たちがそれぞれ強い個性とカリスマ性を持っていて、脇役ひとりに至るまで目が離せなくなるでしょう。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
圧倒的な才能で生み出されている『HUNTER×HUNTER』ですが、休載している期間が長いことでも有名です。
作者はしばしば体調を崩し、そのたびに長期の休載期間をとります。しかし、「ハンターハンター」のストーリーは複雑化することが多く、読者がその設定を把握しなおす時間としてその期間もいいように作用しています。
そんな休載期間を経て、前巻の33巻から実に1年間ぶりとなる2017年6月に『HUNTER×HUNTER』34巻が発売されました。
今回はそんな『HUNTER×HUNTER』の、各編ごとの見どころを紹介していきます。
小さな田舎の島で育った主人公のゴンは、幼い頃に生き別れた父親のジンを探す旅に出ることを決意します。ジンはハンターで、世界中を飛び回り各地の隠れた財宝や珍味、時には賞金首などを狩猟(ハント)することを生業にしています。
世界中を飛び回る父親を探すためにゴンもハンターになることを決め、ハンター試験に挑戦するのです。
試験で出会ったキルアと行動をともにし、世界各地で他のハンターたちと競いながら1歩ずつ父親の背中へと近づいていくゴン。
そんな彼の成長を描く物語が『HUNTER×HUNTER』です。
プロハンターを目指すゴンにとって最初に突破しなくてはいけないのは、ハンターライセンスの取得に必要な「ハンター試験」でした。
故郷から出発した船で知り合った、クラピカとレオリオとともにハンター試験に臨みます。しかし、試験はいくつもの段階に分かれていて、そのどれもがひと癖もふた癖もある内容でした。他の参加者も腕に覚えのある猛者が立ち並びます。
試験中に出会った銀髪の少年キルアも仲間に加わり、ゴン一行はそれぞれの特技や長所を活かしてハンター試験を突破していきます。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
ハンター試験編は、これからのゴンの冒険に関わってくる重要人物が多く登場する章です。
ゴンの親友の「キルア」、頼れる友人の「クラピカ」と「レオリオ」、ハンターたちの長を務める「ネテロ」、キルアを洗脳し苦悩させるキルアの兄「イルミ」、そして、作品中たびたびゴンにちょっかいをかける奇術師「ヒソカ」など、皆が重要なキャラクターです。
他にも、特徴の異なったハンター志望のキャラクターたちが続々と現れ、そのひとりひとりの活躍にワクワクさせられるでしょう。島の外の世界に対して無知だったゴン。読者は彼と同じように、これから広がる物語に胸を膨らませることになります。
ハンター試験編の1番の見どころは、最終試験のトーナメントです。
いくつもの試練を突破してきた受験者同士、1vs1の真剣勝負で決着をつけるという単純な物ですが、勝利条件が少し特殊で「相手にまいったと言わせること」でした。ここまで勝ち進んできた根性のある受験者たちから「まいった」のひと言を取るのは、ある意味1番難しいことかもしれませんね。
試験が進み、ひとつの対戦を終えた瞬間、ゴンは気絶してしまいます。気がついた時には試験は終了。そして試験官のサトツから聞かされた唯一の不合格者の名には、ゴンだけではなくすべての読者が驚愕することでしょう。
ハンター試験でゴンが気絶している間に、親友のキルアは実家へと帰ってしまいます。しかしそれは、自分で望んだ帰郷ではなく、兄のイルミに脅されたからでした。それを知ったゴンはキルアを取り返すために彼の実家へと向かいます。
キルアの家族は世界的に有名な暗殺一家で、地元の住民も恐れて敷地には近寄らないほどでした。この章は短いながらも、そのなかでゴンはいくつもの壁にぶつかり、何度も命の危機に瀕してしまいます。
それでも親友を取り戻すために1歩も引かないゴン。「友情」というものをありありと見せつけてくれる「ククルーマウンテン編」の幕開けです。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 1999-04-30
ここでは主にキルアの家族(ゾルディック家)が登場します。暗殺一家であるゾルディック家は今後もしばしばストーリーに絡んでくるので注目です。ひとりひとりがとんでもない実力者で、本来ならこの時点でゴンは殺されていてもおかしくなかったのかもしれません。
最大の見どころは、ゾルディック家の執事長と賭け勝負をするシーン。
投げてキャッチしたコインがどちらの手に入っているか、という単純な遊びのはずが、キルアを取り戻すか殺されるかの危険な勝負へと変わります。
一見するとただの遊びですが、重苦しい緊迫感が伝わってきて、気づけば読者も手に汗を握りながら読み進めることになるでしょう。
野性的な直感と天性の身体能力でここまで戦い抜いてきたゴンですが、キルアからその未熟さを指摘されてしまいます。彼らは自らのレベルアップと当面必要なお金を稼ぐため、天空闘技場へと向かいました。
天空闘技場では毎日幾千もの試合がおこなわれており、勝てば金銭と次のステージへの挑戦権を手にすることができます。腕に自信のある人間が集まり、タワー式になっている天空闘技場の最上階を目指して、日々熾烈なバトルをくり広げているのです。
200階という節目を迎えた時、ゴンとキルアの前に立ちふさがったのは、ハンター試験の時に出会った奇術師のヒソカでした。2人はヒソカのプレッシャーを跳ね除けるため、ウイングという青年に教えを請い、「念」を覚えます。
手に汗握るバトルがくり返され、今後ストーリーの中枢となる「念」を覚えるのが「天空闘技場編」です。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 1999-12-01
ここでは2人の師匠になるウイングや、その1番弟子のズシ、そして奇術師ヒソカとの再会など、今後も重要になるキャラクターたちとの出会いが描かれています。さらに、闘技場内でしのぎを削るライバルたちも独特の戦闘スタイルを持っていて、すべてのバトルから目が離せません。
最大の見どころとなるのは、やはりゴンとキルアの2人が念を覚えて修行をしていくシーンでしょう。
ヒソカから向けられたプレッシャー、その正体を「念」だと睨み、ウイングに教えてもらいます。たったひと晩でその力を開花させた2人が、200階以上を戦い抜くために少しずつ念を習得していくのです。主人公の成長していく姿が描かれており、今後のストーリー展開がより楽しみになるでしょう。
そして、まだ念の基礎しか覚えていないゴンとキルアが、熟練している相手たちをアイディアと才能で打ち倒していくシーンも興奮せずにはいられません。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2000-04-01
いわゆるストーリーの間となる日常編。親友のキルアを伴って、ゴンの生まれ育ったくじら島へと帰郷します。母親代わりの「ミト」からゴンに惜しみなく注がれる愛情と、久しぶりに帰った地元の暖かい雰囲気、それらが読者の心をひと息つかせてくれるでしょう。
ミトはゴンに父親のジンの話を聞かせ、彼から預かっていた箱をゴンに渡します。その中には、テープレコーダーとROMカードが入っていました。
テープレコーダーにはジンからゴンのメッセージが残されていて、ROMカードにはひとつのゲームデータがセーブされていました。
このデータにこそジンに繋がるヒントがあると睨んだゴンは、ゲーム「グリードアイランド」を手に入れるために再び旅に出ます。
父親、ジンの手がかりとなるゲーム、グリードアイランド。ゴンとキルアは、そのゲームをオークションで競り落とすには50億という額が必要になることを知ります。
ちょうどその時、幻影旅団というグループのメンバーに、ひとり当たり2億の賞金がつけられました。億という額を一気に稼ぐために、ゴンとキルアはこの幻影旅団を捕える計画を立てはじめるのです。
圧倒的に自分たちと実力の違う幻影旅団、しかしそのメンバーのひとりを友人のクラピカが倒していたのです。同じ頃に念を覚えたばかりのはずのクラピカが幻影旅団を圧倒できた理由を探りつつ、ゴンとキルアはクラピカと協力して幻影旅団と対峙しました。
オークションを舞台として暗躍する幻影旅団と、それを殲滅しようとするマフィア。その渦中にゴンたちが飛び込んでいく「幻影旅団編」です。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2000-07-01
この章のはじめ、ゴンとキルアは市場での転売などを通じて金銭を稼ぎます。しかし市場の稼ぎだけでは到底足りないと感じた2人は、賞金額の高い幻影旅団メンバーの捕獲へと向かいます。
幻影旅団は13名のスペシャリストからなる盗賊集団で、ゴンとキルアとは、念の使い方から戦闘に至るまで一線を画す実力者たちです。
幻影旅団はこれからも物語に常に関わり続ける重要な存在です。メンバー全員が念の熟練者であり、世界中から危険視されています。
その実力者たちを相手に作戦をたてて立ち回る姿は、ハラハラすると同時に、うまくいった時の快感は読者にも強く共感できるものです。また、「念」というシステムが本格的に使われはじめる章でもあり、今までは単純だった念がどんどん応用されていって、物語の深みがさらに増していきます。
1番の見どころとなるのは、ゴンとキルアが幻影旅団に捕まり、ホテルのロビーで捕縛されている状態から抜け出そうとするシーンです。
一瞬だけホテルに停電を起こしそのスキを突くというものですが、相手に気づかれないように作戦を伝達する方法や、実行する瞬間の2人の対応力には目を見張るものがあります。
また、幻影旅団の団長とキルアの家族が戦うシーンでは、今までの「ハンターハンター」にはなかった超絶ド派手なバトルがくり広げられ、その迫力から作者が天才と呼ばれる理由の片鱗を感じることができるでしょう。
父親ジンの作ったゲーム、グリードアイランド。そこに父親の手がかりが隠されていると考えていたゴンでしたが、予想は外れ「ただオレたちのゲームを自慢したかっただけだ」というジンからの伝言が残されていました。
伝言を聞いたゴンは父親の作ったゲームを普通に楽しんでみることに決め、キルアとともにグリードアイランドを攻略します。
ゲーム内に散らばる100枚のカードを集めることが目的のグリードアイランド。しかし、いまだにゲームをクリアした者はいません。それぞれのカードにはゲーム内でのみ使える効果がついていて、プレイヤーはそのカードを駆使して競い合うことになります。
ゲーム内でプレイヤーを殺害している「ボマー」、ゴンとキルアの師匠になる「ビスケ」、1級ハンターとして活躍する「ツェズゲラ」など、クリアを目指しているのは経験豊富な相手ばかり。このようなキャラクターたちを相手取りながらも、ゴンとキルアは真っ向勝負でゲームのクリアへと歩みを進めます。
念を使った戦闘だけではなく、カードという特殊なアイテムを駆使しての駆け引きやバトルに惹きこまれるのが「グリードアイランド編」です。
頭脳を駆使する作品を紹介した<【頭脳派主人公特集】異能力バトル漫画おすすめ5選!頭を使って勝ち進む展開が激アツなワケ>もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2001-01-01
「ハンターハンター」のなかでも大変人気のある章で、ゲームシステムの作り込まれ具合やゲーム内で巻き起こるイベントのひとつひとつが読者の心をくすぐります。
最大の見どころとなるのは、「一坪の海岸線」というカードを手に入れるために15人のグループを組み、攻略を目指すシーンです。
その試練の難易度と15人必須という条件から、ゴンとキルアは奇術師ヒソカを仲間にします。ハンター試験や天空闘技場で2人を悩ませたヒソカ、一時的な共闘とはいえ強敵と手を組むシーンというのは非常にワクワクする場面でもあります。
追い詰められたゴンとキルア、その瞬間に2人が見せる本物の友情には誰しもが感動することでしょう。
グリードアイランドをクリアしたゴンとキルア。ジンの弟子で、昔お世話になったカイトという人物に再会し、しばらく狩人として一緒に生活をします。今まで出会ったことのないような生物たちと触れ合う環境は、彼らにとって新鮮で心地のよいものでした。
しかし、その途中で出会ってしまった「キメラ=アント」という生物が3人に危機をもたらします。
キメラ=アントとは、他の生物を捕食し、その生物の特徴を無理やり合成して子孫を残し、繁栄する生物のこと。それが人間に目を付け、他の動物たちと人間の交配種をつくり始めていたのです。このままではいつか全人類がキメラ=アントによって喰い殺されてしまうと危惧し、3人は討伐にくり出します。
しかし、他の生物の力を取り入れたキメラ=アントの力は凄まじく、ゴンとキルアをかばったカイトは殺されてしまいます。
カイトを失った怒りと悲しみを力に変えたゴンは、ハンター協会の会長であるネテロのもとでキメラ=アントの討伐に挑むのでした。
ここから物語は一気にシリアスさを増します。多くのキャラクターたちが死に、キャラ同士の関係にも亀裂が入り、キメラ=アントの恐怖感を読者へと植え付けていくのです。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2003-10-03
過去に出てきたキャラクターも多く登場し、人間対キメラ=アントの全面戦争という形になっています。実力も高く膨大な数のいるキメラ=アントと連日戦い続けていくさまは、緊張と興奮の連続です。
討伐隊として登場する「モラウ」は今後もしばしば登場する人物で、他にも「ノヴ」「シュート」「ナックル」というキャラクターたちは、読者に強い印象を残すことでしょう。
キメラ=アントの幹部たちは、人間を捕食して交配するため、全員が個性を強く持っています。見た目は人間とはかけ離れていますが、その内面からは人間味があふれ出ているのです。
最大の見どころになるのは、最後の突入作戦でしょう。
キメラ=アントが築いた王都に突入して一気に敵陣を壊滅させ、幹部にはそれぞれが対応し、キメラ=アントの王をネテロがタイマンで葬るというものです。
戦闘能力に関してはキメラ=アントが圧倒的に上ですが、長い期間念の修行をしてきた人間側がその利を活かして作戦を遂行していくシーンがとても盛りあがります。
作品中ではわずか数時間のことですが、単行本何冊にも及ぶその展開は、何十日にも及ぶ長期戦のように読者の胸に深く沁みわたることでしょう。
キメラ=アントとの戦いで昏睡状態へと陥ってしまったゴン。彼を救うために、キルアは妹のアルカの能力を頼りにします。
アルカは大きな代償と引き換えに、自由に願いを叶える能力を持っていて、ゾルディック家内でも危険視され幽閉されていました。妹と親友のゴンを助けるために、キルアは自分の家族に牙を向きます。
一方でキメラ=アントとの戦いで死んでしまったネテロ会長。その後継者を決めるために、ハンター協会では次代会長選挙が行われていました。
「会長選挙・アルカ編」では、権力と名誉が手に入るハンター協会会長の座を争う政治戦争と、アルカの所在を巡ってキルアと兄イルミの激しい攻防が描かれています。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2012-04-04
今まで名前も出てこなかったキャラクターたちが会長選挙のために登場し、もちろん懐かしのキャラたちも顔を揃えます。
特に重要になるのは、ハンター協会の幹部を務める「十二支ん」です。これは十二支になぞらえてネテロ会長が指名した幹部たちで、念にも精通して高い政治力を持っています。そしてこの十二支んに、ゴンの父親ジンも所属しているのです。
物語は会長選挙とアルカ奪還が並行して進んでいきます。
「アルカ奪還編」の見どころは、アルカを連れたキルアが、イルミや執事たちの追撃から逃げ回るシーンです。兄のイルミには戦闘では敵わないと分かっていたので、基本的には逃げの一手になります。
執事たちは、イルミに忠実な者とキルアを慕っている者に分かれ、代理戦争の様相を呈していきます。これまでのような強烈でド迫力なバトルは少ないですが、その一方で作者冨樫の得意とする緻密でテクニカルな戦闘が楽しめるでしょう。
「会長選挙編」の見どころは、レオリオが会長候補へと祭りあげられるシーン。レオリオ自身は会長になりたいとは思っていませんが、彼なりの正義感や誠実さが周囲に波及し、知らず知らずのうちに有力候補へと変わっていきます。
会長なんてなる気はないと動けば動くほど裏目に出て、どんどん支持率が高まってしまう様子は微笑ましいです。
ここから物語の主人公が移り変わります。
これまではゴンを中心として物語が進行してきましたが、「キメラ=アント編」と「アルカ編」を経て念能力が使えなくなった彼は、1度フェードアウト。明確に誰が次の主人公とは言い難いですが、父親のジンが中心になって進んでいきます。
人間が暮らしている世界のさらに外側には、暗黒大陸と呼ばれる未知の世界が存在しています。これまでも人類は渡航を試みましたが、そのたび失敗に終わり、むしろその行動は世界へいくつもの災厄をもたらしていました。
高すぎるリスクから暗黒大陸への不可侵が義務付けられていますが、死んだネテロ会長の息子、ビヨンド=ネテロが、暗黒大陸への挑戦を全世界に発表したのです。
「暗黒大陸編」では、主人公も舞台となる世界も変わり、世界中を巻き込む大混乱の時代が描かれています。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2012-12-28
最重要人物となるのは、やはりネテロの息子であるビヨンド=ネテロでしょう。父親譲りのカリスマ性と、裏で画策するズルがしこさをあわせ持っています。
彼の他にも暗黒大陸へと向かうメンバーが多数登場しますが、「暗黒大陸編」は現在も進行中のため、まだひとりひとりの活躍などは描かれていません。
暗黒大陸へと侵攻し自らの目的を達成しようとするビヨンド=ネテロ組と、それを阻止して彼を討伐しようとするハンター協会の対立が目玉だといえるでしょう。
未知の世界で多くの発見やいくつもの試練が待ち構えていることを考えると、今後の展開が待ち遠しいです。
クラピカの目的については作品初期から常に描かれ続けてきました。
クラピカは、かつて幻影旅団に滅ぼされかけたクルタ族という種族の生き残り。クルタ族は怒りなどの激しい感情によって一時的に瞳が赤く輝く特徴を持っています。「緋の眼」と呼ばれるその眼には高い価値がつけられていて、オークションなどを通じ世界中で売買されていました。
クラピカは、奪われた同胞の眼を奪い返すためにハンターになり、闇の世界の情報を手に入れるためにマフィアになったのでした。
「クラピカ追憶編」では、クラピカが「十二支ん」へ加入し、ハンター協会の目的へと手を貸しつつ仲間たちの屈辱を晴らすための行動を開始します。こちらも現在進行中で、暗黒大陸編と並行して進んでおり、2つの物語は細かく干渉しあっています。
暗黒大陸への渡航を推進する国家があり、その国の王子たちは大陸への渡航に同行するのですが、その王子のうちのひとりが「緋の眼」を大量に保有していて、それを知ったクラピカは彼の護衛として内部へ潜り込むのです。
クラピカの同胞の眼を持つ人物と、その兄弟という14人の人物、さらにボディーガードなども含めると数え切れない人数が一気に登場します。ほとんどの読者がキャラクターの増加についていけていないかもしれませんが、天才と呼ばれる作者がこの物語をどう転がしてまとめていくのか、その点も注目です。
読者も待ち望んでいたクラピカ編としても話題になりました。どのようにしてクラピカの過去の呪縛を終わらせるのか、その後解放されたクラピカはどうするのかが、今後の見どころになるでしょう。
ここでは1年間という長い期間を経て発売された、ファンが待ち望んでいた34巻を紹介します。
2部構成になっていて、前半はヒソカとクロロ(幻影旅団団長)の戦闘です。これもファンが待ち望んでいた対決のひとつであり、ヒソカがずっと追い求めていたものでもあります。
これまでクロロは、ヒソカとの勝負を避け続けてきました。強敵であるヒソカを倒すためには入念な準備が必要だと感じていたからです。
その準備が済んだことはヒソカも把握していますが、そのうえでクロロを打ち破る自信と対応力がヒソカにはあります。
「ハンターハンター」のなかでも最強クラスといわれる2人の戦闘は「天空闘技場編」の舞台ともなった天空闘技場でおこなわれました。多くの観客を動員しての一世一代の勝負は、「ハンターハンター」史上トップクラスの激戦です。
ぜひ皆さんの目で見てほしいので勝敗については語りませんが、複雑な念能力の応酬によってくり広げられるバトルは見ごたえ満点で、必ず楽しめます。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2017-06-26
そして後半では、「クラピカ追憶編」が進行していきます。ひとりの王子の護衛を務めつつ暗黒大陸へ向かう船に乗るクラピカ。王子たち兄弟は次代の王を争う戦争中で、ただでは済まないと誰もが予想していました。
案の定早くも船内で死人が発生。クラピカの周囲にもどんどんと異変が起き始めます。
いくつもの死線を潜り抜け、圧倒的に成長し続けてきたクラピカ。王子の護衛と自らの目的達成のために力を奮い活躍していく姿はとてもカッコよく、これから先も目が離せなさそうです。
35巻では、ヒソカとクロロの対決も終わり、クラピカ追憶編がメインとなる内容となっています。暗黒大陸へと向かう船は、熾烈な王位継承争いにより、水面下で様々な思惑が渦巻きます。
クラピカの護衛隊も、出航してわずか2時間で11人いた警護がふたりになってしまうという危機に陥っていました。
カキン王家の王に、彼らにつく護衛など、登場人物が増えて複雑になってきたストーリーですが、それをさらに複雑に、面白くするのが念獣という存在です。
これは暗黒大陸に向かうカキン王家に、代々伝わる儀式から生み出された生物。発生までの詳しい流れを説明しますと、王位を継ぐ権利のある者が「壺中卵の儀」という儀式で壺に血を入れ、そこで即位に向けての考えを念じることで、血筋を立証された場合に守護霊獣を授かるという内容です。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2018-02-02
自分の念獣は、守られている本人には見ることができません。この他にも宿主の性格に影響された見た目や能力を持つこと、宿主のオーラをエネルギーとすることなど、様々な特徴が分かっています。
これらはおそらく他にも明らかになっていない特徴があり、今後の戦い方に直結する重要なものだと思われるので、ぜひ作品でご確認ください。
しかしもともと王子たちは念能力を持っていた訳ではありません。壺の力によって強制的に念能力を目覚めさせただけなので、そもそもこの力は何なのか、どう利用するかがまったく分かっていないのです。
なので護衛や敵からの情報でその使い方を知ることが必要になってきます。そんな中で、念能力を使えるクラピカは、その情報源となる格好の相手です。
そして緊迫感漂う空気の中で、クラピカが護衛する王子の部屋に、第一王子、第三王子、第五王子から一斉に電話がかかってきます。
王位継承権で実質的に争うことになるであろうメンバーは、第五王子まで。今回電話がかかってきた人物はどれも油断ならない相手です。
ちなみに第四王子がクラピカの同胞の眼を持つ者。しかも彼がまったく油断ならない相手だといことも35巻で怖いくらいに描かれます。
果たしてこの電話にクラピカはどう対応するか、そしてこのあと戦況はどう変化していくか。一刻の猶予も許さない状況、そこでのクラピカの判断など、詳しい内容は作品でご覧ください。
文字量が多いので大変かもしれませんが、その分とても読み応えのある内容となっています!
「ハンターハンター」独自の「念」という概念は、作者の冨樫義博が考えに考え抜いた設定のうえにできています。決してただ力が強いだけやただオーラが強いだけの人間が勝つシステムではなく、相性や戦術によって弱者が強者を倒すことができるシステムになっています。
ひとつひとつの戦闘に作者のこだわりが見られ、緻密に作り込まれた話の展開はあっと驚かされるものばかり。日本の漫画史に残る名作のひとつです。ぜひともその手で本を取り、その目で確かめてみてください。
冨樫義博のおすすめ作品を紹介した<天才・冨樫義博のおすすめ漫画ランキングベスト5!何度も読み返したい名作>の記事もおすすめです。