MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店「腰を据えて読きたい本フェア」/本屋遊泳~ブックリウムに会いに行こう~【第48回】

更新:2026.2.9

「書店オリジナルのフェア」の取材を通してお伝えしている本屋遊泳。今回はMARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店さんの「腰を据えて読きたい本フェア」について紹介します。

ホンシェルジュ編集部です。編集部公式で全力で本を紹介したり、イベントレポートをしたり、インタビューをしたり。
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「タイパ」に流されない読書を。『腰を据えて読みたい本フェア』

MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店では、現在『腰を据えて読みたい本フェア』を開催しています。

効率的に情報を得ることが重視される現代において、一冊の本を深く受け止めるために、あえて時間とエネルギーを費やす。そんな読書体験を提案するフェアです。

選書を担当したのは、同店の文芸担当・梶原さんと、ZINEの制作・販売を中心に活動している小幡玲央さん。

政治、文学、社会といった、いわゆる「硬め」のジャンルを中心に、小説やエッセイ、ノンフィクションまで多岐にわたる書籍が並んでいます。

どれも一読して終わりではなく、じっくりと中身に向き合うことが求められる読み応えのある選書です。

 

なお、フェアの終了期間は2026年2月3日時点では未定です。

『腰を据えて読みたい本フェア』誕生のきっかけ

今回のフェアは、梶原さんが過去に企画した『読みあぐねている人のための文庫フェア』や『時間のかかる読書フェア』の延長線上にあります。

自身の読書体験に基づき、本当におすすめしたい本を厳選しようと考えた際、梶原さんは友人であり、自費出版の冊子(ZINE)を制作している小幡玲央さんに選書協力を依頼しました。

きっかけは、梶原さんが手にした小幡さんの掌編小説集にあります。その内容に感銘を受け、「この人が選ぶ本をぜひ見てみたい、それがフェアにとっても良い作用を生むはずだ」という思いから、選書をお願いしたそうです。

実際にあがってきた小幡さんの選書リストには、まさに「腰を据えて読みたい」と思わせる本が多く、そこから本フェアのタイトルとコンセプトが誕生しました。

選書に協力した小幡さんは、主にエッセイや小説のZINEを制作・販売しており、これまでに発行した4冊の冊子は累計約200部にのぼります。

文章を書くだけにとどまらず、冊子の「手製本」や、自身の作品を販売する個人即売会の開催、さらには読書会の主催など、多岐にわたる活動をされています。

活動の様子は、noteInstagramでも公開されていますので、ぜひ覗いてみてください。

数年後の自分を支える「一生ものの本」との出会い

本フェアの魅力は、効率や即効性が求められる今の読書傾向に対し、「時間をかけて内容に向き合う」ことの価値を再提示している点にあります。

読んですぐに役立つ本ではなく、あえて「読むのが大変な本」にエネルギーを注いで向き合う。その体験は、読了後も長く心に残り続け、数年経って再読した際にも新しい発見を与えてくれます。

そんな一生ものの本と出会えるよう、選書から展開までさまざまな工夫が凝らされています。

2つの視点からなる選書

二人の選書者がともに「腰を据えて読みたい」と感じた本がセレクトされています。

梶原さんは、自身が2025年に読んだ本の中から個人的に衝撃を受けたものを選定。一読して混乱したり興奮したりするような、飲み込むのに時間がかかる本こそ、長く付き合える一冊になると考えて、セレクトしています。

一方の小幡玲央さんは、特定のターゲットを絞るのではなく、自身の血肉となった「オールタイムベスト」の中から、新刊で入手可能な約30冊を選んでいます。

その場限りの反応で終わる本ではなく、あえて読むのにパワーが必要な本を集めることで、ラインナップに強い独自性を持たせています。

フェアの展開について

「腰を据えて読む」というテーマを尊重し、売り場は極めてシンプルに構成されています。企画性や派手な装飾が本より前に出ないようにしているのは、読者が本の中身や選書の内容に集中できる環境を大切にしたいという考えからです。

ノイズを削ぎ落とした空間は、本と自分だけで向き合うための対話場所となります。棚には1冊ずつ紹介POPやペーパーも展開されており、自分が時間をかけて向き合いたい本をじっくりと選ぶことができます。

選書したお二人からのメッセージ

フェアに寄せた、お二人からのメッセージです。

梶原さん: 「お読み頂きありがとうございます。お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください」

小幡さん: 「難しい背景知識は不要で、店頭で『第六感』が働いた本を手に取ってほしいと考えています。知識や問題意識にとらわれすぎず、直感で気になった本を手に取り、一冊の本とじっくり向き合うきっかけにしてください」

オリジナルのフェアに注力している書店

会場となるMARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店は、静岡県内唯一の同ブランド店舗であり、県内随一の売り場面積を誇ります。

その広大なスペースにて常時50万冊ほどの書籍を展開しているほか、「EHONS」という絵本のストーリーをモチーフにしたグッズも販売しています。

また、書店員によるオリジナルのフェアに注力しているのも大きな特徴です。全国の書店員が選書や棚作りを競う「Book Fair Championship(BFC)」の第1回優勝者や、第2回の入賞者が在籍しており、現場の熱量から生まれるユニークな企画が度々開催されています。

力の入ったフェアにたくさん出会える書店なので、ぜひ、お店に足を運んでみてください。

▼MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店
〒420-8508 静岡県静岡市葵区鷹匠1-1-1 新静岡セノバ5階

お店の情報は公式Xからご確認いただけます。

ここからは選書を手掛けた小幡さんと文芸担当・梶原さんが、フェアで展開しているおすすめ本を紹介します。まずは、小幡さんが選書した5冊です。

おすすめ本①『女性解放という思想 』

女性解放という思想

2021/05/10
江原由美子
ちくま学芸文庫

(※以下、おすすめ①〜⑤は選書協力・小幡玲央さんによるコメントです)

フェミニズムに興味がある人だけでなく、フェミニズムは「女性の問題」だからよくわからない…と思っている方にも、是非読んでもらいたい本です。

おすすめ本②『弔い・生殖・病いの哲学―小泉義之前期哲学集成

弔い・生殖・病いの哲学―小泉義之前期哲学集成

2023/5
小泉義之
月曜社

なんとなく忌避してしまいがちな体にかんするトピックについて、いささかひねくれたような視点から真摯に論じている力作です。

おすすめ本③『質的社会調査の方法 他者の合理性の理解社会学』

質的社会調査の方法 他者の合理性の理解社会学

2016/12/19
岸 政彦 (著), 石岡 丈昇 (著), 丸山 里美 (著)
有斐閣

社会学の研究をしようとする人向けの入門書ではありますが、自分とは異なる他者とよりよく付き合っていきたいと思うひと全員におすすめしたい一冊です。

おすすめ本④『ライティングの哲学』

ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論

2021/7/23
千葉 雅也 (著), 山内 朋樹 (著), 読書猿 (著), 瀬下 翔太 (著)
星海社

書きたいのに書けないもどかしさを一度でも抱いたことのあるひとには、きっと役立つことうけあいの執筆論。四者それぞれの視点で語られる「書くこと」のプロセスが参考になります。

おすすめ本⑤『女子をこじらせて』

女子をこじらせて

2015/4/10
雨宮 まみ
幻冬舎

「こじらせ」によるエネルギーの詰まったこの本。受け取る方もエネルギーが要るかもしれないけれど、それでも読んでみてほしい強烈な一冊です。

おすすすめ本⑥『百年の批評-近代をいかに相続するか-』

百年の批評-近代をいかに相続するか-

2019/05
福嶋 亮大(著)
青土社

最後は、文芸担当・梶原さんが選んだおすすめな本です。政治、社会、ジェンダーなど多角的な視点から、先人たちの思想(負の遺産も含む)をどう受け継ぎ、未来へ繋げるかを考察する内容です。

梶原さんが一番混乱したり、興奮したりした、特におすすめしたい一冊だそうです。


取材にご協力いただいた、MARUZEN&ジュンク堂書店新静岡店 文芸担当・梶原さん、小幡玲央さん、ありがとうございました!

ホンシェルジュでは、フェアを紹介させていただける全国の書店様を募集しております。ご興味をお持ちいただけた書店様は、問い合わせからぜひご相談ください。

次回もお楽しみに!

 

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本屋を訪れる楽しみの1つが、その本屋さんオリジナルのフェア。ホンシェルジュでは「書店オリジナルのフェア」を「ブックリウム(本で満たされた空間)」と命名し、取材を通してその魅力をお伝えしていきます。

この記事が含まれる特集

  • 本屋遊泳~ブックリウムに会いに行こう~

    ホンシェルジュでは書店オリジナルのフェアを「ブックリウム(本で満たされた空間)」と命名。 本屋さんへの取材を通してフェアのテーマや選書を紹介、アーカイブ化する特集です。 ぜひお気に入りの本屋さんを見つけてください。

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