「他の作家と被らない」のをモットーとしている石持浅海。クローズド・サークル(閉鎖空間)を舞台にした本格ミステリー作品から、サクサク読めるライトミステリーまで、全5作品を紹介させて頂きます。
那覇空港発羽田行き・240名を乗せた航空機が3人の男女によってハイジャックされるところから、事件は始まります。ナイフを手に、乗客の赤ん坊3人を人質に取り立て籠る犯人グループ。彼らの要求は「師匠」である男・石嶺孝志を連れてくること。しかし機内のトイレで、人質の母親の死体が発見されるアクシデントが発生し、事件は思わぬ方向へ進んでゆき……。
- 著者
- 石持 浅海
- 出版日
- 2006-04-12
週明けに控えた国際会議の為に厳重な警備下にあった那覇空港で起きたハイジャックと、自殺か事故か殺人なのか分からない不審な死。偶然この場に居合わせてしまった青年「座間味くん」。彼が探偵役となって、スリリングな犯人探しが始まります。
ハイジャックと乗客の死という緊迫した状況ながら、Tシャツに"座間味"と書かれていただけで「座間味くん」と命名されてしまった愛すべきキャラクター。その後も座間味くんは『玩具店の英雄』『パレードの明暗』などに登場し、「座間味くん」シリーズとして親しまれています。
『心臓と左手』に収録された短編「再会」は、このハイジャック事件の11年後を描いた作品です。まずは『月の扉』を読み、「再会」にもチャレンジしてはいかがでしょうか?
大学時代、軽音楽部に所属していた6人組で結成された「アル中分科会」。卒業後初めて同窓会を開くことになった6人は、メンバーの1人である安東の所有するペンションに集まることになりました。
「アル中分科会」の一員、伏見亮輔は、後輩の新山和宏をペンションで殺害します。どうにか犯行の発覚を遅らせたい彼は他のメンバーを巧みに部屋から遠ざけるのですが、そこに登場するのが探偵役・碓氷優佳でした。
部屋や伏見の様子がおかしいことに疑問を持った優佳は、持ち前の勘の鋭さと冷静な頭脳で次第に伏見を追い詰めてゆきます。
- 著者
- 石持 浅海
- 出版日
- 2008-02-08
いわゆる"倒叙"モノと呼ばれるジャンルの本作。倒叙とは、例えば「古畑任三郎」シリーズのように、まず犯人が誰か、その犯行計画が最初に明かされ、犯罪を実行するところから物語が始まります。犯行が成功したかと思いきや、今度は警察や探偵役が登場し、次第に犯人を追い詰めていく、というのが倒叙モノ。海外ドラマの「刑事コロンボ」シリーズもこの倒叙の技法が用いられています。
末期がんで余命半年と宣告された、ソル電機の社長・日向貞則。彼には昔、梶間という同僚を殺害した過去がありました。その償いの為、彼は自らを梶間の息子・晴征に殺害させ、殺人事件の被害者となることを思いつきます。
犯人=晴征が犯行を行いやすいようなシチュエーションを、日向はわざと用意します。一方、日向に殺意を抱く晴征は完全犯罪を行うべく、日向を殺害する機会を伺います。「殺されたい男」と「殺したい男」。この2人の前に現れるのが碓氷優佳。抜群の推察力で、まだ見ぬ殺人事件を予見するのです。
- 著者
- 石持 浅海
- 出版日
- 2011-09-01
「碓氷優佳シリーズ」第2弾。こちらも倒叙トリックを使用した作品ですが、「犯人だけでなく、被害者の視点からも物語が語られる」という作品は他にあまり見受けられないでしょう。
命の期限が決まり、晴征の復讐の為に自らの命を差し出そうとする日向。誰でも死ぬことには恐怖を抱くものですが、それよりも償いの気持ちが強いという点に、日向の悲しい決意が伺えます。ミステリー作品は誰かの「死」から物語が動き出すものですが、「死」に向かって進むストーリーは非常に斬新な発想だと言えるでしょう。
対人地雷をテーマにした短編集『顔のない敵』。表題作を含めた6編と、1997年公募短編アンソロジー「本格推理11」に採用された「暗い箱のなかで」を収録。今回は表題作「顔のない敵」をご紹介します。
- 著者
- 石持 浅海
- 出版日
- 2009-01-08
舞台は1993年のカンボジア。NGOのメンバーである坂田たちが地雷の撤去作業を進める荒地に、爆発音が轟きます。
顔の半分が吹き飛んだ無残な状態で発見されたのは現地の地主・チュオン。危険だと分かっているはずの地雷原に、なぜチュオンは踏み込んだのか。果たして事故なのか、それとも誰かの手による殺人事件なのか、坂田が調査に乗り出します。
ミステリー×対人地雷という、一風変わったテーマを扱う本作。日本に暮らす私たちにとって、地雷はあまり馴染みのない物でしょう。敵の戦力を奪うために、あえて命を奪わない程度に火薬量を調節し、身体の機能を奪うために存在した悪魔の兵器。世界では現在でも地雷に苦しむ人々がたくさんいます。ミステリーとしての完成度はもちろんのこと、考えたこともないような問題に焦点を当てている作品です。
大学の飲み仲間である長江高明、熊井渚、湯浅夏実の3人は、毎回ゲストを1人呼ぶというスタイルで飲み会を開催しています。美味しい料理と、それにピッタリ合うお酒を用意し、飲み会を楽しむ3人+ひとりのゲストは様々な話題に花を咲かせていきます。
- 著者
- 石持 浅海
- 出版日
- 2010-08-31
飲み会の場で盛り上がる話題といえば、もっぱら"恋愛"絡み。酔いが回って口が軽くなった一同が、あの手この手で他人に口を開かせようとするシーン、大人なら思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか?しかしこの小説、ただのグルメや恋愛小説ではなく、れっきとしたミステリーなのです!最後には「さすが!」といいたくなる仕掛けがあなたを待ち構えています。
お酒やおつまみを用意して、4人の一員になった気分で読み進めたくなる、軽いタッチの1冊です。
以上、5作品を紹介させて頂きました。石持浅海のモットーは「同業者が思いつきそうもない舞台を用意する」ということだそうです。読んだことがありそうでない、新境地に出会ってみませんか?