400年以上語り継がれるスーパーヒーロー・真田幸村。その魅力を伝えるものとして書籍はもちろんのことアニメ、映画、ゲームキャラクターに至るまで数多く世に生み出されています。今回はそんな真田幸村をもっと知るために厳選した5作をご紹介。
真田幸村とは後世呼ばれた俗称で史実では真田信繁となっています。武田信玄、勝頼2代に仕えた知将真田昌幸の次男として出生。武田家滅亡後は独立した真田家の存続のため織田、上杉、豊臣などの有力武家へ人質として渡り歩きます。
父・昌幸譲りの聡明さはどの家でも重んじられ、特に秀吉に仕える頃は豊臣姓を与えられるなど馬廻り衆として仕えます。秀吉亡き後に起きた関が原の戦では、幸村は昌幸とともに上田城に籠もり10倍以上の敵を足止め!しかし関が原では味方が大敗してしまいます。その後昌幸、幸村は九度山に蟄居されることになります。
そして幸村は大阪・冬の陣で九度山を脱出し大阪城に入城。真田丸と呼ぶ出城を築き、押し寄せる徳川勢を圧倒しますが、家康の講和策により真田丸は解体されることになります。そして豊臣家滅亡へ向かう大阪・夏の陣。決死の突撃で家康本隊へと切り進みますが、あと一歩で敗走。その生涯を閉じます。
その一貫として貫いた義の精神と家康を最後まで追い詰めた知恵と武力は、伝説となり後世に語り継がれています。
1:武器は十文字槍だった
幸村は槍の名手とされ、お気に入りは朱色に塗られた柄の十文字槍でした。槍での戦功が優れている者は「槍働き」と呼ばれており、その戦果を評価されると朱塗りの槍を大名から賜ったと言います。十文字槍は、馬上で使うと自分の馬を傷つけてしまう恐れがあることから、扱いが非常に難しいと言われているため、彼がいかに槍の達人だったかが伺えます。
2:旗印は「六文銭」
六文銭とはあの世とこの世を分かつ三途の川の渡し賃のことです。これを旗印にすることは「身命をささげて惜しまない」ということを意味しています。
3:「真田紐」を作って内職をしていた
真田紐は、機織りで縦糸と横糸を使って織った、平たく幅の狭い紐です。伸びにくく丈夫なことから、刀の下げ緒や鎧兜の帯締めとして使われていました。関ヶ原の戦いの後、九度山で謹慎させられていた幸村と父昌幸が、この真田紐を製作して生計を立てていたと言われています。
4:辞世の句は「定めなき浮世にて候へば、一日先は知らざる事に候」
幸村は大坂夏の陣において、徳川家康の本陣から退却の折に討ち取られてしまったため、正式には辞世の句を残すことはありませんでした。しかし、姉である村松殿と、その夫の小山田茂誠、子の小山田之知に宛てられた書状にある文面が、辞世の句と考えられています。
「運命の定まらない世の中のことなので、1日先のこともどうなるか分かりません」という意味です。
5:「日本一の兵」と評価されていた
大坂夏の陣で家康の本陣に乗り込み、彼に自害を覚悟させるほど追い込んだ幸村。初代薩摩藩主である島津忠恒に「真田日本一の兵、古よりの物語にもこれなき由。」と評価されました。またその強さは、家康に「あの世に行ったら真っ先に酒を酌み交わしたい人物である」と言わしめるほどでした。
『真田太平記』は歴史小説家・池波正太郎の代表作であり真田幸村を語るうえで欠かせない作品です。真田物と言われる書籍やドラマ、映画など新たに発表するたびに比べられる程の名作です。全12巻という大作ですが真田幸村に興味を持ったなら是非読んでほしい作品です。
- 著者
- 池波 正太郎
- 出版日
- 1987-09-30
物語は史実とフィンクションを織り交ぜた読みやすい冒険活劇とも言えます。真田昌幸、信之、幸村の親子それぞれの視点から、戦国時代を生き抜いた小国ならではの知恵には感嘆。また絶対的な権力を持った徳川家に対しての徹底抗戦する昌幸、幸村親子、その権力の中で真田家を守る兄・信之、それぞれの立場から貫いた武士としての美学が魅力的に描かれています。
この作中に登場する女忍び「お江」や甲賀忍者「馬杉市蔵」など物語のエンターテイメント性を高めている忍者(草のもの)たちの活躍も触れずにはいれません。「真田十勇士」のような有名なキャラクターではありませんが、死闘を繰り広げて諜報活動などで真田家を助け、大国北条、上杉、徳川などを相手取る物語には引き込まれます。
『真田三代』は歴史小説家火坂 雅志が書いた戦国を生き抜く地方小国の誇りを描いた小説です。この作品では信州真田家の中興の祖と言われる幸隆。その三男で家督を継ぎ「表裏比興の者」と評され謀略、知略に長けた昌幸。昌幸の長男信之と次男幸村(信繁)の三代の姿を上下巻で描いています。
- 著者
- 火坂 雅志
- 出版日
- 2014-11-07
物語は武田信玄の砥石城攻めから始まり、難攻不落の名城を真田幸隆が奇策を用いて奪い取ります。これにより武田家で確固たる基盤を作り真田の家の基礎を作ります。幸隆時代の物語は武田家に仕え合戦を中心に描いた迫力あるストーリーとなっています。
真田昌幸は何と言っても徳川の大軍を2度に渡り撃退した上田城の合戦がクライマックス。父幸隆の整備した情報網を用いて隣接する上杉、北条、織田、徳川、豊臣などの大国との駆け引きは凄まじいまでの外交戦が繰り広げられます。
そして信之、幸村(信繁)兄弟の立場の違うそれぞれの思い。真田家存続を徳川家の中で模索する兄信之。義を貫き己の信じる道を突き進む幸村の純粋さ故の最後。
それぞれの時代で魅力ある人物像が描かれています。真田一族、家臣以外にも、武田信玄、山本勘助、上杉景勝、直江兼続など有名武将もまさにオールスターキャストで登場します。皆、それぞれの誇りを持って時代を生きた人物達。必ず共感できるキャラクターに出会います。
『真田丸の謎―戦国時代を「城」で読み解く』は大阪冬の陣で真田幸村が圧倒的な戦力の徳川方を退けた真田丸の謎を築城技術から考査した本です。城郭考古学者の著者が真田家に伝わる城づくりの知恵を解析したもので、これまでの真田物とは毛色の違う作品となっています。
- 著者
- 千田 嘉博
- 出版日
- 2015-11-07
幸村(この本では史実の信繁で表記)は、どうやって少数で1万をも超える大軍を蹴散らしたのか。その工夫に富んだ城郭真田丸をどうやって作ったのか。そこには幸村の父昌幸が仕えた武田家から続く真田の築城技術とは。歴史に隠された真実を探ります。
武田家が作った諏訪原城や、高天神城、古宮城など過去の築城実績などと比較して如何にして戦略的城普請が行われてきたかも見所。その技術が幸村の真田丸へと受け継がれているとするストーリーは目から鱗です。
終章の「真田丸を歩く(真田丸の痕跡;三光神社と宰相山ほか)」では、現在発掘調査をしている現代の地を、著者が独自の調査で割り出した真田丸の今を実際に歩き見所ポイントを解説しています。この本に沿って戦国に想いを馳せて歩くのも面白いのではないでしょうか。
『城塞』は大阪・冬、夏の陣を題材にした、歴史小説の第一人者司馬遼太郎の小説です。上中下巻からなる大作で、徳川方の間者「小幡勘兵衛」を主人公に徳川家康、淀殿、真田幸村などの主要人物を描いています。
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
上中巻では主に小幡勘兵衛の活躍から大阪の陣へ家康が導いていく策略が描かれます。小幡勘兵衛は後に徳川家旗本として旧武田家に伝わる武田信玄の軍法をまとめた「甲陽軍鑑」を残した人物です。
下巻は真田幸村、淀殿、大野長治が主軸で描かれ豊臣滅亡へと向かって行きます。浪人衆筆頭の真田幸村が示す策は、淀殿、大野長治らに反対され、家康の思惑通り滅亡へと向かって行く歯痒さが印象的です。
あくどくも感じる家康の知略に、如才なく嵌っていく淀殿以下豊臣方。その犠牲とも言える次々と倒れていく後藤基次などの浪人衆、劣勢も最後まであきらめず家康に迫った真田幸村。そのすべてを飲み込んで大阪城は炎上します。武士として華麗に散った美学を痛感する物語です。
『真田幸村 伝説になった英雄の実像』は歴史作家で時代考証家でもある著者が、多くの史実を集め、その伝説的英雄真田幸村の本質を探った、真田幸村を知る入門書と言える作品です。
- 著者
- 山村 竜也
- 出版日
- 2005-07-16
真田幸村は義に生き、豊臣家に殉ずるため華々しく散った悲劇の英雄とされます。江戸時代から人々に愛され語り継がれてきましたが、フィクションの物語も多く、事実を知らない人も多いのではないでしょうか。本書は史実、古文書などの資料から幸村の実像迫った作品です。
幸村の出生から最後までが描かれています。幸村を語るクライマックスの大阪の陣で活躍した智謀、策謀はどのようにして培われたか。幼少からの成長の記録がその謎を解き明かしてくれます。
大阪冬の陣の前に九度山を脱して駆け付けた幸村は、歯が抜け、髪も薄く、腰も曲がっていたとか。ゲームのキャラクターやアニメキャラとしての真田幸村を想像している方はこの作品を読んで驚くかもしれません。
戦国最強の敗者・真田幸村。義を重んじる永遠のヒーローは死しても伝説として語り継がれ、判官贔屓の日本人の心に権力に媚びない強い心の象徴として根付いています。その生き方は今の時代にも通じる勇気をくれることでしょう。本を読んでその史跡を訪ねるのも歴史ロマンが溢れておすすめです。