『ちょっとだけ愛が重いダークエルフが異世界から追いかけてきた』は「WEBコミックガンマぷらす」で連載されているファンタジーラブコメです。役目を果たして帰還した勇者と一緒にいるために、逆異世界転移してきたヤンデレヒロインの重すぎるアプローチが特徴。 きわどいお色気の多い本作ですが、TVアニメ化が決定して、すでに放送・配信が始まっています。そんなアニメ版で気になった人のために、原作漫画から作品の魅力についてご紹介していきます。

『ちょっとだけ愛が重いダークエルフが異世界から追いかけてきた』(以下、「愛重ダークエルフ」)は中乃空の現代ファンタジー漫画です。当初は成人向け同人作品でしたが、一般向けの内容にリニューアルされて、2021年9月からWebコミック配信サイト「WEBコミックガンマぷらす」で連載されています。
本作は異世界で魔王討伐に成功して元の世界に戻ってきた勇者の元へ、彼を忘れられなかったダークエルフのヒロインが世界の壁を越えて押しかけ、そのまま一緒に暮らし始めるファンタジーラブコメです。ジャンルとしては逆異世界転移モノ。
ストーリーの簡単な説明とタイトルから薄々察することが出来る通り、ヒロインはなかなか主人公への依存度が高いヤンデレです。そんな彼女のちょっとめんどくさくて危ういところが本作の魅力にもなっています。
「愛重ダークエルフ」は結構過激な性的表現のある作品ですが、なんとTVアニメ化が決定。2025年4月から放送が始まっています。
「勇者ヒナタ」こと春原日向は魔王を倒すべく異世界に召喚され、冒険の末に仲間たちと共に見事に成し遂げました。しかし、喜んだのもつかの間。勇者としての役目を終えた彼は、平和になった世界を見届けることなく、元の世界に戻されてしまいます。
別れを惜しむ仲間――とりわけダークエルフの「ベル」ことマリアベルは、ヒナタを想うあまり突然の別離に涙を流しました。見かねたヒナタは根拠のない再会を約束するのですが……。
本来の世界に戻って1ヶ月後。元通りの日本での生活に馴染んだヒナタは、進学を機に叔父の家を出て1人暮らしを始めました。なんとそんな彼の元に、異世界で別れたベルが現れます。彼女はヒナタを愛するあまり、自ら異世界召喚の儀式を行ってこちらの世界へやってきたのでした。
ベルに頼るアテはなく、またヒナタから離れるつもりもないため、そこからなし崩し的に2人の生活が始まります。
主人公は16歳の高校生、春原日向(すのはらひなた)です。体格は普通より少し華奢なくらいで、鈍感な一面があるものの根は真面目。幼少期に両親を交通事故で亡くしており、進学前までは親戚と暮らしていました。その事故での経験が、異世界に召喚された理由に関わっています。
アニメ版でのヒナタ役は、『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』で我孫子優(ビコ)を演じた河村梨恵。
ヒロインであり、もう1人の主人公と言えるのがマリアベルです。通称ベル。褐色肌のダークエルフでスタイル抜群。異世界では差別的な扱いを受けていましたが、ヒナタの人柄に触れて仲間になり、魔王と戦い抜く仲間となりました。ヒナタに巨大な感情を抱えていて、そのせいで暴走することもしばしばあります。
アニメ版でのベル役は、『エロマンガ先生』の山田エルフや『ウマ娘 プリティーダービー』エルコンドルパサーで知られる髙橋ミナミ。
持田咲良(もちださくら)はヒナタの高校のクラスメイトです。ベルほどではありませんが充分魅力的な女子高生で、密かにヒナタへ片想い中。大のファンタジー好きなこともあって、異世界から来たベルには何かと親身になってくれます。
アニメ版での咲良役は丸山京夏です。
物語は日本で展開していきますが、ベル以外の異世界人も登場します。例えばセシル、メイ、ミラネリアの3人です。
ルールを重んじる生真面目な女神官セシルと、それとは正反対に奔放に生きる亜人族(獣人)のメイ。2人は異世界でヒナタ、ベルと共に魔王と戦った仲間です。
「ミラ」ことミラネリアはベルの母親。ヒナタに会いたい一心でこちらの世界に来たベルと違って、潜在能力の高さから偶然異世界転移してきました。娘を溺愛するあまりに過保護気味。
「愛重ダークエルフ」は現代日本を舞台とした、ちょっと過激なラブコメです。現在連載中の本作(以下、商業版)は一応全年齢向けですが、元々の同人誌(以下、同人版)が成人向けだったこともあって、かなりギリギリを攻めたお色気要素が満載。
直接的な描写がないだけでほとんど丸見え――という描写は「愛重ダークエルフ」の見所ではありますが、それはあくまで魅力の一部です。
ヤンデレ気味で独占欲が強く、タイトル通りに愛が重いものの、純粋に主人公を慕うベルの可愛さと健気さが本作のメイン。ラブコメらしくすれ違いがあったり、激重感情から垣間見える闇があったり、一筋縄ではいかないのが面白いところです。
ちなみに商業版と同人版は主人公とヒロインが共通しているだけで、中身はほぼ別物。例えば同人版は異世界の時点で肉体的にも繋がりが出来ているのに対して、商業版ではヒナタの鈍感が発動してずっと未遂です(少なくとも描写されている範囲では)。
そのため商業版の前提知識として同人版を読んでおく必要はありません。とはいえ、商業版の2人の進展にやきもきして、ディープな関係を読みたくなった場合に同人版に触れるのはありでしょう(ただし18歳以上に限る)。
現世に押しかけてきたベルは、そのまま1人暮らしするヒナタの居候になります。テレビや本で日本について学ぶかたわらで、普通に通学するヒナタを魔法で覗き見していたのですが……。
偶然、ヒナタと持田咲良が接近する場面を目撃して嫉妬心が炎上。愛しの彼を常に守るべく、あの手この手を使って高校に入学し、クラスメイトになってしまいます。
ちょっと怖いくらいのヒナタへの執着、嫉妬でかなりやべービジュアルになるヤンデレ姿、それらと落差のあるデレデレを一挙に楽しめるエピソードです。恋敵と勘違いする咲良が物凄く親切で、彼女の勢いに普段押せ押せのベルがたじたじになるのも面白いところ。ベルとは別方向に暴走する咲良の勢いにも注目してください。
ベルは転校の挨拶で異世界出身なのを自分からバラし、受け入れられているのが奇妙に思えますが、そこはご愛敬でしょう。「できれば洗脳はしたくない」と発言していますが、魔法で認識をいじるくらいはしてるのかも知れません。
ちなみに主なお色気要素は頻発するパンチラ(パンモロ)。
- 著者
- 中乃空
- 出版日
咲良を交えた買い物とその後のささやかなデートを経て、仲を深めたヒナタとベル。火の付いたベルはさらに深い繋がりを求めますが、そこへ割って入ってきた者たちがいました。かつての仲間、セシルとメイです。
実はベルが世界を渡ってきたのは無断。元の世界ではそれが問題視されており、セシルとメイの2人は大事になる前に連れ戻すように命令されてきたのでした。
ヒナタ命なベルが、帰れと言われて素直に従うわけがありません。当然ベルは反発し、元からソリの合わなかったセシルと言い合いになってしまいます。メイはどちらの味方もしないものの、面白がって仲裁する気はゼロ。魔王を倒した勇者パーティの現世での諍いを治める鍵を握るのは、元勇者のヒナタということになってしまいます。
逆異世界転移要素が強調されるエピソードです。ヒナタとベルの間にある絆、そして元勇者パーティの関係性が掘り下げられるのが見所。ヤンデレでも思いあまった暴走でもない、等身大のベルのリアクションにニヤニヤします。
ちなみに主なお色気要素はベルの全裸。騒動が終わった後に一線を越えようとヒナタに迫るのですが……果たして少年の貞操やいかに。
- 著者
- 中乃空
- 出版日
ベルの母ミラの訪問から数日後、ヒナタは久しぶりに両親の夢を見ました。外出時の交通事故で両親が亡くなった時の記憶。それはまだ幼かったヒナタがはしゃいだことで、運転していた父親が一瞬注意を引かれ、飛び出してきたトラックとぶつかってしまった事故でした。
翌日、ヒナタはベルを誘って両親の墓参りに行き、今まで話してこなかった過去を語ります。
ヒナタは事故で両親に守られて生き延びたと思っており、ずっと自分を犠牲にしてでも他者を守ろうと考えていました。実はその強い精神によって勇者に選ばれたのですが、偉業を成し遂げた今になっても、事故への罪悪感は消えないままでした。
ところが娘を心配して逆異世界転移してきたミラを見たヒナタは、両親から逃げているのではないかと思い、改めて向き合おうとしたのです。
本作は何かとベルの奇行――もとい愛の発露に目が行ってしまいがちですが、ヒナタとベルの絆から2人の成長を感じられるのも見所の1つ。重くて深い愛によって、重い過去を乗り越えて欲しいと願ってしまいます。
内容が内容だけにお色気要素はおとなしめ……と見せかけて、悪夢を見たヒナタにベルが裸で夜這いをしかけようとしていたり、夏の暑さで服が透けたりします。
- 著者
- 中乃空
- 出版日
「愛重ダークエルフ」は2024年9月にTVアニメ化が発表、2025年4月から15分アニメとして放送・配信中です。短いながらも(短いからこそ?)作画は良好で原作に忠実。後述するように規制はありますが、アニメから入った視聴者にも好評です。
そんなアニメ版を制作を担当するのは株式会社ウェイブのアニメブランド「デレギュラ」(規制緩和を意味するderegulationに由来)。
お色気がギリギリすぎることから、アニメ「愛重ダークエルフ」には3つのバージョンがあります。一般向けにきわどい映像と音声に規制(いわゆる「謎の光」)がかけられている「オンエア版」、制作スタジオの理念に沿ってオンエア版より規制が緩い「デレギュラ版」、規制が一切ない「完全デレギュラ版」の3つです。
TOKYO MXやAmazonプライムビデオなど各放送局・サブスクサービスではオンエア版、AT-XやDMM TVではデレギュラ版、ウェイブが自社運営するAnimeFestaのみ完全デレギュラ版が見られるようになっています。
他におまけのミニアニメが作られており、DMM TVとAnimeFestaで公開中。アニメ「愛重ダークエルフ」を120%楽しみたい方は、DMM TVかAnimeFestaで視聴するのがおすすめです。
「愛重ダークエルフ」の作者は漫画家・イラストレーターの中乃空(なかのそら)です。11月19日生まれ、神奈川県在住の男性。
詳しい経歴は不明ですが、大学在学中の2005年に成人向け漫画雑誌「COMICポプリクラブ」で商業漫画家デビューを果たしました。そこから3年半、いくつかのゲーム会社でグラフィッカーを勤めた後、フリーに転身して現在に至ります。
商業活動と並行して個人サークル「In The Sky」を主催しており、オリジナル・2次創作を問わずさまざまな作品を発表してきました。そのうちの1つが、2021年2月に発表した「愛重ダークエルフ」の原型に当たる同人版「愛重ダークエルフ」です。
中乃空は丸顔童顔、肉感的な美少女表現に定評のある漫画家です。キャラクター造形は男性側が押され気味(草食男子もしくは弟キャラ)で、女性側が情熱的な傾向があります。要するに中乃空作品にはヒナタとベルのような関係が多く、「愛重ダークエルフ」がツボに入った方は、他の作品に触れてみるのもおすすめです。
『ちょっとだけ愛が重いダークエルフが異世界から追いかけてきた』は現在も「WEBコミックガンマぷらす」で連載中です。最新エピソードを含めて数話が無料公開されているので、原作漫画が気になった方はまずそちらで読んでみてはいかがでしょうか。